その娘はバーチャルウマ娘でした   作:もにゃし

4 / 19


  シルトマイヤー<セカライ3期生> @shiltMeyer

   私と夕の木のお二人、夕日飛鳥さんと楠楓さんのグッズが3期生第1弾として
   発売されることが決まりました!
   とってもかわいいグッズが多いので私も今から楽しみです。
   皆が買わないと、私が全部買っちゃうんだから!

    〇68  □109  ◇1248





#03

 

 いつも通り雑談配信を終えた私はベッドで配信内容の振り返りを行っていた。

 するとウマホにマネさんから通知が来た、どうやら明日の午後に事務所に顔を出してもらいたいらしい。

 

「ん~……なにかあったっけ?」

 

 最近は配信にも慣れてきて昔のようなポンはしなくなってきたはずだし……案件の打ち合わせとかは聞いてないからなぁ……なんだろ?

 

「ん~~~……あ、グッズ!」

 

 そこで思い出したのがセカンドライフが公式に出しているファン向けのグッズだった。

 CDやボイス、ぬいぐるみにポスターやキーホルダー等々色々なグッズが作られているのだが、そういえば近々その見本品が会社に届くから一度確認してほしいって連絡が共有メッセージで届いてたっけ?

 私のグッズなんて売れるのか怪しいけど……まぁ、作ってもらって嫌というわけじゃないし、むしろ光栄に思うっていうか……私も一応それなりのバーチャルウマチューバーになれてきたのかなぁって朧気ながらに実感してしまう。

 

「……ふふふ、どんなグッズになってるのかな~」

 

 まだ見ぬグッズを思い浮かべながらベッドに潜り込んでライトを消す。楽しみ半分恐れ多い半分な気持ちでその日は眠りについた。

 

 

 

~*~*~*~

 

 

 

 翌朝、お気に入りのキャスケット帽にゆったりサイズのパーカーという、いつもの出で立ちで家を出る。

 最近は快晴続きで綺麗な青空が多いので、私は気分も上々に事務所へと向かった。

 事務所は府中から電車で東京方面にちょっと行ったところにある駅前の雑居ビル。なんと1フロアではなくビルを丸々一つ使っているのだ。

 中には社員が仕事をしている事務フロアだけでなく、配信も行える完全防音の個室が並ぶ配信フロアもあり、なんと地下にはある程度の人数が入れる録音ブースと調整室も備わっている。

 他にも社員がくつろげるスペースとか、小さいけどレッスンを行えるレッスンルームまでそろっている。

 人によっては配信のほとんどをこの事務所に来て行っている人もいるし、突発的な機材トラブルの際に利用したりできるようになっている。

 もっとも、私はバーチャルウマチューバーになる前にあれこれと興味を持ったものに手を出していた時期があり、その時ゲーミング用PCの作り方とか、実況配信の仕方や機材の取り扱いについても調べて試していた時期があったので、今のところ利用したことは無い。

 

「……おはよう……ございます」

 

 なんで事務所とか会社って、午後でもおはようございますって言っちゃうんだろうね?

 事務フロアに顔を出すと、何人かの社員さん達が仕事をしたりモニターを見ながらあれこれ話し合いをしているのが見えた。

 そのうちの一人が私が入ってきたことに気が付いてぱたぱたと近づいてくる。

 

「お待ちしてました、マイヤーさん」

 

「マネさん、おは……こ、こんにちは」

 

「ふふ、おはようございます。早速ですがこちらに」

 

「は、はい!」

 

 彼女は私がデビューした頃から、いやデビュー前からお世話になっているマネージャーさん。

 クールビューティーという言葉がよく似合う、綺麗に整えられた黒髪を一つに束ねてスーツをきっちり着こなしたお姉さんだ。

 一見とっつきにくく見えるけど、とても優しくて人見知りでコミュ障な私にも嫌な顔一つしないできちんと向き合ってくれる。それは他の人にも同じみたいで彼女は社内でもとても慕われるマネージャーさんなのだ。

