その娘はバーチャルウマ娘でした   作:もにゃし

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  シルトマイヤー<セカライ3期生> @shiltMeyer

   今日は特売日でたくさん買い物してきました!
   それに懐かしい友達とも再会できたので嬉さいっぱいです!
   詳しくは今夜の雑談配信で!!

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#13

 

 ウマ娘には勝たなければならない刻がある……それは一族の悲願や宿願であったり、個人の憧れや願いであったり。

 はたまたライバルとの勝負や前人未踏の記録への挑戦であるかもしれない。

 彼女達はそんな戦いのために日々努力を重ね、切磋琢磨し己の限界への挑戦をやめることはない……そして、そんな戦いに挑むウマ娘がまた一人。

 

「ふっふっふ、ついに……この日がやって来ましたね」

 

 開け放たれたカーテンと窓、その先にあるベランダを越えて広がる空は雲ひとつない快晴の空。

 差し込む朝日に照らされるベランダで不敵な笑みを浮かべるのは立華茉莉、この部屋に住むウマ娘だ。

 彼女はその笑みのまま手に持ったコップの中身を一気にあおる、もちろん腰に手を添えるのは忘れない。

 

「むぐっむぐっむぐ……ぷふぅ……やっぱり気合いを入れるにはこれですね!ウマッターでスペシャルウィークさんがおすすめしていた牛乳なだけはあります……ちょっとお高いですが」

 

 そう言って晴れ晴れとした顔を見せる茉莉の目には気合いの二文字がありありと浮かんで見えた、なお口許に白いお髭ができているのはお約束というものである。

 今日のためにとわざわざゴルシ印のネット通販で購入したその牛乳は、普段買っている牛乳の定価の3倍はするお高い逸品である、もちろん容器は紙パックではなくガラス瓶だ。

 決済した直後は何で買ってしまったのかと地味に後悔してベッドで転がり回っていたのだが、今ならそれも些細なことだと思っていることだろう。

 

「気合い十分仕上がり上々、コンディションもばっちり。さらにこの恵まれた天候!これはもう私の勝利も約束されたも同然ですね!」

 

 気分上々に部屋に戻った茉莉は手早く朝食を住ませていつもの衣服……ではなく運動用のジャージ、でもなくカジュアルながら動きやすい服装に着替えて普段使いするには少々不向きなくらい大きいトートバックを手に取った。

 

「さぁ……いきましょう、我々の戦いの舞台へ!」

 

 などと気合い十分に訪れたのはウマ娘が集うレース場……なんてことはもちろん無くて近場にある商店街、その中にあるスーパーの前だった。

 創業100年を越える老舗で敷地面積も一番大きくて品揃えも十分、日々チラシの隅々を舐め回すように見渡し良品を探し当てる歴戦の主婦から健啖家で知れ渡っている往年の名ウマ娘達まで満足させることに定評のある商店街の顔といえる名店。

 ゆりかごから墓場までお世話になった住民も珍しくないその店の前には茉莉だけではなく、多くの買い物客がその門が開くのを虎視眈々と待ち構えていた。

 その場の雰囲気はすでに朝の清々しい空気を吹き飛ばしグツグツと煮えたぎるような情熱と背筋の凍るような緊張感が場を支配しており、朝練で通り掛かったウマ娘さえも足を止めるほどの異様さに満ちていた。

 

「た……タマモ先輩……なんなんです、あれ?」

 

「あぁ、なんや……自分これ見るの初めてか?これはこの商店街の恒例行事や」

 

「こ、こんなに朝早くから、なんの意味が……?」

 

「ここらへんで住む上での通過儀礼や。見てみぃ……何年も地獄を経験してきた奴らや、面構えが違うわ」

 

「…………いえ、でも……これスーパーの開店待ちですよね?」

 

「今日は月に一度の特売日やからなぁ~……まぁ、すぐに馴れるわ。ほないくで~」

 

「あ、はい!」

 

