今回は見たいと言う声をいただいていた御影君の誕生日回なのですが……大遅刻です。本当は10月10日に上がるべきものでした。すいません。
はい、前置きはこの辺にて本編どうぞ。
前回までのラブ↓ライブ!↑
中立コロニーにある学校に通ってたら、突然攻撃を受けて戦禍に巻き込まれることとなりました(大嘘)
どうも御影玲です。只今、早過ぎる時の瞬きに晒されています。なんでかって言うと、気がつけば暦の上では秋真っ只中の10月になっていたからです。でも暑過ぎて秋の気配が全くないので困惑してる。紅葉見るって気温じゃねぇぞ! そもそも葉っぱが色付いてないし!
だがそれにしたって暑過ぎる。例年通りに衣替えが終わってるわけで既に制服も冬服に切り替わっているわけですが、暑過ぎて来る途中でブレザーキャストオフしちゃったよ? 着てたら物理的に溶けそうな暑さしてるもん。
それで調べてみたら30度超えてるんだって今日。何、10月入って真夏日って。令和ちゃんは人類を滅ぼしたいの? そんなことはないと思うけど。
さて、そんな暑い日である本日ですが自分自身が忘れてはいけないのに盛大に忘れていたことがありました。本当、なんで自分のことなのに忘れてしまうのでしょうね。ここ何年かずっと忘れてるからな。
「御影君、お誕生日おめでとー」
「おめでとう」
えー、朝登校して来て校舎入ろうとしたら後ろから来ていたらしい高咲さんと上原さんからお祝いの言葉をいただきました。今なんとか、内心に留めることができました。こんなんね、なんぼあっても困りませんどころか一つでも勿体無いくらいですね。よし、死ぬか。
「ありがとうございます。お二人からお祝いの言葉を頂けとても嬉しい限りです。もう自分の人生に悔いがないくらいに」
「あはは、そんな大袈裟だよ」
己の心の声を嘘偽りなく述べたら高咲さんに大袈裟と言われてしまいました。本当に悔いないんだよな。祝ってもらえるってだけでも畏れ多いのにこの二人から祝ってもらうとか悔いを残す方が失礼な気がしてさ。
もうこのままの勢いでこの世を発った方がいいと思うんだ。中央防波堤辺りで海へぴょーん! しようかな。とかなんとか思ってたら高咲さんからの
「でもこれで喜んでくれてるなら、今日の放課後が楽しみだね」
「そうだね」
高咲さんの言葉に頷く上原さん。え、え、なに? なんかあるの? ねぇ? 何があるの? ちょっと怖いんですけど。ちょっと誰か助けて? じゃなかったら今ここで自分の命を終わらせて?
「そういうことだから。じゃあ歩夢、また放課後に! 御影君も!」
内心アワアワしている手前、高咲さんが別れの言葉を残して校舎内へと消えていきました。あれ、なんかこっちにもその言葉が向けられているんだけど。
「うん! 頑張ってね、侑ちゃん」
「えっと、はい、また?」
頷き手を振りながら高咲さんを見送る上原さんと、思考力が追いつかず曖昧な返をしつつ上原さん同様に高咲さんを見送る自分。
今の一瞬で目の前に高濃度粒子空間ができてた気がする。だって高咲さんを見送る上原さんの図ですよ? トランザムバーストを超えてクアンタムバースト案件だぞオイ。そしてそこに放り込まれた
「じゃあ御影君、私達も教室に行こっか」
己で己を糾弾している最中、上原さんから声かけられました。唐突な上原さんからの言葉が、情緒を襲うッ! 情緒に9999のダメージ! 情緒は倒れた。うん、これはSAN値直葬。
「そう、ですね」
SAN値にさよならバイバイした自分は、上原さんに対して頷くと共に教室へと向かった。こうして、自分の長い1日が幕を開けた——
