今回は凄く今更なバレンタイン回です……バレンタイン回です。大事な事なので二回言いました。はい。
それから今回の話は知っている人じゃないと知らないネタが多いかと思われます。もし分からないとなったら、ゲームの話してるんだなぐらいに思ってください。
前書きはこの辺りで本編の方どうぞ。
追記:2026/04/02
本文にあった不備を修正しました。
前回までのラブ↓ライブ!↑
敵対生命体の侵攻が収まり平和を取り戻しつつあったが、敵対生命体用に作った兵器の行末を巡って人類内では対立が起こっていた(大嘘)
——年が明けて早二月目。雪が降ったり急にあったかくなったりで大忙しの二月も中旬。自分、御影玲は戦々恐々としていた。
なんでかって? クラスの同性達が普段は全く話題に上がらない『チョコレート』について熱く語り合っているからである。普段チョコレートの『チ』の字すら出ない人達からその会話が飛んでるの普通に怖ないですか? 今日に限っては仕方ないといえば仕方ないんだろうけども。
だって今日は2月14日なんですから。うん。詰まるところはユニウスセブンに核ミサイルが撃ち込まれた日……ってこれは『血のバレンタイン』だから物騒な方だね。普通にバレンタインです。失礼しました。
で、バレンタインといえばチョコレート渡す文化、って根付いてますよね。だからチョコの話で盛り上がってるのはええのですよ。チョコは貰えて嬉しい代物でしょうからね。寧ろこういう時こそ盛り上がっておけの精神なので。
だがしかし、自分はあまりバレンタインって概念が好きではない。理由としては、些細な事で波風立ってしまうからだ。例えだが、野球部の主将が同じクラスの子からチョコ貰った、みたいな。個人的にバレンタインの怖いところだと思ってたり。え、怖くない? そっか……。
己が異端であることを再認識しながら一人座席で項垂れていく。はぁー、もう自分の名前アナグラムにした後『
「聞いたかお前、バレー部の」
「ああ、聞いた聞いた。マネから本命貰ったんだろ?」
「そうそう。全く爆ぜやがれってんだ」
遠くから聞こえてくる会話を右から左に受け流しつつ項垂れる。言ったそばから聞こえて来たよ。嫌になって来た。もういっそのこと早退して、バイドルゲン集めにでも行こうかな? 漸く地球軍後編に入れたし……あ、でも革命軍の機体作るのにバイドルゲンは必要ないか。特に
「何か考え事?」
「えっと、部隊編成と配置を考えてまして。今の所は無難に
そこまで言いかけて咄嗟に顔を上げる。その先で目にしたのは、困ったように笑みを浮かべる上原さんのご尊顔。うん、今日も推しが尊い……じゃなくてぇ! おい待てよ、推しのこと困らせちゃってるじゃん!
「え、えっとごめん……なんの話?」
「……最近ハマり直した
「ううん。こっちも考え事してる時にごめんね?」
自分の言葉に謝罪を交えて返してくれる上原さん。ああ、そんな謝らないで……愚かな自分が全ていけなかったのですから。裁判長ー、コイツに極刑を求めます!
本日も開催されてしまった脳内裁判にて、自身に極刑判決を求めつつも現実へ意識を徐々に戻していった自分は彼女の言の葉に応じる。
「そんな……大したこと考えてませんでしたから。ところで、どう言ったご用件で?」
「うん、御影君って甘い物大丈夫か聞きたくて」
「甘い物? お菓子とかですか?」
「うん」
自分の挙げた例に対して肯定の意を返してくれる上原さん。例であって玲ではない。たまに会話の中で混乱するなんて言われることもあるにはあるけども。
要らぬ思考を伴いながら、上原さんからの問いに答えていく。
「甘い物は、好きですね。甘党な自覚あるくらいには……」
「そっか」
こちらの返答を聞き、柔らかな笑みを浮かべる我が最推し。ねぇ、なんで今甘い物が大丈夫か否かを問われたの? 何々、なんのための確認なの? 色々な可能性が同時に襲ってくる状況になっちゃって普通に怖いんだけど。あ、でも上原さんのことが怖いってわけじゃないですからね? 推しに怖いとか不敬にしか当たらないからね? やっぱ御影は処刑不可避だな。
「玲ー」
「城島? なんかあった?」
己の失礼に当たる部分を心の内で糾弾していると、サッカー部の部長改め城島に声をかけられる。人に声かけられるのが珍しい部類の自分が日に二回も、それも基本人が声をかけてこない教室内で起こってるの確率バグってねぇか?
