生きやすいのだか、生きにくいのだかわかったものでは無いね、本当に。まぁでも、悪くは無かったよ   作:メヴィ

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入院

 約束をした日の翌日の夕方。

 結局、出久と勝己はカードではなく別の物にサインが欲しいと言ってきた。

 勝己曰くこの俊典カードは希少価値が高いらしくいつか直接貰うのだとか。それを聞いた出久も同意見だった。

 

 

 私としては別にそれでも構わないのだけれど、それより語る勝己があまりにも得意げだから話がまったく入ってこなかった。それで気づいたら私とツーショット写真を撮ろうとして、何度やっても私が写らないと怒られた。解せない。

 

 多くの人が知っての通り、吸血鬼は鏡や写真、電子機器に感知されない。

 たしか科学者の島……えぇと……I・アイランドだったか。

 そこで数えきれない程の検査やら研究をしたが「もう知らねぇよ何なんだよ君は!!!」と、匙を投げられてしまった。

 失礼だね吸血鬼だよ

 

 まぁ体液やら細胞、遺伝子とかは解析されたけれどね。

 

 「なぁ!何で写真写らねぇの!?___聞いてんのかアル!?」

 「聞いてるから大声を出すな勝己」

 

 ギャーギャーと叫ぶ勝己にアルシェリーナは煩わしそうにしながら口を片手で顎ごと掴んで封じた。モガモガと喚いていたが睨まれるとピタッと動かなくなった。

 

 「写らないのは体質……まぁ個性だよ」

 

 個性じゃなくて種族だけれどね。ここで嘘をつく必要は無いが……まぁ種族も個性も今の時代なら変わらないだろう。………まずい、今日だったか。

 

 アルシェリーナは珍しく、焦りを見せながら勝己と出久を家から追い出した。勝己と出久はそれを不思議に思ったが、丁度よく5時の放送が鳴り、二人は家へ走って帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 夜

 

 

 

 

 「んッ…ゴクゴク……ぷはッ…はぁ…はぁ…」

 

 アルシェリーナは二階の天井がガラス張りになっている部屋で文字通り浴びるように血液を飲んでいた。

 床を汚さないように、とアルシェリーナが入った浴槽には既に足首が浸かる位まで血液がたまっている。

 

 「ッ!!ぐぅッ……あ"ッ!!」

 

 バシャッと浴槽に倒れ混んだアルシェリーナは痙攣する体を必死に押さえこみながら苦悶の声をあげ、体が作り替えられる痛みに耐えながら赤い月を睨みんだ。

 

 「くそッ、たれが……!!」

 

 ぼろぼろと崩れる腕を見ながらアルシェリーナは意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 ブラッドムーン、それは皆既月食の際に地球が太陽の光から月を覆い隠せなくなくなり、赤黒く見える月だ。

 

 ブラッドムーンの日に人間は呪い(まじない)をしたり、災害の予兆だと恐れたりする。

 だが純血の吸血鬼のアルシェリーナにとってはそんなことを言っていられる日ではないのだ。

 

 

 まず吸血鬼には生まれながらの純血の吸血鬼、人から吸血鬼となった混血の吸血鬼の二種類がいる。

 純血と混血の違いとしては髪や瞳の色や寿命、翼の有無だ。

 

 純血は灰色の髪と瞳、そしてコウモリとドラゴンを混ぜたような翼。老いることも尽きることの無い寿命

 

 混血は吸血鬼は赤い瞳に変わり、身体能力の大幅な上昇200~300年程の寿命。混血はだんだんと老いてゆき、死ぬ。

 

 

 

 

 約150年周期で起こるブラッドムーンの日に純血の吸血鬼はブラッドムーンの光を浴びながら一夜で体が、細胞の全てが作り替えられ、古い身体は崩壊し、大量の血液を糧に新しい身体となる。

 【廻帰】これこそが純血の吸血鬼が不老不死である理由だ。

 

 

 「と、まぁ説明はこんなところだね。これで吸血鬼の(私の)説明は以上なのだけれど「あるに決まってんでしょうがァッ!!」

 

 まるでヴィランのように目をつり上げる光己に困惑した顔をしながらアルシェリーナは泣きながら抱きつく勝己と出久を撫でた。

 

 

_________________

 

 

 実を言うとアルシェリーナが廻帰をした日から既に三ヶ月以上が経過しており、その間の当の本人は目覚める直前まで生命活動が最低レベルという状況に陥っていた。

 

 事の発端は廻帰の日から家に行ってもアルシェリーナの反応が無い事を不満に思った勝己が光己に話した事だった。

 

 最初こそはプライベートだからと思い気にしていなかったが、メッセージを送っても反応が無く、4日程経過した辺りで流石におかしいと思いアルシェリーナの家に向かうと浴槽で全裸で血まみれのアルシェリーナを見つけ警察と救急車を呼び現在に至る。

 

 それにしても三ヶ月も眠ってたのか……やっぱり()()()()()じゃなかったからか?

 それとも……まぁ、なんだろうと良いか。

 

 

 

 

 

 

 

 【アルシェリーナが病院にぶちこまれてから数日後】

 

 アルシェリーナがやることもなく外を見ていると突然扉が開いた。

 見れば久しぶりに見る顔でアルシェリーナはポカンとした顔になった。

 

 「___久しぶりだね消太。相変わらず小汚ないな」

 「……第一声がそれかアルシェ」 

 

 相澤は不満そうな顔をしながら椅子に腰をおろして持っていたアタッシュケースから血液パックを取り出してアルシェリーナに手渡した。

 

 「医者に説明はしてきた。さっさと飲んで退院しろ」

 

 手渡された血液パックはまだ熱を持っていて微かにだが新鮮な血液の匂いが漏れていた。

 

 「……この匂い、消太のか?」

 「さっき抜いてきた。輸血用じゃ足りてないんだろ」

 「むぅ……ンぶッ!?」

 

 アルシェリーナが飲むことを渋っていると相澤がパックにストローを刺して強制的に飲ませる。

 アルシェリーナは一瞬慌てるが一口飲んだ後に夢中になって飲んだ。

 数分もすれば血液パックは空になり、アルシェリーナは名残惜しそうにしながら抜かれたストローに付いた血液舐めた。

 相澤がストローと血液パックを回収するとアルシェリーナは自分が夢中になっていたことに気づいたようで右手で額を押さえた。

 

 なんだ…?ここまで、新鮮な血液に餓えていたのか私は?

 

 「うまかったか?」

 「…………輸血用と比べたら…月とすっぽん、だったね…」

 「そりゃなにより」

 

 相澤はにやにやしながら空のパックをアタッシュケースにしまうとアルシェリーナのベットに座り直した。

 さっきまでの雰囲気は無くなり、相澤の背中には哀愁が漂っていた。

 

 

 「なんだ、私がいなくなると思ったか?」

 「………」

 

 ベットから体を起こして消太の背中にもたれ掛かり首に腕を回すと腕を掴まれた。

 やっぱりいなくなると思ったのか。

 

 「安心しろ。私は死なないし、いなくならないよ消太」

 「……そういうことじゃねぇだろ」

 

 違うらしい。じゃ何なんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の捕捉ですね

 今回アルシェリーナが三ヶ月の昏睡になっていたのは単純に廻帰に使われた血液が新鮮じゃなかったからです。【生き血】ということに意味があるんですはい。

 そして廻帰は約150年周期なので今回で4回目を迎えました。626歳だからおかしくねとなりそうですがあくまでも【ブラッドムーンの日】なので誤差です。
 

このまま続ける?

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