なんやかんやで至ってしまった放課後。来てほしかったような、来てほしくなかったような時間を迎えた自分は内心荒みつつ校門の前に赴いていた。
もちつけ自分……いや餅は搗くな落ち着けよ。取り敢えずまだ慌てるような時間じゃない。こういう時は深呼吸をして……ラジオ体操第一の締めの深呼吸である『第一深呼吸』ではなくて、ラジオ体操第二に入っている『第二深呼吸』の方で落ち着け。吸ってー、吐いてー。空気吸うだけで落ち着けるって人間不思議な構造してるよなぁー。
「お待たせー」
「ひゃい」
深呼吸によって落ち着いた頭でしょうもないことを考えていたら、後ろから声をかけられて変な声をあげてしまう。アホか。
そんな自分が振り向いたところ、案の定というか想定通りというか、高咲さんと上原さんのお姿を捉えました。ふぅ……なんかお二人を前にしただけでこの場から逃げ出したくなってきたな。でも逃げれないんだよね。高咲さんか上原さん、特性かげふみだったりする? めちゃめちゃ失礼なこと考えましたね今。自害します許してください。
「じゃあ行こうか」
「行く……とは、どちらに?」
「遊びに」
何するのかわかっていなかった自分が問いかけたところサラッと告げられる。あ、遊びに? 高咲さんと上原さんが? それは全力で楽しんできてもろて案件なんだけども。……え、まさかお二方と自分で遊びに行くとか言わないよね? まさかまさかの掎角一陣。そんなことになった日には自分が必要な犠牲だったと言って打ち出されて敵陣で爆発四散することになるのだが? でも自分のところに来てそう言ってくれるってことは、そういうことなのではないのだろうか。
決まりです御影玲。あなたが重罪者です。……そうだ、自分が重罪者だ。どこぞの追い詰められた自称新世界の神みたいなことを考えていると上原さんに問いかけられる。
「御影君はどこか行きたいところある?」
「え、あ、自分が、ですか?」
「うん。行ける範囲内ならどこでもいいよ」
行きたい場所……とりあえずあの世かな。天国には行けないだろうから地獄に送られるのは確定として、とりあえず三途の川の向こう側に行きたいかな。うん。逝かせろよ。じゃなきゃ
「それなら、東京タワーに登りたい、です……」
「東京タワー?」
「はい。後、レインボーブリッジ歩いて渡りたいです。お二人がよろしければ、の話ですが」
因みに、皆さんご存じであろう『レインボーブリッジ』って名称は一般公募で決まった愛称であって、正式名称は『東京港連絡橋』って言います。いらんお話しでしたねすいません。
「良いよ。じゃあレインボーブリッジ渡ってから東京タワー登りに行こうか」
「え、良いんですか」
「うん。御影君の行きたいところに行くって言ったからね。それに私たちも最近歩いて渡ったりしてないから」
オドオドしながら答えを聞いた結果OKもらえました。わ、ワァ……これって夢……? でもなんか暑さとか諸に感じてるし……ところがどっこい夢じゃありません……現実です。これが現実……ってコト?! うわぁぁぁぁ! 錯乱は少しアスランしているになる案件じゃねぇか! どうすんだよこれ! 落とし前をどうつけるつもりなんだ御影!
「あ、ありがとうございます」
「ううん。それじゃあ行こうか」
画して自分達は校門を出て、レインボーブリッジを目指す。因みに学校から橋までは微妙に距離あるのでゆりかもめでお台場海浜公園までショートカットしたよ。やったねたえちゃん尺を縮められるよ! でも車内でお二人とゆったり会話してるのも死にそうになったけどね!