「お前にお客さんだぞ」
そう言って彼の指し示した先、教室の入り口の前にはおさげと眼鏡が特徴的な人物がこちらを見据えていた。……んぇ? 夢かこれ?
見間違いではないかと両の眼を擦ってみたが、見える景色は変わらず。残念ながら夢では無いようだ。
「あれ、菜々ちゃん?」
自身の傍らにいた上原さんが件の少女の名を呼んだ。えーっと、前生徒会長こと中川さんですね。何してるんですかこんなところで?
そして、だ。上原さんが中川さんの名前を呼んだ瞬間、教室内の男子諸君の視線がこちらに向いた気がする。それも鋭いやつ。……正味、現状については残念でもなければ当然だよね、って。だって今来た彼女が、人気スクールアイドル『優木せつ菜』とみなさん知っていて、そんな彼女が突然現れたわけですからね。御影の奴、終わったな。
「ちょっと行ってきますね。城島、ありがとう」
内心で終わりを悟りつつも上原さんに断りを入れ、城島に謝意を述べた自分は足早に扉の前で待つ中川さんの元へ向かう。その最中。背中が凄く痛かった気がするけど気のせい。多分、いや絶対に気のせい。憎らしさと悍ましさと、妬ましさを感じた気もするけどそれも絶対気のせい。
「すいません、お取り込み中でしたか?」
「大丈夫ですよ。それよりどの様なご用件で?」
短い会話を挟みつつ、本題について問うていく。いくら学科が同じと言えど、彼女がこうして自分の元へやってくるのは稀の中でも更に稀だからだ。放課後とかに優木さん状態で、ってことは時たまあれど中川さんの状態で来るのは本当に珍しい。どのくらいかって言えば、色違いで且つ6Vの個体と遭遇するのと同じくらいとでも述べておこうか。瞬間、脳裏に蘇った厳選の記憶の数々。滅却しておこう。
「今ってお時間大丈夫、ですか?」
「今? 平気ですよ」
過去の苦い思い出を記憶の彼方へ飛ばしながら、中川さんから投げられた質問に問題無いと答える。普段のやり取りとは大分かけ離れた感じで、なんだか戸惑い始めちゃったな自分。
「そうしましたら、少し場所を移しましょうか。着いてきてください」
「あ、はい」
いつの間にか鋭さと共に重さも生じていたクラスメイトからの視線を流すようにして中川さんの後に続いていく。帰った後が怖い。
戻った時のことを考え身震いしつつ中川さんに続いて歩いていくと、屋上に辿り着きました。……あれ、場所が場所のせいなのか身構えちゃったな今。身構えている時には死神来ないって何処ぞの
勝手に全力全開憂鬱モードになっていると、中川さんが屋上に備えられているベンチへと腰を下ろし、その隣へ掛ける様に手で促されたため、それに従って腰を下ろす。
「屋上まで来ましたが……」
「は、はい! えっと、ですね……これを」
彼女の意図が全く汲めず再度理由を問いかけてみた自分。すると中川さんは、ぎこちなく応答してくれた後にこちらへ小さな包みを差し出してきた。え、包み? 包みだねこれ……リボンの装飾あるし贈り物用の包みで間違いないね。うん。なんでぇ?
