この白狐の戦士に祝福を   作:仮面大佐

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第137話 コロリン病

 ダクネスのカズマへの告白騒動の翌朝。

 カズマは寝付けなかったせいか、眠そうな表情で朝食を食べていた。

 ちなみに、俺は関係ないと言わんがばかりに寝たので、普通だ。

 俺たちが朝食を食べていると、寝不足なダクネスが入ってくる。

 

ダクネス「お、おはようカズマ…………。今朝は早いな…………」

カズマ「早いんじゃない、お前のせいであれから眠れなかったんだよ。」

白夜「お前ら、夜遅くに何やってたんだよ。」

武劉「まあ、事情は聞いているがな。」

朱翼「そうですね。」

 

 ダクネスがそう言うと、カズマはそう言い、白夜達もそう言う。

 夜に何があったのかは、既にこの3人も把握していた。

 

トウカ「あのダクネスが大胆になるなんてね…………。親友として、これは喜んでも良いのかな?」

湊翔「喜んで良いんじゃね?知らないけど。」

ダクネス「喜ぶな!というか、忘れてくれ!」

カズマ「忘れられるわけないだろ!年上の貴族令嬢に手錠で拘束された挙句、半裸に剥かれてファーストキスを強奪されたんだぞ。こんな体験そうそうあるかよ。」

ダクネス「そっちじゃない!いや、その事ももちろん忘れて欲しいのだが!!」

 

 トウカがどこか感慨深くそう言うと、俺はそう言う。

 それを聞いたダクネスがそう突っ込むと、カズマはそう言い、ダクネスはテーブルを叩く。

 すると、アクアが口を開く。

 

アクア「朝っぱらから何を興奮しているの?この男と一晩一緒にいたから興奮してるの?ダメよ、ダクネス、血迷っちゃ。アレな趣味を持ってるのは仕方ないけど、もっと自分を大事にしなさい。」

白夜「常に飲んだくれてるお前に言われても、説得力がねぇな。アル中になってもおかしくねぇのに。」

湊翔「現在進行形でなってるんじゃないのか?」

アクア「アンタ達、言ったわね!女神の私がアル中になんてなるわけないじゃない!聖なるグーを叩きつけてあげるから、覚悟しなさい!」

 

 アクアがダクネスに対してそう言うと、俺と白夜はそう呟く。

 すると、アクアは俺たちに襲いかかってきて、俺たちは応戦する。

 常に酒を飲んでる奴に体を大事にとか言われたくないんだがな。

 すると。

 

ダクネス「皆、今日は帰りが遅くなる。私の分の食事はいいから、皆で先に食べていてくれ。今夜は実家に泊まってくるから…………。」

トウカ「ダクネス…………。」

朱翼「まあ、気持ちは分かりますが。」

 

 ダクネスはぎこちなくそう言うと、屋敷から出ていく。

 まあ、気まずくなるのは無理もないか。

 すると、カズマが口を開く。

 

カズマ「そうだ。暇なら、冒険者ギルドに行かないか?どうせ、やる事もないんだろ?」

白夜「珍しいな。お前がギルドに行きたがるなんて。」

アクア「あと、人を暇人みたく言わないでちょうだい。今日はゼル帝を連れて、街の外にモンスターを倒しにいくの。幼いうちからモンスターを倒させて、経験値を稼がせるのよ。今から英才教育を施しておけば、来年あたりには魔王城も一口でパクリね。」

湊翔「何故だろう……………アクアと一緒にカエルに食われるオチしか見えない。」

武劉「全くだ。」

 

 カズマがそう言うと、白夜とアクアはそう言う。

 白夜はともかく、アクアは年がら年中、暇してるしな。

 それに、アクアがゼル帝と一緒にカエルに食われるオチしか見えない。

 ちなみに、めぐみんはゆんゆんに対して、恋バナをすると言って、どこかに行った。

 めぐみんも、ゆんゆんが俺と付き合ってる事は知ってるしな。

 すると、アクアが口を開く。

 