 などという一般通過タマちゃんがいたりいなかったりしたが、スーパーに集う買い物客達は当然気にする素振り一つすることはない。

 商店街で一番大きな老舗スーパーの特売日、それも品揃えも豊富となれば集う客のボルテージも否応もなく上がるというもの。

 青果に魚介、肉類もさることながら各種洗剤や細々とした日用品……その数々が値引き価格で売買される特売日。

 この日だからこそ買える品々を目当てに集まるのはけして茉莉だけではない、集う者達の目は一様にギラギラと輝いていた。

 

「皆さんもやる気十分みたいですね……今回も厳しい戦いになりそうです」

 

 それに負けじと茉莉も不敵な笑みを浮かべながらお店の前に貼り出されている今日の目玉商品のチラシに目を向ける。

一番目を引く商品も気になるが、実はもっとも注目すべきはチラシの下の方に並んだ商品達だ。

 そこには普段使いする消耗品達が並んでいる、上にある目玉商品は大きく取り上げられるだけあってか普段は少し……ほんのすこ~しだけお高くて日常的に買うヒトが多いとは言えない商品なのだ。

 とはいえ、やはりそこは老舗のスーパーたる所以、目玉商品はどれもこれもそう呼ぶにふさわしいラインナップ、そしてそれをいかに目に留まらせるかを考え抜かれたチラシのデザインは数多の買い物客の目を釘付けにしてしまっている。

 

「くっくっく……目玉商品は確かに中々手を出せない商品が多いですが、そこに惑わされていてはまだまだ二流。そんなことじゃぁこの戦場で戦い抜くことなどできないのですよ……ふふふふふ」

 

 などと怪しい独り言を呟きつつ掲示板に群がる人だかりの外から目当ての商品の値段を確認していく。

 

「えっとぉ……シャンプーとトリートメントがお安いですね、キッチンペーパーと洗剤は……あ、芳香剤ほしいなぁ」

 

「あ、ティッシュも安いからおすすめなの!」

 

「確かに!この際まとめ買いがベストですね」

 

「あと果物も今日はお買い得なの!ビタミン不足にはぴったりなのー!」

 

「そうですねぇ~……最近食事が偏りぎみですし、それもよさそうですね」

 

「そうそう、あとこっちのタフネスバーもおすすめなの!これ一本でお腹を満たせて栄養もばっちり!あたしのイチオシ商品なの!」

 

「う~ん、タフネスバーは確かにいいですけど、さすがに普段食べるほどじゃ…………ん?」

 

「でもでも、運動以外でもバイトの空いた時間で食べたりできるから是非是非買っていくといいの!」

 

「…………あのぉ」

 

「なの?」

 

「…………アイネスさん、いつからこちらに?」

 

「ん~……最初から、なの?」

 

「……ふぎゃぁあああ!?さ、最初から!?いたなら声かけてくださいよぉ!?」

 

「いやぁ、なんかノリノリで解説してたから……つい、なの?」

 

「うぅぅ……恥ずかしい……」

 

「まぁまぁ、ドンマイ!なの」

 

 なんて茉莉を雑に励ましているのはアイネスフウジン。

 ここ府中にあるトレセン学園に所属していたウマ娘であり、一年で一人しか生まれないダービーウマ娘の一人なのだ。

 現在は足の故障から復帰し、その間の鬱憤を晴らすような素晴らしい走りを続けており、ドリームトロフィーでかつての同室であり親友兼ライバルでもあるメジロライアンとの名勝負を演じている。

 

「茉莉ちゃん随分と久しぶりなの!」

 

「そ、そうですね……配達のバイトでご一緒して以来ですか?」

 

「そうなの!」

 

 そう、茉莉は以前やっていた配達のバイトでアイネスと共に働いていたのだった。

 その頃はいつも何かしらの失敗をしてはバイト先を困らせていて、アイネスに助けられた事も一度や二度ではなかった。

 アイネス自身も数々のバイトをこなしてきた経験と面倒見のよさから茉莉の事を気にかけていて、茉莉がバイトを辞めることになった時は大層悲しんだものだった。

 

「まさかこんなところで会うなんて……アイネスさんもこちらに買い物に?」

 

