一月の下旬になってしまいましたが、新年一発目の投稿です。本編でなくて申し訳ないです……。
前置きはこの辺にて本編どうぞ。
前回までのラブ↓ライブ!↑
無事に年を越せたため、推しに新年の挨拶を飛ばした。
ただいま絶賛初詣に来ております。
「結構混んでるね」
「そう、ですね……」
高咲さんの言葉に頷く。確か、年越して少ししてから新年のご挨拶を上原さんに送ったんですよ。そうしたら一緒に初詣行かないかって返ってきて……この時点でもうなんか変だったな。まさかね、推しから初詣のお誘い来るとは思わなかったし、年明け早々から推しと一緒にいるのは悪いというか死にたくなるというか、な訳でして断ろうかなとか思ったんですよ。
しかしながら新年一発目の推しからのお誘いを断るのも如何なものかと考えまして……首を縦に振ってしまった所存です。丘の上で十字架に磔にしてカシウスの槍で貫いてやる……。
ただ、ですね、今日は元日じゃなくて
「参拝するまで結構並ぶかな?」
「並ぶかもですね。三が日終わるくらいまでは混んでるのがデフォだろうし……」
上原さんの言葉に応答する。なんで年明けから推しと推しの想い人と並んで歩いてるどころか会話までしてんだろう。今年の運勢もう使い切ってる気分なんだよな。幸運値ってものが自分にあるなら、それはもうマイナスに振り切れてそうだなとか思ったり。
「最後尾ここみたい」
「うん。並ぼうか」
自分の運勢がどうなっているかを案じている間に参拝の列の最後尾に到着した。長いなぁ……お
あとなんか気分が悪くなって来た。人混みで気持ち悪くなっているところに、上原さんと高咲さんと並んで歩いていることによるプレッシャーが乗っていると考えたら残当だったわ。いかん、吐き気ががが……。
「御影君」
「あっ、はい、なんでしょうか」
「御影君にとって去年ってどんな年だった?」
「去年、ですか?」
不快感に晒され続けて吐き気を催していたら高咲さんに問いかけられました。去年がどんな年だったか? え、そうだな……推しに爆破されまくった年だったかなと。これは流石に言えないから他になんかないだろうか。
「そうですね、人とその縁に恵まれた年だったかな、と」
「人と縁?」
「はい。上原さんや高咲さん、近江さんなんかはもちろん、同好会の人達やそこを通じて他校の方々とも知り合えた、という点が該当するかと思いまして」
上原さんの応答に対して補足するように続けた。色んな人に出会って交流してなんてことが多い年だったと思ってたり。一時の縁がその後も続くなんてことは多々ありますからね。
しかしながら自分の場合は長続きする前に自分で遺棄しちまうからなぁ……だからコミュ障って言われるんだよ。はい。すいませんでした。
「そっか。じゃあ、実りある年になったってことだよね?」
「そう、なるのかな……実際その前の年よりは充実してたからそうなのかもしれない」
上原さんからの問い返しに応じながら一人納得するように頷いていく。きっと実りはあった。上原さんと出会った一年生の時よりもずっと。だから昨年の全てにはしっかりとした感謝を述べなくては……胸元でハートを作って、『感謝するぜ、皆さんに出会えたこれまでの全てに』と。あ、百式観音なんて物は繰り出せませんので悪しからず。
そうこう考えている間に列は進んでおりまして、気が付けば鳥居を潜って本堂の前。雑談していたせいか時間経過早すぎて……これが所謂『速過ぎる時の瞬き』って奴なのでしょうか。まあいいや。
「順番もうすぐみたいだね」
「ですね。あの、今更なんですけども」
高咲さんの言葉に頷いてから視線を上げる自分。ここまで一切触れてこなかったことがあるんですよ。はい。今からそれについてお二方に訊いてみようかと思います。
「お二人とも今日、着物なんですね」
えー、本日の上原さんと高咲さん着物に身を包んでるんですよ。ええ。美しすぎて普通に国宝レベルだよ今のこの二人。それと肩並べて歩いてた訳で……思い返しただけで死にたくなって来た。
「うん。歩夢のは私が選んで私のは歩夢が選んでくれたんだ」
「なるほどなるほど」