アクア「そうだわ。こんな時こそ冒険者ギルドよ。ねえカズマ、やっぱり私も一緒に行くわ。暇そうな人を捕まえて、ゼル帝のレベル上げを手伝ってもらうの。」

トウカ「ひよこのレベル上げに付き合ってくれる奇特な人なんて、居ないと思うけど………。」

カズマ「まあいいか。それじゃあ、冒険者ギルドに行くか!」

 

 アクアは手の上のゼル帝を自らの目の高さまで掲げて、そう言うと、トウカは呆れながらそう言う。

 結局、俺たちは冒険者ギルドへと向かう事にした。

 俺たちが冒険者ギルドに着くと、様子が一変していた。

 

冒険者「カエルの討伐クエスト、魔法使い職があと1名空いてます!」

冒険者「こっちは前衛職が2人足りない!金属鎧限定で誰かいないか!?」

 

 冒険者達は、そんな風に叫んでいた。

 まあ、理由は分かるけどな。

 

カズマ「どうなってんだ、これ?」

武劉「十中八九、懐が寂しいからだろう。」

白夜「まあ、冒険者は基本的に金遣いが荒いからな。」

朱翼「稼ぎの半分を持っていかれましたからね。」

湊翔「これなら、モンスターも駆除されるんじゃないか?」

トウカ「そうね。」

 

 カズマがそう言うと、俺たちはそう話す。

 確かに、ここ最近の稼ぎで、宿暮らしなどの贅沢を覚えて、今更生活水準を下げられないからな。

 無理もないか。

 すると、アクアが口を開く。

 

アクア「ねえ、皆。この分だと、ゼル帝のレベル上げを手伝ってくれる人居るのかしら?皆とっても忙しそうなんですけど。」

湊翔「金額次第じゃないか?」

トウカ「というより、お金を持ってるの?」

 

 アクアがそんな風に言うと、俺とトウカはそう言う。

 トウカにゼル帝を預けたアクアは、自分の財布を確認する。

 すると、アクアは財布からある紙を取り出して、口を開く。

 

アクア「……………アクシズ教会に持っていくと、私が無料で懺悔を聞いてあげるチケットがあるんだけど、これで請けてくれる人、居ないかしら?」

白夜「速攻で破られるオチしか見えないから、やめておけ。皆、金がなくてピリピリしてんだよ。」

朱翼「それやったら、罵られると思いますよ?」

 

 アクアがそう言うと、白夜と朱翼はそう言う。

 すると。

 

冒険者「あっ、カズマに湊翔だ!おい、税務署の連中から話は聞いたぞ!この急な税金徴収は、ララティーナが考えたんだってな!」

 

 冒険者の1人が、入り口で立ち尽くしていた俺たちを見つけると、そんな風に声をかけてくる。

 その冒険者は、税金を徴収された事については、納得がいっていないみたいだ。

 

カズマ「おいおい、俺とアクアもダクネスに追い回されたんだ。」

湊翔「それに、文句を言うのは筋違いじゃないか?」

武劉「今回の徴収は、ダクネス曰く、働かなくなった冒険者にやる気を出させるのと、切迫したこの国の財政改善の為だ。無理を言うな。」

 

 俺とカズマがそう言うと、武劉はそう言う。

 武劉が言うと、説得力が増すな。

 そんな言葉に、冒険者は不満を隠す事なく口を開く。

 

冒険者「確かに、ここ最近はちっとも働かなかったけどよ。でも、塩漬けクエストだって片付けたんだし……………。」

 

 その冒険者が不満をこぼすと、ほかの冒険者達も同調するかのように口を開く。

 

冒険者「大体、財政改善の為って言ったって、俺たちから毟った税金を一体何に使ってるんだよ?俺、知ってるんだぜ?ララティーナがここ最近、小さな男の子を連れて何かを教えてるって噂を聞いたんだ。」

朱翼「え?」

トウカ「ダクネスが?」

アクア「ダクネスったら、今度はショタコン属性までつけようって言うの!?あの子ったら、一体どれだけ貪欲なのよ!」

 

