ウマ娘 ブラックドーン   作:一億年間ソロプレイ

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センニンギリ(競走馬)


センニンギリ とは日本の元競走馬である。浦和競馬場所属のまま多くのGⅠレースを制覇・勝ち星の数と現役年齢の高さで有名。

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逸話


ギネスの記録を更新した最長寿の馬ともなった本馬であるが、現役時代から非常にユニークな功績を残している。

・倒れた馬を心配する
伊那騎手の服を剥いで蹴り倒す
マスゴミカメラだけを的確に蹴り落とす
ゲートに頭をぶつける
・ダンディー事件
生肉事件
・平伏事件
・休養先の牧場へ侵入した不審者を拘束
ゲートに頭をぶつける
シンボリルドルフ煽り事件
・引退後のお披露目会で当時戦ったジョッキーたちからのコメントの大方「すごく憎らしい」
・唐突なMADブーム
クソガキにも容赦ない慈悲無しムーブ

など、以上で述べたのはたったの一部である。

まずは突発的に起こったMADブームについて述べる。
これはセンニンギリが引退して2010年代へと突入した頃の話である。センニンギリ有馬記念の最終直線を物凄いスピードで走っている映像を個人的に撮影していたあるユーザーによって、その映像をMP3の規格でネット上にアップ。ましてやGB素材として配布されたことが発端だった。
最初の使用例は多くのミーム映像のあとに突如としてセンニンギリが走って全ての画面をブラックアウトさせていくもの。これが主流となり、多くの亜種が生まれた。その余波によって引退後、センニンギリ帰省した農園へ見学依頼が殺到した。農園関係者からのコメントで「ラストランで90年代の競走馬なのになんで知ってるんだろうと思ったら……」と、ニュースで取り上げられる事態にもなってしまった。コメントした関係者の後ろで映っていたセンニンギリは歯を剥き出しにしてカメラ威嚇していた。


気付かないまま眠る

 

「一応聞くが、どのレースを走りたいとか、目標はあるのか?」

「……南関東三冠バ路線」

「なるほど……。――って俺の目標と一致してるじゃねーか!」

「走りたくないとは言ってないだろう」

「ぐぬぬ……」

 

 不服な様子でホワイトボードを用意した高遠は「南関東三冠」と書いた。

 

「となれば、まず立ちはだかる壁となるのは――この二人だ」

 

 次いで、キングハイセイコーとクアドランスの名を書いた。

 

「今の時点でこの二人は才を見せている。早熟タイプであればシニアにはどうなるか分からんが、クラシックまでは持つ類の強さだ」

「まぁ……。キングハイセイコーも三冠路線を走るとは聞いちゃいるがね」

 

 一応、前よりも他地区の者がレースに出走できるとはいえ、こうした他地区特有のダービー・クラシック路線はその地区所属のウマ娘しか出走できないようになっている。

 そして南関東では浦和・船橋・川崎・大井を含めた四つの地区が覇を競う。地区数が多い分、他の地方クラシック路線より激しい戦いになる。

 私の同期にいたのだ。キングハイセイコー以外にも激しく競り合った馬たちが。

船橋のロッキータイガー、大井のステートジャガー。

 二人に加え私・キングハイセイコーが入り、南関東クラシック路線は四巴の戦況になっていた。恐らく、彼ら……彼女たちもいるだろう。

 

「でだ、この二人がクラシック級ともなれば今より確実に力がつく。いくらお前も才能があるといっても磨かなければ彼女たちに置いていかれたままだ。流石に出走できる程度の番組賞金は欲しい。……分かるよな? レースの出走条件、分かってるよな?」

 

 番組賞金、いわば地方競馬における賞金のことだ。

 中央も地方もこの賞金の獲得金額によって人数オーバーしたレースの出走が優先される。つまり勝てば勝つ程抽選漏れの恐れは少なくなるのは中央でも地方でも共通。

 

「そう確認せずとも分かるさ。適度に勝って適度に負けるさね」

「負けるのは出来れば止めて欲しいんだが……。まだ今は学校内で留まっているが、デビューしながらわざと負けるとなれば悪評は免れんぞ」

「はっ。だからなんだっていうんだ」

 

 元から好かれるような柄じゃないし? 元々友馬とかいないし?

 シンボリルドルフとかトウカイテイオー破った時の評判は酷かったし?

 なんならオグリキャップのいた時だって酷かったし?

