マチカネタンホイザですぞ♪ @Mati-Tan
イクノちゃんからの紹介でネイチャちゃんが実家で子猫を引き取ることになったよ
子猫ってかわいいよねぇ~お饅頭みたいで食べちゃいたくなりますよね♪
ネイチャちゃんなんてもっと面白いことになってますぞ~♪
(どこかの喫茶店で顔面に子猫を張り付かせているネイチャの顔の写真)
〇87 □128 ◇1931
私が毎週アルバイトをしている喫茶店はご年配のマスターさんが一人で営んでいたお店です。
私がアルバイトをするようになる前まではお一人でお店の事を全部こなしていたようなんですが、今は私がいるので力仕事やお店で使う材料の買い物なんかを任せていただいています。
買い物をするのは私が住んでるアパートの近くにある商店街、実は喫茶店もこの商店街の近くにあるので事前にマスターさんに電話をかけて何か必要な物があればお店に入る前に買ってから行くようにしているんです。
まだ見極めの難しい生鮮食品やコーヒー豆はマスターさんが信頼しているお店に連絡して用意しておいてもらうんですが、それ以外の物は私がお店に行って買っています。
この商店街にお店を構えている方達は皆さん喫茶店の常連さんでもあるので、伝えればすぐに品物を用意してくださいますし、普段の買い物でも顔を出すと喜んでもらえるので、普段の買い物もここでするようにしてるんです。
「あら茉莉ちゃん!いらっしゃいねぇ」
「こんにちは、おばあちゃん!えっと……」
「あぁ、喫茶店のでしょう?連絡をもらってこっちに用意してるから持ってくるわねぇ」
「わわ、ありがとうございます!あ、あの!私が持ちますから!」
「そぉ?それじゃお願いしようかしら」
「はい、任せてください!」
おばあちゃんが用意してくれていたのは喫茶店で出しているカレーに使うお野菜です、ニンジン玉ねぎジャガイモと基本のお野菜を揃えつつ、季節に応じて旬のお野菜を入れるのが喫茶店自慢のカレーライスなんです。
特に私のお気に入りの具はジャガイモです!これは一口サイズに切ったあと油で一度軽く素揚げにしていて煮込んでも形が崩れないほっくほくのジャガイモなんですよ!
「重いけど大丈夫かい?」
「はい、これくらい大丈夫です!」
「そうかい?それじゃまたおいでね?」
「はい、ありがとうございました!」
おばあちゃん夫婦が営む八百屋さんをあとにして、あとは時間までに喫茶店に向かうだけとなりました。
とはいえまだシフトの時間まではちょっとありますね……どこかに寄り道をするのも良いかもしれません。
「もしかしたら何か面白いものが見つかるかもしれませんしね、ちょっと寄り道していきましょうか」
さてどこに行こうか……なんて考えていた時、ふと私の耳に小さいですが何かの鳴き声が聞こえてきました。
「ん?これ……猫、でしょうか?」
私たちウマ娘は耳、聴力がとても敏感なんです。
普段生活する中でも大きな音というのは私たちウマ娘にとって普通のヒト以上の騒音なんですよ?
私が普段使ってる大きめのキャスケット帽も耳を隠す以外に耳を音から守る意味もあるんです。
まぁ、イヤーキャップとかをすれば良いんですけど、普段使いしないせいか、耳になにかつけるのはどうにも違和感があって……。
「えっと…………こっちかな?」
そんなわけで喧騒に紛れてしまうような小さな猫の鳴き声を聞き取った私は商店街の隙間にある路地裏に入りました。
一本路地に入るだけでそこはもうさっきまで賑やかだった商店街とは違って、密集した民家が連なる細く入り組んだ小道になります、なんだかこういう道って通るだけでワクワクしますよね!