とかなんとか思いつつお台場海浜公園駅で降りた自分達は、海浜公園の傍らの道を進み、第3台場を左手に望むレインボープロムナードの台場口から中に入った。
「サウスルートとノースルートどっちにする?」
入ってすぐにある分岐点を指差しながら問うてくる高咲さん。南と北どっちにするか……結構悩む。お台場の景色を見るなら圧倒的にサウスルート一択なのだが、反対側のノースルートであればお台場こそ見えないが、綺麗なレインボーブリッジ全景と東京タワーが見えて且つ芝浦・晴海・月島方面も見えるという欲張りセットみたいな景色が見れるんだよな。
「サウスルートにしようかな。前回来た時はノースルートだったし」
自分の言葉に対しコクりと頷いたお二方と共にサウスルートに入り、緩やかに左カーブする勾配のついた遊歩道を進んでいく。
足元から目測で140〜150センチメートル程の高さで設けられた柵の向こう側、陸地側からでは拝めない台場公園の外縁部が
「絶景かな絶景かな……」
P28と呼ばれる橋脚の下に辿り着いたところで、足を止め柵に手を置き向こう側に見える景色に対しての感想を述べる。待て自分。なぜ感想がそれなんだ。分かる人少なそうだし、ほんとになんでチョイスがここなんだと疑問が残るだろ。
「石川五右衛門かな?」
「なんでわかんだよ……」
「13代目?」
高咲さんの台詞に思わずメロンパンが出てきそうな返しをしたところ、今度は上原さんから13代目とか言われちゃったよ。待って待って待って。なんで2人ともその手の話がわかんの? 予想GUYすぎるんだけどなんですかこれは。とりあえず言えることとしては、自分は釜茹での刑にされた江戸の大盗賊ではないし、その子孫で斬鉄剣を操る者でもないですからね。
後どうでも良いけど、斬鉄剣ってなんでも斬れるイメージあるけど、意外と斬れないものがあるんですよね。特にこんにゃくとか有名かな?
他にも斬鉄剣は流星刀と呼ばれる隕石から取れる
「盗賊の末裔だった記憶はないかな……」
苦笑しながら呟いた自分は、再度お台場の海に視線を向ける。えーっとこの方角だから、今見えてる海はきっと品川区。何故わかるかと言われたら、潮風公園の目の前に広がっているあたりの海を見ているからです。そして潮風公園の所在地は『東京都品川区東八潮』なので、証明完了!
「——御影君は、海好きなの?」
不意に投げられた上原さんからの問いかけに、時が止まったかのように固まる。海が好きかどうか、ですか。あれ、今そんなに海好きそうに見えてるの自分? 嫌いか好きかで言ったら多分好きなんだろうけどさ。
「好き、だと思います。実際に海か山かと聞かれたら海って答えますし」
自身の中に湧き上がった事を表に出す。山に行くより海に行く方が好き。飽くまでも山と比較した時の話ではあるが。まあ、海に行っても泳ぐの好きじゃないので泳がないのですが。
ただただボーっとしながら海を眺めてるのが良いんですよ。だから学校の屋上とかから東京湾眺めてるのも結構好きだったりしますよ? アレこれって好きだと思うじゃなくて、好きが確定しているのでは? 海に対して。オイ誰だ今『海未は私ですが』って言ったやつ。
「じゃあ来年の夏は、みんなで海行こうか」
「そう、ですね……はい?」
上原さんの返しに反射的に応じたのですが何か変だ。どうやら判断を間違えたらしい。そもそも判断していないだろうというのは言わないお約束よ。
えーっと、来年みんなで海に行こうかと誘われたのか今。やっぱり変だぞ? こんなの絶対おかしいよ!
