俺たちは、ウィズと共にデュークが指定した場所へと赴く。
指定した場所は、共同墓地だった。
とても、告白する様には見えんな。
ムードが足りない。
まあ、俺も人の事はとやかくは言えないんだけどな。
そんな中、アクアとウィズが話をしていた。
アクア「ねえ、ウィズ。私、あのデュークって人にお酒を奢ってもらったわ。」
ウィズ「ええっ!?ど、どう言う事ですかアクア様!?あの方は一途で誠実だと、皆さんおっしゃっていたと思うのですが…………!」
アクア「それがね、本当に誠実な人なのか試そうって思ったんだけど。魅力溢れる私のお誘いには抗えなかったみたいで、朝まで飲み明かしたの。でも安心して、セクハラみたいな事はされなかったし、それどころか、常日頃カズマさんが発してる様な邪気も感じられなかったわね。」
ウィズ「そ、そうなんですか…………。でも私、もう答えは決めてますから大丈夫ですよ、アクア様。」
ウィズとアクアはそんな風に話す。
そんな中、俺たちは話をする。
湊翔「なあ、やっぱり、告白する様な場所じゃないよな?」
トウカ「私もそう思う。」
朱翼「ムードもへったくれもないですし…………。」
武劉「何かあるんだろうな。というより、白夜には連絡したのか?」
湊翔「ああ。すぐに向かうってさ。」
俺たちはそう話す。
どう考えても、告白するみたいな感じはしないのだ。
ちなみに、白夜に連絡したら、ゴブリンの一団と初心者殺しやら、中級者殺しを返り討ちにしていた様だ。
そんな中、カズマとめぐみんは。
めぐみん「一体どうしたのですか?店を出てから、なんだかずっと考え込んでいる様ですが。」
カズマ「……………いや、なんだかすごく嫌な予感がしてさぁ…………。気のせいだといいんだけど、場合によっては、血の雨が降ってもおかしくないというか。」
めぐみん「大丈夫ですよ。あのデュークというのがどれだけ強いのかは知りませんが、私たちはどんな相手でも倒してきたじゃありませんか。しかも今回は、反則級の力を持つリッチー、ウィズだっているんです。それに…………それにどんな相手だろうと、私の爆裂魔法で消し飛ばして守ってあげますよ。だから安心して下さい。」
カズマ「お、おう…………。」
カズマとめぐみんはそんな風に話していた。
しばらくして、その墓地に到着した。
デュークは、古めかしいローブとマントを羽織った姿だった。
どう見ても、プロポーズをするみたいな空気じゃないな。
デューク「そこに居るサトウカズマはともかくとして、他にも知った顔や、会った事がない面々が色々と居るな。ダスティネスの娘に…………朝までミュルミュル貝について語り合った友ではないか…………。」
湊翔「何、友達としてウィズを見守りに来ただけだ。」
デューク「そうか、まあいい。」
デュークはそんな風に言う。
ていうか、ミュルミュル貝ってなんだよ。
すると、ウィズとデュークが話を始めた。
デューク「俺が言えた義理ではないが、そんな格好で大丈夫なのか?」
ウィズ「こういうのに疎くてお恥ずかしいのですが、一応これが私の勝負服ですから………。」
デューク「ふむ。それは失礼した。てっきり、舐められているのかと思ってな。」
ウィズ「そ、そんな!私としては、こんな風になったのはあなたが初めてですから…………。その、着慣れていなくてすいません…………。」
デュークは、おしゃれな服を着ていたウィズにそう聞くと、ウィズはそう答える。
まあ、舐められてると感じても、無理はないか。
だが、アイツの格好を見る限り、どうにも決闘にしか見えないな。
ウィズの言葉を聞いたデュークは、一瞬だけ驚いた表情を浮かべると、口を開く。
