シルトマイヤー<セカライ3期生> @shiltMeyer
今日はバイトがありました!
マスターさんから賄いのホットサンドをもらいましたから、今日の雑談配信は
飯テロ雑談です、皆さん覚悟してくださいね~!
〇78 □198 ◇2071
ウマチューバーとして活動していても、それだけで生活が成り立つほどの収入となるかと言えばそうでもありません。
生活できるレベルのヒトなんてトップ層の中でも極わずか、ほとんどのウマチューバーは本業が別にあったり、バイトを別にしていたりというのがほとんどです。
私の場合グッズやスパチャの取り分はしっかり貰ってはいますが、ウマ娘ですからね……食費がですね……その、普通のヒトよりはどうしてもかかってしまうと言いますか……。
一応心配してくれている両親からの仕送りもあるにはあるのですが、それには手を付けずにバイトをするようにしています、もしもの時の貯金はしっかりとしておきたいですからね。
将来についてはまだ特になにか考えがあるわけじゃないですけど、何があっても良いようにしっかりしていかないと!
「よし、今日も一日頑張ります!」
そんな気合十分な私が今いるのは住んでいるアパートからほど近い場所にある一軒家を改装して作られた喫茶店の前。
近所では美味しいコーヒーと静かなひと時を過ごせると評判で、マスターさんはとてもかっこいいお爺さんです。
店の雰囲気やマスターさんの落ち着いた佇まいは私のクソ雑魚ナメクジな人見知りさえも落ち着かせてくれるようで……最初こそあれこれやらかしてしまいましたが、今では立派な店員さんが出来ています。
なんでも昔はウマ娘のお嬢さんが住んでおられるお屋敷に勤めておられたとか……かっこいい執事さんだったんだろうなぁ。
ここだけの話、実はそんなマスターさんを目当てに通っておられる奥様方やOLさん、あと近所の女子高生さんもいらっしゃるのを私は知っています……さすがです、マスターさん!
さて、今の時間はまだ朝の7時。
営業時間は8時から19時までで、シフトは調整可能で朝からお昼過ぎまでとかお昼から閉店までとかその時々で相談させてもらっています。
今日は夕方過ぎに配信をする予定ですので、お昼を過ぎて少ししてからあがらせてもらう予定です。
早速店内に入るとマスターさんがキッチンで準備をしていましたのであいさつしました。
「おはようございます!」
「おや、おはようございます茉莉さん。まだ開店までは時間がありますよ?」
「あ、いや……あはは、なんだか早く起きちゃって」
「そうですか……ではこちらに、コーヒーでもお淹れしましょう」
「あ、ありがとうございます!じゃ、じゃぁ着替えてきますね!」
私はキッチンの奥にある休憩室に入ってロッカーからお店の制服を取り出した。
制服と言っても白いワイシャツと黒のスラックス、あと深い緑色のハーフエプロンとなっています。
鏡で身だしなみを確認して休憩室から出ると、コーヒーの香りが漂ってきました。
「ふわぁ……いい香りですぅ」
「ふふ、もう出来上がりますよ?」
「は、はい!」
キッチンの隅にある従業員が休む用の小さい椅子に座って待っていると、マスターさんがじっくりとドリップして淹れてくれたコーヒーを持ってきてくれました。
「さぁ、どうぞ?」
「ありがとうございます!ふわぁ……やっぱりマスターさんの淹れるコーヒーは良い香りですね」
「はっはっは、ウマ娘の茉莉さんにそう言っていただけるのなら何よりですね」