「え、あ、海?」
「うん。もちろん、余裕があったらになっちゃうだろうけど」
どこか淋しそうな様子で溢した高咲さんは、両腕を柵につきもたれるような体勢を取る。余裕があったら……か。来年は、自分達も最高学年だから色々なことが待ってて、余裕なんてないかもしれない。きっと、それに対する懸念なんだろう。
「行けるといいね。みんなで」
「そう、ですね」
高咲さんの言葉に反応した上原さんに続いて頷く。みんながそれぞれ、自分の道を選んで進んで行く。その最中だから、多忙なのは当たり前のことだ。けれどもその中でも海に行こうって、誘ってくれてるんだ。応えられるように、頑張るっきゃないか。
自身に言い聞かせるようにした自分は暫しの間、サウスルートから見える景色を眺め続けていた——
レインボーブリッジを渡り切った自分達は、都道316号線に繰り出すと都営バスの東京タワー行きを捕まえ乗り込んだ。
「いやー、渡るの大変だったね」
「ほんとに……申し訳ないです、自分のわがままに付き合ってもらったばっかりに」
自身の一つ前の座席に座るお二方に土下座する勢いで謝る。いやですね、レインボーブリッジを渡るのはよかったんですよ。でもね、真ん中の方が死ぬほど強風だったんですよ。
今日は天気がいいから風吹いててもそんな大荒れみたいなやつじゃないだろ、とか思ってたら死ぬほど強風。なんなら一回死んだ。理由? 目の前でお二方のスカートが強風で捲られたから。『……見た?』って高咲さんにはその場で問われたけど、咄嗟に顔を背けたから中は見てないって答えました。実際中は見てないので。
大事なことだからもう一回言うけど中は見てないからね? 後その場でしっかりと謝罪をかましております故……まあ罪が増えてしまったという事実に変わりはないのですが。
そんなこんなで、徒歩でレインボーブリッジを渡ったのは申し訳ないと思ってるし一回死んだってわけです。
「ううん。そんなことないよ」
「そう言ってもらえると幸いです……」
首を横に振ってから笑ってくれる上原さん。うん。マジ女神。聖人。最推し。優しすぎるしほんとに良い人すぎる。上原さんのこと嫌いな人いないんじゃないかってレベルで優しい。
とかなんとか考えつつ車窓を見ていたら、不意に窓に雫がくっつくのを捉えた。……アレ、これって雨? 首を傾げていると窓に付く雫は数を増やし、気付けば音を伴って激しく打ち付けられていた。
「凄い降ってきたよ」
「傘持ってたかな」
雨音により視線を車外へと向けていたお二方がそれぞれ呟く。自分も傘持ってたかな……。なんとなく不安な気持ちになり始めたところで、バスが終点である東京タワーの目の前に到着する。
激しい雨の降る中、バスから降車した自分達は東京タワーの足元の建物の中に駆け込んだ。
「よ、良かった……建物近くて」
「そうだね。御影君は大丈夫? 濡れなかった?」
髪についた水滴を拭いながら問うてくる上原さん。ああ、上原さんも高咲さんも制服の方は無事みたいですが、
……ダメだ、全部セクハラ発言に当たる。そのまま収監されて服役しろ御影。お前は野に放っていてはいけないタイプの人間だ。
「自分は大丈夫です……バッグを傘がわりにしたので」
自身を糾弾しながら上原さんの問いかけに返答をなす。走ってくる間はバッグを頭上に掲げてたので濡れなかったんですよ。バッグを生贄に捧げることにより、自分は水濡れを回避できるぜ! 名も無きファラオの魂はお帰りください。
「そっか。じゃあ、チケット買いに行こうか」
「アッハイ」
コクリと頷き返した後、揃って一つ下の階に行きチケットを購入しに行く。そこで見たのはチケットを求める人達が微妙な列を成す光景。平日なのにそこそこ混んでる東京タワーさん、ヤバすぎるっピ! なんてふざけている合間に、自分たちの番がやってきた。
「メインデッキの他にトップデッキツアーって言うのもあるよ」
「トップデッキだと1番上まで行けるみたいだね。どっちにする?」
料金表を見ながら尋ねてくる上原さん。トップデッキ行きとメインデッキ行き、値段が違うのもそうなのだが高さが100mくらい変わるんだよな。どうしよう。
「折角なら1番上まで行きたいですけど……」
「天気……だよね」
自身の中にある不安を汲んでくれた高咲さんの言葉に頷く。外は大雨。つまるところ、登ったとしても何も見えない恐れがあるのだ。なんならあの雲の感じなら何も見えないと思う。それで色々棒に振りたくないんだよな……。
「確かにそこは不安だよね。でも、今日は御影君の行きたい場所に行くんだから、遠慮しないでよ?」
「上原さん……」
諭すような上原さんからの言葉を聞いた自分は徐に高咲さんの方に視線を向ける。すると高咲さんは無言のまま首を縦に振った。こんなこと言われちゃったら、引き下がれないよな御影。折角のご厚意なんだから、さ。
「——行きましょう。トップデッキに」
意を決した自分はトップデッキ行きを決意する。そうしてチケットを購入した自分達はエレベーターに乗り、地上150mに位置するメインデッキまで登る。
「わー、高いね」
「そうだね。トップデッキはもっと高いんだよね」
「そのはずです。あ、あっちか……」
メインデッキ内の誘導に従い進んでいくと、何やら壁沿いに出来上がった列を見つける。どうやらこれが、トップデッキツアーに参加する人の待機列らしい。
「これ?」
「らしいです……」
そこに並んで待つこと数分。重厚な扉の奥へと通された自分達。なんか秘密基地みたいなところだなぁ……なんて思ってたら東京タワーの歴史についてお話が始まりましたね……?