「おーい、猫ちゃーん?」
怯えられないように声をかけながら声のする方にゆっくりと歩いていくと、商店街から見てすぐの電柱のそばにあるごみ捨て場から声が聞こえてきました。
「みゃぁ……みゃぅ~」
「わ、かわいい!」
そこにいたのはまだ生後数ヵ月くらいの小さい子猫でした、ただ……。
「でもこの子……捨てられたのでしょうか?」
その小さな猫はタオルの敷かれた段ボールの中にいました、近所のヒトが寝床として用意したにしては場所が場所ですし……。
猫は私の顔を見ると小さな体を目一杯動かして段ボールをよじ登って外に出ると、私の足首に体を押し付けたり靴ひもを咥えて遊び始めてしまいました。
「あ、あぅ……か、かわ……いや、でも……ど、どうしましょう?」
手にはこれからバイトに向かう喫茶店の買い物袋、それに喫茶店に猫をつれていくのは流石に……いや、でもここでこの子をおいていくなんて……。
「あ、あぅあぅあぅ~……どうしましょう?」
荷物を喫茶店に急いで持っていってもいいですが、その間にこの子がどこかに行ってしまったら心配ですし……かといって一緒に喫茶店に行くのはきっとマスターさんのご迷惑になりますし……。
「ううぅぅぅ……どどど、どうすればぁ……」
「あの……どうかしましたか?」
「……ほぇ?」
Side:イクノディクタス
私の名前はイクノディクタス、中央と呼ばれるレースで今も走り続けている一人のウマ娘です。
トゥインクルシリーズからドリームトロフィーリーグへと移籍した後も前と変わらず一つでも多くのレースで走れるよう、今もトレーニングを欠かしてはおりません。
今は学園を離れ同じチームで過ごした仲間達と、そのチームを率いていたトレーナーからの紹介で見つけたアパートで寮のように2人一組でルームシェアをしております。
「おや、あれは……?」
今日はそんなルームメイトであるターボはなんでもご実家の方の学友に合うために、隣室であるネイチャは実家の手伝いに行くということでそれぞれ3日ほど留守にし、タンホイザは何故かネイチャにくっついて共に出払っております。
思えばトレセン学園でチームカノープスに所属してから何をするにしても常に一緒に居た彼女たちが居ない日常というのは久しぶりですね。
ネイチャからは冷蔵庫に入りきらないほどの大量のタッパーに詰め込まれた料理を献立と共に渡され、何かあればすぐに連絡するようにと言われています。
ネイチャには掃除や炊事等でお世話になっておりますし、料理は非常に美味しいので大変ありがたいのですが……心の隅で「お前はおかんか!?」と思ってしまいましたね。
私とてウマ娘としてきちんとした栄養学を修め、日々栄養バランスの良い食事作りを心掛けていたのですが、どうにも私の料理は皆さんの口に合わない様子……おかしいですね、栄養は完璧なのですが……。
さて、現在は皆が出払って2日目、今日は消耗品のいくつかを買いにアパートのすぐ近くにある商店街へと来ていたのですが……。
「あの方は確か……同じアパートに住んでおられる方でしたね」
商店街の中ほどにある路地、八百屋の隣にあるガレージ兼倉庫と今日は臨時休業しているメガネ屋の間にあるそこは商店街の喧騒からは完全に隔離されたような静かな場所のようでした。
その奥で荷物を片手におろおろしている女性が見えたので足を止めてみると、どうやらなにか困っている様子。
そしてその横顔や着ている服装からその方が私と同じアパートに住んでいる女性であることがわかりました。
声をかけたことはありませんでしたが、アパートの他の住人の方と仲良さげに会話をしている姿を見かけた事がありますし、よく管理人である大屋さんを手伝って掃除や蛍光灯を取り替えるなどしているのを見かけたこともありました。
「なにかあったのでしょうか……?」
それほど親しい間柄というわけではありませんが、困っている様子を見かけたのならば助けるのも何かの縁というものでしょう。
「あの……どうかしましたか?」
「……ほぇ?」
私が声をかけたことでやっと背後に誰か居たことに気がついたのか、その……少々抜けた表情でこちらを振り向いた女性……いえ、この場合は少女でしょうか?と目が合いました。
「なにかお困りのようでしたので……」
「あ、あのあの!?えと、そのぉ……ど、どちら様でしょうか?」
そう言われて、そういえば今日はネイチャに言われて普段はあまりしない変装をしているのでしたね。
普段であればファンの扱いに慣れているネイチャや誰とでもすぐに話せるターボやタンホイザが居るのですが、私一人では多数のファンに囲まれても上手く対応できるかわかりませんから……。
しかし今はまだ街中、ここで姿を現してしまっては変装の意味もありませんし……なによりも騒ぎになればこの方にもご迷惑をおかけしてしまいますね。
「いえ、私は何も怪しい者ではなく通りすがりのただのウマ娘ですので」
「は、はぁ……そうなんですかぁ」
自分で言っておいて大変恐縮なのですが……大丈夫でしょうか、そんなにあっさり納得されるとこちらも心苦しいのですが……あぁ、今ならネイチャの突っ込みがとてもありがたいものなのだったと理解できます。
とはいえここで発言を撤回しても話が拗れてしまいますから、もうここは勢いで押し通しましょう。
「ええ、そうなんです。ところで先ほどからお困りの様でしたが?」
「あ!その、えっとぉ……」
「みゃぅ!」
「……猫、ですか?」
「あ、はい……そうなんです、けどぉ……」
少女の足元から声が聞こえたので見てみれば、確かに小さな子猫が靴ひもでじゃれている様子でした。
毛並みは三毛猫、見たところ生後2~3か月といった感じでしょうか?