デューク「なるほど。そこそこの腕の冒険者であれば、多少は舐められ、声もかけられるという物だが……………お前は名前を売りすぎたんだな。氷の魔女の名を聞けば、並の冒険者では勝負を挑むどころか、恐れをなすだろうからな…………。」
ウィズ「そ、そうなんです!本当に、そうなんですよ!皆さん、私を怖がって…………!私、別にそんなんじゃないのに…………!」
デューク「おっ!?そ、そうか…………よく分からないが、お前も色々大変なのだな…………。」
デュークがそう言うと、ウィズは泣きそうになりながらそう言い、デュークは軽く身を引いた。
ウィズが氷の魔女という異名で呼ばれてたせいで碌にナンパされなかったとバニルから聞いていた。
デューク「ではそろそろ始めようか。俺達の間に言葉は要らないだろう。それとも、以前の様にまた逃げるか?」
ウィズ「逃げません。今回は、ちゃんとデュークさんの想いに返事をしたいと思います。」
デューク「ほう!」
デュークは気を取り直したのか、不敵に笑いながらそう聞くと、ウィズはそう答える。
すると。
ウィズ「私は今の仕事を辞める訳には行きません。だって……もう長い付き合いになる、変わり者の友人との、約束ですから。」
デューク「そうか。元は氷の魔女と呼ばれ、至高の冒険者パーティーを導いた者よ。今となってはアンデッドに成り下がり、それでとなお、魔道の真髄を追い求める者よ。俺の名はデューク、俺もお前と同じく、いつか魔道の真髄を極めんとする者だ。アンデッドの王、リッチーよ!お前に決闘を申し込む!」
ウィズがそう言うと、デュークは好戦的な笑みを浮かべて、そんな風に名乗りをあげる。
やっぱり。
そして、デュークとウィズの魔法対決が始まったのだが、興奮してきた。
デューク「インフェルノ!」
ウィズ「フリーズ・ガスト!」
2人が放った魔法がぶつかり合い、地面が抉れていく。
そうだ、この世界には慣れたつもりだが、日本との常識の違いにショックを受けていた。
こういう魔法の撃ち合いは、この世界に来てから初めて見るから。
トウカ「湊翔、もしかして、興奮してる?」
湊翔「ああ。こんな戦いは初めて見るしな。」
トウカ「そっか……。」
トウカがそう聞いてくると、俺はそう答える。
すると、トウカが苦笑とともに、少し嫉妬した様な表情を浮かべてくる。
可愛いな……………俺の彼女は。
すると、トウカは俺の腕に胸を当てる。
トウカ「彼女が3人もいるのに、気を取られないでよ。」
湊翔「分かってるって。」
朱翼「あの2人、こんな状況なのに、イチャイチャしだしましたよ……………。」
武劉「……………ほっとけ。」
トウカがそう言うと、俺はトウカの手を指を絡ませながら掴む。
それを見ていた朱翼と武劉はそう話す。
どうやら、カズマも同じ気持ちらしい。
カズマ「おい、アクア。俺は今、猛烈に感動している。そうだよ、これだよ!これこそがファンタジーだよ!野菜が飛んだり畑で秋刀魚が獲れたり、モンスターが色目使って罠に嵌めたりするのはファンタジーなんかじゃない!こういった、本物の魔法こそが異世界なんだ!」
めぐみん「待ってください、カズマ!その言い方だと、爆裂魔法が本物の魔法ではない様に聞こえますよ。いつもあんなショボいのより、もっと凄いのを見ているでしょう。」
カズマは目を輝かせながらそう言うと、めぐみんはそう言う。
それを聞いたカズマは、口を開く。
カズマ「あんな、強敵だろうがなんだろうが、取り敢えず一発撃ったもん勝ちみたいなのは、俺が望む魔法戦じゃない。爆裂魔法には風情がない。パワーバランスも駆け引きもなく、当たれば終わりのギャンブルじゃないか。」
めぐみん「何をっ!」
カズマがそう言うと、めぐみんはキレた。
そんな中、ウィズとデュークの会話が聞こえてくる。
デューク「くっ、流石は氷の魔女だ!クリムゾン・レーザー!」
