憑依イカと大海原と   作:ウボァー

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10/3、日間ランキング最高7位を確認。……7!?ちょっとの間だけ王下七武イカになっちゃった(?)
皆様評価お気に入り感想ありがとうございます!多分ここから更新ペースは落ちます。


憑依イカと準備

 どうしてロシナンテもサーモンランに参加することになった? どこかおかしいAIがいるとはいえ、インクリングとしてではなくニンゲンだとはっきり認識していた。その上で、参加が決定してしまった。

 クマサンはその経歴からしてニンゲンを危険地帯に連れて行くはずがない。バイトはどう足掻いてもブラックだけど。まずサーモンランにニンゲンを判断するシステムなんていらない。だって、Splatoonの世界でニンゲンはもう滅んでいる。

 

 ……範囲内の生き物を勝手にサーモンラン参加者にしてしまう致命的な欠陥があって再利用不可だからこその廃棄処分、そういうこと? 建物の中入ったの俺だけなのにロシナンテも巻き込まれたとなればそう考えるしかないだろう。うそーん。

 というかニンゲンのことが登録されているってココ、まさかオルタナの施設を流用して……? 何やってるんすかクマサン。

 

 予想だにしないことが起きてお疲れ気味のイカは取り敢えずツナギに着替え、受付カウンターに名札と共に置かれたブキを確認する。

 

「俺のレンタルブキは……あーこれかぁ」

 

 『シャープマーカー』、射程は短いが照準がブレないため扱いやすい軽量のシューターだ。

 遠距離狙撃をうまく使いこなせない俺としてはリアル初サーモンランをするにあたりかなり良いブキを引き当てたと言える。もしリッターとかストリンガーとかが来たら半泣きになってた。『不可逆な時の中で、この街並みを選ぶ意味。』のオススメをストリンガーにした奴きらい。うそつき。友達なくすタイプ。

 

 隣に置いてあったロシナンテのブキは『ダイナモローラー』。振りの速度は遅いがそのぶん一撃の重さはピカイチなローラー。でもニンゲンがインクが必要なブキ持っても使えなくない? 俺がブキ二刀流するか、ただの鈍器になるか。

 

「スペシャルは、っと」

 

 パウチの袋に印刷されたイラストは『カニタンク』。ボムを使うときの邪魔にならず、かつすぐ手が届く場所、アタマのメットに備え付けられたベルトを使いパウチを挟む。

 ついでにダイナモローラーに添える形で置かれていた『ホップソナー』のスペシャルパウチも回収。ニンゲンがスペシャル使えるのかワカンネなのでダメなら俺が使う。

 

 

 ――サーモンランではブキによって何をするべきか、という担当割り振りがプレイヤー間によってなんとなくで決められている。雑魚処理、オオモノシャケ退治、金イクラ運搬、移動経路確保係。

 自分がどうするべきか、という咄嗟の判断がとても重要になるのがサーモンランの特徴の一つだ。

 

 今回バイト参加2人。インクリング1人だけ。サーモンランの基本は4人1チームである。……圧倒的人手不足。

 

 気をつけないといけないのは処理にボム必須のカタパッドとモグラ、壁を貫通するハイプレッサーで突然撃たれて死ぬ可能性が高いタワー、海に出たり入ったりして狙いにくい上に攻撃避けるのにジャンプ要求してくるテッキュウ、処理に塗りが必須のダイバー、インクの雨を降らさせないために弾を打ち返す必要があるコウモリ、頭部への攻撃が遅れたらかなりの範囲爆破させてくるバクダン、正面からロシナンテの攻撃が通るのかわからないテッパン、誘導で事故りそうなヘビ、出てきた場所によってはヤバいハシラ。

 ……ナベブタ? あいつはオオモノシャケを一撃で押し潰してくれる味方だよ。でも意識しすぎると事故りそうな気配はしている。あっオオモノシャケの対処法ロシナンテに共有しないといけないのか。

 

 

 やることが……やることが多い……!

 

 

 普段のサーモンランだと癒しになるオオモノシャケがこの環境だと負担にしかならない。つらい。

 テッキュウカタパタワーという悪を許すな。霧の中でも見えるようにゲーミング発光して自己主張しろ。

 

「いや違う、そんなことを考えている場合じゃない」

 

 サーモンラン開始までのタイムリミットはこうしている間にも迫ってきている。……オオモノシャケへの対策にはブキとボムが必須、負担軽減のためにもロシナンテにはザコ処理をお願いしておこうかなあと考える。ザコ達は防具を身につけているわけではないから多分物理攻撃は通るハズ、なんだけども。

 

「あのドジっ子にザコ処理をさせ……?」

 

 なんでだろうか、コジャケ達に袋叩きにあって転んだ瞬間モグラにパックリされる姿が見えてきた。未来予知かな?

 まあ雑魚処理以前に囮役が適任かもしれないけど……頑張ってもらうしかない。このバイト、失敗しても褒めてもらえる()というやりがいだけはあるからな!