「ふむ、見たところ野良……というよりも、捨て猫でしょうか?」
「はい……あ、ちちち違いますよ!?私が捨てたとかじゃなくて!?」
「いえ、それは大丈夫です。あなたがそのような事をする方には見えません。ふむ……鳴き声につられて立ち寄ったところ懐かれた、といったところでしょうか?」
「はい……そうなんです」
見たところ度胸?この場合好奇心が勝っているのか……随分と人慣れしていて私が近寄っても逃げる様子も無く、興味津々といった様子でこちらを見上げています。
そばに置いてある段ボールは雨風にさらされたのかひどく汚れており、中に敷いてあるタオルも同様。
捨てた人間の最後の情けなのかおそらく餌を入れてあったであろう小皿は空っぽで、自分で食べたのかはたまた他の野良にでも食べられたのか……。
「ふむ……それは買い物の途中なのでしょうか?」
少女が手に持っている買い物袋はパンパンに膨れ上がっていて、どうやら野菜の類が詰め込まれているようですね。
「いえ、実はこれからバイトがあって……それで、これもバイト先の買い物で……」
「……ではこの猫を飼うにしろ保護団体に預けるにせよ、ひとまずここからは移動しましょう」
「あ、そそそ、そうですね!えと……」
「この子は私が見ておきますので、まずはバイト先に一度連絡を入れてみてはいかがでしょうか?」
「は、はい!そうします……えっと……」
一先ずバイト先に連絡するように促してから、足元で小枝で遊ぶ子猫に手を伸ばしました。
子猫は私の指先をスンスンと匂いを嗅いでから小さな手で何度か叩く仕草を見せ、それが終わると体をこすりつけるようにしてじゃれてきました。
なるほど……私は今まで猫などの動物を飼うといった事をしてきたことはありません、ネイチャがよく猫の動画をウマホで見てにやついているのを横目にしていた程度でした。
ですが、こうしてじゃれてくる様子を見ていると確かにネイチャがにやけてしまうのも納得がいきますね。
そういえば、猫をもふりたいというのはわかるのですが、吸いたい……というのはどういった意味なのでしょうか?
「はい、はい……え、でも……はい、わかりました……お待たせしました!」
「いえ、それで?」
「えっと……私のバイト先は喫茶店なんですが、子猫も一緒に連れてきなさいって……」
「そうでしたか、とても良いバイト先ですね……では、行きましょうか」
私はさっそく子猫を今までいた段ボールに入れると、それをそのまま抱え込みました。
「あ、あのあの!?服が汚れちゃいますよ!?」
「構いません、洗えばいいだけですし……それで、喫茶店というのは?」
「あ、えと……こ、こっちです!」
そう言われて少女に案内されながら一度商店街の中に戻りました、時々好奇の眼差しを向けられることもありますが……まぁ、レースに出ている時ほどではありませんね。
「う~ん……どうしよう、うちで飼えるかなぁ……」
「……あの、不躾で失礼かもしれませんが……クラウンパレスにお住まいでは?」
「はひ!?え、えと……は、はい。そうですけどぉ……?」
「やはりそうでしたか、いえ……私もそこに住んでいるのです、あなたの事も何度か見かけていたので……よく大家さんのお手伝いをなさっていますよね?」
「は、はい!そっか……同じアパートの方だったんですね……」
「ええ、それで……大変心苦しいのですが……確か私たちが住むアパートはペット不可の物件だったかと」
「え……あぁ、そっか……うぅ、じゃぁどうしよう……」
「……まずは、この子を無事喫茶店まで送り届けましょう、それから考えればよいかと」
「そ、そうですね……あ、ここです!」
少女に案内されてたどり着いたのは商店街から少し歩いた先にある、一戸建ての住宅を改築して作られた喫茶店でした。
周りはすでに商店街からは離れているため静かなもので、時折近所の住民や仕事中のサラリーマンがちらほらと通り過ぎていきます。
「マスターさん、おはようございます」
「おや、茉莉さんおはようございます、それと……そちらは?」
マスターさんと呼ばれた方はカウンターの奥で作業していた手を止めるとこちらに来てくださいました。
「あ、えぇっと……」
「私はこちらの茉莉さんと同じアパートに住む通りすがりのウマ娘ですので、どうぞお気になさらずに」
「そうでしたか、ふむ……それで、そちらが子猫ですか?」
「あ、はい!そうなんですけど……」
抱えている箱の中を覗くと周りが気になるのか周囲をきょろきょろと見まわしていました、出会った時にも思いましたが中々好奇心が旺盛な性格のようですね。
「ふむ、生後3か月かそこらへんでしょうか……こちらをどこで?」