 

「ご足労ありがとうございます、すでに他の二人も来ていますから」

 

「は、はい……他の二人?」

 

「ええ、マイヤーさんを含めた3人のグッズが出来上がったので。ただあの二人のマネージャーが今日は打ち合わせで都合がつかないので、今日は私だけの立ち合いとなっています」

 

「あ、は……はいぃ」

 

「……いい加減、そろそろ慣れましょうよ?同期ですよ?」

 

 私の反応に呆れた顔で反応するマネさん、そんなお顔もクールで素敵ですぅ……。

 

「はぁ……私の顔を見て現実逃避しないでください」

 

「あぅ……ご、ごめんなしゃ……」

 

「はいはい、さっさと行きますよクソ雑魚ナメクジ」

 

「ひ、ひどい!?」

 

 マネさん、すごく優しいしクールビューティーなんですけど……こう、毒舌というか……昔はほんと頼れる優しいお姉さんだったのになぁ……。

 なんて昔の思い出で現実逃避しているうちに、気が付けば会議室に到着したらしく、私は背中を押されて部屋の中に連れ込まれていた。

 

「お、マイヤーちゃん。やほー」

 

「あ、マイヤーちゃん。お疲れ様です」

 

「は、はい……その、きょ……今日はお日柄もよく!」

 

「お見合いか!」

 

「ひぅっ!?」

 

「こらこら楓、マイヤーちゃん怖がってるでしょ?」

 

「あはは、めんごめんご」

 

「大体楓は」

 

「あ~ほらほら飛鳥!今日はグッズの確認があるからさ?」

 

「まったく……」

 

 開幕からかっ飛ばしているのは私の同期で同じバーチャルウマチューバーの楠楓(くすのき かえで)さんと夕日飛鳥(ゆうひ あすか)さんの二人。

 彼女たちはそれぞれ活動しつつ二人で夕の木ラジオというユニットを組んでいる。

 配信もそのまま夕の木ラジオというタイトルで行っており、色々な企画やアンケートを使ったラジオ番組風の配信をしているんだ。

 なんでも二人とも幼馴染で、バーチャルウマチューバーになる前はWebラジオを自分たちで作って配信していたんだって……すごいなぁ。

 

「お待たせしました、こちらが今回出来上がった皆さんのグッズとなります。手に取って確認をお願いしますね」

 

 そう言ってマネさんが持ってきたのは両手に抱えた段ボールいっぱいに詰め込まれた私たちのグッズ。

 3人分でこれとなると、他の同期の人達の分も合わせたらかなりの量になるんじゃ……?

 

「は~こりゃまたいっぱいだぁ」

 

「へ~こんなにあるんだ……あ、この人形の楓かわいい」

 

「うわぁ……私こんな顔したことあるぅ?」

 

 段ボールから出てきたのはすごくかわいい笑顔の人形の楓さん。デフォルメされてるけどキャラクターの特徴がよく再現されている。

 私も試しに段ボールからグッズを取り出してみた、キーホルダーにアクリルスタンド、缶バッチにプラ製の栞等々……ふわぁ……こうして実物になってるのを見るとちょっと恐れ多いです。

 

「わぁ~マイヤーちゃんの可愛い!」

 

「ほほう、見事な出来ですな~」

 

「ひゃぅ!?」

 

 ついついグッズに夢中になってたらいつの間にか飛鳥さんと楓さんに挟まれていました……はぅ、いい匂い……。

 

「あはは、急にごめんごめん。でもよく出来てる人形だよね」

 

「そそそ、そう……ですね」

 

「でもな~……こうグッズを見ててもさ……やっぱマイヤーちゃん本人もめっちゃ可愛くない?」

 

「あ、それボクも思った」

 

「でしょでしょ~?これはなかなかに卑怯というものですな~飛鳥さんや」

 

「そうですね~?グッズもこんなに可愛いのに、中の人もこんなに可愛いなんて……罪なものですね~楓さん」

 

