憑依イカと大海原と   作:ウボァー

3 / 6
憑依イカと第一現地住民

 部屋のまんなか、イカは頭を抱えていた。

 

「ハードモードすぎるだろ」

 

 俺が掘り出した金イクラのエネルギーで難しそうな機械が稼働し、建物はちょっと変形しました。匠の技もびっくりなぐらい空間が増えた。どゆこと?

 

 増えた探索可能箇所をガサゴソして見つけた新事実。この島の名前はサモラン島というらしい。……名前の時点で既に嫌な予感しかしない。

 定期的に武装した好戦的なシャケが大量上陸するため海賊も近寄らない危険な島だそう。……シャケ、順応しちゃってた。あ〜もうやだ〜この世界〜!

 

 で、ここで疑問が一つ。シャケの被害に遭わず野生の電伝虫がこの島で生きてられるのは何故なんだ? まさか電伝虫の緊急信号で強いやつ呼ぼうとか考えてるんじゃねえだろうな……?

 シャケは強者に美味しく食われたいから調理器具で武装して美味しい状態になろうとする、という俺にはぜーんぜん理解できない文化を持つわけわからんイキモノだから海賊と海軍を狙ってる可能性が否定できない。で、巻き添えをくらったイカも犠牲になる、と。たすけて。

 

 

 ちなみにサーモンランは英語で『鮭の遡上』を意味する言葉である。だがこの島の海周辺に生息するシャケはどうやら上陸後また海に戻っている記録があったから行われているのを正しく呼称すると『鮭のUターン』となる。だからなんだよってハナシ。

 

 

「――シャケがいる時点でもしやと思ったが、クマサンの魔の手がまさか異世界にまで届くとは想像してなかったんだよなあ」

 

「ようこそおいでませくれやがいました新人! 案内用AI、コグマサン様くんちゃんでございませ」

 

 この建物、クマサン商会製。さらなるイクラ集めのために各地に建物だけ作ってバイトを勝手にやらせようと計画、でもAIがご覧の出来栄えだから廃棄されたんだって。それがある日異世界にきちゃったらしい。そんなことある?

 ……うーん、イカの世界から海賊の世界を狙ってやってきた、ではなく悪魔の実の能力者がウッカリつなげちゃったんだろうか?

 ま、説明がつかないことは大体悪魔の実のせいにすればいいか。うん。

 

 

 さて話を新事実の方へ戻そう。

 突然現れたでっかい謎のハイテク建物。お宝あるかもしれねえぜ! 財宝売ってワーイウハウハ。そう考え、過去に上陸した大海賊時代現地住民は殆どが調査中にシャケの波に飲まれてその……大地で安らかに眠ったとのこと。

 ホラーでよくある状況説明的途中で書いてる人がお亡くなりになったんだろうな系手記にそう記述があった。シャケから逃げるためこの部屋の中に隠れ、食料が尽きたからシャケの波が落ち着いた頃に外に出て……その人がこの島の危険性を伝えたのだろう。

 で、建物のエネルギー減ってきたからスリープモードに変形、一部の部屋封印……の流れだろうか。今日俺が封印を解除したわけだけど増えた部屋に白骨死体とかあったらどうしよう……コワイ!

 

「マイナス点よりも便利度がかなりプラスになったことについて考えるか、うん」

 

 今回開放された部屋の中の一つ、ブキがズラーっと並んでいるブキショップ。ガラスケースの中にあるため手に持つことはできないがラインナップは分かる。……クマサン印のぶっ壊れ性能ブキは無さそうだ。残念。

 

「あそこのブキ欲しいんですけど」

 

「おまえさまのランクだと金イクラ3個と引き換えでっしゃー」

 

 AIコグマサン、ショップも兼任してた。一つのAIに役割増やしすぎたから言葉使いおかしくなったんじゃないの?

 で、金イクラがブキチライセンスの代替品かぁ。でもナワバリバトルできないから俺のランクは永遠の1。つまりブキが欲しければ金イクラを3つ必要とされるのだ!

 オオモノシャケ1匹とブキ1個ってサーモンランの危険性に見合う価値として吊り合っているのか? まず手元にある金イクラが掘り出した1個しかないから何も交換できないんだが。かなしいね。

 バイト前になんとか金イクラを稼ぐ方法……あ。

 

「あのー研修でオオモノシャケと戦ったりできたりしませんかね」

 

 思い出したのはSplatoon3のサーモンランに追加された機能の一つ、研修。オオモノシャケ倒して金イクラをコンテナに入れるまでの流れが研修、だったはず。研修可能なら安全に稼げるかと思ったのだが……はたして。

 

「現在その機能は実装されておりません。文句のある方はピーという音の後に帰りやがれました。またのお越しをお待ちしております」

 

「……ブラックがよこの野郎……」

 

 どこまでいってもバイトからは逃げられないらしい。

 

「じゃ、バイトの流れについて説明お願いします……」

 

「分かり申した、マニュアル読めませ」

 

 カパッ、ドサッ。と天井が一部オープンして目の前に分厚いマニュアルが落下してきた。……謎システム入れてるからエネルギー切れ起きたのでは?

