お待たせいたしました。最新話の方完成いたしました。
前置きはこの辺で、本編の方をどうぞ。
前回までのラブ↓ライブ!↑
バイト先の先輩に悩み相談した後、家に帰ったら記憶がなくなって、気がついたら推しと朝の教室で2人きりになっていた?
クラスメイトから早朝の教室に呼び出された自分、御影
「その御影君、単刀直入に聞くんだけど——御影君は彼方さんとお付き合い、してたりするの?」
「……はい?」
上原さんの口から飛び出した言葉に戦慄する自分。自分が、近江さんとお付き合いしているか、だと……?
「そんな事実は存在してませんけど……何故です?」
「その、ね……昨日の夜、御影君が彼方さんと一緒にいるところ見かけて」
申し訳なさそうな表情で答える上原さん。え、あのバイトの後の光景上原さんに目撃されてたの? ……側から見たらあの状況、付き合ってると勘違いされるのも無理ないな? おのれ御影ェ! 許さんぞ! ここで腹切って近江さんと上原さんにそれぞれ詫びろ!
「それ、東雲水辺公園でしたよね?」
「うん」
「その時はですね……近江さんに色々と相談に乗ってもらってたんです。バイトに関することで」
内心で切腹を決めた自分の口からはさらりさらりと出まかせが。あの、えっと、自分で言うのも変だけどさ、咄嗟に誤魔化すのうますぎん? なんでそんなにすぐ出てきたの自分。不思議すぎて夜しか眠れないんだけど? いや、夜だけ眠れれば至って健康ですけども。つまり大して気になってないってことじゃないか。この裏切り者を処せぇ!
現実逃避を兼ねて脳内で始まった魔女裁判に没頭していると、上原さんが新たな問いをこちらに投げてきたため、現実へと戻ることになる。
「もし御影君が嫌じゃなければなんだけど、どんな相談をしたのか教えてもらえない、かな?」
「内容に関して、ですか」
大きく息を吐いた自分は、前屈みになると両手を膝の上で組み口を開いていく。
「昨日、上原さんに会った後に、陳列に手間取ってしまうタイミングがありまして。それ関しての反省も兼ねて近江さんにアドバイスをもらったりしてたんです」
「へぇー。けど、その内容だったら公園で話すほどのことなのかな?」
納得した様に頷いたかと思うと、強烈な返答をしてくる上原さん。切り返しとしてはあまりにも強すぎる。これがかの有名な『燕返し』なのか? な訳あるか。仮に今のが燕返しなら上原さん巌流の継承者になっちゃうよ。それは佐々木なんよ。はい。話が逸れましたね。
えー、めちゃくちゃ痛いところ突かれて辛いです。なんて答えよう。
「……その、バイトのことに加えて、人間関係について相談してたんです」
苦渋の末出た言葉はこれ。うん。半分くらい嘘はついてないですね。だって、自分がイジメられてたっていうのは立派に人間関係のお話ですしお寿司。ヨシ!
「人間関係、か。そっか」
内心で某メット猫になっていると、何かを納得するように上原さんが頷いていた。そう、人間関係について、ね。当人あまり気にしてなかったのに、近江さんに言われた些細な一言でね、心のダム決壊しちゃったみたいだからね。未だに実感が湧いてないので夢だったんじゃないかと思ってます。あ、でもでも、やけに鮮明に近江さんと触れ合ってた時の感触が残ってるんですよ。それってつまりは夢ではない……ってコトじゃねぇか!
アウトだよアウト! やっぱりアレは不味かったって! というか上原さん、自分と近江さんが話してるところ見たってことは、あの泣いてるところ見られてた可能性があるってことだよね? ねぇ? それって不味いのでは……そもそも、そのシーンを見られていたから近江さんと付き合ってる疑惑が出たとか……?
