ストレンジレイス   作:ミートソースカブトムシ

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オリジナルを書くのは初めてです。
タグにもある通り異能バトルモノです。


不思議との出会い

俺、稲光(いなびかり) 直也(なおや)は普段よりも早く起きた。

午前六時に起きてその二十分後には外に出て地下鉄に乗ったはずだ。

俺の通う石守高校はウチから地下鉄に乗ってだいたい一時間の距離にある。

普段はすし詰め状態で揺られているが、流石にこの時間だと乗客は少なかった。

 

「……腹減った」

 

朝食を摂らなかったのは失敗だったかもしれない。

普段の朝は空腹感など感じないのに、今日に限って腹の虫がうるさい。

後でコンビニに寄って菓子パンでも買おう。

そんな事を考えていると、目的の駅に到着した。

改札を通り駅から出ると、目の前を少女が横切る。

石森高校の紺色の制服とは違い、白を基調とした制服はここら辺では見かけない物だった。

銀の髪が風に揺られている様子に、少しの間見惚れていた。

 

コンビニで餡パンを購入し、学校へと向かう。

しかし時刻はまだ七時十二分、いくらなんでも早く来すぎた。

公園のちょうど木陰に入っているベンチに座る。

時間を潰すために餡パンを齧りながらスマホをいじっていると、とあるニュースが目に入った。

 

「ビルの倒壊?」

 

昨日の夕方、ビルが突如崩れたという内容だった。

幸い被害は小さく、怪我人こそ出たものの死傷者はいなかったらしい。

地盤が緩んでたとか違法建築だとか色んな事が記事に書かれているが、どれも信憑性のある情報では無かった。

それにしても…

 

「────写真が載ってない」

 

この手の記事なら周囲の画像くらいは載せると思ったのだがそれらしき物はどこにも載ってない。

SNSや掲示板などを見ても、画像はおろかそれに関する情報を発信してる人がいなかった。

そんな状況に違和感を覚えながらスマホで時刻を確認する。

時刻は七時四十七分、もう向かって良い頃合いだろう。

隣に置いていた鞄を持ち、高校へと向かった。

 

 

 

教室でスマホを見てると、突然電流が流れたような感覚があった。

振り返ると、金髪に青い目が特徴的な少年、花蘇芳(はなずおう) 友太(ゆうた)が手から痛みを振り払うようにして立っていた。

 

「痛ってぇ〜、お前、まだ夏休み前なのに静電気ってどうなってんだよ」

「知らないよ、帯電体質か何かかもね」

 

友太は気の合う友人だ、彼の言う漫画やアニメの話は正直言うとよく分からないが、友太の話し方が上手いからなのかとても引き込まれる。

 

「そういえば知ってるか?今日このクラスに転校生が来るらしい」

「へぇ、どんな人なの?」

「知らん知らん、でも可愛い子だったらいいなぁ。アニメだったらいわゆるヒロイン枠でそこから何やかんやで主人公と恋人関係に発展していくんだよ!」

「いつにも増して元気だね」

「捗るからな」

 

捗る、というのはよく分からないが友太は楽しそうなので良しとしよう。

 

「俺も、何かアニメとか漫画みたいな刺激的な経験がしてぇなぁー!」

「例えば?」

「異世界転生」

「絶対無理なのだけは分かったよ」

 

友太とそんな談笑をしていると、ホームルームの始まりを告げるチャイムが鳴った。

大人しく席に着くと間もなくして担任の教師、が教室のドアを開き入ってくる。

 

「はーい、立ってるやつは座れよー。…もう知ってる人がいるかもしれませんが今日このクラスに転校生が来ますー。入ってきて」

 

生徒の注目が教室のドアに集まる。

教室に入ってきたのは、特徴的な銀の髪、ここら辺では見かけない白い制服。

それは紛れも無く駅前で見た少女だった。

 

「今日から皆さんと一緒にこの学校で過ごす遠藤(えんどう) 咲雪(さゆき)さんです。皆さん仲良くしてねー」

「遠藤 咲雪です、趣味は特にありません。これからよろしくお願いします」

 

緊張しているのか言葉の雰囲気が堅く、表情も強ばっている。

 

「ほんじゃ空いてる席に座ってねー」

 

遠藤が席に座ると、いつもと同じホームルームが始まった。

 

 

 

ホームルームが終わると、遠藤の席の周りに人集りができた。

 

「ねぇねぇ、好きな食べ物は何?」

「好きなタイプは!?」

「部活興味ある!?」

 

「案の定、質問責めされてるな」

「そうだね」

 

人集りの中心にいる咲雪は最初こそ緊張している様子だったが、緊張が解けるのは早そうだった。

 

「行かないの?」

 

先程あんな話をしていたから、てっきり口説きにでも行くのかと思った。

 

「おう、容姿百点だしまさに俺が求めたアニメのような展開だ。だがな!俺にそんな度胸があると思うなよ直也。

そして俺はこんなパツキンだしチャラそうな見た目してるがな、凄い人見知りなんだぜ」

「にしては結構ハキハキ喋るよね」

「内弁慶とかそういうやつだ」

 

胸を張ってそんなことを言うが、それは胸を張っていい事じゃないと思う。

 

「直也はどうなんだ?」

「えっ、なんで?」

「この前俺がどのキャラが好きか聞いた時、銀髪のキャラを選んでたじゃないか」

「キャラクターの好みと実際の女性の好みは違うでしょ」

「えっ?」

「えっ?」

 