はぇー……東京タワー建立の秘話ってやつですか。ためになるなぁ。話を聞き終えた自分達は部屋の奥に備えられていたエレベーターに乗り込みメインデッキとトップデッキの合間にある『プラットフォーム』に上がる。
「
「ウィオー」
「うぃ、ウィオ〜」
「ウィオ……」
スタッフの方の挨拶に同様の返しをしていく。それぞれ個性が出てるって? 否定できない……それからWIOって言うのはトップデッキツアーの時に使う挨拶でして。人差し指、中指、薬指の3本を立てながら挨拶すると言うもの。嘘だと思った方、実際に行ってみてください。誰に言ってるんだ自分は。
そしてウェルカムドリンクを貰い、なんとなく外を眺めつつ進行待ちをしていると、不意にカメラを持ったスタッフさんが目の前に現れた。
「WIO〜。記念に一枚どうでしょか?」
「え、あ、うんと」
「折角だから撮ろうよ。お願いします」
撮るか否か悩んでいたら高咲さんがGOサイン出してきました。写真写り悪いから勘弁してほしいんですよ……でも撮ると行ってしまったので仕方ない。腹を、括るか。
「ではみなさま、そちらに並んで腰かけてください」
瞬間、御影に電流走る。窓際に並んで腰をかける……自分と高咲さんと上原さんとが並んで座って写真を撮ってもらうってことだ。この場合、誰がどこにいるかによって事案が発生する。
何が言いたいかって? 真ん中になった瞬間、一番犯してはいけない罪を犯してしまうことになるってことだよ。百合の間に挟まるというな!
しかも高咲さんと上原さんの間にだよ? この命を捧げるどころか、己の存在を証明する物全てを抹消して自分が存在しなかったことにしても清算できない事案になるぞ?
仮にそうなってしまった場合は、『百合の間に挟まる男を抹殺するエルフの剣士』に斬ってもらわないといけなくなるな……嫌すぎる。なので絶対にそれだけは回避しなければいけない。『砦を守る翼竜』の特技『飛行』ッ! 敵の攻撃の回避確率35パーセント!
「どう座る?」
「主役の御影君が真ん中じゃない?」
回避宣言してたら真ん中の宣告きました。どうする、どう避ける御影。というか座るなら真ん中以外どこなら違和感がないのか……ハッ! ある策が閃いた自分はお二方に問いをなしていく。
「えと、自分一番窓際でも良いですか?」
「なんで?」
「後ろも横も絶景に囲まれてその、誕生日席みたいだなって思いまして……」
割と無理がある言い訳を添えながら窓際に座りたい意思を示す。強引なところは否定しないがそれっぽい理由が述べられたのではないかと思っております。さあ、この意見通せるか。
「御影君がそこが良いって言うなら私達が反対する理由はないよ」
「うん。じゃあ御影君が一番窓際ね」
「ありがとうございます」
お二方から了承をいただけたことにより自分は内心で大きくガッツポーズを取る。勝った! 自分は運命に勝ったんだ! そんなわけあるか! 今日はそもそもお二人といる時点で運命に負けてるんだよ舞い上がるな!