「は、はぅ……わわわ、私はそんにゃ……べ、べしゅに……」

 

「ほらほら!揶揄うのもほどほどにしてグッズの確認をしてください。これでOKなら来週には生産を開始するんですから」

 

 マネさんが二人に挟まれてふにゃふにゃになってた私の首根っこをひっぱりあげて救出してくれた……なんだろ、猫にでもなった気分だね。

 

「あはは、ごめんなさい。マイヤーちゃん可愛いからつい」

 

「そーだそーだー!マネさんばっかり可愛がってないで私たちにも愛でさせろ!私もマイヤーちゃんのお耳触ってみたいぞ!」

 

「ぴぃっ!?」

 

「触ってません!まったく……あ、そうだマイヤーさん。こちらの確認もお願いします」

 

「は、はい……えっと、これは?」

 

 それは段ボールに入っていた人形と同じような人形……なんだけど。

 

「あのぉ……こんな衣装、私持ってませんよ?」

 

 そう、マネさんから渡されたグッズは私の人形で間違いなのだが……その人形が身に着けている衣装は私のママ(バーチャルの体を描いてくれている絵師さん)が用意してくれた物ではなかったのだ。

 

「ええ、実はそれは我が社が発注した物ではないんです」

 

「え?じゃあどこが……?」

 

「今回発注している企業にウマ娘のぱかプチを作っている会社がありまして。そこの営業から是非作らせてほしいと連絡が……衣装については勝負服というのでしたね?マイヤーさんのアバターを担当している五月雨先生に相手企業が発注したもののようです」

 

「え……えええええぇぇぇぇ!?」

 

 まさかの本家本元のぱかプチ!?

 あのトウカイテイオーさんとか!シンボリルドルフさんとか!ミホノブルボンさんとか!他の名だたる名ウマ娘さん達のぱかプチとこんなちんちくりんな私のこれが!?並ぶっていうんですか!?

 

「見本品が届いていましたので、ついでに……ですが、これはセカンドライフ並び株式会社クルセラから出す物ではありません」

 

「は、はい……」

 

「ですので、もしマイヤーさんが嫌ならばこの件は断って頂いても構いません。社長からもマイヤーさんの気持ちが最優先だと承ってますので」

 

「あ、いえ……その」

 

「え~!?没にしちゃうの?これめっちゃいい出来じゃん」

 

「そうだね、ぱかプチってどれも作りが丁寧で綺麗だし……この人形も勝負服とかすごくよく出来てるし」

 

「そうは言いましても、これで後々何か問題があった時に一番困るのはマイヤーさんなんですから、本人の意向が一番大事なのは当然です」

 

「……私の、ぱかプチかぁ……」

 

 改めてサンプルとして届いたぱかプチを手に取って眺めてみた。

 きっとシルトマイヤーが本当に居て、レースに出るとしたらこんな勝負服を着るかもしれない……そう思わせてくれるくらい、そのぱかプチは素晴らしい出来だった。

 

「その……私なんかのぱかプチを作ってもらえるなんて思ってなかったので……う、嬉しいです……」

 

「それならいいのですが……では、相手企業には生産OKのゴーサインを出しておきますね」

 

「よよよ、よろしくお願い……しましゅぅ~……」

 

 とはいえ、恐れ多いのは間違いなくて、嬉しい反面恥ずかしいというか……レースに出ていないどころかトレセン学生ですらない私のぱかプチなんて……ど、どこに需要が?

