地上は憂鬱を孕む   作:しろたく

7 / 15
7.ウィリアムスHO

 HOとの毎日のミーティングは、チタウロにとって巨大なストレスとなりつつあった。ウィリアムスは容赦なく事態の説明を求めてくる。

 ポッド内での達也の脳波記録、身体記録、及び医療コンソールでの検査記録全てをHOに送っているが、彼は納得しない。

 

 「何が起こったのか、まだタツヤは何も語らんのか」

 「…覚えていないようです。脳波には明らかにブラックアウトの記録があります。貴方も見たでしょう。ブラックアウトの直前、強い恐怖心を覚えているのも確かです。ただ、本人が何も覚えていないと言っている以上は…」

 「精神探査をかけたまえ」

 「本気で言ってるんですか?直近の探査エラー記録、見たんですか。エラー率7%ですよ?隊員をそんなリスクにさらすわけにはいきません。貴方が地上で志願被験者相手にやってるお気楽な実験とは、訳が違うんです」

 

 毎日同じような会話の繰り返しだった。精神探査を持ち出したのは今日が初めてだが、予想通りチタウロの反応は完全な拒否だった。ウィリアムスはため息をつき、話の方向性を変えることにした。

 「君に概要を話すのは初めてだが、今般の記録を見たプロジェクト参加各国から、さまざまな要求が出ている。特にここに来て、UNAPが非常に強硬な姿勢に出てきている」

 「アル=アシード=カッサードですか?」

 「そうだ。彼の支持母体はサウジ=イスラム連合とオセアニア共和国だからな。メタンハイドレードの取り分引き直しに加え、ダゴンを捕獲しろとあからさまに主張するようになってきた。未知の貴重な生命資源を座して見過ごすのか、と言う態度だ」

 「DNAハイブリッドのネタ、と言うわけですか」

 「ダゴンが知的生命体である可能性が、それなりに取りざたされているからな。

 UNAPは資源問題に加えバイオテクノロジー技術の分野で、各連邦国に優位性をアピールし続ける必要がある。最新のバイオプール実験が完全に失敗して、サウジとアルメニアが連合国協定離脱寸前まで行ったらしい。これは前に話したかな」

 「初めて聞きました」

 「NAFが本件の主導権を握っていることが、いい加減腹に据えかねるんだろう。さすがに明言はないが、隊員の多少の犠牲はやむを得ないという雰囲気だ。

 まあ彼らからしたら、ドーム建設時に55名の犠牲を出しているからな」

 「そんなことを言ったら、我々だって既に40名以上の犠牲を!」

 「解っている。状況を理解してほしいだけだ。とにかく、何が起こったのかを説明して、時間を稼がないといけない局面なんだ。NAFのヘッドクォーター改選まであと2ヶ月だ。少なくともそれまでは」

 「…時間稼ぎのために、ミスター・スドウと我々の命をリスクに晒し続けろと。解りました」

 まさに氷のような口調だった。回線越しでも明らかにその雰囲気を感じ取ったHOは、軽く首を横に振った。

 「詳細決定次第、追って連絡する。以上」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。