ウィズ「クリスタル・プリズン!デュークさん、待って下さい!お願いです、話し合いましょう!」
デュークは赤い光線の魔法を放ち、ウィズは氷塊を出現させ、光線が氷塊にぶつかる。
見る限り、ウィズはこの戦いに乗り気ではない。
それを見て、俺たちは話をする。
湊翔「どうする?」
トウカ「ウィズは乗り気じゃないみたいだし…………。」
朱翼「とにかく、助けましょう!」
武劉「そうだな。ウィズが乗り気でない以上、これは見てられないからな。」
俺たちはそう話す。
流石に助けようかと思ったのだ。
ウィズが乗り気でない以上、止めるべきだろうな。
俺たちがそう話し、デザイアドライバーを取り出すと、カズマが口を開く。
カズマ「おい、お前ら!止めるなよ!」
湊翔「何で?」
カズマ「あんな決闘に横槍入れるのは失礼だろうが!」
武劉「…………まさか、この光景を見たいから、放置するとかではないだろうな?」
カズマ「ぎくっ!?いや、決闘に横槍を入れるのが失礼なんだって!」
カズマはそう叫ぶ。
この勝負を見たいがために、止めるのかよ。
すると、カズマはめぐみんを取り押さえる。
カズマ「お前は一体何する気だ!なんで大事なところでジッとしてられないんだよ!」
めぐみん「カズマが爆裂魔法よりもあんなへなちょこ魔法の方に興味を示しているからですよ!他の魔法使いが放つものを見てカズマが目をキラキラさせている姿を見ると、なんだか胸の奥が痛むのです!此間カズマが、ダクネスの誘いに乗りそうだった時ですら、こんな想いはしなかったのに!」
カズマ「お前の嫉妬の基準は一体どこに備わってんだ!あれはあの2人の決闘なんだから、横から邪魔せずちゃんと見とけ!」
カズマはめぐみんを組み伏せて、めぐみんはジタバタと暴れる。
爆裂魔法で美味しいところを掻っ攫おうとしたからだろうな。
その頃、デュークとウィズは、木々を盾にしつつ、魔法を撃ち合っていた。
デューク「なぜまともに攻撃してこない!貴様は俺を舐めているのか!?ラーヴァ・スワンプ!」
ウィズ「フリーズ!ファイアー・レジスト!あつつ…………ッ!私は、あなたを倒す気も無ければ、今の仕事をやめる気もないんです!リッチーは魔法に強いんです!どれだけだって耐え抜いて、あなたに諦めさせてみせますから!」
デュークがそう叫ぶと、ウィズの足元を溶岩の沼に変える。
それに対してウィズは、フリーズで冷やしてから、耐火魔法を唱える。
湊翔「なるほどな。ひたすらに攻撃魔法を連発するデュークに対して、ウィズは魔法のコンボか。」
トウカ「流石はウィズね。」
朱翼「でも、そろそろいい加減に助けないと不味くないですか?」
武劉「確かに……………。このままだと、膠着状態に陥るだけだ。」
ダクネス「ふむ。一理あるな。どれ、ここは私が……………。」
俺はそう言う。
ウィズは己の技量で、魔法のコンボをしているのだ。
俺たちがそう話すと、ダクネスはそう言って、2人の元に向かおうとする。
すると、カズマが動く。
カズマ「バインド!いいからお前もジッとしとけ!ていうか、上級魔法のど真ん中に飛び込んでみたいだけだろうが!」
ダクネス「くっ…………!こんな状況でバインドで縛ってお預けだとか…………お前は相変わらず琴線を刺激するのが上手いというか………!」
トウカ「…………ダメだこりゃ。」
カズマはバインドでダクネスを縛り、そう叫ぶ。
ダクネスは興奮しており、それを見ていたトウカは、そんな風に呟く。
すると、カズマはウィズに向かって叫ぶ。
カズマ「ウィズ、いい加減本気を出せ!でないと相手にも失礼だぞ!」
アクア「このアンポンタンは何言ってんの!?さっきからめぐみんやダクネス達の邪魔をしてないで、ウィズの援護をしなさいよ!」