 冒険者の1人がそんな爆弾発言をすると、朱翼とトウカがそう反応して、アクアはそう叫ぶ。

 俺と白夜は首を傾げていたが、武劉は黙っていた。

 すると、アクアが口を開く。

 

アクア「ねえ、皆。これはいい機会だと思うの。見なさいな、この冒険者ギルドにいる人たちの欲に塗れて濁った瞳を。」

白夜「お前が言うか。」

湊翔「確か、この間、溝になけなしの百エリスを落として、泣いてたよな?」

冒険者「確かに。アンタには言われたくないぞ。」

アクア「お黙りなさいな、そこの無礼者達。根も葉もない悪評を広める気なら、朝起きるのシーツがしっとりしてる罰を与えるわよ。そんな事より…………。」

 

 アクアが冒険者達を憐れんだような目で見ながらそう言う。

 俺と白夜、冒険者の1人がそう言うと、アクアはそう脅してくる。

 冒険者が黙り込むと、アクアは口を開く。

 

アクア「ここんとこ、ダクネスの様子がおかしいの。保護者たる私としては、あの子の悩みを解決する必要があるわ。」

トウカ「アクアが保護者…………?」

朱翼「寧ろ、アクアは保護される側だと思ってました。」

アクア「シャラップ。普段、あの子が何をしているのか、前から気になっていたのよね。ねえ皆、ダクネスが普段から何をしてるのか、気にならない?」

 

 アクアがそんな風に言うと、トウカと朱翼はそんな風に話す。

 激しく同意するな。

 アクアは保護者というよりは、手のつけられないダメ人間にしか思えないし。

 結果、アクセルの街の外れにある孤児院へと向かう事に。

 

アクア「ねえ、おじさん。本当にこんなところにダクネスが居るの?」

冒険者「ああ、間違いないよアクアさん。ララティーナが、ここでエロい服装して、子供達を見てニヤニヤしてる姿を皆が見てる。俺は嘘なんかついちゃいないさ。」

 

 アクアがそう聞くと、その冒険者はそう答える。

 

トウカ「ここにダクネスが…………?」

湊翔「あいつ、何やってんだ?」

白夜「まあ、入れば分かるだろ。」

朱翼「ですね。」

武劉「……………はぁ。」

 

 俺たちはそう話す。

 そんな中、武劉はため息を吐いていた。

 すると。

 

???『ララティーナ様、こんなのダメだよ…………。僕たちにはまだ、こんなの早いよ……………。』

 

 そんな子供の声が聞こえてきた。

 え?マジで?

 それを聞いた俺たちは。

 

湊翔「どうなってんだ?」

トウカ「さぁ…………?」

白夜「武劉は、何か知ってるのか?」

武劉「まあな。」

朱翼「え?」

 

 俺たちはそう話す。

 武劉は何かを知っているようだが。

 そんな中、カズマを含めたほかの冒険者達も耳を澄ましていた。

 そんな事をしているのを横目に、俺たちが話をしていると。

 

アクア「ねえ皆、開けないの?私はここに立ってるのも嫌だし、中に入っちゃうわね?」

 

 痺れを切らしたアクアがそう言うと、孤児院の扉を開ける。

 すると、そこには。

 

ダクネス「どうだ、出来立ての本というのは独特のいい匂いがするだろう。私はこのインクの匂いが好きなんだ。」

男の子「僕もこの匂い、嫌いじゃないです、ララティーナ様…………。」

 

 ダクネスが男の子に本を手渡して、男の子は幸せそうに匂いを嗅いでいた。

 俺たちが呆気に取られていると。

 

ダクネス「お、お前達、どうしてここへ…………」

???「湊翔達も来ていたのか。」

湊翔「うん?」

 

 ダクネスが驚いていると、奥から人たちが出てきた。

 出てきたのは、アクセルハーツの3人に、炎魔、彩花、隼、龍牙だった。

 