「えっと、商店街の裏路地で見つけて……」
「なるほど、ではそうですね……さすがに店内に置いておくことはできませんが、今日は一先ず奥の休憩室に置いておきましょう。茉莉さんお願いできますか?」
「あ、はい!それじゃついでに着替えてきますね……あの、運んでくださってありがとうございました」
「いえ、それほどのことではありません、どうかお気になさらず」
嬉しそうに子猫の入った箱を受け取ってお店の奥に行く茉莉さんを見送ってから、私もそろそろ帰ろうかと思ったところで、マスターさんが横からそっとタオルを差し出してきました。
「折角のお洋服が汚れていますよ、これでお拭きください」
「え、あぁ……ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ茉莉さんを助けてくださりありがとうございます。せっかくですからコーヒーの1杯でもどうでしょうか?」
「え、いえ……そんな、お構いなく」
「いえいえ、せめてものお礼ですよ……今は昼休憩の時間ですから他のお客さんもいらっしゃらないですし」
「あの……では、1杯だけ」
マスターさんの勧めでカウンターについた私は改めて店内を見渡しました、落ち着いた内装に品の有る家具。
どこか古めかしい雰囲気があるのはきっと年代物と思えるアンティーク家具で統一されているからでしょうか?
とはいえそれは不快なものでは決してなく、初めて訪れたお店だというのにどこか懐かしく落ち着いた気持ちにさせてくれます。
「どうぞ、こちらは私がブレンドした当店オリジナルとなっております」
「あ、どうも……」
カップを受け取ると香ばしいコーヒーの香りが漂ってきました、学園でたまにマンハッタンカフェさんのコーヒーをごちそうになることがありましたが、それとはまた違った感じですね。
「いい香りですね」
「そうでしょう?こちらは常連のウマ娘さんのお客様の要望でさわやかな香りであっさり飲めるものをと頼まれたものなのですよ」
「なるほど……うん、とても美味しいです」
「ありがとうございます……イクノディクタスさんほどの名ウマ娘さんに認められたのなら、箔がつきますね」
その言葉に思わずマスターさんの顔を見ると、笑いながらウィンクしておられました。
「……バレていましたか」
「ええ、私は何かとウマ娘さんとは縁のある人生を歩んできておりますので……それに、茉莉さんからあなたのお名前を度々聞くことがありますから」
「私のですか?」
「えぇ、茉莉さんはウマ娘さんのレースがとてもお好きなようで、他にもナイスネイチャさんやツインターボさん、マチカネタンホイザさんの事もよく常連のお客さんとお話しているようですよ?」
「そう、だったのですか……ありがたいです」
「ふふ、ただ茉莉さんは少々人見知りですので、ここでの出会いは秘密のままにしたほうがよろしいかと」
「そうですか、では引き続き私は通りすがりのウマ娘ということで」
「ええ、わかりました」
そう言ってマスターさんと笑いあいながらコーヒーを楽しんでいると、お店の奥から喫茶店の制服に着替えた茉莉さんが戻ってきました。
白のシャツに黒のスラックス、そして深緑のエプロンと……ピンポイントにあしらわれたエプロンの赤と金色の刺繍の色も相まって、なんだかシンボリルドルフ生徒会長を思わせる配色ですね?
「お待たせしました、マスターさん……それで、そのぉ」
「茉莉さん、まぁ落ち着いてこちらに。まずはコーヒーでもお淹れしましょう」
「あ、はい……ありがとうございます」
「ふむ……マスターさん、こちらで子猫を引き取ることは?」
私がそう聞くと、マスターさんも少し困った顔で笑いました。
「そうですねぇ……私としては寂しい老後を過ごす相手には良いのですが……喫茶店のこともあるので中々……」
「あぅ……やっぱり、そうですよねぇ……」
「となると、やはり保護団体に?」
「そうですね……」
「あうぅ……そうですよねぇ」
そういう茉莉さんは少し寂しい様子、確かに出会って間もないとはいえあれほど小さな子猫に懐かれたとあれば、多少の情が湧いてしまうのも致し方ないでしょうか。
「……それならば、少しいいでしょうか?」
「なんでしょう?」
確かに私や茉莉さんが住むアパートでは飼うことは出来ません、この喫茶店でもさすがに動物を飼うというのは衛生的に見て良くないでしょう。
ただ、私のすぐそばには丁度いい所に猫好きがいるのですよ……それも動画を見ただけでにやにやしてしまうくらいの。
「ちょっと心当たりがありまして……そちらに一度連絡をしてもよろしいですか?」
Side:イクノディクタス end...
