ウマ娘 ブラックドーン   作:一億年間ソロプレイ

2 / 17
続いちゃった……
折角だから性転換を思う存分活用することにしたよ^^
※時系列が狂っていたので修正しました(後半のサンオーイ辺り含む)


変わっているものと変わらないもの

 

 どうもこんにちは。おはようございます。

 わたし、朝起きたら馬になってました。

 

『可哀想になぁ……。十七歳の若さで食中毒か』

『出されたメニューに注文していない生鶏肉チャーシューが混ざっており、運悪くカンピロバクターが速攻で発症した後、極稀な確率で起きるギランバレー症候群を引き起こし、かつ睡眠中に死亡とな』

『しゃーないのう。親より先に死んだ親不孝ものだが、死因には情状酌量の余地あり。畜生道の中でも草食系の動物に転生させ、かなり体を強くしてやろう』

 

『ということなので、まぁ頑張れ』

 

 それは一人の老人がぶつぶつ新聞を見ながら言っていたことだったので、わたしは適当に聞いていた。が、突然老人が新聞を下ろしてこちらを見つめてきた。

 そしてそれ以降――、わたしの視界は肉肉しい視界が広がっていた。後から考えれば母馬の胎盤の景色だったね。

 

 先程言ったことを補足するなら、食中毒を起こして(起こされて?が正しいかも)死んでから馬に転生しました。

 

 一体なんで生肉チャーシューなんて入っていたんです? 頼んでませんよ?

 しばらくお肉食べたくない……、そんな気持ちからか、馬の生活には慣れていった。皆ベジタリアンでいるべき(極端)。

 もっさもっさと飼葉を食べつつ、家の周りにある雑草の芽を食べつつ……。母馬や一緒に生まれてきたらしい弟とも一緒に過ごしていると、大体自分のいる場所が整理出来た。

 

 まず、ここはなんらかの農家だということ。畑……、しかも果樹の剪定をしている様子が見えた。

 家族構成は亭主らしい五十代の男性と、その嫁らしい女性。そして三十代ぐらいの息子夫婦とその子供……と、結構な大所帯。農家をしつつ、そしてわたしたち馬をも飼育しているようだった。

 他には番犬のカワイイ柴犬が三匹。どうやら番犬のようだ。カワイイのにたくましい。そしてわたしたちよりも年を取っているからか、弟がからかいにいくとよく遊んでくれるのが見える。

 

「いちろー! あしょんでー!」

「仕方ないな。ほーれふりふり」

 

 柴犬の内、リーダー格のいちろー(多分一郎)がくるんとした尻尾をふりふりと振って、興味津々に弟が突っ込んでいった。

 

「あら、あなたもいってらっしゃいな」

「は、はーい」

 

 母馬の、信子さんの近くでゆったりしているとよくそうやって追い出される。正直、わたしは弟よりも大人しい、と農家の人たちや母馬や柴犬ズたちにも思われている。本当は何をして過ごしたらいいか分からないから、とりあえず母馬の近くにいるだけなのだ。

 

「お、大人しいチビもやってきたな」

「よ、よろしくおねがいします」

「にいちゃ! にいちゃもあしょぶ!」

「う、うん。()()()()も遊ぶよ」

 

 ――そう、わたしはお兄ちゃん。

 元々人間だった頃は()だったのに、今では男の子になってしまっているのだった。

 でもまぁ、最初は股間の間に一本のモニョモニョが付いてるのが気になったけど、段々と慣れつつある。

 順応が意外と早いかもしれない、と思いながら弟と一緒にいちろーさんを追いかけるのであった。

 

 

 

 

 ぼやけていた視界が次第にはっきりしていく。白い天井、仕切られたカーテン、薬品の臭い……。

 保険室か。

 ……うわ、懐かしい夢を見てた。馬になってからすぐの頃、死因はふざけるなと思いつつも順応していったんだ。

 母馬と双子の弟馬がいて、柴犬ズたちがいて、ショーイチたちもいて……。束の間の楽園だった。

 何も考えずに弟と走り回っては母と一緒に過ごしたり、ショーイチたちの手伝いもしたりして。

 なにも気負うことがなくって……。

 

 頭を振る。

 

「あら、目覚めたかしら」

 

 カーテンを引いて現れたのは茶色の耳……ウマ娘の保険医だった。入学式時にも確かいたような気がする。

 

「……すみません、今何時でしょうか」

「四時十分よ。貴方が運ばれてから三時間は経ってるわ」

「そんなに……」

「具合はどう? 見たところバリバリの健康体だけど。軽い貧血……というより、新入生によくある慣れない環境への疲労かしらね」

「まぁ、そんなところです。すみません、もう帰っても?」

「えぇ。怪我も無さそうだし、早く帰った方がいいわよ~」

 