 

「はぅ……きっと出しても売れ残ってワゴンにならんだりクレーンでも最後まで取られることなく倉庫の隅に置かれますよね……そうだ、きっとそうに違いない……」

 

 ふふふ、そうなったら私がちゃんと買ってあげますからね……お部屋いっぱい私のぱかプチで埋め尽くすんだぁ……。

 

「あ~ぁ……またマイヤーちゃんぐるぐるしとる」

 

「あはは……こうなるとボク達の声も届かないからなぁ」

 

「まったく……もう少し自分の評判をしっかり認識してもらいたいものですね、このクソ雑魚ナメクジ」

 

「……マネさんってたま~にお口わるわるになるよね」

 

?」

 

「ぴぃっ!?」

 

「あはは……」

 

 

 

~*~*~*~

 

 

 

 side:マネージャー

 

 

 

 自分の世界にすっかり入り込んでしまったマイヤーさんを飛鳥さんと楓さんに任せて帰らせた後、私は早速グッズの生産のゴーサインを出すために関係企業にメールで連絡を入れた。

 それにしても……マイヤーさんの人見知りやコミュ障気味なのもあれだが、自己評価の低さもどうにかしないとならない問題です。

 マイヤーさんは現在チャンネル登録者数7万人越え、今のペースなら10万人も確実だと私も社長も考えている、この伸び率はまだまだ箱としては小さいセカンドライフとしては上々といったところです。

 他社と違ってそこまで箱が大きくないセカンドライフでは新人がデビューしても大きなブーストは期待できません。

 そこに関しては会社が一丸となって努力を重ね、少しでも箱を大きくするべく邁進していくつもりですが……そんな中彼女の伸び率は我々の希望であり、皆が期待を寄せています。

 もしこのままのペースで順調にチャンネル登録者数を増やしていけば10万、20万、いやそれ以上だって十分射程圏内。

 彼女がセカンドライフの新しい顔としてその座を確かなものにするのは間違いありません。

 ただまぁ正直……彼女がスカウトされた当初はどうなることかと大分不安でした。

 彼女は自社のスカウトが見つけてきたわけではない、社長が偶然彼女が出演した町内会のライブイベントで歌っていたのを見つけ、その場で勢いに任せてスカウトしたのです。

 当初は今以上に自己評価が低かった彼女でしたが、押しの一手が大得意な社長がどうにか話し合いの約束を取り付けました。

 ……あの時は大変でしたよ、彼女じゃなくその周りのヒト達が彼女を護ろうとクルセラの事務所に押しかけたりして、他の3期生のデビュー準備を進めていたマネージャーやスタッフには大分顰蹙をかったものです。

 まぁ、見る目とセンスだけはある社長のすることだからとそこまで問題にならなかったのはさすがですが。

 結局彼女とライブ参加をお願いした責任があるからと、彼女の住むマンションの大家さんが一緒に事務所まで来て話し合いの場が持たれました。

 我が社の理念とウマチューバーという活動について真摯に語る社長の話を受け、最終的には大家さんも背中を押す形で彼女の所属とデビューは決まりました。

 社長曰く「将を射んとする者はまずウマ娘を射よっていうでしょ?」ということでしたが……たしか昔の武将が敵将を倒すためにその友であったウマ娘を懐柔するって話でしたか……言いえて妙ですね、大家さんはヒトでしたが。

 まぁそうして外堀を埋めて彼女の人見知りとコミュ障を考慮した結果、素顔を出すウマチューバーではなく、アバターを用いて活動を行うバーチャルウマチューバーとしてデビューすることとなりました。

 ちょうどウマ娘のバーチャルウマチューバーの企画があったのでそれをそのまま採用、ちょうど魂の選定を始める前だったのが幸いしました。

 アバターもウマ娘なのに魂もウマ娘なのか?という声もありましたが、その方がリアリティがあって良いという社長の一言で無事に採用。

 その後は人見知りコミュ障がたたって初配信では隠しておくはずだった魂もウマ娘であることを本人が暴露したり、3期生コラボを組んだら微動だにせず挨拶しようとしたら過呼吸起こして放送事故起こしたりと、色々やらかしを繰り返したものの視聴者からはむしろ好意的に受け入れられたのは嬉しい誤算と言えました。

 結果チャンネル登録者数は順調に伸びており、他の3期生と比べれば頭一つ抜けている状態です。

 

「とはいえ、無意識な自己評価の低さについてはまだ改善の兆しは見えませんか……」

 