白夜「お前らも来てたのか。」

湊翔「何してるんだ?」

リア「実は、ダクネスから手伝ってほしいと頼まれてな。」

シエロ「僕たち、孤児院に定期的にコンサートをしているんですよ。」

エーリカ「それで、そのコンサートの打ち合わせが終わった所なのよ!」

龍牙「俺は、この孤児院の子供達のために、色々と料理を作ったりしてんだ。」

炎魔「それで、俺たちはその手伝いというわけだ。」

彩花「そんな所です。」

隼「ええ。」

 

 俺がそう聞くと、リア達はそう答える。

 ちなみに、エーリカは孤児院で育ったらしく、定期的にいろんな孤児院に赴いているというのは、聞いていた。

 龍牙達は、炊き出しを行っていたみたいだな。

 すると、アクアが口を開く。

 

アクア「ねえ、ダクネス。これって一体何してるの?なんか、学校みたいに見えるんですけど。」

ダクネス「あ、ああそうだ。以前、カズマや湊翔も話していたが、ある国では学校や学舎という、子供達が無償で勉強を教えてもらえる施設があると聞く。そこで、アクセルの街では以前から、こうして試験的に家庭教師を雇えない子供を対象に、知識を学ばせているのだが……………。」

 

 アクアがそう聞くと、ダクネスはそう答える。

 そういう事か。

 俺は武劉に話しかける。

 

湊翔「もしかして、この事を武劉は知ってたのか?」

武劉「ああ。学校というのがどういう物なのかを知りたいと言うので、アドバイスもしていた。」

朱翼「ちょくちょく出かけていたのは、それが理由だったんですね。」

 

 俺がそう聞くと、武劉はそう答える。

 どうやら、自衛隊の元SP様は、そんな事をしていたみたいだな。

 すると、トウカがダクネスに対して話しかける。

 

トウカ「これは昔からやってたの?」

ダクネス「そうだな。まあ、昔からと言えば昔からだ。ちなみに、普段私が愛用しているこの服も、ある国から伝わった女教師の制服らしくてな。まずは形から入っているのだが…………前々から、子供達へのこの教育システムを父が聞いていたからな。この街での試験的な政策として、ダスティネス家の自費により、執り行っていたのだ。」

 

 トウカがそう聞くと、ダクネスはそう答える。

 確かに、そんな格好の女教師は、漫画とかだとよくあるけども。

 それに、この世界で学校は、あのデストロイヤーの開発者が関わった紅魔族の里以外には無いからな。

 その理由も……………。

 

アイリス『こんな状況ですもの。とてものんびりと、学業だけに勤しんでいるなんて出来ません。』

 

 アイリスによって、王城に連れて来られた際に聞いていた。

 魔王軍という脅威がある以上、学業だけに勤しんでいる余裕がないと。

 この世界は、前の日本で例えると、太平洋戦争真っ只中の状況と似ているのだ。

 とてもじゃないが、学業にだけ勤しんでいる余裕はない。

 すると、ダクネスが口を開く。

 

ダクネス「というか、私は正直言って、あまり教えるのが上手くないので、皆にこんな所を見られるのは恥ずかしいから、武劉達にも口止めを頼んでいたのだが……………。ところで、皆はここに何しに来たんだ?」

 

 ダクネスはそんな風に聞く。

 すると、カズマ達は気まずい表情を浮かべていた。

 後ろめたい事を考えていたからだろうな。

 すると、カズマが口を開く。

 

カズマ「いやほら、先日税金騒動があっただろ?それで、俺たちの税金がどんな風に使われているのかが気になって、こうして見学に来たってわけさ!いや、俺たちの稼いだ金が子供達の為に使われると知って、また明日から頑張ろうって気持ちになってくるよ!な?お前ら、そうだろ?」

冒険者「そうだな、流石だぜ、ララティーナ!」

冒険者「ララティーナの名前は伊達じゃないな!」

ダクネス「うるさい!ララティーナと呼ぶな!引っ叩かれたいのか貴様らは!」

 