ここに来て、友人との認識のズレを味わってしまった。

 

 

 

授業が全て終わり、帰りの身支度を済ませて席を立つ。

教室の外に出る直前で声をかけられる。

 

「直也、新しいプライズフィギュアを取りに行くんだけど直也もどうだ?」

「ごめん今回はパス。金欠なんだ」

 

分かった。という友太の返事を聞き、高校を後にした。

地下鉄の駅に着くと、遠藤とばったり鉢合わせた。

 

「あぁ、確かあなたは…」

「同じクラスの稲光直也です。遠藤さんも地下鉄で来てるの?」

「うん、歩きだと遠いから…稲光くんも?」

「俺もそんな感じ」

 

そんな様子で会話が弾むわけもなく、二人の間に沈黙が流れる。

聞こえるのは俺達以外の足音と会話だけだ。

 

「ああぁああaaAAaaaAAaAaあああ!!!」

「「!?」」

 

ホームに叫び声が木霊する。

叫び声がした方を見ると男が何かを吐いているのが見えた。

その光景は異様だった。

吐瀉物はそれぞれが形を持っていて、ソレはまるで生きてるかのように地を這っているモノもあれば、宙に浮かび不規則に移動しているモノさえある。

 

「あれは…」

「だれかっ、助けっ…!」

 

ソレが突然光り出す。

身体が強ばる、アレに近づいてはダメだと、ここにいてはダメだと警告する。

すると次の瞬間、ソレが一つ爆発した。

ただ破裂したのではなく人を巻き込んで爆発した。

巻き込まれた人は頭を吹き飛ばされる。

駅が揺れる、周囲の人の悲鳴が現実感と言うものを無くさせる。

腹に音が響いた、身体を衝撃が駆け巡る。

それが自身の鎖になったかのように身体がダルい。

周囲の人が逃げ惑っていることは分かる。

しかしそんな努力も虚しく、足元を蠢くソレが爆発し倒れ込みトドメを刺される。

散らばった人だったモノを見て、脳はやっと逃げることを俺に命令した。

 

「遠藤さん、逃げよう!」

 

遠藤の手を掴み反対の方に走り出す。

早く出口に行き、脱出しないと自分の身が危ない事は考えなくとも分かる。

しかし…

 

「稲光くん!!」

 

遠藤に止められる。

一体何があったのかと目線で抗議するが、遠藤の指差す方を見ると、一際大きいソレが浮かんでいる。

宙を浮かんでいたソレは先回りしていたかの様にそこに漂っていた。

よく見ると、ソレは黒い虫のような見た目をしている。

その虫は獲物をやっと見つけたとでも主張するように光り始めた。

まずい。

このままでは二人とも死ぬ。

先程爆発を受けた肉が撒き散らった光景を思い出す。

 

「いや…いやだ…」

 

声をあげたのは遠藤の方だった。

遠藤が膝を着き、両手で自分を抱きしめる。

ふと、辺りの気温が急激に低下するのを感じた。

 

「いや!!!」

 

遠藤がそう叫ぶと、辺りが凍った。

床はアイスリンクのように、天井には氷柱ができ、ホームを照らす照明の一部はダメになった。

氷の世界が一瞬にして出来上がった。

先程まで飛んでいた虫が地に落ちる。

それどころか地面を蠢いていた虫達が、宙を飛んでいた虫達が凍っている。

 

「でも…」

 

虫を吐いていた男の方を見ると、虫に覆われて揺らりと立ち上がり、フラフラと歩きながらこちらに向かってくる。

その様は小学生の時、テレビで見た蜂球を思い出させた。

 

「今のうちに…」

 

今のうちに逃げようとすると、遠藤が声をあげた。

 

「ま、待って!こ、腰が抜けて動けない…」

「嘘でしょ…」

 

見捨てて逃げる事もできるが、生憎そんな胸糞悪い事をして平気な図太さは持っていない。

 

戦うか。

否、爆弾にわざわざ刺激を与えるとどうなるか分かった物じゃない。

 

だとすると…

 

「嫌かもしれないけど我慢してね」

 

遠藤を抱えて逃げようとすると、突然横から命令される。

 

「そのまま伏せてて」

 

声がした方を見ると、女が銃を構えていた。

女が数発銃を撃つ、銃口から放たれたのはどうやら光る銃弾らしい。

そんなSFチックな銃弾は虫に覆われた男を貫いた。

しかし、穴の空いた部分はすぐに修復される。

 

「肉体まで虫になるか」

 

女はそう言うと駆け出した。

右手に短い棒のようなものを持つと、棒から光が出てくる。

それは映画で見たビームソードのような雰囲気のソレだった。

ソレが振り下ろされると、男の右腕が切り落とされる。

切り落とされたソレは女が手をかざすといきなり燃え出した。

女はそれを見てから、次は男に向かって手をかざす。

 

「あああああああああああああ!!!!!」

 

男の絶叫が響く。

火だるまとなった男は駅の柱にぶつかったり、身体を叩いて火を消そうと試みてるらしい。

 

「誰かぁ!だれか水をぉ!」

 

そんな絶叫を無視された男は膝をつく。

すぐに炭になったそれを、表情をピクリとも変えずに見ている女に、俺は恐怖を覚えた。




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