無数に生じる可能性を前に首を捻りまくっていると、上原さんが再び口を開きこちらへ言葉を投げてくる。
「理由は分かったんだけど、なんで、その、はぐらかしたの……?」
不思議そうに、且つどこか悲しそうにこちらへと問うてきた上原さん。あの、えっと、なんでそんなお顔されてるんですか? 恐ろしいほど良心が痛むんですよ。はい。
「なんと言いましょうか……誤解されたくない、って気持ちが勝ってしまった結果、ですね。その、上原さんに」
本音を前面に押し出しながら返答した自分は俯く。推しに嘘ついたって言うのもあるけど、恐らく1人の友人としてこんな自分に接してくれている人に、あんな顔させちゃったんだから……顔向けできないよ。それに、今の顔を見られたくもないし。え、余りげんなりしてるシーンは見たくないって? アッハイ、すいません……。
首を横に振り思考を飛ばした自分は、沈んでいたであろう表情を元に戻すとゆっくり顔を上げる。誠意を見せる意を込めて。
「そうだよね。私も、今の御影君の立場にいたら同じようにはぐらかしてるかもしれない」
顔を上げた途端、目に飛び込んできたのは曇りがちな
とかなんとか思ってたらまたしても上原さんが不思議そうな表情を向けてくるじゃあないですか。
「どうかしたの?」
「……特にどうもしませんが、何故です?」
「なんだか悩んでいるように見えたから」
困ったように笑いながら理由を述べてくれた上原さん。だから、えっと、あのですね、そんな軽率に困り顔とは言え笑顔を向けるのやめていただけると……自分には威力が高すぎるんですよ。
1人虚しく懇願した後、軽く呼吸を整えた自分は上原さんへの返答を口にする。
「上原さんに、悪いことをした気がしてしまいまして……」
「悪いこと?」
「はぐらかしたり、したことです」
後悔するぐらいなら言わなきゃいいって言われたら、全くもってその通り過ぎてぐうの音も出ませんね。ぐう。はい。
「そ、そんなに重く受け止めないでよ?」
「で、でも……」
「さっきも言ったけど、私も御影君の立場だったらはぐらかしちゃうと思うから。だから私は、御影君のやったことが悪いことだとは思わないよ」
その言葉と共に首を横に振る上原さん。何、女神なの? 慈悲深過ぎるでしょ。あ、でも、その慈悲は自分以外の人に向けてもろて。だってこんなね、救いのない奴に向けるのは勿体無いってことですよ。
もっとほら、普段あなたの傍らにいるね、
「上原さんは、優しい、ですね」
「え?」
不意に溢れてしまった言葉に上原さんが驚いた様子を見せる。オイコラ御影、貴様はあと何回罪を重ねたら気が済むんだ。答えろぉ!
「そう、なのかな?」
「はい。自身がその立場になった時のことも踏まえて、しっかりと相手の心を汲んでくれますから……」
糾弾する自分を他所に、上原さんの言葉に対して答える。自分と上原さんとでタスク被ってどっちを取るかと言ったら、無論上原さんに決まってるじゃないですかヤダー。自分なんて最底辺ですからね。ええ。最後に決まってますよ。まあでも後で贖罪はするんですがね。
「そっか。ありがとね」
先ほどとは打って変わり、屈託のない笑みと共に謝意の言葉を述べてくれる上原さん。その表情に、その言葉に、自分は焼かれ僅かにだが意識が飛びかける。早朝から受けるもんじゃないのよこれ。1日の開幕からこんなの受けてたら身がもたないのよ。まあ、でも、朝だったおかげでまだ余力があったから落ちるのは回避できたのでヨシ。良くねぇよ。自刃しろ。
「いいえ……本当の事を述べたまでですから」
「ふふっ。なんだか、御影君にそう言ってもらえて嬉しいな」
「そんな、勿体無いお言葉です……」
上原さんの言葉に謙った自分は俯く。今すぐにでもこの教室を飛び出して、屋上へ向かい身を投げたいという思いを抱えながら。
上原さん、何度も申し上げますがそんな軽率に人を殺せるような発言しないでください。いつどこで勘違いされるかわかったものじゃないんですよ? 今日はこの件に関しては自分が死ぬほど当てはまっているのですが。
届くことのない訴えを無限に繰り返していると、不意に上原さんが口を開く。
「もう1回確認するんだけど、彼方さんとは付き合ってるとかそういうわけではないんだね?」
上原さんの問いにコクリと頷く。近江さんと一緒にいた事実はあっても、お付き合いしているという事実はありませんからね。誤解を与えてしまった、ということではあるので、おいおい上原さんには謝らないとだし、近江さんにも謝らないと。謝罪方法は……焼き土下座でも検討しておくか。