「そうなの、本当はライアンちゃんも来る予定だったんだけど……メジロの実家の方に行かなくちゃいけなくなっちゃって」

 

「あ、あぁ~……そ、そうなんですねー……それは残念でしたねー……」

 

「ん?なんか茉莉ちゃん変じゃない?」

 

「そそそ、そんなことないですよ?」

 

「そう?ん~……まぁいいかなの!」

 

「っほ……」

 

「そうだ!一緒にお買い物しようなの!」

 

「……それってつまり、特売日の目当ての品を二人がかりでってことですか?」

 

「ヒト手は多いに越したことはないの、ここは生きるか死ぬかの戦場なの!」

 

 そう言って拳をグッと握りしめるアイネス、背後にはメラメラと熱い炎が燃えたぎっていた。

 

「随分とやる気ですね……な、なにかあったんですか?」

 

「妹達にプレゼントを買うために今節約中なの!ここでの買い物が終わったら一度寮に戻って、それから次は3駅隣のスーパーのタイムセールに行くの!」

 

「あ、相変わらずの遠征ですね……それじゃ、妹ちゃん達のためにもがんばりましょう!」

 

「なのーっ!」

 

 そんな様子で共同戦線を結んだ二人のウマ娘の前に敵などいない……と思われたのだが。

 そこは彼女達よりも長くこの地に住み、数々の修羅場(特売日)を潜り抜けてきた歴戦の猛者(主婦)が集う鉄火場(スーパー)

 いかにフィジカルに恵まれたウマ娘であろうと柔よく剛を制すが如く、ヒトは時にウマ娘を圧倒するほどの力を見せる事があるのだ。

 

「はわわ!?そ、その商品わぁあ!?」

 

「ま、茉莉ちゃん!あっちがお買い得なのー!」

 

「それは私がもら、ちょ!?おさな……ふぎゃぁ!?」

 

「っく、茉莉ちゃんの敵討ちは私が!おりゃぁあああ!」

 

「うぅ、アイネスさん……わ、私だって負けません!」

 

「よーしゲットなの!……ちょ、まって!?服っ!引っ張るのは反則なのー!?」

 

「あ、ちょっと!?その商品は私がっ!は、離してくださーい!?」

 

「ああ!かごの中身はあたしのなのー!取っていくのは反則なのー!!」

 

 柔よく剛を、否……そこにあったのは豪と業、醜き生の本能とも言える何かの骨肉の争いであった。

 民度の低さはヒトとしての尊厳を容易く見失わせ、もはやルール無用の乱痴気騒ぎ。

 己が求めるものに手を伸ばし、他者を押し退け、ただひたすらに欲望のままに。

 苛烈を極める勢いはとどまることを知らず、手に入れた物を奪われまいとヒトは我先にとレジへと押し寄せる。

 その濁流を正し、清流へと変えて淀みなく会計作業を進める店員達のなんと精悍なことか、彼らこそまさに地獄を知る顔をした者達なのだ。

 

「出勤から一度も休めてない……でもやってやる、疲れていてもレジを打て!!」

 

「この客達を……駆逐してやるっ……店内から、一人残らず!」

 

「すみません!蒸かし芋食べてて遅れましたー!」

 

 などという、なんとも悲壮感漂う店員(一名はのんきに芋を食っていた)がいたとかいないとか……。

 さて、そんな魔境と化した店内での戦いを終えた二人はといえば……。

 

「…………ぅぁあ~……」

 

「…………なのぉぉ……」

 

 ものの見事に力尽き、口から魂が半分以上抜け出しながら店前のベンチで骸をさらしていた。

 

「……茉莉ちゃぁ~…ん……だ、だいじょうぶぅ?」

 

「え、えぇ……な、なんとかぁ……」

 

「はぁ……今日はいつにもまして激戦だったの……」

 

「で、ですね……歴戦の主婦の皆様、侮りがたしです……」

 

「で、でも……目当ての物は買えたの……ミッションコンプリートなのぉ……」

 