ウィズ「そんな事言われましても!あれだけ情熱的に口説いてきた人と、いきなり戦えと言われても……!」
カズマはそう叫ぶ。
開き直ったな。
アクアがそう言う中、ウィズは葛藤しながらそう言う。
それを聞いて、焦りの表情を浮かべていたデュークは、意を決した表情をすると。
デューク「やはり俺を舐めている様だな!『サンクチュアリ』!」
ウィズ「えええっ!?痛たたた!?」
デュークはそう叫ぶと、聖なる魔法陣を浮かび上がらせた。
それには、ウィズもダメージを受ける。
湊翔「神聖魔法!?」
武劉「おい、おかしいぞ。本来、神聖魔法が使えるのは、プリースト、アークプリースト、そしてクルセイダーだけの筈だ!」
朱翼「どういう事…………?」
トウカ「……………まさか。」
俺たちは驚いた。
デュークはアークウィザードかと思っていたが、本来はプリーストなどにしか使えないはずの神聖魔法を使ったのだ。
それを見て、トウカは何かを察知した。
すると。
???「ハァァァァァ!」
デューク「っ!?」
湊翔「なんだ!?」
そんな叫び声と共に、頭上から何かが降ってくる。
落ちてきた何かは地面にぶつかると、地面が大きく動く。
それにより、デュークの聖なる魔法陣が解除される。
デューク「貴様、何者だ!?」
???「…………おいおい。いくらなんでも、戦意が無い相手に対して、そんな一方的は良く無いと思うぜ。」
湊翔「……………来たか。」
デュークが土煙が上がる中、落ちてきた闖入者に対してそう言うと、その人物はそんな風に言う。
そこに居たのは、ライジングフォームに変身した白夜だった。
朱翼「白夜さん!」
武劉「どこをほっつき歩いていたんだ?」
白夜「悪い。モンスター共を屠ってた。」
ダクネス「やはりと言うべきか…………。」
朱翼がそう言う中、武劉がそう聞くと、白夜はそう答える。
すると、ウィズが白夜に話しかける。
ウィズ「ありがとうございます、白夜さん。あの…………私…………。」
白夜「あいつに伝えたい事があるんだろ?言ってやれ。それと…………俺もウィズに伝えたい事がある。朱翼もな!」
朱翼「えっ…………!?」
ウィズ「は、はい!」
ウィズがそんな風に言うと、白夜はそう言う。
朱翼が呆気に取られる中、ウィズはそう答える。
すると、ウィズはデュークと向き合う。
ウィズ「デュークさん、思い出して下さい!私の最初に出会った日の事を!あなたはいきなりローブを脱いで、私に裸体を見せつけようと迫ってきましたね……………!」
デューク「突然、人聞きの悪い事を言うな!ここには知らない人間が居るから脱げないが、アレには事情があったのだ!」
ウィズがそう言うと、デュークはそんな風に言う。
やっぱり、食い違ってるんだよな。
ウィズ「デュークさん、あなたは次に会った時、私にこう言いましたよね…………。『俺は、お前の事だけを考え続け、ただひたすらにこの身を鍛え続けてきた!』と。他にも、『お前の事はなんだって知っている!いわば、俺はこの世で最もお前の事を理解している者だと言ってもいい!』と…………!例え形は違っても、アレだけ誰かに想われたのは初めてで…………!」
デューク「一体何を言っている!?」
ウィズがそんな風に語っていくと、デュークは益々、困惑の表情を浮かべる。
すると、そんなデュークを、まるで聞き分けのない幼子をあやす様に、口を開く。
ウィズ「正直、あそこまで言われた事はちょっとだけ嬉しかったです。ですが、私はどれだけ言われたとしても、今の仕事を辞めるつもりはありません。それに、まだ私はあなたの事をよく知りません。なので…………まずはお友達から、というのはダメでしょうか…………?」
ウィズはそんな風に言うと、辺りは静寂に包まれた。
