その娘はバーチャルウマ娘でした   作:もにゃし

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  シルトマイヤー<セカライ3期生> @shiltMeyer

   もう二度とこんな醜態はさらしません、絶対に
   
    〇109  □23  ◇2746





#04

 

 事務所でマネさんとの定期打ち合わせがあった日、私はいつものように事務所を訪れていた。

 すると、いつもは私たちライバーやウマチューバーの事が書いてある雑誌や最新のゲーム雑誌、ゴシップ系週刊誌が置かれているテーブルに大量のインスタント食品が並べられているのが目に入った。

 

「なんですか、これ?」

 

「あぁ、そちらは案件用のサンプル食品です」

 

「案件?」

 

「はい、今日はちょうどその話をしようと思っていました。どうぞこちらに」

 

「あ、はい」

 

 マネさんに案内されて会議室に入ると、さっき見たもの以外にも色々な食品がテーブルに並べられていた。

 手に取ってみると日本でも有名な食品メーカーのカップスープをはじめ、お味噌汁やパスタ入りのスープ、他にも栄養補助食品やサプリメントなんかもある。

 

「本日はこちらの食品メーカーグループからの案件の説明になります」

 

「えっと、具体的には何をすれば……?」

 

「特には何も」

 

「え?」

 

「普段と同じように配信をしていただいて、その間に食べる軽食としてご利用ください。その際に商品名と簡単なレビューをしていただければ案件は成立します」

 

「へぇ~……食べるだけでいいんですか?」

 

 それはまた随分と簡単というか……もっとこう、配信枠を取って通販番組みたいにやるのかと思ったけど違うみたいだ。

 もっとも、そんな配信なら私には来ないか……?

 

「はい……ただ」

 

「ただ……?」

 

 そこでマネさんは言葉を区切ると、大層困ったといった様子で頬に手を添えた。

 

「この案件のせいで皆さんの夜更かしと夜食が増えて不健康生活が促進されると思うと、頭が痛いのです」

 

「あぁ……あはは」

 

「貴女も笑いごとではありませんよ?」

 

「へぅ……ごめんなさい」

 

 マネさんの指摘に心当たりがありすぎてキャスケット帽の中の耳がへにょりとしおれる。

 思えば最近は夜更かし配信して夜明け近くに寝て、昼過ぎに起きて配信準備してまた夜に配信っていうサイクルが続いている気がする……。

 おかしい……デビュー当時はちゃんと朝起きて夜寝る習慣があったはずなのに……。

 

「真夜中の配信は安定はしますがコアなファン層が定着するだけで新規の取り込みは難しいのです、昼から配信しろとは言いませんが、せめて他の層が見る夕方などの時間帯の配信も心掛けるようにしてください」

 

「はい、ごめんなさい……」

 

「ふぅ……まぁお説教はこれくらいにして。それでマイヤーさんにはインスタントのカップスープと、こちらの補助食品をお願いしたいのです」

 

 そういってマネさんが持ってきたのはいくつかのカップスープと……なんかやたらでっかい箱。

 なんだろ、まるでゲーム機が入ってそうなくらい大きい。

 

「あの、これは?」

 

「こちらはウマ娘向けのプロテインです。流石にこれを普通のヒトが飲むわけにはいきませんから」

 

「あぁ~……確かに」

 

 ウマ娘用ともなればその燃費を考慮してるはず、それをヒトが飲もうものなら……ね?

 ウマ娘が摂る分の栄養を普通のヒトが摂ればトップアスリートでもあっという間に体調を崩すだろう、というか太るだろうな、消費よりも摂取のほうが圧倒的に過多だ。

 

「そもそも、ヒト用でもマイヤーさん以外には預けられません」

 

「それはまた、なんで……?」

 

「皆さん運動なんてしませんから」

 

「……あぁ」

 

 バーチャルライバーをはじめウマチューブの配信者というのはほとんどの場合部屋の中で椅子に座って配信するのが一般的だ。

 となると、当然動かない時間は増える一方で……。

 思えば少し前に流行りに乗ってセカライのライバー達がこぞって始めたリン〇フィット〇〇ベンチャーの配信時は、それはもう阿鼻叫喚の地獄だった……私はウマ娘ということでヒト用のメニューでは軽すぎるし、そもそも機材がウマ娘の力に耐えられないから見送ったけど。