「いえいえ、味もすっごく美味しいですし……はぁ、至福ですぅ」
「ふふふ、お客さんが入られるまでまだ時間もあります、ゆっくりと召し上がっていてください」
「は、はい!」
私はマスターさんの淹れてくれた美味しいコーヒーを飲みながらのんびりと店内を見渡します。
窓から差し込む朝日に照らされた店内は落ち着いた趣で、使われてる家具もとても上品で日々の手入れがしっかりと行き届いているのが見ただけでわかります。
席はカウンターに10席と二人掛けのテーブルが4つですが、私がバイトを始めるまではカウンターのみだったそうで……マスターさんお一人でやってきたのでそのくらいが丁度良かったそうです。
お店に来た人からは「このお店に来ると時を忘れてしまう」と言われるくらい静かで穏やかで、のんびりと寛ぐことが出来るお店です。
そこでふと、前にバイトで入った時には見かけなかった物があったのでマスターさんに聞いてみました。
「マスターさん、その鉢植えって……前はありませんでしたよね?」
「あぁ、これですか……知り合いの方から贈り物で頂きましてね、オリーブの鉢植えですよ」
「オリーブ……って、あの、オイルとかの?」
「ええ、これは鉢植えの幼木ですね……オリーブの花言葉には平和や知恵の他に安らぎというものもあり、これは商売繁盛を願う贈り物として頂いたもですよ」
「ほえぇ……安らぎ、このお店にぴったりですね」
「ええ、お客様にそう思って頂けているのなら本望ですね」
「きっと皆そう思ってますよ!私が保証します!」
「ふふ、それは頼もしいですね……では、そろそろ準備を始めましょうか?」
「はい!今日も一日よろしくお願いします!」
飲み終わったカップを片付けてから布巾でテーブルを拭いたりお店の前の掃除をしていると、午前中から近所の奥さまやモーニング目当てのサラリーマンの方々がお店にやってきます。
「マスターさん、モーニング二つとブレンド一つ、あとチーズケーキ一つです」
「かしこまりました」
マスターさんはキッチンで料理を作り、私はホールで注文を取ったり出来上がった料理を配膳していきます。
バイトを始めた当初はもたついたり注文を間違えたりとやらかしてばっかりでしたが、どの方にも温かく見守っていただき今では立派にホールを任せていただけるくらいにはなりました。
「っよ!茉莉ちゃんは今日も可愛いね!」
「え、あ……えっと、ありがとうございます」
「かー!その奥ゆかしさ!うちの娘にも見習わせたいくらいだよ」
「あ、あはは……えっと、ご注文は?」
「あぁ、いつものね!」
「かしこまりました。マスターさんモーニングをブレンドで、あとゆで卵です」
「わかりました、それと常連だからと言ってうちの看板娘を困らせないでくださいね?」
「かかか、看板むしゅめぇ……ふえぇ」
「はっはっは!困らせているのはマスターもじゃないか?」
「おやおや、そうでしたか?」
「うぅぅぅ~……マスターさぁん!」
「はっはっは!茉莉さん、奥からたまごとサラダを取ってきてください」
「もぅ……わかりましたぁ」
私は真っ赤な顔をお盆で隠しながら奥にある冷蔵庫にたまごとサラダを取りに行きました。
マスターさんも常連さんもすっごく良い人なんですけど……たまにこうして私をからかってくるのはちょっと困ると言いますか……うぅ。
「は、恥ずかしぃ……」
もう冷蔵庫に顔を突っ込んで冷やしたい衝動に駆られますが、ここは我慢我慢……そんな奇行に走ればまたからかわれるのは目に見えてます、私だって成長してるんですから!