 お互いが座るベンチの足元に置いたパンパンに膨れ上がった袋、それが今回の戦利品だった。

 

「さて……それじゃ、私は行くの!茉莉ちゃん……大丈夫?」

 

「は、はい……わ、私もこの後予定があるので……それじゃ、また」

 

「うん、またなの!」

 

 二人はそれぞれの荷物をもって帰路に着いた、その足取りは重いながらも、どこか誇らしげに見えたのだった……。

 

 

 

~*~*~*~

 

 

 

 side:アイネスフウジン

 

 

 

 ふらふらとした足取りになりながらお店の前から去っていくその背中をあたしは見えなくなるまで見送った。

 立華茉莉ちゃん、出会ったのは長期で受けていたアルバイトの合間に受けれる配達のバイトを始めた時だったの。

 正直出会った当初の印象は……うん、この仕事向いてないなぁって感じだったかな?

 お世辞にも要領が良いとは言えなかったし、教えられても同じミスをすることが多かった……それで怒られて萎縮しちゃってますますミスが多くなるという典型的な悪循環。

 ウマ娘の割にはあんまり足も速くない……なんて言っちゃったらちょっと上から目線で傲慢かもしれないけれど、色々なバイトを経験してきたから、ウマ娘のそういう所を期待している会社さんやお店があるのも事実なの。

 あたし自身も長期で入っているバイト先はそういう目で見ないヒト達だけど、何度かは露骨にウマ娘であることに期待して仕事を割り振ってくるお店に当たったこともあったからね。

 あたし達ウマ娘だって誰も彼もが足が速い訳じゃない、けどそうとは見てくれないヒト達が多くいるのも事実なの。

 それがわかっていたから、あたしは茉莉ちゃんを気にかけるようにしていた。

 実際一緒にバイトをするようになって、一生懸命なところとか頑張り屋な所とか、あと意外と頑固で一度やると決めたら諦めないところとか……色々な面を知っていくうちにあたしも自然と応援するようになって、困っていたら積極的に声をかけるようになっていった。

 そんなある日、いつものようにバイトに行くと茉莉ちゃんが作業中にちらちらとこちらを見てきた時があった。

 

「どうしたの?」

 

「ふひぇ!?」

 

「あたしに何か用なの?」

 

「あ、いえ……ななな、なんでもないでしゅ!」

 

「そうなの?……ん、じゃぁちゃちゃっとお仕事終わらせちゃうの!」

 

「は、はい!」

 

 その後も配達の途中とか荷捌き場で仕分けをしているときとか、ちょくちょくこっちを見たり話しかけようとしていたり……その日一日は結局終始そんな感じだったの。

 

「んぅ~~……っと!お疲れさまなのー!」

 

「お、お疲れさまでしたぁ……」

 

 夕方過ぎに終わったあたし達はそろってお店を後にしたの、あたしの次のバイト先と茉莉ちゃんの帰り道がちょうど同じ方向だったからその日は一緒に帰ったの。

 

「茉莉ちゃん、今日もいろいろやっちゃったの」

 

「えぅ……ご、ごめんなさい」

 

「ううん、失敗は誰にでもあるの!次頑張ればいいの!」

 

「でも、私……」

 

「茉莉ちゃん?」

 

 立ち止まった茉莉ちゃんへと振り返る、夕日で照らされたその輪郭は淡く輝いていて日が透ける髪の毛は普段は気がつかなかったけどちょっと赤みが強いことに気がついて、場違いだけど綺麗だなぁって思ったの。

 

「あの、アイネスフウジンさん!」

 

「は、はいなの!?」

 

「あの、えと…………せ、先週のレース見ました!すっごくかっこよかったです!!」

 

「先週のレースって……わぁ!見てくれたんだ!ありがとうなの!あ、でも……まだオープンのレースだよ?」

 

 そう、あたしはその頃正式に担当になってくれたトレーナーとメイクデビューを無事に済ませたばかりだったの。

 最初は仮のトレーナーなんて都合のいい言い分で丸め込んで自分の成長のきっかけになれば、なんて思っていたけど……翌日にはとんでもない量のトレーニングメニューを作ったり、常にあたしの負担を考えて付き合ってくれたり……思えばそういう変に頑固で一生懸命なところは茉莉ちゃんそっくりなの。

 でもまさか、レースをバイト先の友達に見られていたなんて、ちょっと嬉し恥ずかしなの!