 

「ところで、これ他の人もやってるんですか?」

 

「ええ、1期生は葵さんとリコリスさんが、2期生はシーラさんとライナスさんが担当します。3期生に関しては基本的には全員どれか一つは受け持ってもらう予定です」

 

「なるほど」

 

「ちなみに、先ほど夕の木の二人が来て大量のカップ麺とパスタを持っていきましたよ」

 

「あはは……お二人らしいですね」

 

「ええ、ですからこっそりと……こちらを仕込んでおきました」

 

そういってマネさんが取り出したのはおどろおどろしいくらいに真っ赤なパッケージ、なんか蓋に劇物指定みたいなマークが描かれてる気がする。

 

「えっと……これは?」

 

「マイヤーさんにはまだ早いです」

 

「いや早いとか遅いという問題じゃ」

 

「マイヤーさんにはまだ早いです」

 

「いえ、あの」

 

「マイヤーさんにはまだ早いです」

 

「……ッス―――あ、はい」

 

「はい、それではこちらの案件をお願いできますね?」

 

「は、はい……了解しました」

 

 

 

~*~*~*~

 

 

 

 そんなこんなで食品のいくつかとプロテインを持って帰った私は早速雑談配信をしながら試食をしてみたのだけど、流石日本が誇る食品グループが作っているだけあってどれも美味しい。

 中にはインスタントとは思えないクオリティもあって、ご飯は基本的に自炊していたからあまりこういった物に頼ることは無かったのだけど、たまにはいいかもしれない。

 

 

 

「そんなこんなで、いやぁすっかりインスタントの便利生活に染まってしまったのですよ」

 

 コメント:あぁ

 コメント:マイヤーちゃんがまた一層不健康な生活に

 コメント:健康生活して<1000円>

 コメント:ナイスパ!

 コメント:マイヤーちゃんが病気にならんといいけど

 

「あ、スパチャありがとうございま~す。いやぁ美味しいご飯を食べてお金ももらえるなんてすばらしいですね!」

 

 コメント:マイヤーちゃん……

 コメント:そんなにパクパクで大丈夫なの?

 コメント:ウマ娘なんだからそれくらい食べなきゃ

 

「大丈夫ですよ~、ちゃんとその分バイトで体動かしてますし……あ、コーンクリームスープ無くなった。それじゃ次のカップスープ作りますね~」

 

 コメント:本当に大丈夫なんだろうか……?

 

 

 

 心配する視聴者である教官役の皆さんのコメントを横目に私はカップスープを飲んでは味の感想を述べたり、皆が好きな味を語り合ったりと配信は大盛り上がり。

 マネさんからもメーカー側から好評をいただいているとのことで、その後もゲーム中の夜食や朝活の雑談配信などで案件商品のレビューを行った。

 そんな中で最後に残ったのが……プロテインだ。

 

「ううん……さすがにこれはしっかり体動かさないとまずいかなぁ」

 

 パッケージの内容を見るに運動後の栄養補給を目的としたもので、しかもそれがウマ娘用と来た。

 おそらくレースを走るようなウマ娘では無く、あくまで個人の趣味として運動を楽しんでいるくらいのウマ娘向けの商品なんだろうけど……それでも運動せずにパクパク、いやこの場合ゴクゴク?しちゃったら……もっちりぷっくりになるのは目に見えている。

 

「ん~……よし!せっかくの機会だしランニングでもしようかな?」

 

 そうと決まれば早速ランニング用のシューズを見に府中駅前にあるウマ娘用品が並ぶショッピングモールに向かうことにした。

 久しぶりに訪れたそこにはそこかしこにウマ娘がいて、中には今レースで世間を賑わせているウマ娘も少なくはない。

 

「ふっふっふ、でもここで詰め寄って困らせていてはファンの名折れ、ここはプライベートを尊重して……横目に見るくらいにとどめましょう」

 

 きゃっきゃと賑わうウマ娘たちを横目にガン見しながらいそいそとレースで使うシューズ等を扱っているお店に入る。

 そのお店はブランド品ではない一般流通商品を主に扱っていて、レースで使う蹄鉄を嵌め込む靴以外にも普段の外出やちょっとしたランニングに使えるシューズも結構な数がそろっている。

 何よりも高級ブランドじゃないからお値段リーズナブル!お手頃価格で買えるからついつい色々見てしまう……っく、これがおされな靴の吸引力かっ!?