side:マスター
私は府中の住宅街の隅で小さな喫茶店を経営するしがないマスターです。
元々はウマ娘のお嬢様の住んでおられる、さるお方のお屋敷で執事をしておりましたが寄る年波と申しましょうか……ちょうど後任の育成も終わっておりましたので、旦那様に申し出てお暇を貰った次第でございます。
その後は貯金と退職金を使い一軒家を買い取り、趣味と実益を兼ねてこうして喫茶店に改装して営んでおります。
店は幸いにも近所で評判となり、今ではモーニングを求めるお客様や静かなひと時を楽しむお客様で順調に繁盛しております。
そんな私とウマ娘の少女、立華茉莉さんとの出会いはそう……喫茶店の経営が軌道に乗り、一人でホールと調理を兼任するのに苦労するようになったころでしたか。
「あのぉ……その」
「はい?」
お店の奥、勝手口から声が聞こえて来てみれば帽子を目深にかぶったウマ娘の少女が荷物を抱えて店内を覗いていました。
ずっと店内に居たせいか気がつきませんでしたが、どうやら少々雨が降ってきていたらしくその少女の耳と尻尾もしっとりと濡れておりました。
「その、えっと……お、遅く……なってしまって、ご……申し訳、ありません……でした」
「あぁ、配達の方でしたか」
老いた私一人で切り盛りしているため、食材などはいつも商店街にあるスーパーから配達で届けてもらうようにしていました。本来でしたら自分で出向いて商品をその目で確かめるべきなのでしょうが……いやはや、よる年波には勝てませんね。
「配達ご苦労様です……おや、いつもの方ではなかったのですね」
「あ、はい……えっと、担当のヒトが、その……お休みで」
「そうでしたか、何はともあれありがとうございます……おや?」
私は荷物を受けると、そこでその少女の右ひざに擦りむいたような傷があるのに気が付きました。よくよく見れば着ている配達業者の上着も泥で汚れたりなどしている様子。
「ケガをしていますね」
「あ!!その!?……だ、大丈夫ですから!」
「いけません!ウマ娘の足というのはとても繊細なものです、ちょっとのケガも見過ごしてはいけません!」
「っひぅ!?」
「……失礼、そうですね……こちらにどうぞ、治療いたしましょう」
「え、あ……いえいえ!?そんな悪いですから……」
「まぁまぁ、そうおっしゃらず」
私は遠慮する少女の肩を押して店内に入れると休憩室の椅子に座らせました、少々強引だったかもしれませんが……かつてウマ娘のお世話を任されていた身として、眼前でケガをしている少女を見過ごすわけにはまいりません。
遠慮がちに椅子に座る少女の前に救急箱を置いて消毒液と絆創膏を取り出し、手当てを始めます。
「しみますよ」
「は、はい……ふぎゅ!?」
「はっはっは!少し我慢してくださいね」
「は、はいぃぃぃ……」
消毒液で丹念に消毒して、絆創膏を貼って差し上げました。
さすがに年若い少女ですので無遠慮に触るわけにはまいりませんが、見る限り足の状態は問題ないようなので……きっとどこかでぶつけてしまったのでしょう。
「はい、もういいですよ」
「あ、ありがとう……ございます」
「いえ……ふむ、そうですね。少々お待ちいただけますか?」
「え、はい……?」
私は少々不用心かとも思いましたが、あの様子の少女が物を持ち出すとも思えなかったのでその場に少女を待たせてキッチンへと向かいました。
それから作り置きのコーヒーを小鍋に移してミルクを注ぎ……少し温めに温めてから角砂糖とリンゴの花を使ったはちみつを1さじ、それからカップに注いで極少量のシナモンを加えた物を持って戻りました。
「こちらをどうぞ、温まりますよ?」
「え、いえ!?そんな悪いです!?」
「大丈夫ですよ、それにこれはあなたに淹れたものですから……飲んでいただけなければ私も困ってしまいます」
「えぅ……あ、うぅ……じゃ、じゃぁ……いただきます」
そう言っておずおずとカップを受け取った少女は一口飲むと、よほど美味しかったのかこくこくと飲み始めた。
「……あふぅ」
あっという間に飲み干してしまったカップを見てちょっと残念そうにため息を漏らす様子に、私は満足しながらも少し懐かしい思い出が頭をよぎりました。
思えば、お嬢様が上手く行かずに落ち込んでいる時もこうしてカフェオレを淹れて差し上げていましたね。
「ふふ、お粗末様でした」
「あ!?その……ご、ごごごごちそうさまでした!とっても美味しかったでしゅ!」
「いえいえ……元気が出たようで何よりです」
「……ほぇ?」
「いえ……少し、元気がなかったご様子。何があったかはわかりませんが……今の貴女のように落ち込んでいたお嬢様にもよくそれを淹れて差し上げていたものです」
