前書きはこの辺で本編の方どうぞ。
前回までのラブ↓ライブ!↑
エジプトの首都、カイロに到達した自分は、100年もの長き眠りから覚めた因縁の男を前に追い詰められていた(大嘘)
無駄無駄無駄無駄……あ、どうも。『御影
「玲君どうかしたの?」
「ちょっと考え事を」
「悩み事?」
「そう言った類のものではない、ですね」
傍で不思議そうにする近江さんに返答した自分は大きく息を吐く。自分が現実逃避していた理由は、近江さんと2人きりという事実から目を背けたかったからです。
はいというわけでですね、自分は現在進行形で近江さんとお出かけしてます。その理由は遡ること3日前のことだ——
いつも通りに同好会の部室へと足を運んだ時のことだ。その日は確か、置かせてもらってるPC使ってちょっとした作業をやるつもりだったところ、部屋に入った瞬間に拘束されました。物理的に。
「確保ー!」
「な、え、は?」
自分に組み付いてくる中須さんと天王寺さんを前——この場合は両脇にして戸惑う自分。そんな中、ふと前を見やれば他の面々が様々な面持ちでこっち見てる……いや、呆れた様子と微笑ましい様子に分かれてますけども。……上原さんはちょっとニコニコしてるね? なぁぜなぁぜ?
「何事ですか……?」
「今月の16日がなんの日かは知っているかしら?」
疑問を口にしたら朝香さんから質問で返ってきました。質問を質問で返されたぁ?! まあそれは、それ、として……今月の16日ってのは確か。
「近江さんの誕生日ですよね? それと自分となんの関係が?」
今月こと12月の16日は近江さんのお誕生日でございます。ぱちぱちぱちー。なんで知ってるかって言えば教えてもらったからです。だいぶ前に。ほら、あの、今年プレゼントをもらってしまったのでそのお返しとしてと言うのに加えて、昨年も実は物を贈っているという側面もあるので、ね?
「同好会のみんなでいろいろ相談した結果、彼方へのプレゼントは玲をあげればいいと言う結論に至ってね」
「異議ありッ!」
朝香さんの口から飛び出した衝撃の一言に間髪入れず返答を叫ぶ。オイオイなんだよ同好会内全会一致で自分をあげればいいって。どうかしてるぜ……え、どうかしてるのは自分の方だって? 否定できませんねぇ。
「あら、この中で1番彼方と付き合いがあるのは貴方じゃない?」
「……同級とかを除いたらそうかもしれませんけど」
「なら私達よりも彼方のことについては詳しいはずよ」
「いやいやだからって……」
朝香さんからの言葉にひたすら食い下がっていると、不意に制服の袖口を引かれる。不思議に思いながら視線を落としてみると、こちらを見上げる中須さんと天王寺さんの姿が。
「玲先輩、かすみん達からもお願いします! 彼方先輩に精一杯喜んでもらいたいんです!」
「璃奈ちゃんボード『うるうる』」
何故か自分に懇願してくるお二方。ふぇぇ……両サイドから繰り出された後輩からのお願い、火力が高いよぉ……。ゆるふわ水色ドラマーの鳴き声みたいなのを内心であげていると、真正面からも声が飛んでくる。
「愛さんからもお願いするよー。カナちゃんには喜んでもらいたいしさ」
「私もお願いしたいな?」
「私からもお願いするよ御影君」
宮下さん、エマさん、高咲さんの順に告げられる。あれ、これってさ、逃げ場って物がとうの昔にないなってる? それを悟るや否、項垂れながら大きくため息をつく。
「……わかりました。その話お引き受けします」
泣く泣くと言った感じで折れたことを告げると、両脇にいたお二方が拘束を解いてくれる。自由になったな、ヨシ! いや良くないから。
肩とか首とかを回しながらも徐に視線を皆さんの方へと向けてみると、なんか盛り上がってるね。聞き耳を立ててみると、パーティの準備が云々かんぬんって聞こえてきた。