 パーカーの中でそわそわと動く尻尾を宥めながら目的の商品を見て回る。

 

「ん~、機能美……でも可愛いほうが気分が上がるし……」

 

  随分と見ないうちに色々な商品が出ているみたいですね……私が子供のころなんてデザインなんて二の次で白と黒の2色しかなかった気がする……。

 ウマ娘が進歩を続けるように彼女たちの使う道具も日進月歩で変わっているらしく、色々知らない新機能が盛りだくさんです、エアってなに?え、この靴底頑丈さが蹄鉄並みなの!?どういうこと……?

 あれやこれやと手に取っては眺めてを繰り返していたら、もうどれが良いのかわからなくなってきました……もういっそのこと店員さんに聞くかな?

 

「あの、もしかして……茉莉ちゃん?」

 

「ほぇ?」

 

 そんな時に突如後ろから名前を呼ばれて慌てて振り向くと、そこに立っていたのは綺麗な栗毛のウマ娘さん……あれ、もしかして?

 

「あ……す、すすすスズカしゃ!んぐっ……スズカ、さん?」

 

「やっぱり、久しぶりね茉莉ちゃん」

 

「は、はひ!?お、おお……お久しぶりですぅ」

 

そう、そこに立っていたのはサイレンススズカさんだった。あれでも確か……。

 

「スズカさん……た、たしか海外に……いたんじゃ?」

 

「ええ、実は次のドリームトロフィーで走らないかってオファーがあって……それに、約束があったから」

 

「ほえぇ……そ、それじゃ……今度のドリームトロフィーでスズカさんの走りが見られるんですね!」

 

「ええ、まだ予選があるけど……きっと決勝まで行って見せるわ」

 

「わぁああ!それは楽しみです!……なら今から観戦のスケジュールを押さえないと」

 

「ふふ、応援してもらえると嬉しいわ」

 

「はぅ!?……おおお、お任せくだしゃい!かにゃらずテレビで応援しましゅ!!」

 

「あら……レース場まで来てはくれないんですか?」

 

「ふぇ!?えぇっと……その~……そうしたいのは山々なのですが、あのぉ~……やむにやまれぬ事情というものがありましてぇ~……」

 

「……ふ、ふふ……ふふふ!」

 

「す、スズカさん?」

 

「ごめんなさい、少し……困らせてしまったみたい。茉莉ちゃんは出会った頃からそうだったものね……でも、いつかはレース場に来てあなたの声で応援してくれると嬉しいわ」

 

「は、はい!」

 

 スズカさんと出会ったのはそう……私がまだクルセラの社長と出会う前、バイトをしつつ興味が湧いたことをあれこれとやって、何となく過ごしていた時のことだった。

 

 

 

「……どうしましょう」

 

 道の真ん中でトレセン学園のジャージを着たウマ娘さんが一人、困った様子であたりを見渡して……というか、なぜか回ってます、盛大にぐるぐると左回りしてます。

 すでに日は沈みきっていて、このあたりは街灯がまばらなため大きな道をそれると真っ暗になってしまう場所が多々あるから……。

 普段だったら素通りするところですが、人見知りコミュ障とはいえこんな真夜中の薄暗い道で困る学生を見捨てるわけにはいきません、ここは……頑張って声をかけましょう!

 

「あの……どうか、しま……したか?」

 

「え、あ……その……道が、わからなくなってしまって」

 

「なるほど……えっと、サイレンススズカさん……ですよね……たしか」

 

 顔をよく見るとどこかで見た覚えが……と、そこで彼女がサイレンススズカだと気が付いた。

 大逃げが得意なウマ娘ということで出場するレースを大きく賑わせていた娘だったけど、確か去年の秋の天皇賞でレース中に骨折していた気がする。

 その時は私も画面の前で驚いてモニターに掴みかかってしまったほどだ……ちょっと思い出しても恥ずかしい……。

 

「あ、はい……わたし、サイレンススズカです……その、リハビリのトレーニングでランニングしていたら……ここに来ていて」

 

「えぇ……リハビリのランニングで?」

 

「は、はい……そうですけど?」

 

「……ここ、もう府中の中でも端っこというか……学園とは正反対ですよ?」

 

 そう、私の住んでいるアパートのある場所は府中市の中でも端の端ですぐそばの道を越えたら隣の市に入るくらいの場所だ。

 そしてトレセン学園はここから府中市を横断した向こう側……どういうことなの?