「これは……?」
差し出された、ということで反射的に受け取った自分は包みと中川さんとを交互に見ながら問いかける。訳もわからず受け取ってしまったが、差し出されたということは自分宛で間違いないのだろう。多分きっとMaybe。
「チョコです……その普段お世話になっていることへのお礼と言いましょうか」
「チョコ……」
中川さんの返答を聴き頬を汗が伝っていく。手にしているこれが
彼女の作る料理はその、なんと言うか……味が独創的なのだ。うん。独創的。食べれないことはないから、うん。間違っても食べた後に息していないとか言っちゃいけない。
……で、そんな彼女が自作したチョコを自分はいただいたと言うわけでして。これ結構覚悟をしないといけない気がする。失礼なのは重々承知なのだが。終わったら屋上から身投げすっか。
自害の方向を固めながら、優木さんへと問いかけていく。
「本当にもらってしまっていいのですか?」
「はい。玲さんのために作りましたから。良ければお一つ、この場で食べてみてください」
確認したらこの場で食べてみてくれたのことで。マジか。お家帰ってじっくりと準備してから堪能しようと思っていたら、本人から開封を推奨されたわけでして。どう足掻いても開けるしか道はないよねこれ? ……やるか。
覚悟の準備を終えた自分は、包みを解き中身を露わにしていく。箱の中に入っていたのは、普段目にする物よりも若干黒みがかったチョコレート。
「ダークチョコレート?」
いくつか小分けになっている中身を一つ摘んで確かめる。ダークチョコレートとは、カカオ分が40〜60%程で乳製品を殆ど含まないチョコレートを指し示す物で、一般的にチョコと呼ばれるものよりも苦いことが多い。所謂、『ビターチョコレート』って物に該当する、ってちょっと前にネットで見た気がする。……改めてだけどこれ、ダークチョコレートでいいんだよな? 合ってるよな?
何故か不安になってきた自分だったが、手にしていたそれを食すことを決める。ルビコン川を渡るつもりで。
因みに『ルビコン川を渡る』というのは『引き返せない重大な決断や行動』を意味する慣用句です。だからなんだって話だけども。
「イタダキャス……」
全ての事柄への感謝を述べながらチョコレートを口に含む。その瞬間、口の中に広がる芳ばしいカカオの香りと、さらに遅れてやってくるカカオの苦味。あらやだ完璧じゃないやだ〜……落ち着きました。
「……しっかりとビターチョコレートだ」
見た目通りの苦さがやってきたことに驚いてしまう自分。いやこれ普通に失礼よ。中川さんに土下座しなさい御影。ほら焼き土下座ですよ?
自身へ贖罪のための行動を科しながらも、頭の片隅に湧き上がった疑問を中川さんへと投げていく。
「あの、素朴な疑問なんですけど、なんでビターチョコレートを?」
「玲さん良くブラックのコーヒーを飲んでるから苦いのが好きなのかと思いまして」
自分の問いかけに答えてくれた中川さんは気恥ずかしそうに笑う。はぇー、なるほど。苦いの好きだと思われてるんか。いやですね、普段は高咲さんと上原さんのやりとりがバチボコ甘いからブラックコーヒー飲んでるとか言えないよ。どうすんのこれ。苦いもの好きって事にしちゃおうか。……中川さん、嘘吐く事になるのを先に謝罪しておきます……申し訳ございません。
「中川さんの仰ってたように、苦いの好きですよ」
「良かった。それでどうです……お口に合いましたか?」
先程中川さんの挙げた『御影玲は苦いものが好き』という仮説に対して正しいと返したところ、彼女から恐る恐ると言った様子でチョコの味について問われました。
さっき食べた時に少し触れた素材であるカカオの味と、それに負けない絶妙な砂糖の配分で作られていたこのチョコレート。この砂糖とカカオの比率が良すぎて……
「ええ、とても
「本当ですか?