「ふぉぉぉおおおわああああ!かわいいぃぃぃぃぃ」
「ね、ネイチャちゃん?」
「おぉ~ターボも見たい!み~た~い~!」
そこは住宅街の中にある喫茶店、その店内には夜も遅いというのに複数の人影があった。
そのうちの一人、通りすがりのウマ娘改めイクノディクタスが子猫の引き取り手に心当たりがあると連絡を取ったのはナイスネイチャだった。
連絡を入れて子猫の事を話すと二つ返事ですぐに向かうと返答され、一度商店街で合流してから再び喫茶店に戻ってきたのだが……。
「タンホイザはわかりますが、なぜターボまで?」
「ん?ターボは元々今日の夜までには帰って来るつもりだったぞ?そしたら駅でネイチャを見つけたんだ!」
「そうだったのですか」
どういうわけか駅にはナイスネイチャとマチカネタンホイザだけじゃなくツインターボもおり、結局いつものカノープスの面々で喫茶店に戻ってきたのだった。
ちなみに子猫を保護した張本人である茉莉はバイトの時間が終ってすでに帰宅している、本人は後ろ髪が引かれる様子だったが、マスターの説得により帰宅していた。
もし今ここに茉莉がいれば、尊みに溢れかえってたぶん息してないだろうことはマスターにも容易に想像できたのだった。
余談であるが、茉莉は結局このことが縁となり度々この喫茶店を訪れるようになったチームカノープスの面々と出会うことになるのだった……。
「皆さんコーヒーでもどうですか?」
「あ、ありがとうございま~す」
「ターボカフェオレがいい!」
「ターボ、あまり厚かましいことは」
「いえいえ、構いませんよ。イクノディクタスさんもどうですか?」
「いえ……さすがに今度はお金を払います。タンホイザもターボもちゃんと払ってください」
「は~ぃ……」
「ん~ターボはこのチョコバナナケーキも食べたい!」
「ええ、かしこまりました」
「まったく……ネイチャもいい加減帰ってきてください。その猫吸いとやらは家に連れ帰った後にでもできるでしょう……?」
「あはは~ネイチャちゃんいいなぁ~……写真撮ってウマッターにあげちゃお~」
「っは!?……いかんいかん、猫の魅力にやられちゃってたねぇ……ところでイクノ、この子猫どうしたの?」
「あぁそれは……まぁ、親切な方が見つけたんですよ。それで引き取り手をどうしようかとこのマスターさんと話していた時に、ネイチャならばと連絡したのです」
「へぇ~そうなんだ。ならその親切な人にもちゃんとお礼言わなきゃねぇ~」
「あぁ~……まぁ、その」
「すみませんが、その人は少しシャイな方でして……お礼は私の方から申し上げておきますよ」
「あら、そうなんだ……じゃぁマスターさんよろしくお願いしますね!」
「ええ、確かに」
「それにしても、三毛猫ですかぁ~……名前はミケちゃんですね!」
「え~そこはもっとこう可愛い名前にしたいなぁ……っていうか飼うのはネイチャさんなんですけど!?」
「ふむ、ホームズというのはどうでしょうか?」
「刑事を相棒に探偵にでもするつもりか?!」
「ならネイチャちゃんは何が良いの?」
「それはこう……み、みぃちゃん……とか……」
「……あはぁ~」
「……っふ」
「なんか文句あるのかお前らぁああ!?」
「ん~、ターボもそれはどうかと思うぞ?」
「た、ターボにまでダメ出しされたぁ……」
「そうですね、せめてもっと真っ当で可愛らしいものを」
「いや、そうじゃなくて……だってこいつオスだぞ?」
「……へ?」
三毛猫のオスは染色体の異常で生まれる個体で、古くは幸運と安全の守り神として船に乗せたりもしたそうです。
身体が弱い個体が多いそうですが、無事に育つと良いですね。
ちなみに子猫はネイチャが吸う前にお店に来た商店街のトリマーさんがきっちり洗っております。