 にしてもページが妙にめくりにくい……アッこのマニュアル1ページが8枚切りの食パンぐらい厚みがある! なんだこの資源の無駄遣い!

 

 

 ――バイト用ブキ、スペシャルパウチがレンタルされるのはシャケの上陸1時間前です。さてはさんぽと試射を兼ねて設定された時間か。質問ー、その間建物の外でブキ使ってOK? OK。バイト開始前にたっぷり時間使って地面と壁塗れる。つまりシャケに集中できる。ヨシ。

 

 ――参加者はバイト開始時、イクラコンテナ前までスーパージャンプで各自移動をお願いしています。開始時に指定された場所にいないことでシャケに取り囲まれた場合ですが自己責任となります。予めご了承ください。……ふむ、つまりスタート地点自分で選んでもいいってコトか?

 

 ――バイト終了時は建物入り口までスーパージャンプ誘引装置でスーパージャンプを行わせ回収します。……えっそれ体に変な影響出たりしない? 大丈夫な機械?

 

 ――ブキ、スペシャルパウチはバイトが終われば使用不可になるのでバイト終了後受付にて返却してください。持ち帰った場合には減給等のペナルティが発生します。そこはまあそうだろうな。バイトで使うのはレンタルしたモノだから返さないと窃盗になるし。

 

 ――金イクラを目標個数ぶんイクラコンテナまで運ぶ簡単な仕事です。バイト達成は目標個数以上の金イクラをイクラコンテナに納品した状態で労働時間を終えることを指しますが一部例外が有ります。ははーん、これはオカシラシャケが出るな? 一人でオカシラシャケとかふざけんなボケ。

 

 ――バイト失敗は参加者が全滅した場合(注意:全滅時金イクラ納品数が目標を達成していても失敗となります)、労働時間終了時に目標を達成できなかった場合を指します。いや俺倒れたら終わりなのキッツ!!!!

 

 ――バイト用のツナギは制服として支給されるギアです。ギアパワーも付いており、常に装備できます。ほう、ありがたくもらっておこう。ん? これギアパワー付くの? 制服を着用してナワバリバトルを行いサーモンランの宣伝に貢献していただけると幸いです。なお、ナワバリバトル中は救命ウキワの機能を停止します。あらかじめご了承ください。まーそこは仕方ないね。……ギアの経験値ってどこで貯めたらいいんですかね? ナワバリバトルやれ? 出来ないから言ってるんですが??

 

 

 読んでいて気になる部分もあったが、基本はゲームでしていたサーモンランと変わらないっぽい。

 クマサン商会のBGMの音量が下がり、録音された宣伝が混ざる。

 

「金イクラをたくさん集めることでより便利に、より楽しい職場になります! 皆様のご協力をお待ちしています!」

 

「それなら金イクラ何個貯まればどう便利になるのか教えてもらっても」

 

「企業秘密でありんぞ」

 

「不透明な資金の経路……!」

 

 AI相手にツッコミをしても好転するはずもなく疲れは溜まるばかり。

 

「………………ウン、寝よう」

 

 イカのカラダで大海賊時代に来たと知ってからマトモな休息を取れていなかった。ふかふかなお布団にぼふん、と体を預ける。10数分後にびゅうびゅう、ごうごう、ごろごろ、と外の荒れっぷりを告げる音と振動が鼓膜を刺激するもスヤスヤタイムを妨害するには至らなかった。

 

 

 

 

 インクは大雨ですっかり洗い流され、自然の色に満ち溢れた島へ元通り。そこそこの規模の嵐だったらしく、折れている木やひっくり返った電伝虫が散乱している。

 何かいいものが落ちてないか、変なやつがいないか、この地域のシャケについて新情報が掴めないか。いろんな思いを胸に海岸線の見回りへれっつらごーしたイカちゃんアイは何かを発見した。

 

「ん、あれは……?」

 

 暗い色のもさっとしたものが蠢いている。

 

「ギャッケバインク!」

 

 インク発射。退路の確保。変な動きをしたら撃つぞと照準を合わせ、ついでにキューバンボムも投擲。

 ボムから弾けたインクは真っ黒ケバインクに当たり、ケバインクが動き出した。

 

「げほ、ぶェッ、んだこれインクか?」

 

 黒のもさもさがむせながら顔を上げた。インクじゃなくてイキモノだったらしいが……それにしてもでかい。足が長い。身長3m近くある。

 その目は黒いぐちゃぐちゃで、口は赤がべっとりしている。

 これは、間違いなく!

 

「ギャーーーーッオバケーーーーッ!」

 

「んなっ魚人んんがぼぼぼ!?」

 

 イカ、迷うことなくヘッドショット(注・イカタコの行うバトルにそんな物騒な概念はありません)。

 

 

 

 ――これが、大海賊時代第一現地住民との出会いだった。

 

aQIEFV

K

4

q:ON ZK/<!Q WCOYI:aa
この広い海で貴方と出会えた奇跡
漂着したヒトを見つけましょう
A
 Time ??:?? クリア 0
(56,335,:5,<:7) 84613:,65

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。