……パーティ、誕生日、自分。それらのワードを並べた時、自分の中である一つの考えが生まれた。
「……もしかしなくても自分、パーティの準備をするからそれまでの間近江さんを引きつけておく人柱にされてませんかねぇ?」
その言葉が部室内に響いた後、盛り上がりを見せていた一同が慌てふためく。恐ろしく早い反応の変わり方、自分でなければ見逃していましたね。
「ひ、人柱なんて! そんなことないですよ」
「そ、そうだよ! 純粋に御影君が適任かなって思っただけだから!」
「そういうことならそういうことにしておきますね……相談してくれれば普通に引き受けたのに」
無理やり納得したことを告げながら、内心をポロッと溢したところ部室内の時が止まったかのように静まり返る。敵
「レイのことだから嫌がるかと思ってた」
「あー、まあ、否定はできないですね……」
ミアさんの言葉を後頭部を掻きながら首肯する。基本的に対人を面倒くさいと切るタイプなんでね、前科マシマシ過ぎて頷くしかないんです。御影お前もう人付き合いやめろ。
「何はともあれ、引き受けてくれるってことでいいのよね?」
「はい。近江さんには普段からお世話になってますし、皆さんのお祝いのためのお手伝いができるというのであるなら尚更」
本当である。この男、こういう時だけ義理堅いとよく言われる。後は変に律儀とかこういう時だけ饒舌とかも言われる。これって普通じゃないんですか……? 解せぬ。
「それじゃあ御影君、当日はよろしくね!」
「アッハイ」
高咲さんの言葉に素っ頓狂な返事をしながら頷く自分。画して自分は、近江さんのお誕生日当日に彼女とお出かけすることになった——
場面は戻って誕生日当日の現在。自分と近江さんは原宿の竹下通りを歩いております。えー、大変賑わっている故に人でごった返しており、正味人波で気持ち悪くなってきた気がする。多分気のせいだね。胃がキリキリしてるのも、人のせいじゃなくてプレッシャーとストレスからだろうし。口が裂けても隣の人には言えないのだが。
「玲君、あそこのお店寄ってもいい?」
「いいですよ。どこへでもお供します」
近江さんの言葉に頷きながら、先程彼女が指差していたお店——服屋へと足を運ぶ。普段はチェーンの店でしか服を買わないのでちょっと新鮮かもしれない。
なんて思いながら入ってみたそこは、ポップでありながらも落ち着いた色合いの洋服を取り扱うお店だった。……なんかこういう感じの服見たな。どこでだっけな。
「近江さんはこういう感じの服好きなんですか?」
頭を捻る自身の手前、店内に置かれた服を興味津々に眺めている近江さんへ問いかけてみる。偏見なんだけども、近江さんってポップな服よりも落ち着いた雰囲気で大人っぽい服をよく着てる気がしてる。偏見なんだけども。いやもちろんね、何着ても似合うと思いますよ?
「好きな方かな〜。どうして?」
「すごく熱心にお洋服を見られてたので」
「遥ちゃんならどれが似合うのかなって考えてたんだ〜」
ニコニコしながら、間延びした声で答えてくれる近江さん。その内容を聞いた自分はと言えば、近江さんらしいなと内心で頷いていた。
「近江さんは遥さんのこと本当に大好きなんですね」
「勿論だよ〜。そういえば玲君も妹居たよね?」
「居ますね。それが?」
「妹、可愛くないの?」
優しげな笑みを浮かべながら問うてくる近江さん。はいこの時点で妹が好きであるということが滲み出ていますね。妹持ちとしてはハッキリ言って尊敬してます。あ、因みに自分は3つ下の妹が1人いますね。どうでもいいですねー。はい。
「……可愛いかそうではないかと言われれば可愛いだと思いますよ」
「それと一緒だよ。ところで……どうして遥ちゃんだけ名前呼びなのかなぁ?」