 カズマがそんな風に誤魔化すと、冒険者達はそう叫び、ダクネスはそう叫ぶ。

 それを見ていた俺たちは。

 

湊翔「ダクネスが小さな男の子を金で買う為に税金を掠め取ってるのではとか話してたくせに。」

トウカ「それを言ったら、殺されるからね?」

白夜「触らぬ神に祟りなしだな。」

朱翼「ですね。逆鱗に触れるのは嫌ですし。」

武劉「ったく…………。」

 

 俺たちはそう話す。

 俺たちはダクネスを信じていたので、そう話す。

 すると、少年の1人が申し訳なさそうに口を開く。

 それに気づいたダクネスが口を開く。

 

ダクネス「どうしたんだ。何も遠慮する事は無いんだぞ?」

男の子「で、でも、この孤児院のご飯や服やこの本も、冒険者の人たちのお金で買ってるって聞いてるから…………。」

 

 ダクネスがそう聞くと、男の子はそう言う。

 そういう事か。

 すると。

 

龍牙「心配するな。こう見えても、色々と伝手がある。美味い飯を腹一杯食ってもらえれば、それで嬉しいさ。」

リア「ああ。元気に育ってくれれば、それで嬉しいさ。」

エーリカ「うんうん!可愛く育ってね!」

ダクネス「この3人の言うとおりだ。彼らは日頃、モンスターと戦い、お前達を守ってくれている。しかも、稼いだお金の一部を、こうして親を失ったお前達に分け与えてくれている。だから、毎日彼らに感謝をし、この本も大切に使うんだ。……………いいな?」

少年「……………うん、分かった。おじさん、ありがとうございます!」

 

 龍牙とリアとエーリカの3人がそう言うと、ダクネスはそう言う。

 それを聞いた少年はそう言うと、俺たちは涙ぐむ。

 その後、ダクネスはリア達に孤児院の子供達の世話を頼み、孤児院の外に俺たちを連れて行った。

 

ダクネス「…………皆には、恥ずかしい所を見られたな。」

カズマ「なあ、ダクネス。この孤児院って、本当に俺たちから巻き上げた金で成り立ってるのか?」

ダクネス「巻き上げたとか、人聞きの悪い事を言うな。冒険者から徴収した金は、冒険の最中に不具合になった者の老後の手当てや治療などに充てられる事になった。何せ、今までは冒険者の先行きはとても不安だったからな。これで、歳を取って冒険できなくなった者も、最低限食べていける程度の年金は貰えるぞ?」

 

 カズマがそう聞くと、ダクネスはそう言う。

 なるほどな。

 徴収した金はそんな風に使われるのか。

 

トウカ「でも、さっきの子は、私たち冒険者のおかげとか言ってたけど…………。」

武劉「それに関しては、ダクネスから聞いている。塩漬けクエストで怪我人が多数出たから、その治療費に出費が嵩んだのだろう?」

ダクネス「ああ、武劉の言うとおりだ。勘違いするなよ?基本的には、ダスティネス家があの子達の養育費などを払っているからな。」

白夜「なるほどな。」

 

 トウカがそう聞くと、事情を把握していたであろう武劉がそう言うと、ダクネスはそう言う。

 そういう事か。

 確かに、塩漬けクエストでは、色んな人が負傷したからな。

 無理もないか。

 

ダクネス「その…………それで、お前達から集めた税金の使い道だが…………納得のいく物だっただろうか…………?」

 

 ダクネスは申し訳なさそうな顔でおずおずとそう聞いてくる。

 それを聞いた冒険者達は。

 

冒険者「俺たちはほら、ララティーナが子供達に何かを教えてるみたいな事を聞いたからさ!それがこんな風に俺たちの金が使われてるって聞いたから、そりゃあなあ、お前ら!」

冒険者「そうそう!ララティーナの事だ、どうせまた、何か1人で大変な事を抱え込んで頑張ってるんじゃないかって思ってよ!」

冒険者「だよね、だよね!そう思って心配して来てみたら、ララティーナちゃんはやっぱり、こんな風に無理してるし!ね、ね!」

冒険者「俺たちは冒険者仲間じゃねえか。お嬢様だって関係ないぜ!何なら、ガキ共の登下校の見回りぐらいはしてやるぞ?」

 