今度ホームセンターにでも行って手頃な鉄板でも買い揃えよっと。
あれやこれやと思考していると、教室の扉が開かれる。そのあまりに急な出来事に自分と上原さんは、揃って扉の方へと視線を向けた。
「こちらに御影さんはいらっしゃいますか?」
「あ、自分ですが……?」
「図書委員でしたよね?」
「はい……あ」
そこまで来てようやく思い出す自分。そうだ、今日は朝から図書委員会の集まりがあるとか言ってたんだ。というかもうそんな時間なんですか。ヤバすぎンゴ。
そこで思考を切った自分は席から立ち上がると、扉の方へと歩き出していく。
「すいません上原さん。自分、行かないといけないので……」
「うん。頑張ってね」
軽く手を振りながら小さく笑みを向けてくれた上原さんの姿にギリギリ耐えていた情緒を焼かれながら、自分は呼びに来た生徒と共に委員会の場へと向かった行くのであった——
6限、
そんなこんなで自分がやってきたのは、虹ヶ咲学園前駅。今日はですね、りんかい線を使ってお隣の東京テレポートまで行こうと思います。普段の自分なら、1駅区間なので歩いちゃいますけど、今日はやりたいことがいっぱいあるのでね、交通機関を使いたいと思います。
下校時刻ということもあり、ほのかに混雑している駅構内を進み大崎方面の電車へと乗り込む。そうして約2分程で目的地へと達する。
「テレポート着弾、と。どこから回ろうかな」
大きく伸びをしながら地上へと上がった自分は、周囲を軽く見渡してから徐に歩み始める。とりあえず……ダイバーシティにでも行くべ。ってなわけで、ダイバーシティへと赴いた自分は服屋を見たり、本屋で好きな小説の新刊を探したりと、1人の時間を堪能していく。こういうのでいいんだよ。こういうので。
そもそもソロペックスレジェンズを基本としてた自分ですからね、1人の時間っていうのが恐ろしく落ち着くのですよ。
「ンッンー、鼻歌1つでも歌いたい気分ですね」
変に
潮風に撫ぜられ、
「……なんだ?」
不思議に思いながら、声のする方——台場公園の中へと進んでいく。すると、入ってすぐの屋敷跡である中央広場にて、学ランに身を包んだ男子生徒2人に詰め寄られるシルバーアッシュの前下がりボブが目を引く女子生徒の姿が。あ、よく見るとあの子の髪、
「なんか文句あんのか?!」
「いや、だから、さっき言った通り……」
男子生徒の迫力に押され萎縮した様子を見せる女子生徒。そんな少女を良く見ると、胸元に黄色のリボンをつけた虹ヶ咲の制服に身を包んでいる。……あの子1年生じゃん。流石にこの状況は不味いのではないか?
その思考が過った途端、自分は階段を駆け下りて少女に背を向けるようにしながら両者の間に割り込む。
「アン……なんだお前?」
突如として部外者が現れたせいか、男子生徒……男子Aが鬼のような形相でこちらへと視線を送ってくる。う、うわぁ……怒りの沸点高いですねこれは。後、わかりにくいから男子A、Bって呼ぶか。名前知らんし。
「……通りかかっただけの者です」
「なら邪魔すんじゃねぇよ! オレ達が用あるのは、そっちの女なんだ!」
咄嗟に聞かれて、本当のこと話しちゃう自分なんなんでしょうね。自身の置かれた状況を一時的に忘れ現実逃避に走る自分であったが、徐に意識を目の前の景色へ戻すと口を開く。
「確かに自分は部外者だし、思いっきり無関係です。けど、女の子1人に対して野郎2人がかりっていうのは、どうなんですかね?」
鋭い視線で、交互に男子生徒達の顔色を伺う。すると突然、対面する2人が口を歪ませる。うーん、これは……嫌な予感。そして、こういう時の予感は結構当たったりする。当社比ですけどね?
「俺達は今虫の居所が悪くてな。先にお前で晴らさせてもらうことにするぜ!」
その言葉と共に拳を握る男子生徒達。一歩、また一歩とにじり寄る2人。そして、自分の前に立ち拳を振り下ろしてきた瞬間、大きく息を吸った自分は口を開く。
「……あっ!!」
短な叫びと共に、男子生徒達の後方の木々を指差す。すると彼らの視線は、そちらへと向けられた。叫んでみたし、指差してみたけど特に何もないんだよね。ブラフってやつなんですが。
「なんだよ……?」
「なんかあったのか?」
不思議そうに指差した方を凝視する2人の後ろ、少女の方へと振り向いた自分は彼女に耳打ちする。
「今のうちに、逃げるよ」
彼女が頷くよりも先に走り出した自分達。それに僅かに遅れて、男子生徒2人はこちらの動きに気がついたらしく、逃げる自分達に対して激昂した。と言っても、一瞬でも隙を見せたそちらが悪いはずですけどね?