 勿論。それがマイヤーさん自身と幼少期の家庭環境にあったことは社長とマネージャーである自分は把握している。

 というのも、彼女はデビュー当時は通信制の高校に通っている最終学歴中卒の未成年。

 親からの承諾と契約については父親から彼女を通じて受けることが出来ましたが、今後活動していくうえで家族からのサポートが必要になるのは明白です、一人暮らしをしているというのならばなおさらです。

 そこで、私は社長に掛け合って一人で彼女の実家に挨拶に向かいました。

 契約の際に受け取っていた履歴書に書かれていた実家の連絡先と住所を頼りにたどり着いたそこは、極々普通の一軒家でした。

 チャイムを押してしばらく待つと、伺う旨を事前に連絡していたからか彼女の両親が出迎えてくれました。

 事前に買っていたお菓子を渡して居間に上がらせてもらうと、小豆色のジャージを着た少女が一人座っていました。

 

「貴女は……?」

 

「は、はじめまして!クラウハーゼンっていいます。茉莉おねーちゃんの妹です!」

 

「そう……妹さんがいたんですね、知りませんでした」

 

「あはは……おねーちゃん、あんまり家族のことは話したがらないから」

 

 クラウハーゼンと名乗った少女は、聞くと地元の小学校のウマ娘用陸上クラブに所属しており、すでに中央トレセンからのスカウトの話も来ているらしい、来年卒業後はトレセンに進学するつもりだとか。

 しばし彼女のことや姉であるマイヤーさんの話を聞いていると、お茶をもって彼女の両親も居間に入ってきました。

 そこでマイヤーさんから最低限の話は聞いているだろうが、改めてマイヤーさんのバーチャルウマチューバーとしてのデビューとその活動内容についての話、そして今後の活動においていざという時、家族のサポートが必要になる時が来るという話をさせてもらいました。

 父親は終始黙って聞いており、母親はところどころ言葉に詰まりながらもマイヤーさんの活動についての質問をしてきました。

 一通り話を終えたとき、彼女の母親はたった一言「……よかった」と呟いたのです。

 

「よかった……ですか?」

 

「あ、はい……私は……あの子にとって良い母親じゃありませんでした。私は……自分の憧れを押し付けてばかりで……身勝手な想いであの子の人生をめちゃくちゃにしてしまったんです」

 

 そういいながら涙ぐむ母親の肩を父親はそっと抱き寄せました。クラウハーゼンも心配そうに母親を見つめていました。

 それから彼女の幼少期の話や、トレセン受験に失敗した話、その後進学をするも上手くいかず家族と距離を取った話も伺いました。

 正直あまり気分のいい話ではありませんでしたが、それでも母親の流す涙には色濃く後悔がにじんでいることは理解できました。

 

「ですから……あの娘が自分の道を決めて歩けるようになったのが……嬉しくて、親としてはなにもしてあげれなかったから……」

 

 そう言って母親は涙で化粧が崩れてみっともないからとお手洗いに向かいました。

 

「マネージャーさん……娘のこと、よろしくお願いします」

 

「私からも!おねーちゃんはすっごいおねーちゃんだから!」

 

「……ええ、任せてください」

 

 私がそう言うと、父親も妹も安心したように笑顔を浮かべていました。

 結局戻らなかった母親を残して玄関まで見送りに来てくれた二人に見送られて、私は会社に戻りました。

 それからはデビューと様々なやらかしの後始末に追われながらも無事活動は軌道に乗り、本人も他の3期生や先輩である1、2期生と人見知りのコミュ障なりに関係を築けてはいるようです。

 聞いた話では母親とも妹を介して話をしているらしく、昔ほどギクシャクした関係性ではなくなってきているらしいですが。

 

「まぁ、彼女もまだまだこれからでしょうか……ふふ、支え甲斐のある担当ですね」

 

 こっそり確保していたもう一つのサンプル品である私服バージョンのぱかプチを眺めながら、もうひと踏ん張りと気合を入れ直すことにしました。

 

 

 

...side:マネージャー end

 

 

 

~*~*~*~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まもなく開始すっから、もうちっと待て

 