「……宮下さんに?」
不意に飛び出した名前に驚き尋ねてしまう。なんで今宮下さんのお名前が飛んできたんですか? これまた訳が分からないよ。今日わからないことばかりすぎないか御影? やっぱ身構えていても容赦なく襲ってくるタイプの死神さん来ちゃってるよねこれ。
「実は今回、愛さんに手伝ってもらって一緒に作ったんです」
「へー、優木さんと宮下さんのお二人で、ですか」
二人が並んでチョコを作っている姿を思い浮かべながら溢す。なんか、意外な組み合わせな気がする。でも、なんだろう……宮下さんがいてくれて良かったよなって思っちゃったなぁ。はーい、御影の処刑いっきまーす。じゃあ『
内心で軽い茶番を挟みながら自分史上最速の執行を決めていると、優木さんが口を開く。
「はい。バレンタインのお話をしたら、愛さんの方から一緒に作ろうと誘ってくださいまして」
「そうだったんですね。あとで自分も宮下さんにお礼を言っておかないとですね。それと中川さんも、改めてありがとうございます」
宮下さんにお礼をしに行くことを決めながら、中川さんにも再度感謝を伝える。貰えるだけで、とても有難いことですから。念入りに、ね。あと宮下さんへのお礼はダブルミーニングとか言ってはいけない。ぜ、全然そんなんじゃないんだからね! あ、自分のツンデレ擬きに需要はないね。早急に墓へ入って来ます。お目汚し失礼しました。
「いえ。喜んでいただけたようで、私も作った甲斐があったというものです!」
ペカー、という擬音が見えそうな程明るく笑う中川さん。ああ、中川さんモードなのに優木さんとしてのオーラが滲み出してきてるし、そのオーラが眩すぎて網膜が焼かれる……目がっ、目がぁぁぁぁあっ!
「良かった、ちゃんと渡せて……」
「……何か言いました?」
「い、いえ! 少し冷えてきたな、と思いまして」
両目に
そう言われると、結構な時間寒空の下にいるよな自分達。中川さんの言葉もごもっとだよな。
「言われてみれば確かに。そろそろ戻りましょうか」
「そうですね」
自分の言葉に頷いてくれる中川さん。画して屋上を後にした自分達は、教室目指して階段を降りていった。いやー、冬の外って防寒着着てないと案外冷えてくるよね。なんとなくだけど手が
「すみません、生徒会室に行く用事を思い出しました」
「あら、そうなんですね」
「ええ。ここで失礼します」
「はい。お気をつけて。ありがとうございました」
感謝の言葉を述べながら彼女の後ろ姿を見送る。中川さんも生徒会長を降りたとはいえ忙しそうだな。そんな中でチョコを作ってたなんて、尊敬に値するよ。
内心で中川さんへの敬意を抱きながら、再度教室を目指して歩き始めた直後のこと。自身の左肩を優しく叩かれ反射的に振り返った。
「はい?」
「やっほ〜玲君」
「近江さん……」
自身の視界に現れたのは近江さん。……なんでここの階段で捕まったんだ自分? だって、近江さんのいるライフデザイン学科の教室とはほぼ真反対に位置する階段にいる訳でして……まるで意味が分からんぞ!
「どうかされたんですか?」
「うん。玲君に渡したい物があってね〜」
「渡したい物?」
近江さんの言葉に
「はいこれ。ハッピーバレンタイン」
その台詞と共に近江さんから差し出されたのは、これまたリボンのついた包み。今『ハッピーバレンタイン』言いましたよねこの先輩? 聞き間違いじゃなかったよね?
「え、あ、ありがとうございます?」
整理と処理の追いつかない頭のまま、差し出された包みを受け取り近江さんへ感謝の言葉を告げる。あれ、なんか教室への帰還の途中で頂いたものが増えたぞ?
「今年のは腕によりをかけて作ったんだ〜」
「あら、そんな大層な物を頂いてしまってもいいんですか?」
包みに留めていた視線を近江さんの方へ向けながら投げかける。近江さんの発言から察するに大分気合の入った代物のようだ。力作と思しき物をこんな底辺野郎がもらってしまっていいのでしょうか。いいや、そんなわけがない。
何故か反語を交えつつ自問自答していると、近江さんが先の問いかけへの返答をしてくれる。
「うん。だって玲君のために作ってきたチョコだもん」
「……ふぇ?」
近江さんから帰ってきた言葉に、本日何回目か分からない驚きに襲われる。
えーっと、今渡された物は、元から自分宛に作られていた……ってコト? いやいや待て待て、なんか色々変だろ。優木さんの時も少し思ったんですが、他人からチョコ貰えるようなことなんもしてないはずなんだよな。
さっきなんかはお世話になってるお礼、とか言われたけど全く心当たりがないし、なんなら多大なるご迷惑をおかけしている記憶しかないのよ。それは近江さんに対しても同じことを思うし。だからやっぱり変だよ……。
「彼方ちゃんから玲君への気持ちの代わりだよ」
「気持ちの……代わり」
近江さんの補足を聞き、再度手にした包みに視線を落とす自分。えーっと、今手にしているこの包みは、近江さんの自分への気持ちの変わり、と。ほあああああああっ!? なんかこれとてつもない代物じゃない!?