 

「え、そう……なの?どうしましょう……」

 

「いったいどれだけ走ってきたんです……?」

 

「その……風が

 

「え?」

 

「いい風が……吹いていたから」

 

「風?」

 

「それに、ほら!星がね、凄く綺麗で……だから、その」

 

 なんかこの娘いきなり詩人みたいなこと言い始めたんだけど……しょうがない。

 

「えっと……りょ、寮はどっちですか?」

 

「え?」

 

「す、住んでいる寮……です、確か……美浦と栗東が、ありましたよね?」

 

「り、栗東……です」

 

「ということは……フジキセキさんか……えっと」

 

「あ、あの……?」

 

「ここからじゃ寮もと、遠いし……門限も過ぎてます、よね?」

 

「……あ、あぁ!……ど、どうしましょう?」

 

「なので、今から連絡を入れて無事なのを伝えて、今日はわ、私の家に泊まって……それで朝一で寮に帰ってちゃんと謝ること。いいですね?」

 

さすがにここまで話して連絡はしておくから野宿して帰ってねなんて言えませんからね……あれ、お部屋……片付いてるかな?

 

「は、はい……あの、でも連絡は」

 

「しないわけにはいかないでしょ……それに、ランニング中でウマホ……持ってるようにも見えませんし?」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 

 

~*~*~*~

 

 

 

 side:サイレンススズカ

 

 

 

 なんだか不思議な出会いだった、あとになって私はそう思った。

 秋の天皇賞の第4コーナーで骨折した私はスぺちゃんをはじめチームメイトやトレーナーさん、今まで戦い共に駆け抜けてきたライバル達の励ましもあって、必死のリハビリを続けていた。

 そのかいもあってか年明けにはギプスもとれ、徐々に松葉杖が無くても歩けるようになり、やっと一人で走れるようになった。

 もちろん全力ではまだ無理だけど、軽いランニングなら問題ないくらいまでには回復した。

 

「……風が、気持ちい」

 

 久しぶりのランニング、ケガをしてから献身的に私の身の回りのことをしてくれていたスぺちゃんが心配そうだったけど、私は一人でランニングに出た。

 仲間と一緒に走るのも楽しいけれど、たまには一人風を感じながら走りたかったから。

 想いのままに走った……肌を撫でる風、髪を揺らす風、尻尾を巻き上げる風……私は久しぶりの一人の景色を思う存分楽しんだ。

 

「……はぁ……はぁ……ふぅ……良い風、それに星も……綺麗」

 

 あの秋から遠ざかっていた久しぶりの景色に私は確かな満足感と心地よさを感じていた……の、だけど。

 

「……あら、ここ……どこかしら?」

 

 あたりは既に日が落ちて暗く、覗いた路地は真っ暗で先が見えないほど。

 確かに今自分が走ってきたはずの道なのに、気が付けばどっちに行けば帰れるのか私は判らなくなっていた。

 

「……困ったわ、道がわからない」

 

 さすがにこれには私も焦ってポケットを探ってみたけど、そういえばウマホは机のスタンドで充電中、そもそも学園の外周を軽く流すだけにしようと思っていたはずなのに……その、風です、風が悪いんです。

 

「……どうしましょう?」

 

 どうすれば寮に帰れるかを考えていた時だった、暗がりの向こうから女性が歩いて来て声をかけてくれた。

 

「あの……どうか、しま……したか?」

 

「え、あ……その……道が、わからなくなってしまって」

 

 困っていた私は素直に道に迷った、ランニングしてたらいつのまにかここに居たと答えるとここはトレセン学園とは正反対だと言われ呆れられてしまった。

 それからはあれよあれよと事が進んで気が付くとその女性、立華茉莉ちゃんの家に一晩泊まることになった、連絡は全部茉莉ちゃんがしてくれた。

 最初は道さえ教えてもらえれば走って帰れると伝えたんだけど、さすがにこんな真夜中の暗い道を女の子一人で帰すわけにはいかないって言われて……。

 通されたのはマンションの一室で、どうやら一人暮らしをしているみたいだった。

 