 ベッドから降りると目の前の保険医から「デカいわね……」と声が上がる。もう一々反応するのも面倒になったので、軽く頭を下げて保健室から出ようと扉に手をかける。

 

「あ、そうそう。貴方をここまで運んできたトレーナーくんに挨拶をしておきなさいよ~」

「トレーナー?」

「そう。新人くんで……、確かトレーナー棟の407部屋にいる筈よ」

「そうですか、ありがとうございます。それでは」

 

 礼は言って保健室を後にした。

 ……はぁ、言わないといけないよなぁ。面倒だけど助けてもらったからには仕方ない。

 

 トレセン学園は座学を学ぶ校舎、ウマ娘たちの止まる学生寮と、トレーナーたちが寝泊まりするためのトレーナー寮、それから当たり前だけどトレーニング用の施設諸々とで構成されている。

 トレーナー棟というのは校舎に含まれる施設で、多くのウマ娘とトレーナーとがミーティングする為の棟だ。

 407部屋ということなので四階にある部屋にいる、ということだ。

 施設内の構造はある程度把握はしているが、実際行って見なければ分からないことのが多い。京都の競馬場みたいに。なんなんだよあの馬鹿みたいな高さの坂……。

 

 無事迷うことなく407部屋についたはいいものの、本人がいるか分からない。ノックをしてみる。

 

「はーい」

 

 どうやらいるようだった。慌てて扉に近寄る音が聞こえてきた。声からして男性だ。

 

「なにか用……って、君は倒れていた子じゃないか!」

「あぁ、はい。その節はどうも、ご迷惑をおかけしたみたいで」

「いやいや、無事みたいで良かったよ」

 

 顔を出したのはのっぺりとした、顔に目立った特徴の無い男だ。シャツの襟元には新人らしい、金ピカのトレーナーバッチが付いている。

 

「では、お忙しいところ失礼しました。」

「あっ……、あぁ」

 

 これ以上会話を長引かせることもないので早々に切り上げる。

 新人トレーナー、ということはこれからウマ娘を積極的にスカウトし、実績を高めたい気持ちがある。万が一にも後々、顔見知りだろ? トレーナーいないなら俺と契約しようぜ? みたいにスカウトされても困るからねぇ。

 ま、レースに出るにはトレーナーが必要なんだけど、出来れば放任主義のヤツがいい。こちらの言うことに従順であればそれ以外でも可。

 

 さっさとトレーナー棟を出れば、ぐぅ……と腹の音が鳴った。ほぼ寝てただけなのに、一丁前に腹だけは減るとか言わないで欲しいねぇ。成長期なんだからたくさん食べないと育たないだろ。

 

 

 

 

 入学式から早一週間。

 座学に加え、体を作る為のトレーニングや模擬レースも入ってきた頃には、ある程度の事情は把握し終えた。

 

 まず最初に、中央と地方とで出走できるレースが非常に限られていること。

 中央……、ええと、トゥインクル・シリーズとか言うらしいけど、現時点で地方のトレセン学園に入った――通称、地方馬がトゥインクル・シリーズに参加できるのは『地方競招待競走』というレースのみだ。これは中央が地方バを招いて行われる芝レースだ。反対に、中央馬がローカル・シリーズに参加できるのは『中央競招待競走』だ。こちらはダートレースで行われる。

 

 現時点で地方と中央の交流レースはこれのみ。

 

 というのも、このレースは他に地方馬が参加できるようになったジャパンカップによって存在意義が薄くなったので廃止。後に、重賞競走のオールカマーに地方と中央の交流競走の一面は引き継がれた訳だが……。そのオールカマーも現時点では中央馬のみ参加できるレースである。

 原則中央は中央のシリーズ、地方は地方のシリーズを走れということだ。

 

 思わず溜め息が出た。なんなんだこれは。流石に整備されなさすぎだろう。なんだよ、アプリゲームって一昔前の世界観からスタートでもしてるのか? おかしいだろ、かしわ記念がGⅠの世界観でどうしてこうなる?

 

 ……少しヒートアップし過ぎたねぇ。

 次、二つ目だ。一つ目と関連しているが、現状地方競馬におけるダートレースにおいて()()()()()()()()()()()()()()()()()

 後々国際GⅠとして承認される東京大賞典はGⅠという位置漬けではなく、ダート版有馬記念(縮小版)のような扱いになっている。グレードについてはあやふやだ。

 

 これらのことを踏まえて言えば、入学費用に制服・運動服・蹄鉄諸々の費用を加算した金額を稼ぐためにはかなりレースに出走するか、出るレース全てに勝利するかで現役年数が変わる。

 すべてに勝利すれば古馬級……、シニア級辺りで「上がり」になる可能性もある。

 だがな、それは()()を踏まえてのことだ。

 

 ――ジャパンカップの地方馬招待権の獲得。

 