 

「で、でもでも!すっごくかっこよくて!終始逃げでペースを作って他のウマ娘達に消耗戦をしかけつつ自分は脚を残して一息いれる、そして最後の直線でこう……ぎゅーんってスピードあげてラストスパートに入って行く所なんて、テレビの前で思わず大声で応援しちゃいました!」

 

「あはは、ありがとうなの……茉莉ちゃんもやっぱりレースが好きなの?」

 

「は、はい!でもその……私、速く走れないから……あの、アイネスフウジンさん!」

 

「ん、どうしたの?」

 

「その……どうしたら、貴女みたいにかっこよく……なれますか?」

 

「かっこよく?」

 

「は、はい……レースで先頭を走ってるアイネスフウジンさんは自信に溢れてて、ただまっすぐ前だけを見据えてて……バイトをしている時も自信に満ちていて……どうしたら、そんなに……」

 

「う~ん……かっこよく、かぁ……」

 

「私……昔から……全然ダメダメで、それで……バイトも今日みたいに失敗ばっかりで……」

 

「茉莉ちゃん……」

 

 うつむく茉莉ちゃんをあたしは静かに見つめる、茉莉ちゃんがそんなに悩んでいるとは思わなかったから。

 いつも一生懸命で、どれだけお店のヒトやお客さんに怒られてもめげずに笑顔を浮かべていたけど、その裏側ではこんなに悩んでいたなんて……。

 

「……ねえ茉莉ちゃん……あたしにはね、妹がいるの」

 

「妹……さん、ですか?」

 

「うん!しかもしかも、双子なの!とってもかわいいのー!」

 

「双子の妹さん……ふふ、きっとアイネスさんに似ててかわいいんでしょうね」

 

「うん!」

 

 実家で暮らす二人の妹、昔はいっつも「ふーちゃふーちゃ」って言いながらあたしの後ろをくっついて歩いてばっかりだった。

 でもあたしのトレセン学園入学をお母さんと一緒に熱心に後押ししてくれて、すこしでもあたしの負担を軽くしようと家事を手伝ってくれる二人のかわいい妹。

 

「あたしはね、走ることがすっごく好き!先頭を走ってるとドキドキして、ゾワゾワして……でもね、最初はレースの世界に来るつもりはなかったの」

 

「え?」

 

「あたしの家はお母さんが体が弱くて……妹達も小さかったから、レースは中学校までで高校も手に職を持てるように商業系の学校に進学するつもりだったの……でもね、家族はそんなあたしを誰よりも見てくれていたの。あたしの「大好き」を応援してくれたの。誰よりも応援したいっていうあたしの背中を家族が押してくれたの」

 

「アイネスさん……」

 

「だからね……茉莉ちゃんのいうかっこよさが何かはあたしにはわからないけど……あたしは、そんな家族のために走る。走ることは大好きだけど、今はそれ以上に家族や応援してくれる皆のために走るって決めたの、妹達がかっこいいっていってくれる背中をもっといっぱい見せてあげたいの」

 

「……すごいですね、アイネスさんは……私なんかと大違いです」

 

「そんなことないの!茉莉ちゃんだって一杯頑張ってるし、誰よりも一生懸命なの!それは一緒にバイトをしているあたしが一番知ってるの!」

 

「アイネス……さん」

 

「それにね、きっといると思うの!そんな茉莉ちゃんの背中を精一杯追いかけて応援してくれる誰かが……茉莉ちゃんが気がついてないだけなの、現にここに一人いるの!」

 

 そういって胸を張って見せれば、呆然と私を見ていた茉莉ちゃんがクスッと笑ってくれたの。

 

「ふふ……もう……そっか、だから……そんなにかっこいいんだなぁ」

 

「なの?」

 

「……私も、なれるかな……そんなかっこいいお姉ちゃんに」

 

「なれるの!だって……一生懸命頑張る茉莉ちゃんの背中はもう十分かっこいいの!それは私が保証してあげるの!」

 

「……アイネスさん、ありがとうございます。私……頑張ってみます」

 

 そう言って顔を上げた茉莉ちゃんの晴れ晴れとした笑顔はとっても優しくて、かわいくて……。

 

「あ……うん!」

 

 ちょっと見惚れちゃった……なんて、恥ずかしくて内緒なの!