「待て!」
当たり前の様に追いかけてくる2人組。困ったな、追いかけっこは得意じゃないんですよ。少女と共に第3台場と陸続きになっている部分を駆け抜けた自分は、公道に出るとそのまま右に曲がっていく。
「あの、どこに、向かってるんですか!」
「助けを求められる場所ですよ」
手短に返した自分は、不意に足を止め振り返る。そこには鬼の形相でこちらへ走ってくる男子生徒達の姿が。こっわ。捕まったら何されるか余計わからないじゃんあれ……。
「何してるんですか?! 追いつかれちゃいますよ!」
自分同様に足を止めていた少女が、不安気な表情でこちらへと訴えかけてくる。そうだよね。ここで足を止めてたら、自分もこの子も捕まっちゃうよね。でも、2人揃って逃げたところで逃げられる保証も無いんだよ。……しゃーなし。腹括るか。
大きく息を吐いた自分は、少女の方へ僅かに距離を詰め正対し返答代わりの言葉を渡していく。
「この先の道をまっすぐ行って、ゆりかもめが通っている道を右に曲がってください。そうすれば、お台場海浜公園駅を過ぎたところに交番があります」
「え、でも……」
「自分のことなら気にしないでください。しっかりと向かいますので、お巡りさんに事情を話してください」
諭す様に伝えてみたところ少女は戸惑った様子を見せるも、小さく頷いた後に踵を返して走り始めた。その背を見送った自分は、再び背後へ向き直る。正直見たくないけどねぇ……だって怖いじゃん? でも見なきゃ相手がどこにいるのかわかないから、仕方ないね。
というわけで振り向いたら、なんということでしょう。残り10mもないところにいるじゃん。やっば、追いつかれたわ。
「オラ!」
走り込んできた男子Aは、勢いそのままに拳を振りかぶってくる。スピード×体重=パワーみたいなことしてくれるじゃん。当たったら痛いねきっと。
左後方へと体重移動をした自分は、拳を避けるとその勢いを保ったまま180度回頭して走り出す。
「待ちやがれ!」
男子Bの怒号を後ろに駆け出した自分は、ある程度のところまで進むと再び海浜公園内へと進入していく。何故かって? 悪路を走るためですよ。
舗装路を横切り砂の上へと繰り出す自分。途端、足元が大きく沈みバランスを崩す。
「ぶねっ……」
砂に足を取られた自分は転倒しそうになるが、強引に足を動かして走っていく。平日とはいえ夕刻なせいか、まばらに人影のある砂浜をよろけながらも駆け抜けていく。靴の中に多量の砂が入ってくるがそんなのお構いなし。今はほら、あれだから。『足を止めるなぁ! このままじゃ、こんなところじゃ……終わらねぇ!』案件だから。……あ、でも靴の中気持ち悪いことになってきた。
足元に嫌悪感を覚えながらも、ふと後方を確認してみると、息を切らせながらもご丁寧に砂浜の上を走って追いかけてくる2人の姿が。
……自分が誘っておいてなんだけど、1人舗装路から回り込んで挟み撃ちすればいいんじゃなんですかね? 知らんけど。
必死な相手に対して湧き上がった疑問を携えながらも、砂浜の上を走っていき唐突に
「あ、オイ、待て——」
とかなんとか思ってたら、後ろで件の2人が制動追いつかなくて滑って砂にダイブしちゃってるよ。わぁ、口の中シャリシャリしてそう……。
哀れに思いながらも舗装路の上へと上がり、木々の間を抜けて公道へと出た自分は信号の点滅する交差点を走り抜けた。そうして信号が変わると同時に背後を見やれば、息を切らした2人がこちらに対して何か叫んでいる様子であった。……車の走行音とか諸々で何言ってんのか聞こえないんだけどね。
叫ぶ2人を他所に歩き始めた自分は、台場区民センターの横をトコトコと通り抜けていく。久々走って息あがっちゃった……なんて思ったけど、この前遅刻しそうになって走った時の方が多分疲れてたわ。やっぱりね、長い距離走る方が楽ですよ。うん。
1人思慮に耽ていると、背後から肩を掴まれて進行を阻害される。おやおや……?