高咲さんの言葉に頷いていく。互いに互いの着物を選んだとのお話をいただきました。これって聞いていい話だったのだろうか? なんとなく聞いちゃダメだったお話な気がするんだけども……ざっくり着物について言及しますと、上原さんは赤を基調とした艶やかな着物を、高咲さんは黒を基調としながら緑を差し色にした着物を召しておられます。はい、眼福。眼福過ぎて二人の方まともに見られなかったんですよね。そうじゃなくても普段からお二人の顔をまともに見れたりはしないんですけど。はぁ……しかし、お二人とも良すぎて眼球焼けちゃいそうだよ……目が目がぁ! 遠くから『せつ菜スカーレットストーム』とか聞こえて来た気がするが多分気のせい。
「あ、私たちの番だよ」
「はぇ……本当だ」
いつの間にやら順番が回って聞いたことに驚きながらも、お二人と共にお賽銭箱の前まで進む。大きい神社特有のお賽銭箱。趣がありますよね……和の心を感じます。良いよなぁ、こういうの。あと個人的になんですけど、お賽銭箱の前に縄のついた鈴が吊るしてあるとなお良きです。
「参拝する時ってどうするんだっけ?」
「拝礼方法ですか? お賽銭を投げてから『二礼二拍手』、祈祷を挟んで『一礼』ですね」
お賽銭箱を前にした高咲さんに問われた自分が答える。『二礼二拍手一礼』は礼の部分で神様への敬意と感謝を表し、拍手の部分は神様を招いたり邪気を払う意味が込められているとのこと。
この礼拝方法については明治時代に書物に『再拝拍手』と記されたことに始まり、昭和時代に現在の形に落ち着いたとか。ただ、全部が全部この形に則っているわけではないらしく、一部神社では『二礼四拍手一礼』なんて方法もあるそうで。この方式になってる神社参拝してみたいみょんねぇ。
「『二礼二拍手一礼』、だね。ありがとう」
「どういたしまして、です」
高咲さんからの感謝の言葉に応答した後、賽銭箱にお賽銭を入れる。本日のお賽銭は五円です。先程投げ入れました五円硬貨の表側には見事に実った稲が刻印されていまして、その稲の花言葉に『結実』というものがございます。この結実というのが、本年の自分のお願いに関わってくると踏んでまして……っと、二礼二拍手まで済ませまして、祈祷のお時間です。本年も、自分の周りの人達が平穏無事に日々を過ごせますように。それから——推しと推しの想い人が幸せでありますように。
祈祷を終えて最後の一礼を済まし、お賽銭箱の前から退く自分。傍らのお二方は、まだお祈り中の様なので先に戦線離脱です。
で、えっとですね、決してご縁がありますように、という意味で五円硬貨をチョイスしたわけではなかったのです。はい。誰に弁明してるんだか……というか列長いな。三が日の真ん中だから混んでて当然なんだろうけども、やっぱ凄いわ。
「お待たせ」
眼前に広がる長蛇の列に
「いいえ。この後どうしますか?」
「うーん、とりあえずおみくじ引いてみない?」
「おみくじ、いいですね」
「おみくじはあっちみたいだよ」
上原さんの指差した方向に向かって歩き始めた直後、傍らの上原さんがちょっとした石畳の突起に足を引っ掛けたらしく大きくバランスを崩し始めた。恐らくだが、普段は履かない下駄により足元の感覚が狂っていたのだろう。……冷静に状況を分析している場合じゃないんだよ?!
「歩夢?!」
倒れ掛かる上原さんと、そんな彼女の名を叫ぶ高咲さん。下は石畳でこのまま倒れたら怪我は免れない……どうする。
倒れ行く彼女を見ながら最善策を思考する自分。しかしながら自分の体は、思考とは関係なく彼女の方へと手を伸ばし、彼女を受け止めていた。
そうして受け止めた彼女の方を見やると、彼女と目が合った。その白くきめ細やかな肌に、吸い込まれそうな程透き通った瞳に魅入ってしまう。
暫しの間、見つめ合っていた自分だったが、ふと我に返ると上原さんに問いかけた。
「だ、大丈夫……ですか?」
「う、うん。ありがとう」
自分の言葉にこくりと頷いてくれる上原さん。あ……ありのまま、今、起こった事を話すぜ! 自分は倒れかかった上原さんに対してどうアクションを起こすべきか考えていたと思ったら、いつの間にか彼女を受け止めていた……な……何を言ってるのか、分からねーと思うが自分も何をしたのか分からなかった……本当に何してんだ御影?
しかも安否確認の後に感謝の言葉をいただいちゃいました。あれ、やっぱ今年死ぬんとちゃいますか自分?