「あ、えっと……お嬢様、ですか?」
「ええ。今はこうして小さな喫茶店の店主をしておりますが、以前はさるお方のお屋敷に勤めておりました。そこに住むお嬢様もウマ娘でしたが……お嬢様も今貴女に淹れて差し上げたカフェオレがお気に入りだったご様子でした」
「えと、その……なんだか、わかる気がします。カフェオレ……すごく美味しかったですし、なんだか……元気も出てきました」
「そうですか、それはなによりです」
「……えと、その……ケガの手当て……ありがとうございました」
「いえいえ、老婆心故の事。世話好きなおじいさんのお節介とでも思っていただければ」
「いえ、そんな!……あ、えっと……あ、ありがとうございました。私……そろそろ戻ります」
「ええ、今度はぜひお客様としていらしてください」
「は、はい!」
そう返事をした少女は、配達に来た時よりも耳も尻尾も元気になっていました。
そんな少女が次に店を訪ねてきたのはそれから数日たっての事でした。
開店前にお店の前の掃除をしていると、ジャージを着た少女がこちらに走って来るのが見えました。
「あ、あの!マスターさん!」
「おや、貴女は……そう、確か配達をしていただいた」
「は、はい……その、あの……」
「どうかしましたか?お店は8時からの開店ですので」
「こ、ここ…………ここで働かせてくだしゃい!」
「……おや」
話を聞いてみると、どうやら喫茶店の常連客の一人に彼女のアパートの住人が居たらしくその方から私のお店を勧められたそうで。
そういえばつい最近もお店の忙しさにそろそろ人を雇うべきかと常連客の何人かと話をしていましたね。
話を聞くとどうやら先日の配達のバイトは辞めてきたとのこと、とりあえず開店前のお店に案内してカウンターに座らせた私は、彼女から受け取った履歴書に目を通しました。
学歴や経歴で決めるようなお店ではありませんでしたが……ウマ娘を雇うとなると、色々と気を付けなければならない点が多いのも事実です。
一般男性と比べてもその力の強さは言うに及ばず、ウマ娘さんの中には力の制御が苦手な方もいると聞き及んでおります。
このお店は私の趣味で集めた海外のアンティーク家具などを置いておりますので……とはいえ、老いた身一つで喫茶店を営むのも中々骨の折れるもの。
部屋の模様替えなどは常連客の皆様方のご厚意でお手伝いをいただくこともありますが、それ以外にはなかなか手が回らないことも多いのが現状です。
それに……目の前で不安そうに尻尾を振る少女、立華茉莉さんでしたか……彼女が粗暴な方に見えるかと言われれば、答えは否。
どうやら、私はお屋敷を辞した今でもなにかとウマ娘さんとご縁があるようですね。
「そうですね……」
「あああ、あの!お皿洗いでも、外の掃除でもなんでもしますから!」
「ふむ……いつから入れますか?」
「なんでしたら買い物でもなんでも……ほえ?」
「シフトです、見たところ通信制の学校に通っているご様子ですし……そうですね、しばらくは週1か2で入っていただくのがよろしいかと」
「あ、あのぉ……いいんですか?」
「ええ、ですが……一つだけお聞かせ願いますかな?」
「あ、はい!その……ど、どうぞ!」
「ええ、では……なぜ、この喫茶店に?」
この辺りには他にも飲食店もそれなりにありますし、若いお嬢さんならもっと似合いのバイト先もあることでしょう……それなのに、彼女はこんな老いぼれが営む喫茶店を選んだ。
純粋にその理由に興味が湧きました、履歴書に震える文字で書かれているありきたりな言葉ではなく、この少女自身の言葉として聞いてみたくなりました。
「あ、えっと……そのぉ」
「どんな理由でも構いませんよ?」
「えと、その……お、美味しかった、から……」
「美味しかった?それは……あの時のカフェオレがでしょうか?」
「は、はい!私……その、ウマ娘ですけど、レースとか全然で……今は高校通いながらバイトして生活してて……でも、バイトでも失敗ばっかりで、その……配達のバイトもほんとはクビに……なっちゃって」
「それは……」
「あの日が最後で……でも、あの日も荷物持ったまま転んじゃって……その、お客さんに迷惑かけてばっかりで」
少女にとっては苦い思い出なのでしょう、耳も尻尾も萎れてしまい今にも泣きだしそうになっていました。
「それで、これからどうしようって思ってたら……その、マスターさんの美味しいカフェオレに出会って……ダメダメな私なんかのために淹れてくれて……それが、凄く美味しくて……元気が湧くみたいで、だから……私も、そんなお店で働けたら……私も、誰かに元気をあげられるようになるかな……って」
すんすんと鼻をすすりながら語る少女を見ながら、その姿が在りし日のお嬢様にどこか似ているように見えました。