 

「……運ぶのどうすっかなぁ、コレ」

 

 ……ダイナモローラー、シンプルに重い。両手持ちするブキを片手にすると腕がめちゃんこツライ。

 バイト用シャープマーカーとダイナモローラーの二つを同時にインクタンクに繋ぐことはできたがその分インク補充効率がガタ落ちしている。というかヒト形態になると重さのせいでまともに動けない。やっぱりバイト中はロシナンテにダイナモローラーを持ってもらうしかないようだ。

 

 ブキを2つくっつけたまんま、シャープマーカーで行先を塗りインクの道をイカ状態になって移動。……ブキもいっしょにインクになってどこかに収納されてるんだよな、イカ。どうなってるんだコレ? ゲームだとそんなに気にしない所だけどリアルになると一気に不思議〜。

 

「ようやく追いついた……! 急にどっか行くんじゃねえよ! にしてもさっきの放送、ありゃ何だったんだ? サーモンがなんだか聞こえたが」

 

 ついさっきぶりの知り合いが服を所々土でデコレーションされた状態になってた。けどそこをツッコむ余裕はない。

 

「はいコレ持って。職場までれっつごー」

 

 イカ、ダイナモローラーの持ち手をロシナンテに向ける。え、と戸惑いながらも差し出されたから取り敢えず受けとって重っ!? とふらつくロシナンテ。

 

「つか結局船はどうだったんだよ」

 

「――知らなかったのか。バイトからは逃げられない」

 

 最初の優しげな空気は何処へやら、なんなんだコイツと警戒心が高まってツンツンし始めたロシナンテは「それ答えになってないだろ」と言える権利があった。でも言えなかった。……だってイカの顔がこれから死地に向かう戦士の顔をしていたものだから。

 

「いいか、カタパッドは親の仇、タワーは親の仇、テッキュウは親の仇だ。見つけたら絶対に報告、周囲に気をつけつつ対処、これバイトの鉄則」

 

「えっお前親3人いるのか?」

 

「いや、親はかけだしの頃の俺のプレイ画面を見てて多分行けるだろとキホンの「キ」も「ホ」も受けずにサーモンラン向かったら初手霧を引いた上にナワバリバトル感覚でシャケ処理に向かわずコンテナ周り塗るばっかりで現場はお通夜になった」

 

「…………????」

 

「そんな親の二の舞にならない様に今からオオモノシャケについて教えよう……まず海に逃げる卑怯者についてなんだが」

 

 

 

 ……さっきおれ文句言ってよかったんじゃねえのかなあ。ロシナンテは後悔した。

 

 

 

「コンテナヨーシ」

 

 ロシナンテ漂着海岸、よりも少し東。風景としては違いがわからないがイクラコンテナがあるってことはこっち側からシャケが来るってことだろう。金イクラ運搬用経路確保ー、とヌリヌリ。

 

「あっロシナンテさーん、ソレ地面にコロコロするだけじゃなくて振ってもインク飛びますよー」

 

「うお!? なんだこれスッゲー!」

 

 ダイナモローラーが振ると変形する事を知らないロシナンテ、試しに使ってみてびっくりアンドお目目キラキラ。男の子はメカが好き。変形機構も好き。もう一回見たいとバシャバシャし始めた。

 あーいけませんやめてくださいそれインクかなり消費するんですお客様! 無駄にした分を補充するの俺なんですよ! ……まあ試射は大事だし邪魔したら悪いか。満足するまで放っておこ。

 

「しかしまあ高台が少なすぎる。これキツイバイトになるな……」

 

 人工物がほぼ無い海岸、あるのはちょっと大きめの岩が複数。退避先として壁を登ったりセミしたり高低差を利用した戦法は難しいだろう。これグリル来たら終わりでは? 流石に初バイトでグリルは……来ないよね……?

 

 ――シャケが来るのは一方向固定、視界を遮るものがないからオオモノシャケが来た地点が確認しやすい。金網落下の事故要因も無し。そのかわり平坦な地形で逃げ場が少ない。

 

「あー、ハシラがシャケ抜きで生えてこないかなー!」

 

 それは無理。ですよねー。時間を無駄にしないためにも無心で塗る。地形の把握大事。

 

 

 よいしょ、と岩の上に登る。……うん、大体の範囲はヌリヌリできた。ロシナンテがダイナモローラー持って帰りたいんだけどとか言ってるが無視だ無視。お前の持っているソレは観光地で売ってるオモチャではない。

 ぱちぱち、と頬を叩いて気合いを入れる。新人扱いなら要求される金イクラの数は少ないハズ、問題はアルバイトの強さに応じてシャケの出現頻度と数が変化する仕様がここでも活きるのかどうか。

 

「初バイト、全WAVE突破頑張るぞー! えい、えい、おー!」

 

 掛け声と共に、力強く、イカは空に向かってブキを握った手を掲げた。




(どうでもいい話ですが親のお通夜サーモンランは全てが実話で構成されています)
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