 別にもう悪評なんて気にしないけど? 闇討ちしたいなら返り討ちにすればいいだけだし?

 

「急に耳が絞られたな……。繊細なタイプなのか?」

 

 一先ず、この場は三冠路線を歩むということを高遠と共通の目標にした。

 

 

 

 

「ねぇ明日空いてる? 一緒に動物園でも行こうよ!」

「なんて?」

「あら、センニンは稀にいる動物園が怖いタイプのウマ娘なのかしら」

「えっ、そうだったの……」

「疑問を返しただけなのに話を曲げないでくれるかね。……にしても、なんで動物園?」

「東武動物公園でジャガーの赤ちゃんを公開してるんだって!」

「はぁ……。二人で行ってくればいいんじゃない」

「いや、貴方を誘ってるのよ。いつも図書室に籠ってレース規則関係の書籍ばっかり見て……」

「健康に悪いよ、青春してないよ!」

 

 そんな理由から土曜日に用事が出来た。

 最近調査に根を詰めすぎていたかもしれないので、良い機会かもと思って承諾した。トレーニングの予定も無いもんでね。

 そうしてやってきたのは東武動物公園。埼玉にある遊園地と動物園を併設しているレジャー施設。アニメなどのコラボもしているので行ったことある人は多いと思われる。とうぶフレンズには会いに行ったのだ?

 待ち合わせ場所で待っているとかつかつと近寄ってくる気配。

 

「待ち合わせにはセンニンが適任ね」

「そのうるさい口縫おうか?」

「あら怖い。だったらレースで決着をつけてみる?」

「遠慮するよ」

 

 ナチュラルにレースに持ち込むの止めてくれないかなぁ……。うっかり了承しそうで困る。

 ふむ、しかしながら随分洒落てる恰好だ。ウエストリボン付きの半袖ワンピース。春先のコートと合わせた着こなしが優雅だ。

 

「……聞いて良いかしら。センニン」

「なんだい」

「貴方……どうしてサングラスなんてかけているの?」

「人目を避ける為さね。否が応でも視線が集まるが、ソイツが苦手でね。なけなしの抵抗って訳さ」

 

 対する私と言えば、ベレー帽にラウンドのサングラス。そして簡単にジャケットとシャツとズボンを合わせただけのメンズスタイルだ。

 える、しってるか。二メートル超えると女子のJIS規格のサイズに当てはまらないんだ。スカート履くにしろ丈が合わないから諦めた。素直にメンズスタイルにすればファッションでああだのこうだの考えずに済むことを学習した私は一味変え、帽子とサングラスも付けた。そして今に至るってワケ。別に羨ましくなんかないし……。

 

「お待たせー! どうやらわたしが最後だったみたいだね!」

「そんなに待っていませんよクアドランスさん」

 

 現れたクアドランスもまた素晴らしいファッションセンス。ダブルスリーブのシャツにミモレ丈のタックスカート。爽やかな色合いに大人っぽい清楚なファッション。くっ……、普通の身長だった頃を懐かしく思いながら入場券を購入し、入場。

 

「あふん」

 

 入場前のゲートの天井に頭をぶつけた。なんでさ。

 

 

 

 

 動物園。書いて字の如く、数多くの動物が飼育されている施設である。

 東武動物公園は動物園の中では珍しくジャガーの飼育を行っている動物園の一つである。

 彼女らはジャガーの赤ん坊を目指し、動物園内を歩いている。すなわち他の動物を見つつ目的地へと向かっている。

 西ゲートから入り、まず最初に歩くことになるのはわくわくストリート。鳥、猛禽類、日本産の動物が飼育されているエリアである。

 

 まず最初、異変に気が付いたのは有料の屋内エリアにいる犬たちであった。いつも愛らしく尻尾を動かし、人間に愛嬌を振りまく彼らだったが、一転して唸り声をあげたのだ。触れ合っていた子供たちが泣き喚き、従業員が宥めるも一向に良くはならない。中には唸り声ではなく悲し気な悲鳴を上げて尻尾を腹の内に隠す犬もいる。

 次第に近付く気配に、タンチョウは静かに大きく羽を広げ、キツネやタヌキは吠えるような鳴き声を出した。

 

 一体何があったのだろう。疑問に思った従業員ら、客たちが向かわせた視線の先には……。

 

 

 

 そう、センニンギリがいたのである!

 

 

 

 二メートルを超える巨体の人間――ウマ娘へ向けて、動物たちが一斉に威嚇行動を始めたのである!