 冒険者達はそんな風に言う。

 華麗な手のひら返しだな。

 

湊翔「手のひら返しやがった…………。」

トウカ「ギルドにいた時と態度が違うわね…………。」

白夜「まあ、あんな事を予想してたんだ。無理もねぇだろ。」

朱翼「全く…………。」

武劉「やれやれ…………。」

 

 俺たちは小声でそう話す。

 冒険者達の言葉を聞いたダクネスは、口を開く。

 

ダクネス「いや、今のところは困ってなどいないさ。その気持ちだけで十分だ、ありがとう。食事などに関しても、龍牙達やリア達が手伝ってくれてるし、子供達の通学も、奇特な魔道具店のバイトが勝手に見守ってくれているからな。」

 

 ダクネスはそう言って、無邪気な笑みを浮かべる。

 それを見て、冒険者達は気まずそうにする。

 すると、ダクネスが口を開く。

 

ダクネス「それにしても…………お前達がそう言ってくれるだけで、私はまた頑張れる。本当にありがとう。てっきり、先日の税金の事で恨まれている物だとばかり…………。」

冒険者「何言ってんだよ、ララティーナ!」

冒険者「そうよ、ララティーナ!水臭いじゃない!」

冒険者「俺たちがお前を疑うわけねーだろ、ララティーナ!」

ダクネス「その、そう言ってくれるのは嬉しいが、いい加減ララティーナはやめて欲しいのだが…………。」

 

 ダクネスがそう言うと、冒険者達はまるで必死に誤魔化そうとするようにそう叫ぶ。

 すると。

 

アクア「ちょっと!ここに来る前と言ってる事が違うじゃないの?ねえ、ダクネス聞いて!カズマを始め、皆ここに来る前まではね………!」

 

 空気を読まない事に定評があるアクアはそう言う。

 アクアは空気を読まずにそう叫ぼうとすると、冒険者達に取り押さえられる。

 

アクア「ちょっと、何すんのよ!やめて!やめて!」

 

 アクアは取り押さえようとする冒険者達の手をバシバシ叩いて、激しい抵抗をする。

 すると。

 

彩花「皆!大変です!」

ダクネス「どうしたのだ?」

シエロ「子供達が…………!」

湊翔「っ!?」

 

 そこに、彩花とシエロの2人が出てくる。

 2人がそう言うのを聞いて、俺たちは孤児院の中に入ると、先ほどまで元気だった子供達がぐったりと倒れている光景が目に入った。

 それを見て、俺たちは困惑した。

 そこから、俺たちはどうしたのかと言うと。

 

武劉「毛布をすぐに持って来てくれ!その上に子供達を寝かせるんだ!フリーズを使える者は、子供達を冷やしてくれ!」

 

 武劉の指示のもと、子供達の看病を行っていく。

 すると。

 

バニル「フハハハハハ!わんぱくなガキどもよ、今日も健やかに励んでいたか?我輩が迎えに来てやったぞ!さあ、我が仮面に触らせて欲しい者はきちんと並び…………おや、これは?」

 

 そんな高笑いと共に、バニルが孤児院に入って来た。

 久しぶりに見た気がするな。

 

アクア「ちょっとあんた、こんな所で何やってんのよ。今はあんたなんかに構っている暇はないの。今日のところは見逃してあげるからあっちへ行って!向こうの路地裏は人通りが少ないから、そこで1人で笑ってて。今は見ての通り、子供達の危険が危ないの!」

白夜「お前、言葉が変だぞ。」

 

 アクアは孤児院の中に巨大な魔法陣を描きながらそう言い、白夜はそうつっこむ。

 すると、それを見たバニルが口を開く。

 