肝心のデュークは、呆然としていて、何を言われたのか分からないと言わんがばかりの表情を浮かべていた。
すると、アクアが口を開く。
アクア「やったわ!よく言ったわウィズ!そうよね、いきなり結婚は早いわよね!」
デューク「……………は?」
アクアがそう言うと、デュークはそんな乾いた声を出す。
すると、ダクネスが口を開く。
ダクネス「まあ、これが一番丸く収まるのかもな……。デュークと言ったな。此間のアレは、その、お前を試すという名目でのナンパだったのだ。私を軽い女だと勘違いされては困るぞ。だが良かったな。いきなり振られるとまではいかなくて。」
デューク「…………は?」
ダクネスはデュークに笑いかけながらそう言うが、デュークは疑問の声を出す。
すると、今度はカズマに組み敷かれているめぐみんが口を開く。
めぐみん「私はウィズにしては頑張った方だと思いますよ?でも、デュークと言いましたか。あなたを安心させてあげます。何か勘違いしている様ですが、もうウィズは、不動産屋の除霊のバイトや、この墓地の霊を慰める仕事も行っておりません。だからもう、心配しなくてもいいんですよ。」
デューク「……は?さっきから、友達だの結婚だの心配しなくてもいいだのと、お前達は何を言っている?本気で意味が分からないのだが。」
めぐみんは苦笑しながらそう言うと、デュークは『何言ってんだこいつら』と言わんがばかりの表情を浮かべて、そう聞く。
やはりか。
すると、アクアが口を開く。
アクア「あんた、何言ってるの?ウィズはこう言ってるのよ。仕事を辞めたりいきなり結婚するってのは無理だけど、まずはお友達から始めましょう、って。良かったね、振られた事は振られたけど、まだ望みはあるからね。」
アクアはそんな風に言う。
すると、デュークは最初は困惑したが、その言葉を意味すると、震え出して、口を開く。
デューク「バ、バカか貴様らっ!何故、俺がアンデッドであるリッチーと結婚しなければならないのだ!何がどうしてそうなった!しかも友達だと!?それは一体なんの冗談だ!?」
ウィズ「ええっ!?」
デュークはそんな風に叫ぶと、ウィズはショックを受けた表情を浮かべる。
アクア達の顔色が変わり、口を開こうとした瞬間、俺が口を開く。
湊翔「あんた、ウィズに辞めて欲しかったのは、魔道具店としての仕事じゃなくて、魔王軍幹部の仕事なんだろ?」
デューク「なっ!?」
「「「ええっ!?」」」
デューク「そ、そうだ…………。」
俺がそう聞くと、デュークとアクア達は驚愕の表情を浮かべる。
ウィズも驚愕の表情を浮かべているのを見て、誤解されていた事に気づいたのか、疲れた表情のデュークは、マントを撥ね退ける。
すると、デュークの胸には、見た事のない紋章が彫られていた。
ウィズ「それは、魔王軍の……!」
アクア「あーっ!ちょっとアンタ、堕天使だったの!?悪魔やアンデッドを嫌う今時珍しい良い人だと思ったら、アンタも神に逆らう愚か者じゃないの!」
デューク「う、うるさいぞ!お前こそ、共にアンデッドや悪魔は愚か、女神エリスの悪口で盛り上がれる気の合う仲間だと思ったのに、さっきからその格好はなんだ!貴様は聖職者だったのか!?」
ウィズがそう言う中、アクアはデュークを見ながらそう叫ぶ。
デュークの背中には漆黒に染まった翼が生えていたのだ。
恐らく、デュークは元々天使だったが、今は堕天して、魔王軍の手先になったという事だろう。
怒れるデュークにアクアは、これ以上ないドヤ顔をしながら胸を張り、自信満々に答える。
アクア「バカね、私を誰だと思っているの?堕天使如きが、平伏しなさい!私の名はアクア!全国二千万の信者を持つ、アクシズ教徒の御神体!女神アクアその人よ!」
アクアはそう叫ぶ。