諭すような言葉の後、一転して圧の籠った声色に切り替わった近江さんがこちらへ新たな問いを投げてくる。どうやら自分は何か選択を間違えてしまったようですね。
「いやだって近江さんは近江さんですし……」
「遥ちゃんも『近江』だよ〜?」
「それはそうなんですけど……」
「それとも何か、彼方ちゃんを下の名前で呼びたくない理由でもあるの……?」
先程までとは打って変わり、不安げな表情を浮かべる近江さん。え、あ、え……あの御影君、君は今お誕生日の人を泣かせそうになっているというか悲しませているのだが? 玲、腹を切りなさい。
脳内で自身への自刃を命じながらも、目の前の現実に向き直った自分はか細い声で言葉を紡いでいく。
「そういう……わけではないんですが……」
「なら、今日ぐらいは名前で呼んでよ……」
「わかり……ました……えと、彼方、さん……」
相変わらず不安気な表情でこちらへ懇願してくる近江……彼方さんの言葉に折れた自分は彼女のお願いを聞き入れた。人のこと下の名前で呼ぶのってやっぱり慣れないよ……ランジュさんとかエマさんとかミアさんは例外です。はい。
さてそんな事を1人ツッコンでいると、彼方さんが僅かに驚いた様子を見せた後、頬をほんのり赤らめつつも笑みを浮かべてくれる。
「ありがとう、玲君」
「あ、いえ……」
「ところで、さっき言ってた遥ちゃんに似合いそうなお洋服なんだけど——」
個人的に気まずさを覚えたいら、何事もなかったかなようにさっきの話題の続きを振られました。ふ、ふぇぇ……どんな面持ちになったらいいかわからないよ〜……。
「彼方ちゃんはこのお洋服が似合うと思うんだけど、どう思う?」
「え、あ……その服、彼方さんに似合いそうだと思います。あ、もちろん遥さんもすっごく似合うと思います! はい」
錯乱気味なせいで意味不明な解答をしてしまう自分。最低だ……もうサイレンの音に導かれて海帰りしたいよ……でもそれじゃあ人外になるだけだからダメか。
「玲君がそう言うなら、着てみようかな……」
「えっ」
そう言ってそそくさと試着室の中へと消えていく彼方さん。あ、うん、え? 今さっき手にしてたピンクのお洋服を着るって申しましたかあの人? どういうことなのだ……いや元凶は自分か。やはり御影は全て廃棄処分。死すべし。
全力で自分を貶していると、彼方さんの入っていった更衣室のカーテンが開かれ、中から先程のお洋服に身を包んで恥じらいの表情を浮かべた彼方さんが現れる。
「どう、かな……」
彼方さんを前にして、自分の思考は停止していた。情報が全く入ってこない……いや、違う。全部鮮明に見えている。だがしかし、いつになっても情報が完結しない……これは領域に巻き込まれたか自分?
「玲君?」
「
無限回の思考の果て、自分の口から飛び出したのは普通の人には伝わらないような言い回しの言葉。いいと思った結果、この言葉が出てくるの末期だな?
「え、えーっと……似合ってる、ってことでいいのかな?」
「はい、もう……すごく似合ってます」
「良かったー」
安堵した様子を浮かべる彼方さんを前に、深呼吸をしていく。1、2、3……落ち着いたな。ヨシ!
さて今回彼方さんが身に纏っているお洋服なんですが、淡いピンク地の洋服にところどころにあしらわれたフリルと、胸元の黒いリボンが目を惹くもの。……思い出した。よくSNSで見る、『地雷系』とか呼ばれるやつだ。それでここはその専門店なんだ。あのですね、彼方さんすごく地雷系の衣装が似合ってるんですよ。謙遜とかじゃなくて純粋に。何この凶悪な組み合わせは。死人が出るよそのうち?
「あ、えっと、その服買われますか……?」
「どうしようかなって悩んでるんだ〜」
「アレなら、自分が買いますよ? 誕生日プレゼント代わり、というのもなんですが」
そう告げてみれば、彼方さんが意外そうな顔をする。……アレ、自分また何か言っちゃいましたか?
