つまりS(信用してはならない)B(バイト)S(小説)。
今回の特殊タグには自作フォントも使用し始めました。特殊タグって、楽しい。
どこからともなく汽笛が鳴る。サーモンランが始まる合図だ。
強張っていた体を解す。程よく体の力を抜くため長めに息を吐く。
「そんじゃ大体のオオモノは俺が対処するんで、ザコ処理よろしく頼んます」
「ああ」
ダイナモを肩に担ぐロシナンテ。……取り敢えずインクはマックスまで補充しておいたが、ダイナモローラーは燃費が良い武器ではない。バシャバシャしているとすぐインクが無くなってしまう。
俺からダイナモへのインク補充は基本WAVE切り替わり時だけになるだろう。2人バイトでシャケの相手をしている最中にインク補充の隙が作れるとは思わないほうがいい。というか一人欠けるだけでもシャケ達に押し込まれるだろう。ああ懐かしきヒカリバエ。あのラッシュ、1人やられると失敗の画面が鮮明に見えてくるからな……。
ウン、危険だと思ったら即カニタンクとホップソナーで俺もザコ処理に回ろう。安全第一、WAVE1からスペシャル使ってつくろう安全職場。
ぴぴぴ、と飛んできた謎電波から知らされる今回のWAVEノルマ。
ノルマ
「いやノルマゆっっっる」
当然といえば当然になるけど皆オオモノ数匹でWAVE1達成できる時からスタートしてたんだな……。そうか……そうかぁ……。
海から現れるシャケの群れ。各々違った食器調理器具を手に、陸地に立つ何者かへと一直線に向かってくる。彼らの後には毒々しい緑のインクが引かれていく。
……上陸してきたシャケの数が明らかにかけだしの頃そのまんまで思わずガッツポーズをしてしまったが仕方がないだろう。これは楽な現場になるぞ勝ったなオ(ーバー)フロ(ッシャー)バシャバシャしてくる。
最初に湧いてきたオオモノはバクダン。アレは俺が行った方がいいなとイカ状態で全速力で接近して――。
「おらよっ!」
ロシナンテがサッカーボールのごとくコジャケを蹴り上げた。そして後ろ回し蹴りで吹っ飛ばす。
……え、蹴り? ピギャ、と声を上げるコジャケ。ヒレでしっかりと握っていた先割れスプーンが膨れ始めていたバクダンへと刺さって……バクダンは弾けた。金イクラ3つが現れる。
「いやダイナモ持ってる意味ィ!?」
初めてサーモンランする人にブキの使い方とか定石を押し付けるのは良くないよなーと思ってこのブキは必ずこう使えー、とは言わなかったんだけどさ! 流石に蹴りでオオモノ倒すのは予想できないんですが!? すげえな大海賊時代。
あっ目立つことしたからロシナンテが集中して狙われ始めた。スネを殴打されてる。痛そう……まあ何度ドジっても元気ってことは耐久力あるんだろうしほっといて大丈夫だろう! タマヒロイが来る前に金イクラ回収しよ。いっそげ、いっそげ。
いっこ、にーこ、あっテメエなに持ち帰ろうとしてやがるそれは俺の金イクラだぞ!
「ほいノルマ達成。あとは生き残るだ、け……oh……」
コンテナから周囲の状況を確認したところロシナンテが複数のドスコイとヘビに追いかけられていた。やっぱり囮役になっていたか……。パレードみたいになっている。ダイナモローラー持ってアレだけ走れるのズルいぞその速度俺にも寄越せ。
うん? あれだんだん後ろ姿が小さくなっている、ような……おい!