自身の現状を俯瞰しながら、抱えるようになっていた上原さんをゆっくりと立ち上がらせる。すると高咲さんが慌てた様子で近寄って来た。
「歩夢大丈夫?!」
「うん、平気だよ。御影君が助けてくれたから」
「そっか。なら良かったよ……」
上原さんの言葉に胸を撫で下ろす高咲さん。それほどまでに彼女が上原さんのことを心配していたことが伝わってくる。本年ももっと仲良くしててください。自分はそれを見えないところから見て尊死してますから。……なんか二人のこと見てたら急に申し訳なさに襲われて来たな。
「すいません、いきなり……」
「そ、そんな謝らないで。気にしてない、から……」
首を大きく横に振りながら自分の謝罪に反応してくれた上原さん。そんな彼女の頬が、心なしか赤く染まっているような気がした。……推しが赤面してる、ってことだよね。何に赤面しているんだ。とりあえず自分は腹切っとくか?
「そ、それよりも、おみくじ引きに行こうよ!」
焦った様子で提案してくる上原さんの姿に、高咲さんと顔を見合わせる。
「自分は全然構いませんが」
「私も」
「じゃ、じゃあ行こっか」
その会話を皮切りに、再度歩みを進めていく自分達。上原さんの様子がおかしくなったのはやはり自分のせいなのだろうか。それかも気になるけど、推しの赤面を目にしてしまったんですよ今日。腹切りどころか打首案件だろコレ。だれかー、自分の首切ってー。
己の罪の重さを認識していると、徐に高咲さんが自分の傍らへと身を寄せ耳打ちして来た。
「ちょっと歩夢の様子が気になるから二人で話してくる。離れたところで待ってて貰えない?」
「分かりました。じゃあ、あの蔵の前辺りにいますね」
高咲さんからの打診に頷いた自分は、境内の隅にある蔵の前へ向かった。上原さんの様子気になるもんね。ここはやはり幼馴染兼想い人の高咲さんにお任せするのが一番でしょうからね。部外者……間違えた、罪人は大人しくしながら刑を待ちます。
しかし……推しに触ったどころか不慮の事故とは言え推しの事抱き止めてしまいましたよ。殺せ……マジで殺してくれ。
「あー!」
自責に徹している最中、突如飛んできた叫び声に驚きつつ視線を上げる。何々、今度は何さ? 相変わらず纏まらない思考回路のまま声の主の方を見やると、そこにはアルバイト先の先輩の姿が……は?
「ゲッ……関羽……」
思わず口走っていた自分の視線の先に立っているのは近江さん。その顔は、驚愕の色が大きく映し出されたいた。なんでこんなに驚いているのだろうか……ただちょっと神社の境内の中にある蔵の前で立ってるだけだってのに。
「な、なんでここにいるの?」
「普通には……っ」
初詣と言いかけたところで自分の口を両手で押さえる。ヤバい……完全に頭から抜け落ちてて失言してしまったかも。そんな自分の手前で近江さんは訝しんだ表情を向けてくる。
「は……なに?」
「
「お姉ちゃーん」
若干圧を感じる近江さんの言葉に対して、何故か口を押さえたまま返答する自分。その直後、遠くから呼びかけながらこちらへ向かってくる人影が二つ。
「遥さんと……優木さん?」
やってきたのは遥さんと優木さん。遥さんは全然わかる。お姉さんいるからね。優木さんはどっから出て来たの? 本当にどういうことなの? あと中川さんモードじゃなくて優木さんモードだね。今日お休みだもんね。
あとさっきの『せつ菜スカーレットストーム』って聞こえたの空耳じゃなかったっぽいっすね。
「御影さん! あけましておめでとうございます!」
「玲さんあけましておめでとうございます!!」
「ああ、ご丁寧にありがとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします」
新年の挨拶をお二人に返しながらペコペコする。お二人ともね、育ちの良さが滲み出てますよね。うん。自分もしっかりと見習った方がいいよねこういうところ。
「遥さんはおね……近江さんと初詣ですよね。何故優木さんとご一緒に?」
「お姉ちゃんと初詣に来たら、せつ菜さんと偶然お会いしまして、せっかくなら一緒にと」
「はい。それでご一緒させてもらっています」
「なるほど」
二人の説明を聞き納得する自分。そっか、偶然お会いしたってわけだったんですね。うん。そんなこと言ったら自分も偶然ですけどね。でも偶然の確率バグってねぇか今年?
「御影くーん」
確率の破綻を感じていると、高咲さんと上原さんが戻ってきました。……終わった。風呂入ってこよ。死亡フラグだって? 知ってて立ててんのよ。
あと上原さん、どうやら落ち着いたみたい。良かった。
「あ、彼方さんと遥ちゃん」
「それにせつ菜ちゃんも!」
「侑さんに歩夢さん! あけましておめでとうございます」
「あけましておめでとうございます!」
「二人ともあけましておめでとう〜」
挨拶を交わす一同を傍らから見ていた自分は、不意にこの場から走り出したい気分に襲われる。
なんかさ、自分の存在が場違いすぎる。この面々とだと異物感半端なくない? 御影、お前やっぱり存在しちゃいけないんだよ。帰り春海橋から身投げな?