バニル「これは一体どうした事だ。今まで平和だった孤児院がなぜ突然、こんな事に………。貴様は行く先々でトラブルを起こさなくては気が済まんのか?」

アクア「何でもかんでも私のせいにしないでちょうだい。なんか知んないけど、この子達が急に倒れちゃったのよ。あんたの方こそ、この子達になんかしたんじゃないでしょうね?」

朱翼「言いがかりをつけてないで、作業をして下さい!」

 

 バニルがそんな風に言うと、アクアは言いがかりをつけていた。

 朱翼がそう言うと、バニルは口元を歪めて、反論する。

 

バニル「何を吐かすか厄病女め!日頃子供達に人気の我輩がそのような事をするか!我輩が呪いをかけるのは、汝ら忌まわしい宿敵にアクシズ教徒と相場は決まってる。」

湊翔「それは良いから。」

 

 バニルがそう反論する中、俺はそう言う。

 少しは手伝ってくれよ。

 すると、子供達を見ていたバニルが口を開く。

 

バニル「おや、コロリン病に感染しているな。」

カズマ「おい、バニル!お前、この子達が倒れた原因を知ってるのか?」

湊翔「あと、何だそのふざけた名前は。」

 

 バニルがそう言うと、俺とカズマはそう言い、皆の視線がバニルに集まる。

 すると、バニルが口を開く。

 

バニル「このわんぱくなガキどもは、コロリン病に感染している。…………これは極めて特殊な病でな。キャリアとなった者を媒介にし、しばらくの間はひっそりと潜伏するのだが、やがて時期が来るとこの様に、周囲に即効性の毒素をばら撒き出す。」

シエロ「それで、そのキャリアは誰か分かるんですか?」

バニル「ふむ……………我輩が見通したところ、そこの娘がキャリアの様だ。」

 

 バニルはそう説明する。

 異世界だから、そんな日本にはない病気があるわけか。

 シエロがそう聞くと、バニルはある方向を指差す。

 バニルが指差した先には、シルフィーナがいた。

 原因はシルフィーナという事か。

 その後、アクアの魔法陣の効果か、子供達もそこまで苦しまなくなった。

 そんな中、バニルは口を開く。

 

バニル「治療の方法は二つある。まずはキャリア以外の子供だが、これはまあ簡単だ。回復魔法と解毒魔法をかけ続ければすぐに元気になるだろう。だが…………。」

トウカ「キャリアになった人には、解毒魔法が効かないんでしょ?」

バニル「その通りだ。回復魔法で体力を補って保たせ、その間に特効薬を作るしかないな。」

 

 バニルはそう説明する。

 トウカがそう聞くと、バニルはダクネスに抱き抱えられてぐったりとしたままのシルフィーナを見ながらそう言う。

 

ダクネス「その、特効薬はどこにあるんだ!?どうやって作る!?」

バニル「材料は5つある。一つはカモネギのネギ、一つはマンドラゴラの根、一つはゴーストの涙、一つは………。」

 

 ダクネスがそう聞くと、バニルは特効薬に必要な材料を口にしていく。

 それを聞いている間にも、俺達は材料をメモしていく。

 すると、バニルは口を開いた。

 

バニル「そして最後に。これが大変だとは思うのだが…………高位の悪魔の爪がいる。」

アクア「ゴッドブロー!」

 

 バニルがそう言うと、アクアはゴッドブローを発動して殴りかかり、体の一部が土になった。

 おい待て!

 いきなりかよ!!

 

バニル「貴様、この非常時に何をするか!床が土塗れになったではないか!遊んでいる場合ではないのだぞ!!」

アクア「そうよ!遊んでる場合じゃないから、アンタに襲い掛かってるのよ!ゴーストの涙は何とかするわ、家に帰って御涙頂戴の冒険話をすれば、簡単に手に入るもの。それより、アンタの生爪寄越しなさいな!!」

 

 バニルがそう言うと、アクアはそう叫ぶ。

 確かに、バニルも高位の悪魔だ。

 だが、バニルは首を振って、口を開く。

 

バニル「我輩は仮初めの体でこの世にいる。仮面以外のこの体は全てはただの土塊だ。」

 