 

 しかも当人らはそれを知らず「すごい恰好してる~」などと朗らかに笑っているのである!

 

 これが威嚇行動だということに気が付いたキングハイセイコーは何も言えず「えぇそうね」とだけ返しているのである!

 

 彼らが目当てのジャガーのいるどきどきストリートへ歩みを進めると、わくわくストリート内の動物たちは威嚇行動を止めた。だがしかし、呼吸は荒く、敵センニンギリの去った方向を見つめていた……。

 そうして、どきどきストリートと隣接している、ほのぼのストリート内のレッサーパンダがすっくと後ろ足で立ち上がる。威嚇行動を知らない人間からすれば芸を披露しているように見えるが、れっきとした威嚇行動である。母親に抱っこされている幼児が「ごはんほし~の~?」と聞いているが、――威嚇行動なのである!

 

 威嚇とは種族内で行われるか、異種間で行われるかで異なるが、彼らが行っているのは後者!

 

 己の生存を懸けた危機感を無意識的に感じ、その発端たるセンニンギリへ威嚇行動を行っているのである!

 

 ヒグマが檻に高速で突っ込み、そのまま立ち上がり歯を剥き出しにした時――ようやくセンニンギリはこれまで歩いてきた動物たちの妙な行動が威嚇行動によるものだと察した。

 しかし、彼女の中には疑問が残る。

 

 ――何故、そんなに威嚇される筋合いが……?

 

 センニンギリは身長が高く潜在能力を秘めた、ただのウマ娘である。そんなウマ娘――言ってしまえば草食動物の魂を持つ人型の生物に対して何故これまで彼らが威嚇を行うのか?

 威嚇行動を行う動物の中には、馬に対して優位的な肉食動物も含まれているのだ。

 

 その時、アイデア(70)を誇るセンニンギリの中でダイスが振るわれ、見事70以内の数値を出した。

 

 その数、1。クリティカルの値。

 

 ぼんやりとセンニンギリは思い出す。かつて自分が実装されるとなった際のホームページを。

 

 ――ショーイチの息子のショーヤの息子のショータが開いていたのである。彼奴はよく面白がってセンニンギリにウマ娘プリティーダービーのプレイ画面を見せては「これメジロマックイーンだよ」とか、「これライスシャワーだよ」とか教えてくれるのである。

 そんな、農園一家の中でもウマ娘プリティーダービーをやり込んでいる猛者の彼が魅せてくれたホームページ。

 

 

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 静かでどこか老獪さのある巨大なウマ娘。お世辞にも性格は良いとは言えないが、面倒見の良い一面もある。

 ウマ娘にしては勝利を願う欲がなく、勝つのが当たり前と思っているフシがある。

 トレセン学園からの編入願いを蹴り、誰からも恐れられる彼女は一体何をするのか……?

 

 

 

 トレセン学園からの編入願いを蹴り、()()()()()()()()()彼女は一体何をするのか……?

 

 

(アレか~~~~!?)

 

 

 

 元々馬であった前世ではそんなに動物から恐れられてはいなかったのだ。実家の柴犬ズ(二代目)たちや、付近の山の動物たちとも交流をしていた記憶がある。動物に恐れられることは無かったのである!

 

 しかし、センニンギリがウマ娘として登場するにあたり、彼女の設定を構成しなくてはならなくなった。一味ある、強いパンチのものを。

 センニンギリの怒涛の追い抜き、逃げ戦法の走り。これらは観客・ジョッキー・競馬関連者を含め――、センニンギリの走りの強さを見せつけると共に畏怖を、恐怖を、絶望を齎したのである。

 それがウマ娘というコンテンツで彼女を構成する設定の付与にもなり、誰からも恐れられる――無意識的にナニカを威圧するオーラが出ているのである!

 

 

 

 

 

 ――という訳ではなく。

 

 

 

 

 

 ――――()()

 

 

 

 

 

 単純にセンニンギリが緊張し、威圧のオーラを放っていた為である!

 

 その根源が()なのか、センニンギリは気付かないまま!

 

 動物園を見て回り!

 遊園地でひとしきり遊び!

 寮に戻って一日が終わってもなお!

 

 哀れなまでに!

 

 その恐怖の根源に気が付かなかったのである!

 

 

 




誰も消防車を読んでいないのであるオチ
色々遊んでたら遅くなっちゃった……なっちゃったからにもう……ネ……
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