なんてものを、貰ってるんだ、御影玲ッ! 百万回殺してもこの罪は消えなそうだけどもちょっと!?
「彼方ちゃんの気持ち、ちゃんと受け取ってくれる?」
「あ、えと、はい。確かに、受け取り、ました……」
しどろもどろになりながらも近江さんの言葉に返答すると、目の前の彼女がにまっと笑った。ふぇぇ……? な、なんで笑ってるんだこの先輩。
理由がわからず戸惑っていると、目の前の彼女が笑みを保ったまま口を開く。
「いつか、でいいから、ちゃんとお返事ちょうだいね〜」
「え、えっと……わかり、ました?」
相変わらず戸惑いながら、近江さんの言葉に頷く。この
「じゃあ彼方ちゃんはこれで失礼するよ〜」
しょうもないことを考えている自分の手前、軽く手を振りながら立ち去っていく近江さん。あ、嵐のようだった……。遠ざかっていく近江さんを眺めながらいつの間にか激しくなっていた動悸を鎮めることに努める。鎮まれ、鎮まれマイハート……あれ、なんか遠ざかってく近江さんの耳赤くない? 気のせい? 夕焼けの時刻にはまだまだ早いもんな……?
謎が謎を呼んだ気がする展開を潜り抜け、無事に近江さんを見送ってから三度教室へと歩みを進めていく自分。そろそろ自分の
「チョコ貰えるとか思わなんだよ……」
改めて手にしていた包みを眺めながらこぼす自分。なんでこんなことになったのか。日頃の行い故、なのだろうか。分からんらん案件すぎる。
ぐるぐると思考を巡らせながらも、教室目指し歩いていく自分。トコトコ、歩くよ玲太……やめよう。
危なそうな思考を切り捨てながら廊下を前進していると、今度は進路上に人影が。間違っても初代御三家のほのおタイプのことではない。……というかなんで進路の真上にいるんだろう? 学校の廊下だから人影があるのは当たり前なんだけどもさ、なんか明らかにこちらは反応を示しているような気がするんだよね。自意識過剰とか言われたら否定できないんですけれども。
「——御影君」
違和感を気にせずに進もうとしたところで突然呼び掛けられた自分は、様々な疑問を抱きつつやや下向きだった視線を上げていく。すると……なんか随分と見慣れた人の姿が見えてきた。もうちょい具体的に言うと、さっきまで教室でお話ししていた方。御影……ああ、間違いない。上原さんだ。……は? なしてここに?
「上原……さん?」
本日三回目の予想外の出来事を前にし、しどろもどろになりながらも目の前の彼女の名を呼ぶ。御影.exeは応答を停止しています。止まるな止まるな。上原さんへの応対を間違えないためにも
「どうして、こちらに?」
「なかなか戻ってこないから心配になっちゃって」
なんとか言葉を絞り出して問うてみたところ、上原さんは困ったような笑みを浮かべながらも答えてくれました。はい? 心配になっちゃって? どういうことなんですかそれは一体。あと御影、上原さんに心配かけた分の
「これ、御影君に」
内心で自戒に徹していたところ、目の前の彼女から声をかけられたため意識を現実へと戻す。あれ、なんかこんな感じのやり取りするの、本日三回目とかじゃ無いっすか? 気のせい……な訳ねぇよな!?
内心で絶叫する自分の視界が捉えたの、先二つとは違い小さめのラッピング袋にリボンで装飾された物。あら可愛いですね。上原さんらしさが滲み出ていてとてもいいものだと思います……って、そうじゃあなくてぇ!