自身を叱咤しながらも一番窓際に腰を下ろす。コラそこ、窓際社員って言わない。……いやでも将来的にそうならないかと言われたら否定ができないから、強ち間違いではない?
「それじゃあ撮りますよ? WIO〜?」
「「WIOー」」
「WIO……」
先程よりかは幾分かマシになったであろう挨拶をしながらシャッターを切ってもらう。因みに今、自分の隣には上原さんがいてその隣に高咲さんですね。窓側から順に愚か者、上原さん、高咲さんですね。おいなんでだよおかしいだろ。上原さんがど真ん中じゃねぇか。最推しなんだからもう一歩……いや、百歩ぐらい引いたところに居たいっていつも言ってるんだけど真隣が最推しになってるやん!
「はいOKです!」
内心グチャグチャになってる間に写真撮り終わってました。あまりにも早い撮影。普通に見逃した。
それで、なんか写真の引換券もらって再度エレベーターの待機列に入りました。『プラットフォーム』と言う名前の通り、エレベーターの乗り継ぎ用のホームらしいですねここ。……というか全然雨が止む気配がない。
呆然と窓の向こうの景色を眺めていると、エレベーターの順番がやってきました。え、エレベーター意外と小さ……鮨詰めで上連れていかれるやつかこれ?
「もう少しお詰めください」
「ヤバ……」
エレベーターの奥に追いやれてしまった自分は、壁にピッタリと前面をつけた状態で押されていた。死にそうだけど死んでないから多分ヨシ。というか背面側で接触してる上原さんと高咲さんの方が心配。あと推しとその想い人と接してる時点で死にたい。クッ殺案件すぎる。自害は後でするとして現状に対して現実逃避しようかな……。えー、とりあえず東京タワーのことでも考えようか。うん。
みなさんご存知かと思う東京タワー。所在地は東京都港区芝公園四丁目2番8号。竣工は1958年で2024年の時点で
凄すぎるだろ……足向けて寝れないよ。あ、2024年で考えたのはなんとなくなので気にしないでください。
で、作られた目的としては有名な話ですがテレビ放送時の電波塔としてですね。できた当時は世界最大の電波塔だったらしいです。大和魂、凄すぎる。
それと、『東京タワー』って名称は先ほどのレインボーブリッジ同様に愛称で正式名称は『日本電波塔』というらしい。これ調べるまで全然知らなくてびっくりしましたよ。お前愛称なんだ、って。
しょうもない事考えているうちに、乗っているエレベーターが最上部であるトップデッキに到着した。
「……死ぬかと思った」
エレベーターを出るなり大きく息を吐き呟く。久々人混みで生きた心地がしなかった。朝ラッシュ時の満員電車と良い勝負してたよ。東京タワー恐るべし。
「大丈夫?」
「ええ、なんとか。お二人は?」
「大丈夫だよ」
心配してくれた高咲さんに無事な旨を伝えつつ問い返してみたところ、お二人も問題ないとのことでした。やっぱタフだよ高咲さんと上原さん。自分もそのタフさを見習わなきゃダメだよ?
お二方の強さに感心しながらも、窓のそばに行き向こう側の景色を見据える。先程より、天気は幾分かマシになっていたが、遠方が
「遠くの方は見えない……ね」
「そう、ですね」
辛うじて見える眼下の景色を見据えながら返答する。あそこに見えるお寺は
「あれ、晴れてきたんじゃない?」
上原さんから告げられた言葉に、視線を上空へと移す。するとそこには雲の切れ間から降り注ぐ陽光と、その向こう側で顔を覗かせる橙色の空。どうやら本当に、晴れてきたようだ。
まさか晴れるとは思っていなかった自分は、驚きのあまりその場からずっと空を見据えていた。
「二人とも、向こう側見にいこうよ!」
「向こう、ですか?」
どこか興奮した様子で提案してくる高咲さんを前に首を傾げる。なんかそんなに興奮する物でも見つけたんですか? 高咲さんが言ってるの、恐らく南東方面なんだろうけど……東京タワーの南東って何が見えた?