 ただ、まさかそんな話をした数日後に茉莉ちゃんがバイトを辞めちゃうなんて思ってもみなくて、聞かされた時は動揺しまくりテンパりまくりで茉莉ちゃんにもお店のヒトにも迷惑かけちゃったのはいい思い出なの。

 

「……ふふ、茉莉ちゃんの背中が前よりもっとかっこよく見えるの、きっとあれからもいっぱい頑張ってる証拠なの……よーっし!あたしもまだまだ頑張るのー!」

 

 なんて気合いをいれているとポケットにいれてたウマホがブルブル震えてるのに気がついた、出してみると画面に出ていたのは今日のお買い物をドタキャンしてくれたあの親友の名前。

 

「よっと、はろはろー!どうしたのライアンちゃん?」

 

『あ、アイネス!今日はごめんね……急に予定が入っちゃって……』

 

「んーん、大丈夫なの!そっちは用事は済んだの?」

 

『あ、うん。それでたしか3駅隣のスーパーも行くんでしょ?そっちで合流できればとおもってさ』

 

「わぁ!それは大助かりなの!ライアンちゃんがいればいつもよりもいっぱい買えるのー!あ、でもそれなら今いるスーパーに来てくれた方がいいかもなの、ちょっと荷物が多いから」

 

『あはは、荷物持ちなら任せてよ!それにしてもそんなに一人で買ったの?』

 

「ううん、今日はお友達と偶然会って一緒に買い物したの、壮絶な戦いだったの……」

 

『壮絶って……ま、まぁそういうことなら……ところで友達って?』

 

「それはね……あ~……うん、内緒なの!」

 

『えー?教えてくれてもいいじゃないか?』

 

「内緒ったら内緒なの!ふふふ……」

 

 

 

 side:アイネスフウジン end...

 

 

 

~*~*~*~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

配信準備中、もうちょっと待ってね

 

 

 

 

 

 

 

    ・ライブ
       

 チャット∨

 

 

 

『特売日完全勝利!雑談』

 

 シルトマイヤー【セカンドライフ3期生】  メンバーになる   チャンネル登録

 チャンネル登録者数 9.14万人

 

 

 

「それでね、お店を出た後は友達と二人でベンチでグロッキーになっちゃってね」

 

 コメント:えぇ……

 コメント:府中こわ……

 コメント:ウマ娘と互角に戦える主婦さんやべぇ

 コメント:スーパー府中人ですか?

 コメント:府中は魔境、はっきりわかんだね

 コメント:客もやべぇが店員もやべぇ……

 コメント:なんか巨人と戦ってそう

 

「いやぁ、歴戦の皆さんは本当に手強いですよ……お友達と一緒じゃなかったら生きて帰れたかどうか……」

 

 コメント:スーパーでの買い物でそんな悲壮な覚悟されても……

 コメント:マイヤーちゃん生きてっ……!

 コメント:買い物一つで生死を覚悟する街、府中

 コメント:ゴッサムシティか何かか?

 コメント:開けろ!デトロイト市警だっ!!!

 コメント:クソデカコナー君は帰ってもろて

 

「いやぁ~でもお陰でお得な商品がいっぱい買えましたし、そのあとも商店街のお店でいっぱいサービスしてもらいましたから、家の冷蔵庫も戸棚もパンパンです!」

 

 コメント:食料の貯蓄は十分か?

 コメント:きっと1週間かそこらで大体マイヤーちゃんのお腹に消えるに俺の魂をかけるぜ

 コメント:そんな冷蔵庫で大丈夫か?