「狭いですけどどうぞ、布団は……たしかベッド買う前のやつが……あったあった」

 

「その……なにからなにまですみません」

 

「ん?あぁ……えっと、気にしないでください。その……なんとなく似てたんです」

 

「似てる?」

 

「その、うちの妹に……あの子も私のランニングの後ろをくっついて走って、でも直ぐに置いてかれて、道に迷って泣きながらその場をぐるぐる回ってて」

 

「ぐるぐる?」

 

「あ、あぁ~~……なんでもないです」

 

「は、はい……」

 

「えっと……そうだ。汗かいてますよね?シャワー浴びちゃってください!これタオルで、着替えは……ごめんなさい、たぶんサイズ合わないかも」

 

「あ、いえ……お気になさらず」

 

「……っく、私もあと背が10……あっても足りないだろうけどぉ」

 

「えっと……しゃ、シャワー借りますね」

 

「えぇ……ごゆっくりぃ」

 

 シャワーを借りて、結局着替えは比較的大きいTシャツだけ借りることにした。

 それからは寝るまでの間にお互いのことを話して、茉莉ちゃんが実はウマ娘だったこと(ずっと帽子かぶってたからわからなかった)や実は年齢がそれほど変わらないことを知った。

 その後私は久々のランニングの疲れから、茉莉ちゃんはバイトの疲れで眠気が訪れたことでそろって就寝、翌日は簡単な朝ご飯までごちそうになってから家を出ることになった。

 

「まったく、あまり心配させないでおくれよ?」

 

「ご、ごめんなさい……ところで、フジ先輩はその……」

 

「ん?あぁ……茉莉ちゃんのこと?」

 

「は、はい……お知り合いなんですか?」

 

 そう、昨日から疑問だったんだけどなんで茉莉ちゃんはフジ先輩の電話番号を知ってたんだろう?

 

「彼女はたまに配達のバイトでトレセン学園に来ていてね、寮の方にも配達で顔を出すことがあるから、その時に。それに確か誰かがバイト仲間だとも言っていたかな?」

 

「そ、そうなんですか……」

 

「……ふふ、気になるのかい?」

 

「え、いえ……んぅ……どうなんでしょう?」

 

「あはは!それを私に聞かれてもねぇ?」

 

 その後スぺちゃんやスぺちゃんから話を聞いてあちこち探してくれていたチームの皆にも謝って、私のプチ行方不明事件は幕を閉じた。

 その後フジ先輩に頼んで連絡先を教えてもらった私は改めてあの日の事のお礼を伝え、それからは歳の近い友人として過ごすようになった。

 私が海外に改めて挑戦することを伝えればとても喜んでくれて、帰国したらこっそり会いに行って驚かそうかと思っていたんだけど……まさか街中で会うなんて思わなかったなぁ。

 靴屋さんでランニング用のシューズをあれこれ探していたようだったから、私が以前使っていたメーカーの靴を勧めてみると、茉莉ちゃんの予算で買えるみたいなのでそれに決めていた。

 でも、いつか一緒にランニングしましょうね?って誘ったんだけど……なんだか微妙な顔をされたのだけど、なんでかしら……風にあたるの、苦手なのかしら?

 

 

 

...side:サイレンススズカ end

 

 

 

~*~*~*~

 

 

 思わぬ出会いがあった私はスズカさんと一緒にお買い物なんていう某ウマ娘オタクさん昇天グッパイ来世で会おうぜ!な展開に浮かれつつ、お勧めされたシューズを買うことに決めました。

 買ったのは白と若草色のランニングシューズ、もちろんウマ娘用だからよほど無茶な走りしない限り長く使える特別仕様です。

 早速お会計をして、ついでだからとランニングウェアも新調した私はスズカさんと別れ、ルンルン気分で自宅に戻りました。

 とりあえずウェアをハンガーにかけてその下に靴を並べて写真をパシャリ、ウマッターに載せると早速ウマいね!がついていく。

 

「さてと……そういえばあのプロテインどんな味なんだろ?」

 

 パッケージにはバニラ味って書いてあるけど……試しに作ってみますか!

 早速箱を開けると作り方を書いた紙と袋にパンパンに詰まった粉、それからメーカーのロゴが入ったシェーカー、これで作って飲むってことなのかな?