「漸く……捕まえたぞ……!」
声の方へ視線を向けてみれば、息を切らした状態でこちらの肩を掴んで来る男子Aの姿が。えーっと、その、ご苦労様でございます……? 後その右手は物騒だから下ろそうね。危ないから。
そんな思いも虚しく、自分の手前で拳を振ろうとする男子Aと、それに続いて拳の用意をする男子B。だが、振り下ろされた拳は自分には当たらなかった。
「お巡りさん! この人達です!」
先程この2人に絡まれていた少女が、
「な、なんで警察が……」
「なんでってそりゃ……ここ交番の前だし」
戸惑いを隠せないでいる男子Bの言葉に対して答えを渡す自分。ご丁寧に指で示してあげながら。えー、結論を述べますと交番の前に来てもらうように走ってました。さっき後から行くって言ったわけですしお寿司。
で、この2人はそんなことなどと気が付かずに着いてきてしまったって訳ですね。イマココ。
「君達、少し話を聞かせてもらえるかな?」
ワナワナと震える男子2人に対し、圧のこもった笑みで問いかけるお巡りさん。対する2人は、即座に踵を返して走り出した。恐ろしく早い反応、自分でなきゃ見逃しちゃうね。
「……まるで脱兎の如し」
「だっと……?」
「逃げるウサギのことです。すごく逃げ足が早いって意味です」
自分の呟きに首を傾げた少女に対して、言葉の意味を述べた自分はそこでようやく肩の荷が降りた気がした。あ、緊張が解けたら急に
僅かにバランスを崩した自分であったが、何事もなかったかのようにその場に踏みとどまる。すると、少女の傍にいた警官と目が合う。
「君、大丈夫だったかい?」
「はい。ただ走ってただけなので」
嘘偽り無く答えた自分は、片方の靴を脱ぎその反対の足で片足立ちすると、中に入っていた砂を捨てていく。はぇすっごい量……。これ靴下の中とかもえげつないことになってるんじゃないかな? 見るとしたらお家帰ってからだけども。
「その様子を見るに、難は去ったとみて良いのかな?」
「はい。危機のもとだった2人はしっぽ巻いて逃げちゃいましたから」
苦笑しながらお巡りさんに返答する自分。なんて具合にやり取りした後に、お巡りさんは交番の中へと戻って行った。
そうしてその場に残された自分と少女。互いに言葉を発する、などといったこともなく、幹線道路を行き交う車両と、頭上を時たま過ぎていくゆりかもめの音が響く。そんな喧騒に耳を傾けながら靴を履き直してていると、唐突に目の前の少女が口を開く。
「あの、助けてくれて、ありがとうございました」
「いいえ。怪我とかはしてないですか?」
「はい」
自分の問いにコクリと頷いた少女を見て、小さく胸を撫で下ろす。大事にならなかったようで良かった。強いて大事と言えば、自分の足が犠牲になったくらいか。なに、足の2本ぐらい安いものだ。……過言だわ。足2本は死活問題だよ。
1人漫才を内心で行っていると、少女に問いかけられ意識を引き戻される。
「あ、あの……名前を聞いても、いいですか?」
恐る恐る、といった様子でこちらへと尋ねてくる少女。無論、問われたのなら答えてあげるが世の情けなんですが……今回は、答えないのが普通の方針で行こ。
「名乗るほどのものではありませんが……『
少女に一礼した自分は、踵を返し次なる目的地へと歩み始める。すると何やら後ろから、聞き覚えのある声が聴こえてくる。
「あ、かすみちゃん」
「侑先輩! 歩夢先輩!」
聞き覚えどころか、知っている名前が飛び出してきたことにより、自分は思わず足を止めて振り向いてしまう。そこに当然、高咲さんと上原さんの姿があった。え、あの、なんでいらっしゃるんですか? というかあの子とお2人は知り合い……ってコト?
無数の疑問が湧き上がる中、不意に上原さんと目が合う。あえ……こっち、見ていらっしゃる?
「御影君……?」
不思議そうに首を傾げた