あぁ、この少女もきっと誰かのために一生懸命になれる、そんな素敵な少女なのだと思えました。
「あの、すみません……こんな、話……」
「……いいえ、とても立派で素敵な理由です。あのカフェオレが貴女のことも元気にしてあげられていたのなら、それは喫茶店を営む者としても、とても喜ばしい事です」
「あ、えっと……はい」
「では、採用ということで……そうですね、制服の用意もありますから来週の月曜日にまたいらしてください」
「は、はい!あの……よよ、よろしくお願いしましゅ!!」
「ふふ……よろしくお願いしますね、茉莉さん」
それからは、ただ静かなだけだったこの喫茶店に少しずつ色がついていくようでした。
茉莉さんも中々慣れない仕事に四苦八苦し、ホールという仕事に右往左往することもありましたがこの店を訪れる客は皆様開店当初からの常連客ばかりですので、どなたも温かい目で見守っていただけました。
私自身も日々の仕事の中で徐々に常連客のあしらいにも慣れて、立派にホールを任せられるようになっていった姿には孫娘の成長に似た喜びを覚えたものです。
老いた私の代わりに買い物や掃除も率先して受け持ってくれていますから、今では新しいメニューや珈琲豆の配合などの時間も増え、それがまたお客様にご好評を頂けております。
さらに彼女が勤め始めた頃から、どうやら彼女目当てで店に足を運んでくださるお客様もちらほらと現れているようで……もっとも茉莉さんが働き始めてしばらくたった頃に、当時はまだ制服が白のシャツにややタイトなスカートだったためか、少々よからぬ目を向ける輩がいた時は己の至らぬ点を痛感させられたものです。
「まったく、茉莉ちゃんはほんといい娘ねぇ」
「あはは、ありがとうございます」
「ほんと、うちの息子の嫁にこない?」
「よよよ嫁ぇ!?」
「あらあら、それならうちの子なんてどう?都内で立派に公務員を務めてるんだけど」
「あ、あぅあぅあぅあぅぅぅぅぅ」
「あらもう顔を真っ赤にしちゃって!」
「こんな娘が息子の嫁になってくれたらいいのにねぇ」
「ふ、ふえぇぇ~~……」
「……ふぅ」
とはいえまだまだ茉莉さんも年若い乙女、日頃井戸端会議で鍛え上げられた百戦錬磨の奥様方の前では形無しといったところでしょうか?
妙なおせっかいを焼きたがる常連客をコーヒーのおかわりと日替わりのケーキを出して黙らせ、その後はいつも通り静かで落ち着いた時間が続いた後。
「それじゃマスターさん、お疲れ様でした」
「はい、お疲れ様でした。次もよろしくお願いしますね」
「はい!あ、あと賄いもありがとうございました!マスターさんのホットサンド楽しみです!」
「ええ、お家でゆっくりと召し上がってください」
今日は夕方から用事があるとのことで、賄いにといつも用意しているホットサンドを持って帰る彼女を見送ってから私は店に戻りました。
一人になった店内は、昔と変わらず静かで落ち着いていて……ですが最近少し物足りなくも感じてしまうあたり、私もすっかり彼女に絆されてしまったようですね。
そんな自分の変化を楽しみながら閉店までの時間を過ごしていると、珍しく夕方に一人お客様がいらっしゃいました。
「いらっしゃいませ……おや」
「やぁ……爺や、久しぶりだな」
「えぇ……いらっしゃいませ、ルナお嬢様」
「ルナ……はよしてくれ……」
そう言って照れた様子でカウンターに座るのは私が以前勤めていたお屋敷に住んでおられたウマ娘のお嬢様。
シンボリ家にてその名を轟かせる最強の皇帝シンボリルドルフ、もっとも私からすれば今も昔も悪戯好きで使用人を連れまわしては困らせていたルナお嬢様ですが。
「本日もお一人で?」
たまにルナお嬢様の話に出てくるトウカイテイオー様でしたか?楽しそうにその少女の事を語るルナお嬢様はとても生き生きとしていらっしゃいます。
私としましても、そんな少女をこの店に迎えるのもまた老後を生きるひとつの楽しみなのですが……いやはや、まだ難しいようですな。
「……私だって、たまには一人でゆっくりと……爺やの淹れてくれるカフェオレを楽しみたいと思う時もあるさ」
「さようでございますか……では、準備いたしましょう。たっぷりの角砂糖とリンゴのはちみつもご用意してありますよ?」
「やれやれ……爺やにとっては私はまだまだ子供らしい」
「ふふふ、ええ。今も昔も私にとっては少々悪戯好きでやんちゃなルナお嬢様ですよ」
「まったく……」
どうやら少しからかい過ぎてしまったのでしょうね、そっぽを向かれてしまいました。
さて……本日はこれにて閉店のようですね、私も久しぶりの再会を喜ぶと致しましょう。
side:マスター end...