 バニルはそう言う。

 確かに、バニルの体は土で構成されているからな。

 意味はないか。

 すると、アクアがポンと手を打つと。

 

アクア「それじゃあ、例のお店のあの子達にお願いしてくるわね。ちょっと生爪剥がすけどごめんねって言って。」

バニル「戯け!『高位』の、と言ったであろうが。あやつらの様な赤子同然の連中では意味がないわ。」

 

 アクアがそう言うと、バニルはそう言う。

 カズマから聞いた話だが、アクアにはサキュバスの店の存在がバレたらしい。

 だが、カズマがアクセル中の男性冒険者全員を敵に回すと脅すと、引き下がった様だ。

 すると、子供達の看病のうちにやって来ためぐみんが口を開く。

 

めぐみん「仕方ありませんね。ここは一つ、我が使い魔を生贄に、紅魔族に伝わる悪魔召喚の儀式を行なって…………!」

朱翼「それはあんまりじゃないですか?」

武劉「ちょむすけを生贄にするなよ…………。」

ダクネス「それより、他に悪魔の知り合いはいないのか?見通す力でどうにか出来ないのか!」

 

 めぐみんがそう言うと、朱翼と武劉はそう突っ込む。

 ダクネスがバニルにそう聞くと、バニルは口を開く。

 

バニル「…………ふむう、まあこの街の近くに1人、知り合いの高位悪魔がいる事は居る。」

ダクネス「そ、それはどこに…………!」

 

 バニルが悩ましげに仮面を摩りながらそう言うと、ダクネスはそう言う。

 それを聞いたバニルは、口を開く。

 その名はゼーレシルト。

 この街の近くに住む貴族の1人だった。

 その後、ダクネスは急いで馬車を手配して、カズマ、ダクネス、朱翼、リアの4人が向かう事になった。

 俺たちは、特効薬の材料を可能な限り集める事になった。

 

アクア「お水はクリエイトウォーターで何とかなるだろうけど、食べ物はちゃんと持った?ハンカチと鼻紙は?ねぇ、カズマ。テント組み立てられる?枕が変わると眠れないって言うから、一応枕も持って行きなさいよ?」

湊翔「オカンか、お前は。」

カズマ「湊翔の言う通りだって。俺たちは仮面ライダーなんだぞ?大丈夫だって。」

 

 何故か、子供を心配する母親みたいに、アクアは心配をしていた。

 カズマとアクア達が話をする中、俺たちはリアと朱翼に話しかける。

 

湊翔「リア。あの2人のこと、頼んだぞ。」

リア「ああ。任せてくれ。」

白夜「朱翼も頼むな。」

トウカ「しっかり、悪魔貴族にトドメを刺しなさいよ。」

朱翼「いや、相手は貴族ですよ?出来ませんよ。」

武劉「頼んだぞ。」

 

 俺たちはそう話す。

 まさか、悪魔が溶け込んでいるとはな。

 そうして、カズマ達は出発した。

 それを見ていたある存在が口を開く。

 

ロキ「…………よし、タイクーンは離れたな。まずは、アテナ…………貴様からだ。」

 

 ロキだった。

 ロキはそんな風に呟いていた。

 子供達がコロリン病に苦しむ中、ロキが遂に動き出そうとしていた。




今回はここまでです。
今回は、カズマ達がゼーレシルトの元に向かうまでです。
ダクネスは、冒険者達から徴収した税金を、孤児院の子供達の為に使っていた。
そんな中、シルフィーナをキャリアに、コロリン病が発症してしまう。
ゼーレシルトの元にカズマ達が向かう中、ロキは遂に動き出す。
己の野望の為に。
次回も楽しみにしていて下さい。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
BONUS STAGEの本予告が来ましたね。
カズマ達の前に現れた謎の4人組。
果たして、何者なのか。
この小説で、BONUS STAGEの話をやるかどうかは未定です。
時系列的には、かなり過ぎちゃいましたし。
今後の展開などでリクエストがあれば、活動報告から受け付けています。
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