 まずはシェーカーにお水をいれる、好みで豆乳や牛乳でもいいらしいけれど今回はとりあえずミネラルウォーターで作ろっと。

 最後に付属されてるスプーンでキッチリ量を計って入れる、あとは……ひたすらシェイク!

 

「ふふふ、まさかこんなところで私のバーテンの技術が試されるなんて……ね」

 

 といっても興味が湧いてネットでシェーカーの振り方調べてたら、同じマンションに元バーテンのおじいさんがいたからちょっと教わった程度の話なんだけどね。

 無心でシェーカーを振り続けて程よく混ざったところで今回はコップに移す、シェーカーから直に飲めるみたいだけど混ざり具合が判りづらいからね。

 

「それじゃ、いただきまーす!……ん、んまああああ!」

 

 なにこれ、めっちゃ美味しいじゃん!まったりしてるのかと思ったけどさらさらしてて飲みやすい!

 

「バニラの香りもそれほどキツくないし……これなら牛乳とかで作ったら美味しいかも!」

 

 こんなに美味しいのなら運動した後もゴクゴクですわー!これを楽しみにできるなら毎日ランニング頑張れそう!

 そんなこんなでなぜだか始まった私のランニングは思いのほかやる気に満ち溢れ、次第に走る距離も速さも増していった。

 なるほど、確かに肌を撫でる風は心地よい……これはスズカさんの言葉もあながち戯言と切り捨てることもできないのでは?

 トレーニング後には美味しいプロテイン!運動後ということもあってとっても美味しい!さらに牛乳や豆乳で作るとまた違った味が楽しめてすばらしいじゃないですか!これは、さっそく雑談放送で皆にお勧めしないといけませんね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

配信準備中、もうちょっと待ってね

 

 

 

 

 

 

 

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『雑談配信:もう不健康なんて言わせないんだから!』

 

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「こんまいや~。セカンドライフ3期生のシルトマイヤーです」

 

 コメント:こんまいやー!

 コメント:こんまいや~

 コメント:こんまいやー!!

 コメント:っよ!紺舞屋!

 コメント:っよ!紺舞屋!!

 コメント:っよ!

 コメント:こんまいやー!

 コメント:っよ!

 コメント:っよっよ!!

 

「いやぁこんな時間に配信するのっていつぶりだろ、まだお外が明るいよ~」

 

 コメント:確かに

 コメント:マイヤーちゃんのお声を夕方聞くとか久しぶり

 コメント:深夜配信しか知らない教官もおるやろな

 コメント:ここにいるぜ!

 コメント:逆に新鮮に感じます

 

「あはは……実はマネさんにもあまり不規則な生活と配信はやめるように言われてたんだぁ……」

 

 コメント:あぁ……

 コメント:マネさん有能

 コメント:マネージャーから苦言が入るレベル

 コメント:そらセカライだからなぁ

 

「でもね、これからはまた規則正しくしていくからね!さらに運動なんかもしちゃうもんね!」

 

 コメント:運動?

 コメント:お?

 コメント:レースに出るの?

 

「いやいや、レースには出ないけど……ほら、案件で貰ってた食品の中にプロテインがあったでしょ?それを飲むならいっそのことランニングくらいはしようかな~って」

 

 コメント:なるほど

 コメント:セカライで運動できそうなのマイヤーちゃんだけだもんな

 コメント:フィジカルつよつよ勢

 コメント:マイヤーちゃん以外だと誰よ?

 コメント:同期なら夕の木の二人も体力だけはあるぞ?

 コメント:1期は群雲くらい?2期は……お察しだな

 コメント:ウマ娘であることを差し引いても動けるの実質マイヤーちゃんだけ説

 コメント:リン〇フィットが流行った時は阿鼻叫喚だったからな

 コメント:まさかあれで葵ちゃんの連日配信記録が途絶えることになるとは……

 コメント:他のライバーも軒並み筋肉痛で配信休んでたからなぁ

 コメント:セカライ伝説の沈黙の一週間

 

「まぁ皆配信で忙しいからねぇ……でもやっぱり運動は良いね!案件でもらったプロテインもすっごく美味しいからゴクゴク飲めちゃうし、体を動かすとご飯も美味しいし!」

 

 コメント:それは良かった

 コメント:マイヤーちゃんが健康に近づいているようで何より

 コメント:ん、ご飯?