不思議に思いながら上原さんと共に高咲さんの示していた方へ向かう。そこで目にしたのは、敷き詰められたように立ち並ぶビルとその奥に佇むレインボーブリッジ、そしてお台場だった。圧巻の光景……わかります。
「お台場……!」
「それもだけど、レインボーブリッジの上!」
「上……?」
高咲さんの言った位置、レインボーブリッジの辺りの上の方を見てみる。そうして自分が捉えたのは、レインボーブリッジの上にかかる虹だった。
「すごい、レインボーブリッジに虹がかかってる!」
「『虹の橋』に『虹の架け橋』、ですね……!」
上原さんの言葉に頷きながら思わず溢した。こんなの見たら興奮しますよ。さっき高咲さんが興奮してたことに合点がいったよ。というかこんなすごいもの見ちゃって良いの自分? 今年も残り二ヶ月とはいえ、何かの間違いで不運に見舞われて命落としちゃうんじゃない? あ、その前に自害するんだった。
「なんだか御影君の誕生日を祝ってくれてるみたいだね」
「へ……?」
不意に振られた言葉に硬直する。待って待って待って、自分が、この世界から、祝福されているような状況に見える、ということ? そんなまさかな話すぎる。むしろ世界の不純物、ゴミと罵られるのも勿体無いレベルの存在だぞ? なんすか? 世界さんが『お前の苦労を見てたぞ』ってか?
嘘です! どう頑張っても愚行しか犯していない自分に祝福も恩寵も福音も来るわけないだろ! 祝われると思ってる自分いる? いねぇよなぁ?!
何が言いたいかと言えば、あの虹が自分の誕生日を祝ってくれているわけではないってことです。
「そう、なのかな……」
「今日ぐらいそう思っても誰も怒らないと思うよ?」
「私もそう思うな。だって一年に一回しかない——大切な日だから」
高咲さんの言葉に重ねて諭すよう告げた上原さん。その顔は、優しげな笑みで彩られていた。……ふぅ。上原さん、その台詞と一緒に笑いかけてくるのはね反則を超えてルールを書き換えちゃうレベルなのよ。それと何千回何万回と言うけど、そう言う顔は、お隣にいる高咲さんに向けてください。こちらに向けないでください。人が死んでしまいます。目の前で一人死んでます。
「かも、しれませんね。上原さんのおっしゃる通り一年に一回、その人のことを祝ってくれる日、ですから」
今日という日の意味を噛み締めるように述べる自分。普段は自分のことを下げて罵ってるけど、今日ぐらいは自分のことを祝ってあげようよ御影。なんでかって言ったら推しがそうした方がいいとおっしゃってるからです。推しは神様みたいなものだろう。つまりさっきのは啓示ってことだ。うーん暴論。
「あ、御影君やっと笑ってくれた」
「……へっ?」
全く意識していなかったことを指摘され本日何度目かの驚愕と硬直を体験する。て、あれ、今日の自分って笑ってなかったの……? 嘘だと言ってよバーニィ。自分は笑ってたって、証言してくれよ……ポケ戦、めっちゃ名作だから今年のクリスマスに視聴会しよ一人で……。
「確かに。今日初めて笑ってるの見たかも」
「そうなの……そうなの? 全然自覚していなかった」
「そっか。でも御影君が笑ってくれて良かった」
正直な内心を吐露したら上原さんからエグい火力の返答もらいました。クリティカルヒット! 情緒、情緒逝くな!! 自分を置いて逝くなアアアア!!