▶ ▶┃ ・ライブ
チャット∨
『雑談配信:賄いホットサンドうまぁ』
シルトマイヤー【セカンドライフ3期生】 メンバーになる チャンネル登録
チャンネル登録者数 7.9万人
「ほあぁぁぁぁ~~……おいしゅぅぃぃぃぃ~……」
コメント:ウマッターで告知があったからむしろ予告飯テロなのでは?
コメント:おかしい、簡単な説明であとはただマイヤーちゃんの食レポ未満を聞いているだけなのに
コメント:いま、俺の口は猛烈にホットサンドを欲している!!
コメント:俺もなにか作ってくるかなぁ……
「んんんうぅぅぅぅ~~……いいよぉ、みぃんなも~なにか~たべればいいよぉ~……」
コメント:こいつ、ホットサンドキメてやがる
コメント:それだけ旨いホットサンドなんやろな
コメント:どこのホットサンド?
コメント:マイヤーちゃんのバイト先の賄いって言ってた
コメント:その喫茶店気になる!
コメント:さすがに身バレするからアウトやろ
「んぅぅぅ~~……んぐ。ほんとこの美味しさを皆に紹介できないのが残念だよ~」
コメント:ホットサンドって出来立てが美味しいイメージ
「そんなことないよ!いい?厚切りにされたふっわふわのパンに、炒めたハムと玉ねぎピーマンそしてチーズ!さらに半熟目玉焼きが入っていて、極めつけはお店オリジナルのデミグラスミートソース!複雑で濃厚な味わいがひとつに解け合ったそれをホットサンドメーカーでしっかりプレスしながら焼き上げてあるんだよ!外はカリカリなかはふっくらジューシー!ソースは冷めても美味しく食べられるように調整されてる絶妙な塩加減!もうね……一口食べてみなよ、飛ぶよ?」
コメント:特有の早口やめてもろて
コメント:お腹空いてきた
コメント:久々のメシテロ配信たすかる
コメント:でもお腹空きすぎて夕飯食ったのにまた食いたくなるからたすからない
コメント:こうしてまた一人の教官が肥えていくのであった……もとからだって?そりゃ失敬
コメント:おうだれがデブや?
コメント:俺がデブや
コメント:俺もデブや
コメント:みんなデブやないかーい
コメント:ここまでが一連の流れ
「はふぅ……しぃあわしぇぇぇ~……わたし、ライバー引退したらあのお店に就職しゅるぅ」
コメント:帰ってきてマイヤーちゃーん!?
コメント:まぁ、推しが幸せなのは良いこと……か?
コメント:南無三
マックイーンかルドルフかで悩みましたが、珈琲ならルドルフかな?ってなりました。マックイーンだとむしろパクパクしてそう……。
壮年を過ぎたマスターと看板娘のいる喫茶店とか、作者的にはぶっささります。
<シンボリルドルフのひみつ>
ごく稀にではあるが遠くにある行きつけの喫茶店を利用している。
一度だけトウカイテイオーに尾行されかけたが家の力を使って全力で撒いたらしい、ワケワカンナイヨー!。