「良いの……?」
「良いですけど……?」
「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな〜」
「はい。じゃあ着替え終わったら買ってきますね」
そんなわけで、自分から彼方さんへ送る誕生日プレゼントは決定することとなった。この後、彼方さんが着替えていきたいと申していたが全力で止めた。隣に立って歩く自信はないので——
竹下通りで何時間かウィンドウショッピングを楽しんだ自分達は、学校へ向かうため移動していた。その道すがら、自分が徐に足を止める。
「どうかしたの?」
「少し、自分の都合でお時間もらっても良いですか?」
「いいよ〜。因みに何するの?」
了承をくれた彼方さんの問いかけに、視線を対象に向けることによって目的を示す。それに気付いたのか、彼方さんも自分が見ている場所と同じところを見据えた。
「大きい鳥居だね〜。あそこに行くの?」
「ええ。最近来る機会もなかったので」
そう告げて歩き始める自分と彼方さん。少しばかりお時間をもらって立ち寄ったのは明治神宮。都内でも屈指の広さを誇るこちらは、神様ではなく実際の人物を祀ってるタイプの神社です。
そんなところに何用かと言われたら、お詣りしかないですよ。昔はよく来ていたのですが、最近は忙しさやらなんやらでめっきり来なくなってしまって。今回近場まで来たということで、彼方さんに申し訳ないと思いながらもお願いして立ち寄った次第です。
「広いねー。参道も大きいし」
「そうなんですよ。広すぎて何回かここで迷ったことがあるんですよ」
苦笑しながら昔のことを思い返す自分。そんな話を、楽しそうに笑いながら耳を傾けてくれる彼方さん。ほんと優しいですよね。こんなしょうもない話をしっかり聞いてくれるんですから。聞き上手たる所以はこの辺りからなのかな?
などといった具合に談笑していると、本殿へと辿り着いた。まだお詣りのシーズンではないということもあってか、人の姿はあれど閑散とした雰囲気を醸し出している。
そのことに何処か安堵しつつ、本殿の目の前まで進んだ自分達は、賽銭を箱に入れ二礼、二拍手、一礼といった具合に願掛けをする。
この間特に会話といった会話もないまま、来た道を戻っていると彼方さんが沈黙を破った。
「ねえ、玲君」
「はい?」
「今日彼方ちゃん、色んなワガママを言ったけど、もう1つ言ってもいい?」
「……どうぞ」
唐突な申し出に少し戸惑った自分であったが首を縦に振る。そして彼女から発される次の言葉を待った。
「——彼方ちゃんのこと抱きしめて、頭撫でてほしいな」
どこか恥ずかしそうに、それでいて気が引けると言った雰囲気を醸し出しながらのお願い。普段なら多分断ってるであろうことだが、自分はそっと彼女の元へ近づき、その可憐な体躯に腕を回して自身の方へと抱き寄せる。そして、左手のみを彼女の腰辺りに残して、右手を頭へ持っていきフワッとした髪を崩さないように優しく撫で始めた。
「……こんなので、いいんですか?」
不安になって問うてみるも返事はない。だが、その代わりと言わんばかりに自分の背に回された彼女の手が強く、それでいて締め付けないようなっていることから、良かったということなのだろう。でもですね、ちょっと冷静になってくるとね、すごく恥ずかしい。離れていいかな?
「彼方さん……あの」
「もう少し、このままでいさせて」
普段の彼女からはあまり出てこない、甘えたような声。それに何かを刺激され、抗えない……否、抗ってはいけないと感じた。
「わかりました……それと、彼方さん。お誕生日、おめでとうございます……すごく変なタイミングで申し訳ないんですけども……言ってなかった気がしたので」
「ううん。ありがとう。彼方ちゃん玲君に祝ってもらえて、今すっごく幸せだよ」
返された彼方さんの言葉に、恥ずかしさは増してしまい今にも爆発しそうだった。だが未だ彼女が離れる素振りも見せないため、必死に耐え続けるのであった。
この後気が済んだ彼方さんが離れてくれたことにより爆発はなんとか回避できた。そして虹ヶ咲へと戻った後、同好会の皆さんが準備していたパーティに参加するのだった。
その時
〜おまけ〜
同好会メンバーにお願いされてる回想シーンのちょっと後
果林「因みに玲、相談すれば承諾してくれたって言ったわよね?」
玲「うん、まあ、はい」
しずく「こういった物でも大丈夫だったんですか?」
玲「何々……『全身をリボンで縛り上げて、
しずく「はい……」
玲「正気か?」
果林「至って正気だけれども」
玲「流石に却下です。自分何されるかわかった物じゃないので」
果林「減るもんじゃないでしょ?」
玲「いや減りますが?!」
この後話は平行線になったので、玲の持ち込んだバトル○ームで決着をつけた。尚めちゃくちゃ白熱した模様。
今回はここまで!閲覧の方ありがとうございました。また次回の更新でお会いしましょう。
最後に近江さん、誕生日おめでとうございます!
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