 日本一のウマ娘:同じプロテイン試してみたけど確かに美味しかったです!

 コメント:ウマ娘用だから量には気を付けるんやで?

 日本一のウマ娘:私ウマ娘ですよ!?

 

「私からもおすすめだよ!運動した後の一杯とか格別だからね!最近はすっかり運動するのが楽しくてさ、美味しいプロテインとご飯のおかげだね!」

 

 コメント:おや?

 コメント:あれ……これ……

 コメント:マイヤーちゃんそれただの飲み物ちゃうぞ?

 コメント:もしかして……

 コメント:あ

 コメント:おいおい

 コメント:こいつ……

 

「ん?みんなどうしたの?」

 

 コメント:パッケージよくみて!

 コメント:今度からは説明書もよく読もうな……

 コメント:いやいやウマ娘の燃費ならワンチャン……

 コメント:そう思うなら最近のマイヤーちゃんのウマッター見てみ

 コメント:あ……ふーん

 コメント:パッケージ裏側の右下の適切な飲み方をよく読もう

 

「え~なになに?パッケージの裏?」

 

 手元にあるパッケージを手に取ってよく見る……どこにもおかしいところなんて……あれ、あれれ?

 

「…………」

 

 コメント:お、止まったか?

 コメント:TMT

 コメント:いや、これはマイヤーちゃんが固まっただけかな?

 コメント:気が付いてしまったか……己の過ちに

 コメント:まぁ、美味しいからね、仕方ないよね

 コメント:もちもちマイヤーちゃん

 

「……ッス―――――みんな、ちょっと……まっててね」

 

 私はヘッドセットを急いで外して洗面台に向かい……洗面台の横に置いている体重計の前に立つ。

 いやいやそんな……まさかまさかぁ……そりゃ確かに?最近ちょぉ~~~…………っと顔がふっくらしたといいますか?運動して規則正しい生活だから血行が良くなって色つや毛艶がよくなったのかなぁ~なんて?

 まさかねぇ……そんな、あるわけが……。

 

 

 

ッピ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日本一のウマ娘:あれ、これってご飯の代わりに飲むものでした?

 コメント:無制限にごはんパクパクしちゃったか……

 

 

 

 

 

 

#04 いいじゃない、ウマ娘だもの  しるとまいやー

 

いやよくないが?

 

 

 

 

 

 

 





 それからは食べ物の案件が回らなくなったマイヤーちゃんでした。
 あとこの配信の後しばらくはふっくらもちもちになったマイヤーちゃんのファンアートがウマッター上で溢れたとのこと。 

***独自設定:ドリームトロフィ―リーグ***


 原作ゲームでもアニメでもそれほど詳しく描かれているものではないので、この小説では独自の設定を設けています。
 まず参加登録資格について、アニメではトゥインクルシリーズで活躍した者にその扉が開かれるということでしたが、この小説では主にG1で複数勝利をしている者、または獲得賞金の合計が一定の金額に達している者となります。
 その他にも別枠の措置としてドリームトロフィー運営や年末に行われるファン投票で推薦された者はリーグに1年間は挑戦することが出来て、そこでの結次第では登録されることもあります。
 ドリームトロフィーは立場としてはトゥインクルシリーズを引退した者達のためのエキシビジョンレースのため、戦績が記録されることはありませんがレース内容はトゥインクルシリーズと同じでレース後のウィニングライブも存在します。
 レースは主に夏のサマードリームトロフィーと年明けにあるウィンタードリームトロフィーの2大会が存在し、3月に1次予選、6月に2次予選の2レースが開催され、そこで勝ち残った者が8月開催の夏と年明け開催の冬に出場できます。
 しかし、それ以外にも各都市や季節毎の興行としてエキシビジョンが組まれており、ウマ娘達は各々スケジュールを管理しながらそれらのレースに挑んでいます。
 また、各地のトレセン学園にはドリームトロフィーに出るウマ娘専門のマネジメントを行う職員も存在しており、希望すればそこでスケジュールの管理や事務手続きを行ってもらえることも出来ます。
 ドリームトロフィーリーグに参加したウマ娘は基本的にチームからは離れます、じゃないとトレーナーの抱えるウマ娘が無限に増え続けることになるので。
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