それを聞いたデュークが目を見開くと、口を開く。
デューク「何だ、ただの痛い女か…………。」
アクア「アンタちょっと待ちなさいよー!」
デュークはそんな風に吐き捨てると、アクアはそう叫ぶ。
堕天使にすら信じてもらえないという。
半泣きになったアクアは、ある事に気づいたのか、口を開く。
アクア「ていうか、アンタ狡っこいわよ!神聖魔法を使えたのはそういう事だったのね!神に逆らって堕天したくせに、ピンチになったら神々の超パワーを借りようだなんて、恥ずかしいと思わないんですかー!?」
デューク「う、うるさい!俺たち天使は散々神々にこき使われてきたんだ!なら、その代価として、多少力を使ったっていいだろうが!言ってみれば、未払い分の給料の回収だ!大体、お前らは知らんだろうが、女神というのはどいつもこいつも…………!」
アクアがデュークが神聖魔法を使えたカラクリに気づくと、そんな風に叫ぶ。
それに対して、デュークはそんな風に言う。
なんか、ブラック企業を辞めたけど、有給はきっちり消化する社畜みたいだな。
湊翔「…………トウカ、天使ってのは、あんな感じなの?」
トウカ「私はあんまり酷使させてる覚えはないけど…………どうなんだろう。」
俺がそう聞くと、トウカはそんな風に首を傾げる。
すると。
???「フハハハハハッ!フハハハハハッ!」
共同墓地に、邪悪さと傲慢さを兼ね備えた、人をバカにするかの様な笑い声が響き渡る。
すると、共同墓地の一際高くなった場所に、バニルの姿があった。
バニル「この様な辺境の街へようこそ、汝、身の程も知らずに魔王軍幹部を欲する者よ。元から忌むべき神のパシリが、堕天した事により情けなさに更に磨きがかかっておるな!」
バニルは、デュークを嘲笑いながら、そんな風に言う。
いつの間に来たんだよ。
すると、バニルは相変わらずのおちゃらけた口調で口を開く。
バニル「どうやら美味しい所に間に合った様だな!いやはや、この一大イベントを危うく見逃すところであったわ!」
デューク「……バニル殿、これは俺とウィズの問題です。元魔王軍幹部とはいえ、どうか手出しはなされぬ様。」
湊翔「一大イベント?」
トウカ「どうせ、碌でもないわよ。」
バニルがそう言うと、デュークは警戒感を露わにしつつ、牽制する様にそう言う。
俺がそう首を傾げ、トウカがそんな風に言うと。
ウィズ「……騙したんですか?」
ウィズは、バニルに目もくれずに、顔を俯けたまま、ポツリとそう言う。
それを聞いたデュークは口を開く。
デューク「騙したとは何だ。俺は最初から魔王軍幹部の座を賭けて勝負を挑んだつもりだ。最初に出会った時、服を脱ごうとしただろうが。その時、この胸の紋章を見せて説明しようとしたのだ。」
デュークは割と律儀な性格なのか、そんな風に説明する。
だが、ウィズは俯いたまま顔を上げずに口を開く。
ウィズ「………プ、プロポーズだと思ったんです……。そして、生まれて初めての告白をされたんだと……。」
デューク「そ、そうか、それは気の毒な事をしたな。だが、言っては何だが、お前だって勘違いが甚だしいぞ。まだ3回しか会ってないのに、出会ってすぐに求婚はないだろう。」
朱翼「正論ですね…………。」
白夜「正論だな。」
ウィズがそんな風に言うと、デュークはそう言い、朱翼と白夜はそう言う。
それはまさしく正論だったが、今のウィズには通じなかった。
すると、ウィズは口を開く。
ウィズ「わわ、私は、一時は店を辞めようかどうしようかと、本気で悩んで、悩み続けて…………!でも、バニルさんが可哀想だからと、やっぱり断ろうとここに来て…………!そんなに行き遅れのリッチーの心を弄んで楽しいんですか!許せない!こんな屈辱、初めてですよ!まだ私が人間だった頃、バニルさんとやり合って、散々おちょくられた時以上に屈辱です!プ、プロポーズだと思ったら、まさかの…………っ!」