「やめろー! 遠くに行くな俺のインク届かないからその辺で円を描く感じに切り替え、待っ、ドジってんじゃねー!!」
サーモンランの各WAVEは100秒ずつの時間制限があるが、その半分ぐらいをロシナンテの救出と塗りに使うことになった。ノルマは楽だけど同僚のアレソレが辛いぞこの職場。遠くに行きすぎるとホップソナー効かないしカニタンクは遠くまで攻撃可能だけど移動速度ほぼ無みたいなものだし。
「追っかけられると全力で逃げたくなるのはとてもわかるんですけど、遠くに行きすぎると俺何もできなくなるんでやめてください。本当に。誘導までは要求されてないとはいえあの状況でタワー来たら間違いなくロシナンテに攻撃が向かって挟み撃ちに近くなってましたよいやホント」
「す、すまねェ……」
以上、カニタンクに乗りながらの会話である。
――WAVE2。モグラにロシナンテとスプラッシュボムが同時にパックンチョされた結果十数秒ロシナンテ防衛戦になったのとイクラコンテナ周りにハシラが来たのを除けば平和に突破。平和とは? カタパッド複数とかと比べたら平和なので平和です。
……そういやまだカタパッドとタワーとテッキュウ見てないな、滅んだか?
あっそうそう、スペシャルパウチをニンゲンも使用可能か? についてだがホップソナーは使えた。オオモノシャケがいない間にザコ処理を兼ねて使ってもらった所、あのパウチを開けた瞬間ロシナンテは先程まで存在していなかった大きな機械を抱えていた。どこからホップソナーが出現したのかはイカタコ七不思議の一つにしておこう。
――WAVE3。
「あああああ余計なこと考えるんじゃなかったああフラグ立ててるんじゃねえよ俺のばかやろーっ!!」
(カタパッドが)来ちゃった♡
(カタパッドが来た後すぐにタワーが)来ちゃった♡
(テッキュウも)来ちゃった♡
「ロシナンテさん余裕があれば
ごいーん、ごいーんと衝撃波が地を這う中イカは叫ぶ。綺麗に出現地点分かれやがってあのシャケどもふざけんな。
タワーの砲撃が開始されるより前にロシナンテから俺に攻撃を寄せるため、タワーから遠ざかる様にしてカタパッドへと接近。インクの圧を高めた砲撃をイカロールを使いつつ回避、それと同時にマルチミサイルのターゲットロック8つ全部が俺に来たのが分かった。待てや!
「うおおふざけんなうおおおお害悪シャケどもー!」
Q.この状況を突破するために必要なものは?
A.気合い。
狙いが甘くなったせいで余計に避けにくくなったマルチミサイルを許すな。カタパッドの抱える片方のクーラーボックスへスプラッシュボムを投げ込みすぐタワーに向かって逃走。
カタパッドのミサイルは当たれば確1。さらに着弾地点への塗りもかなり邪魔になってくる。ボム投げ入れが成功したので片パッドになったとはいえ、発射されたミサイルの威力が落ちるわけではないから厄介なことには変わらない。
「お前ら全員海鮮親子丼にしてやらぁー!!」
タワーに積まれたナベを撃ち落としながらの発言である。だんだん口が悪くなっている気がするが気のせいだ。多分。
最後のナベを落とす。タワーの天辺にいたシャケが基礎部分のコンロへ落ち、ジュッといい感じに焼ける匂いがした。
――二人は気付かなかった。彼らの戦いを、海面に顔を出した
とぷん、と海に潜る。
来た、来た、何が来た?
勇敢にも少数で我等と戦う戦士が来た!
勇敢か? いいやいいや蛮行だ!
あいつらは戦士なんかじゃない、大事な金イクラを奪っていく悪者だ! ナワバリを荒らす悪者だ!
でもなんだか弱っちそうだ。
簡単に決めつけたらダメだ。ここは
そうだな、それがいい! オレ達は奪われるだけじゃない!
今度はオレ達が奪い返す番だ!
シャケ達は歌う。それはハシラの歌う応援歌とは少し違う、そう、それは――海賊の歌に似ていた。
それは大海賊時代に影響されて成ったオカシラシャケ。強い存在の象徴として海賊の真似事を始めたシャケ。ヨコヅナほど大きくない、普通のシャケの大きさだが恐るべきはその数。ラッシュを想起させる量のシャケ達がオカシラを慕っている。……その中にはオオモノシャケも存在していた。
誰も知らない脅威。それはまだ、海の中に。