現実逃避気味な自身の呟きに強烈なツッコミを入れながらも、上原さんへ問いをなしていく。
「えっと、これは……?」
「バレンタインの贈り物だよ」
……というか死神どころか
自身の中での問答をバッサリと切り捨てた自分は、意識を現実に戻すと上原さんへ問いかけていく。
「自分宛、でいいんですよね」
「うん。御影君の為に作ってきたんだ」
気恥ずかしそうに笑いながら頷いてくれる上原さん。
……待って。ねぇ、待ってよ上原さん。その表情も、発言も、なんならこちらは物を贈ってくる行動も、その全てが即死級だよ。ダメだよ。本当にダメだよそれは。
でもやっぱり現実味を帯びていないなこの状況。念には念を入れて訊いてみるか。
「あの、本当にいただいてしまって宜しいのですか?」
「もちろん。御影君にはいっぱい助けてもらってるから、それ対するお礼も含めて、ね」
その言葉と共に、数瞬前の羞恥を含んだものとは違う、満面の笑顔を向けてくれる上原さん。あれ、追い討ちされたかな今? 取り敢えず滅死状態だった情緒に大ダメージ受けたのは確かだよ。でも、そっか……理由は納得したから頷いておきましょう。そうしましょう。
「そう、なんですね」
「うん。だから受け取ってくれると嬉しいなって」
上原さんの返答を聞いた自分は反応に詰まってしまう。やっぱこの子色々反則だよ……雰囲気や可愛さは言わずもがな、仕草や言葉選びが強過ぎる。こうなんていうか、存在そのものが神掛かっている気がしましてね。やはり自分の推しは最強だった。上原さんは完璧で究極のスクールアイドル!
内心で上原さんという存在について考えていると、目の前の彼女が不意に言の葉を紡ぎ始める。
「それから、今渡したお菓子は御影君にしか作ってないから皆んなには内緒にしてね。特に——侑ちゃんには」
「は、はい……」
上原さんからの念押しの言葉にぎこちなく頷いていく自分。あれ、なんだろう……この場で自分の喉をかっ裂いて自分の心臓を抉り出したくなって来た。というかこれ、さ……墓場まで持って行かなきゃいけない案件だよね? どうしよう……声を抱えて生きるってこういう事なんですかね? 絶対違うと思うぞ。というか本当にどうしようこれ。ねぇ次はどうしたらいい、御影? 自分は何をやればいい? ゼロは何も答えてくれないね……。
「戻ろっか」
「そう、ですね……」
上原さんの言葉に頷き、止めていた歩みを進める……と、何故か傍らに上原さんが。なんで推しと並んで歩いてるの自分。もうさ……殺すしかなくなっちゃったよ。
悲壮感に苛まれながら、上原さんと共に教室へと歩いていく自分。結局この日は、生きた実感がしないままでした。
この後教室に戻ったら城島を除いた男子全員から裁判に掛けられたり、放課後に同好会の他の方からもバレンタインと称して物を貰ったりしたのだが、それはまた別の機会に——
〜おまけ〜
玲が同好会のみんなから貰った物一覧
せつ菜→ビターチョコレート
彼方→チョコレートマフィン
歩夢→チョコカップケーキ
愛→オレンジピールチョコレート
嵐珠→チョコレート(高いやつ)
侑→ブラウニー
かすみ→キャラメル
しずく→チョコタルト
璃奈→チョコプリン
栞子→抹茶チョコ
エマ→スイスのチョコ
果林→チョコクッキー
ミア→ガトーショコラ
閲覧ありがとうございました。後書きの場を借りて少し宣伝を。
この作品の主役(?)の御影君が出ている作品「ふろっぐ・あ・でっど・ほーす」がスパークボンバージ・オーガ様より投稿されております。
面白いからぜひ読んでいただきたいです。ちなみに読んだ私の腹筋は崩壊しました()
↓「ふろっぐ・あ・でっど・ほーす」のリンクはこちら
https://syosetu.org/novel/406308/
と、後書きなどなどはこの辺りにして次回の更新でお会いしましょう。good-bye!!
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