強力な一撃をもらい情緒が滅されてしまった自分はその場に卒倒した。地上250メートルまで来ても倒れるとかおどれはアホなのか。ここで一度、意識を手放すこととなった。
あの後すぐに意識が戻った自分は、上原さんと高咲さんからめちゃめちゃ心配されつつトップデッキから降りて、メインデッキ上層と下層をそれぞれ一回りした。そして現在は外階段から地上へと戻ってきたところです。
「意外と長かったね」
「下りだったからよかったけど上りだったら……」
引き攣った表情を見せる高咲さんを横目に、たった今降りてきた東京タワーを見上げる。
普段はお台場海浜公園からレインボーブリッジを眺めている時、奥の方に佇んでいるせいかあまり感じなかったけど、すごく圧巻で壮大な建築物だと思う。これを戦後の人達が作り上げたということもそれを際立たせる一因かもしれない。
「東京タワー背景で一枚撮る?」
「お願いします」
徐に高咲さんから問われた自分は二つ返事で頷きながら自分のスマホを高咲さんに渡す。普段写真撮ってもらうことがないからちょっと緊張するな、なんて。
「撮るよー? ハイ、チーズ」
掛け声に合わせて控えめにVサインする自分。こうして東京タワー前にしてるとあれ言いたくなるよね。ポジション・ゼロって。え、言わない? なんなら電車に乗ってタワーを登ることもしない? そっか……。
「はい。こんな感じでいい?」
「大丈夫です。ありがとうございます」
受け取ったスマホに表示された写真を確認し謝意を述べる自分。え、高咲さん写真撮るのめっちゃ上手。ちょっと撮り方師事して見ようかな。
とか考え事しながらスマホから視線を上げると、坂の下の方から見知った人影を二つとらえる。……え?
「やっと見つけたよ〜」
「彼方さんにせつ菜ちゃん!」
自分達の前に現れたのは近江さんと優木さん。なぜなにどうして? なぜここにいる? というかどういう組み合わせ? 摩訶不思議なことが多くて傾げた首が360度行きそうですけど。
「皆さんで東京タワー登ってたんですか?」
「うん。御影君が登りたいって言ったから」
「そうなの〜?」
近江さんからこちらに問いがなされる。あ、こっちに話飛んできちゃった。ポジション・ゼロとか言ってふざけた後に首傾げてないで答えなきゃ……。
「はい……自分のわがままに付き合ってもらいまして」
「そうだったんですね。私も登りたかったです!」
「彼方ちゃんも行きたかったな〜」
「じゃあ今度はみんなで来ようよ」
「賛成」
優木さんと近江さんの言葉に、上原さんが提案をし高咲さんが同意する。この一連の流れが今の一瞬で起こりました。あれ、なんかさっきも似たようなやつ見たような? 来年海に行こうって話したやつじゃん……。
「いこーいこー。勿論玲君もね」
「んえ?」
不意打ちのような近江さんからの問いかけに変な声を出してしまう。なんとなくこっちには向いていないだろうとか考えてたら普通に向けられていた件について。どぉしてだよぉ!
「あ、えと、わかり、ました……それでその、近江さんと優木さんはどうしてこちらに?」
「玲さんを迎えにきました!」
「自分、を?」
予想の付かなかった答えに驚愕する。自分を迎えにきたってどういうこと? なに、連れて行かれて人体実験とかされるの? 怖くなってきたな。帰ろうかな今すぐ。
「みんなで玲君の誕生日をお祝いしようってことでね」
「自分、の……?」
「はい! ですので今から学校に戻りましょう!」
そう言って踵を返す優木さんと近江さん。あの、すいません、当の本人が話の状況を理解できていなくて置いてけぼってるんですけどもあのあの。
「私達も行こっか」
「うん。行こう御影君」
「あ、え、あ、はい」
高咲さんと上原さんに促された自分は、みなさんに続く形で東京タワーを後にした。それから学校に戻った自分は同好会の部室に招かれて盛大にお祝いしてもらうことになりました。
その最中、またしても上原さんからとんでもねぇ笑顔を向けられて撃沈したがそれはまた別のお話。