 コメント:大丈夫だ、問題ない

 コメント:(冷蔵庫が空になる)覚悟はいいか?オレはできてる

 

「もう!そんなに食べないですよぉ!まったく~……そんな意地悪なヒトばっかりなら最後にしようとしていた告知はメン限だけでしますよぉ~?」

 

 コメント:そんなぁ!?

 コメント:正直すまんかった

 コメント:すいゃせんすいゃせん!

 コメント:悪いのはこいつなんです、僕は悪くないんです!

 コメント:わーマイヤーちゃんとってもかわいいなぁ!だから告知して?(ハート)

 コメント:っよ!マイヤーちゃんは日本一!

 コメント:手のひらクルックルで芝

 コメント:煽て方が雑で芝

 

「ふふ~ん、告知を聞きたいならメンバー登録してくださいねー?登録方法は概要欄のメンバー登録の案内からどうぞ~」

 

 コメント:ちゃっかり宣伝しててえらい!

 コメント:既に入ってるんだよなぁ

 コメント:ちゃっかりしてて芝

 コメント:どや顔マイヤーちゃんかわよ

 コメント:かわいいですね!メンバー登録してきます!

 

「あはは、まぁお遊びはここまでで~……それじゃ、最後に告知を。メンバー限定だけで行っていたASMRの配信を近々普通の配信でも行う予定です、具体的には二本立てで前半は一般、後半はメンバー限定となります。あとそのASMRは後日メンバー限定でボイスとして販売も予定してますので、これを機会にメンバー登録していただけるとありがたいです」

 

 コメント:まじか!?

 コメント:これはメンバー登録せざるをえない

 コメント:光の速さで登録したわ……光回線だけに

 コメント:寒々マウンテン

 コメント:おや今日は雪が降る重バ場ですねぇ

 コメント:芝も凍りつくわ

 コメント:お前ら厳しくない?

 

「はいはい、そろそろ今日の雑談配信は終わりますよ~?明日は先日もらったスパチャ読みと届いているマシュマロ読みの配信なのでそちらも是非。高評価とチャンネル登録、ウマッターのフォローもよろしくお願いします!それじゃお相手はセカンドライフ3期生のバーチャルウマ娘、シルトマイヤーでした!皆おつまいやー!」

 

 コメント:おつまいやー!

 コメント:っよ!

 コメント:おつまいやー!!

 コメント:っよ!乙舞屋!!

 コメント:っよ!乙舞屋!

 コメント:っよ!

 コメント:おつまいやー!!

 コメント:おつ!

 

 

 

 

 

 

#13 その背中はきっと誰かが

 

応援してくれているはずだから

 

 

 

 

 

 




 謎のお姉ちゃん力でマイヤーちゃんの後ろに応援する誰かを無意識に感じとるアイネスさんマジお姉ちゃん。
 同じ一般家庭出身であり、境遇は違えどもレースを諦めるかどうかの岐路に立ったことがある二人。
 諦めた娘と諦めなかった娘、立った一つの掛け違いで立場が変わっていたかもしれない二人……なんて、ちょっと考えてもみたり……。
 というわけで…………久しぶりの更新となりましたご無沙汰しております……諸々リアルでの諸事情によりなかなか執筆の時間がとれず、ネタを考える暇もなく……。
 最近ようやくすこし余裕が出てきましたので、前ほどの更新頻度は難しいかもしれませんが、今後ともお付き合いいただければとおもいます。
 お待たせしてしまった皆さんへのせめてもの罪滅ぼしとして最近面白くて徹夜で勉強しちゃってるPixAI.Art様というAIイラスト作成サイトで呪文を駆使して作った主人公ちゃんとマイヤーちゃんのイラストを貼っておきます。


 <立華茉莉>
 
【挿絵表示】

 
【挿絵表示】


 <シルトマイヤー>
 
【挿絵表示】

 
【挿絵表示】


 使用サイト・ツール:PixAI.Art様(ブラウザ版・アプリ版)
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