 これが現時点で無い。私がデビューしたての頃には、東京オリンピック(昭和39年)開催記念として作られたレースである『東京記念』の優勝馬にジャパンカップの優先出走権が得られるようになっていた。

 恐らく、当時で唯一中央のGⅠに地方馬が地方所属のまま参加できるレースだった。

 そこで、私は他の馬と競って1着を取り、そしてジャパンカップへと出走した。この制度を利用し、長らくジャパンカップに出走していたことから亡霊なんて呼ばれたんだ。

 普通、老いに老いた馬が毎年1着取るとは思わないよねぇ。取ったけど。

 

 で、予感というのは――。

 もし私がデビューした際に、この制度が出来るかもしれないということ。

 懸念は、それが思い過ごしであるということ。東京記念にジャパンカップ地方馬優先出走権の付与されることはなく、一年後、または二年後に付与される可能性。

 とはいえ、同期のキングハイセイコーが同じ新入生として入ってきているのがまた何とも言えない。前世でも私は彼……彼女と同年にデビューをし、南関東三冠を競い合った仲ではあるから。今世もまた同じ時期にデビューなんてこともさもありなん。

 

 だが、新入生として入ってきてもデビューする月などはウマ娘それぞれ、ということを座学で聞かされた。

 本格化という、ウマ娘における成長期が迎えられているか否かで変わるらしい。本格化の兆しがあり、練習の模擬レースやトレーナーに見初めてもらうセリのような選抜レースでの成績が良ければ、トレーナーと契約を結び、ジュニア級の仲間入りをする。入学してから一年後ぐらいのデビューが一般的らしく、入学してすぐにデビューとか、三年後にやっとデビュー……とそれぞれにバラつきがあるようだ。

 

「……で、何してんだい。私の尾で勝手に遊んでるんじゃないよ」

 

 ビシッと、伸びてきた手を叩くと「はぅ」という可愛らしい声が聞こえた。

 声の主はクアドランス。珍しい尾花栗毛の牡馬だ。その頃の名残か、前と違わず眩しい金髪の女子になっている。

 成績・ルックス共に期待の新人だという噂がもう出ている。目を付けているトレーナーも多いだろう。

 

「だってさぁ、考え事してるのにこっちも見ずにしっぽちゃんが避けてるのすごいんだもん」

「見なくても分かるよそれくらい」

 

 先程からちょいちょいと見えていた。まったく前世で厩舎が同じで馬房も隣だったからといってこう、縁が出来るもんなのかね……。

 

「ね、放課後一緒にトレーニングしようよ」

「一人でやりなぁ。私にはやることがあるから」

「と、昨日も言ってたけど」

「色々とあるのさ」

「じゃ、私がお手伝いしてあげるよ! それから一緒にやろっ」

「丁重にお断りしておくよぉ」

 

 このままこの場にいても話しかけられ続ける気配を感じ、去ろうとするも背後から付いてくる気配を感じる。

 ちらりと後方確認すればご機嫌な様子のクアドランスが付いてくる。止まれば相手も止まり、動けば相手も動く。

 

 ……撒くか。

 

 

 階段付近を上手いこと使って撒いた後、図書室へと向かった。本だけにあらず、レース関連の新聞なども取り揃えている。

 南関東系列の方を……、おっ、あった。

 

『新バ戦、有力者たちへインタビュー』

『○サンオーイ ○トムカウント ○…………………』

 

 あぁ……、南関東三冠馬の先輩がいる……。

 

 確か三冠……、東京大賞典合わせて四冠を取った後は中央へ移籍したんだっけか。

 新聞横に広げたノートに「サンオーイ発見、デビュー直後」と書いておく。こうして気が付いたことを書いておけば、『何があって何が無いのか』を可視化できる。

 こうやって調査を進めていくうちに前世との違いを明白にしておけば、予想の当たり外れが分かる。

 

 今の所、調査の大きな収穫として「地方所属のまま中央(トゥインクル)シリーズへ参加できるレースが一つ(地方・中央招待競走)のみ」だが、「地方(ローカル)シリーズは他地区のレースに参加できる」が前世と決定的に違う点だ。

 当時、地方競馬は所属する地方とは違う主催者や組合の競馬場でのレースに参加することは出来ず、参加するにはその競馬場へと移籍し所属を変更しなければならなかった。

 が、ここでは普通に参加できるようだ。この地区はこの地区の者のみっていう枠組みが不必要になったんだろうと思われる。地方競馬において欠かせない後ろ暗い組織による経営・アレコレとかもこの世界では無かったことにされてるようだし。大分クリーンな経営ではあるが、本質は変わっていない。

 

 中央で成績を出せなかった馬の墓地という点だけは。

 

 他に何か目ぼしい情報が無いかを探しつつ、その日の調査を終えた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告