「お二人はどうしてこちらに?」
「御影君と初詣に来てたんだ」
「へ?」
高咲さんの言葉の後に、近江さんが驚きの声をあげる。オタワ。今度こそ本当にオタワ。さてと、
自刃の決意を固め、用意に取り掛かろうとした時、がっしりと肩を掴まれた。なんでござろうか。拙僧これより腹を切り申すというところなのに……?
「ねぇ玲君、彼方ちゃんのお誘い断ったのに初詣来てるの? それも歩夢ちゃん達と?」
振り返ってみると詰問タイムに入った近江さんがこんにちわ。これはもう助からない。自分じゃなくてもそう判断するだろう。圧がね、凄い込められているんですよ。言葉の端々と、肩に置かれた手に。
「いや、違くて。上原さんの方が先にお誘いしてくれたといいますか」
「なら昨日は? 空いてたんじゃないの?」
「元日の昨日は家族と原宿の親戚宅に居たんですよ……」
彼女の問いかけに対して弁明の言葉を並べていくが、追撃をもらった。何故こんなに詰問されてるのか分からない。いやね、近江さんのお誘い断って上原さんと高咲さんと初詣来てるからって言われたら反論できないんだけども。
因みに元日は、さっき言ったように原宿にある親戚の家に家族で足を運んでました。だから予定としては空いてなかったんですよ。大事なことだから念押ししておきます。
自身に言い聞かせるようにして念押ししていると、徐ろに上原さんがこちらはと歩み寄って来た。……どうしたのだろうか?
「彼方さんごめんなさい」
唐突に彼女の口から飛び出した謝罪の言葉に、自分を含めた一同は驚きのあまり固まった。え、なんで謝罪が始まった。というか何に対しての謝罪? 分からないことだらけなんだけども。
上原さんの言葉の意味と理由を探すように思考を回していると、彼女が次の言葉を放った。
「今日は私が御影君の事——とっちゃいました」
そう言って悪戯っぽく舌を出す上原さん。……今、何を見た。情報が完結しないぞ。上原さんは領域展開が使えたのか、じゃねぇよ。黙れよ。オイオイオイオイ、どうすんだよコレ。正月早々生きて帰れない気がして来たよ? 具体的には推しのパワーワードに焼かれて、さ。
自身が無事に帰還できるかを案じていると、不意に左肩を掴まれ体を震わせる。え、な、なんですか……?
恐る恐る振り返ってみると、またしても近江さんの姿が。ど、どうしたんだろうこの人急に……あとなんか、背後から黒い瘴気みたいなのが出ている気がする。控えめに言って怖い……某王国を襲った厄災みたいだよ……。
「玲君、少し付き合って?」
「え、何に……?」
「彼方ちゃんのわがままに」
そう言った後に、自分の手を掴み歩き始める近江さん。え、あっ……待って、この人なんか力強いんだけど。
「わがままって……どんな?」
「とりあえず今からもう一回お参りしよっか」
「へ……?」
何をするのか畏怖しながら問うてみれば、再度参拝するとのことで。もう一回遊べるドン? 祈祷をもう一回はおかしいだろ。
一人虚しくノリツッコミをして現実逃避するも現状が変わる、なんてことはなく。相変わらず近江さんに引っ張られています。……なんて
「ど、どこに行くんですか?」
「列の最後尾だよ〜」
「なんで……」
「お参りするからに決まってるんだぜ〜」
普段と変わらない口調に戻った近江さん。しかしその言葉達とは裏腹に、目が笑っていない。多分、抵抗したらやられる。何をされるかまでは分からないけど、いい予感がしないことだけは分かる。
「じゃあ、ちょっと玲君借りていくね〜」
「待って、やめて、助けて?」
一同に手を振る近江さんの傍ら、ダメ元で助けを乞うてみるもなんの返答ももらえませんでした。その代わりに、皆さんからの同情の意が籠った苦笑を貰えました。まる。当たり前っちゃあ当たり前のことなんだよね……うん。やっぱり全部終わったら腹切って首も掻っ切ろう……。
画して、自分の波瀾万丈とも呼べる一年が幕を開けるのであった。
因みにこの後、列に並んでいる間ずっと近江さんが自分の左腕をホールドしていたり、参拝後に皆さんとお雑煮食べたりしたが、それはまた別の機会にでも。
閲覧ありがとうございました。
本年は根気良く更新できていけたらと思っています。では、次回の更新でまたお会いしましょう。
みなさま、本年もどうぞよろしくお願いいたします。
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