 

 

 

 

 

 

 ▶ ▶┃ ・ライブ

 チャット∨

 

 

 

『夕の木ラジオ第28回:お前ら準備はいいか?私は出来てる』

 

 楠楓<夕の木ラジオ> メンバーになる   チャンネル登録

 チャンネル登録者数 4.3万人

 

 

 

「は~……」

 

「どしたの楓?」

 

「いや、まじマイヤーちゃん可愛すぎんか?」

 

「それには至極同意するけど、突然何?」

 

「いや、今日一緒に買い物行ったじゃん?」

 

「そだね、新作のアクセとか見てきたね」

 

「ウマ娘用の耳に着ける、あれなんだっけ……」

 

「あぁ、イヤーキャップ?そういえば新しいの欲しいって選んでたね」

 

「そうそうそれ!色々デザインあって面白いな~って思ってたけどさ、試しにって試着してたマイヤーちゃんがさ、もう可愛いのなんのって!」

 

「あ~たしかに。ちょっと敏感なのかな?はめる瞬間「っんぅ」とか言うの、すごくかわいかった」

 

「照れた顔して「こ、ここ……これ、どうですか?」とか聞いてくるんだもん。もう楓さんのハートきゅんきゅんよ!」

 

「そうだねぇ、そういえばその後にボクが」

 

「あ、ジングル終わった。ラジオ配信夕の木ラジオ」

 

「始まりまーす」

 

 コメント:相変わらず前枠ぶった切りで始まるの芝

 コメント:俺たちは毎度何を聞かされているんだ……。

 コメント:普通に話の続きが気になる

 コメント:お前ら、続きが気になるならボイスのセット購入特典の夕の木ラジオ特番編を手に入れるんだ!

 コメント:でもアンケ次第では内容に入らない場合があるからアンケもしっかり答えるんだぞ!

 コメント:相変わらずコメントで宣伝と誘導をするリスナーの鑑

 

「はいはい、そういうわけで始まりました夕の木ラジオ。この配信はセカンドライフ所属バーチャルライバーの楠楓と~」

 

「同じくセカンドライフ所属の夕日飛鳥でお送りします」

 

「そういうわけで、今回はまず大事な告知があるので先にそっちから、飛鳥さんどうぞ!」

 

「なんと!セカンドライフ3期生のボクと楓、それからさっき話に出ていたバーチャルウマ娘のシルトマイヤーちゃんの3人のグッズが、3期生グッズ第1弾として発売が決定しました!」

 

「どんどんガンガンぱふぱふ~!」

 

 コメント:まじか!

 コメント:ついに来るのか!

 コメント:何が出るの?

 

「ふっふっふ、さっそく内容が気になってるみたいだねぇ……というわけで、はいドーン!」

 

「こちらが今回ボク達のグッズの写真だよ。ちなみに写真はまだサンプル品だから製品版ではちょっと変わってるかもしれないけど、そこはご了承ください」

 

「いやぁ~色々あったからねぇ、君達のお財布をまた薄~くしてしまうねぇ?」

 

 コメント:むしろ本望よ

 コメント:このために日々節約してますから

 コメント:にしても、本当に色々あるな

 コメント:人形可愛い!

 コメント:アクリルスタンドは全身とSDの2パターンか

 コメント:ポスターのラジオブースで夕の木の二人に絡まれておろおろするマイヤーちゃんとか解釈一致ですわ

 コメント:このポスターには教官役も思わずニッコリ

 コメント:久々のコラボがまさかのグッズのポスター

 

「あはは、まぁコラボについては追々ね」

 

「いやぁしかし……諸君よ、まさかこれで終わるとお思いかね?」

 

「え、ちょっと……楓?」

 

「ふふふふふ、はいドーン!」

 

 コメント:こ、これは!?

 コメント:これって……ぱかプチかな?

 コメント:マイヤーちゃんの……ぱかプチ……だとぉ!?

 コメント:やばばばばばばば

 コメント:これは良いものだ

 コメント:いい匂いしそう

 コメント:はい通報した

 

「なんとね、マイヤーちゃんのぱかプチをグッズ製作を担当した企業様からのご厚意で作っていただくことになったみたいなんだよ!これすごくない!?」

 

「……いや、すごいけどさ……楓?」

 

「どったの飛鳥?」

 

「これ……この写真と情報、マネさんからちゃんと許可貰ってるよね?」

 

「……」

 

「……」

 

「……てへっ!」

 

「……ボク知らなーい」

 

「だだだ、大丈夫だって!マイヤーちゃんだって前向きだったし」

 

 セカンドライフ公式:楓さん、あとでお話があります

 コメント:あ

 コメント:あ

 コメント:お

 コメント:ヒェッ

 コメント:あ~あ

 コメント:おいおい

 コメント:こいつ死んだわ

 

「あ、あ……あ」

 

「……ボクは関係ないからね~」

 

「ちょ!?私らコンビでしょ!?」

 

「今日で夕の木解散でーす」

 

「ひどぅい?!」

 

 

 

 

 

 

#03 その背を見つめる瞳は

 

優しくて

 

 

 

 

 

 

 




百合の間に挟まれてふにゃふにゃになる女の子が書きたかったんじゃぁ……
そろそろ他のウマ娘と絡みたいから、次は誰か出そうと思います。


誤字脱字のご指摘ありがとうございます、久々の執筆でまだ表記ブレが矯正しきれてないなぁ……気を付けます。


***独自設定:セカンドライフ3期生***


 実は、元々セカンドライフとクルセラという会社、今回出ている夕日飛鳥・楠楓の二人を含めたいくつかのキャラクターは別の小説用にと考えていた物でした。それを今回こちらの小説用に一部手直しして登場しています。ちなみに簡単な設定として


〇夕日飛鳥

 アバターは夕日色ショートの元気娘。魂もアバターとほとんど変わらない黒髪ショートで生粋のボクっ娘。
 楓ガチ勢筆頭、配信中よく楓に対してしっとりする。それがなければセカンドライフで一番まとも。
 実は楠楓とは同じ施設育ちで、現在も施設の手伝いをしながら配信を行っている。
 機械全般に強く、たまにクルセラのSEたちに混ざって配信設備の準備をしたりしている。
 一人称がボクなのは施設の年下達の面倒を見る際に自分が兄になると決めたから。


〇楠楓

 アバターは薄黄緑色のゆるふわロングヘア―、瞳の色が黒に近い藍色と赤色で楠の実の色と色づいた楓の葉の色が元ネタ。
 見た目だけなら立派な清楚枠だが中身は汚い高音がよく似合う汚れ役でよく他の先輩に巻き込まれて企画の犠牲になる。
 面倒見がいいお姉さんである反面ヘタレなところもある。得意技は地雷原でのタップダンス。
 幼いころから施設のラジオを聴いて育ち、自分もやりたいと夕日を誘ってWebラジオを自作HPで配信、それを聴いたクルセラ社長の「ティン!ときた」の一声でスカウトされた。
 飛鳥とは同じ施設育ち、配信以外では年下の子供たちの面倒を見ている。


〇マネさん

 元々の設定では夕の木の二人のマネージャーだったけどマイヤーちゃんのマネさんに変更になりました。
 クールビューティーな見た目でどんな仕事もそつなくこなす人。
 面倒見がよく後輩や他部署でよくヘルプに呼ばれたりする。マイヤーちゃん以外に1期生のマネージャーも務めている。
 たまに罵るなど毒舌が飛び出ることもあるがそれは親愛の証、気を許した相手以外には丁寧な対応以外取らない。
 地方の短大を卒業後、東京で就活する間のつなぎでクルセラにバイトとして入ったが、気が付けば正社員扱いされ最終的には社長に泣きつかれて入社した。
 今の一番の悩みは恋人無し出会い無し、家にいるのは最近飼い始めたハムスターだけという生活からの脱却。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。