バニル「ーーーっ!ーーーーっ!!フハッ!フワーッハッハッハッハッハッハッ!!」
ウィズは顔を赤くして、激昂しながらそう言う。
まあ、無理もないが。
すると、バニルが爆笑しだして、地面を転がりながら、うずくまっていた。
まさか、悪感情目当てだったのか。
白夜「お前、悪感情が目当てで来たんだな。」
湊翔「あの言葉の意味は、ウィズの悪感情を食べる事ができるバニルの事なんだろ?」
バニル「ああ、まさしくその通りだ!フワーッハッハッハッッ!フワハハハハハッ!極上だ!久方ぶりの、超極上の悪感情!美味である!美味である!フワーッッッッッッ!!」
ウィズ「バニルさん!」
トウカ「本当に、バニルって性格悪いわよね。」
朱翼「ですね。」
武劉「今更だがな。」
俺と白夜がそう聞くと、バニルは笑いながら同意する。
涙目のウィズが笑い転げるバニルを叱りつけ、トウカ達はそう話す。
相変わらず、性格悪いな。
すると、デュークが口を開く。
デューク「い、いや、それについても悪かった!だが、俺にだって言い分はあるぞ!お前がこんな街中に住んでいなければ、俺だって最初から紋章を見せつけ、挑んでいたのだ。そうしていれば、そもそも勘違いも生まれずに済んだだろう。そう、お前が幹部の仕事もせずに人間の街なんかで暮らしているからこそ、そんな腑抜けに任せられぬと立ち上がったのだ!」
トウカ「清々しいほどまでの逆ギレね。」
デュークは、ウィズがバニルに爆笑されているのを見て、罪悪感が湧いたのか、律儀にそう言うと、そこから逆ギレをする。
トウカがそう呟く中、ウィズは顔を上げると、口を開く。
ウィズ「私だって、好きで魔王軍の幹部をやってるわけじゃありませんよ!魔王さんに結界の維持を出来るほど強い魔力を持つ人が他にいないから、どうしてもって頼まれて!それなのに、腑抜けだなんて…………!」
デューク「腑抜けなのは本当ではないか!今や魔王軍幹部は数を減らし、いよいよ結界の維持も危ぶまれているのだぞ!しかも、人類との最前線にあった砦すらが陥落し、水面下で長く進めていた調略すらも失敗した。」
ウィズはそんな風に叫ぶ。
なんちゃって魔王軍幹部だからな。
話を聞いた事があるのだが、ウィズのパーティメンバーがかつて、ベルディアの死の呪いにかけられ、それを解除する為に、ウィズはリッチーとなり、魔王城に乗り込み、ベルディアに呪いを解除させたのだ。
その際、ウィズが言っていた様に、魔王軍にスカウトされたとのことだ。
すると、デュークはそんな風に言う。
デューク「情報を集めてみれば、それら全てに仮面ライダー共が関わっている所まで調べがついた。」
湊翔「情報収集は優れているんだな。」
デュークはそんな風に言う。
まあ、俺たちが関わっているのは事実だし。
すると、デュークが口を開く。
デューク「既にこの事は魔王様の下へ報告書を送っている。いずれこの街は、魔王軍の最重要攻略拠点となるだろう。」
カズマ「マジかよ。」
湊翔「こいつ…………!」
デュークはそんな風に言う。
まさか、雷ジャマト祭り以来、再びアクセルの街が狙われるとは…………!
デュークは不敵な笑みを浮かべて、何かを言おうとすると、勢いよく吹き飛ばされる。
デューク「えぇ…………!?」
デュークはそんな声を出す。
その視線の先には、無詠唱で魔法を放ったと思われるウィズの姿があった。
ウィズ「この街が最重要攻略拠点に…………?ここが襲われる?」
湊翔「あ。ウィズの逆鱗に触れた。」
トウカ「っ!」
ウィズは、いつになく冷え切った口調でそう言い、トウカが俺の腕を掴む。
この光景は、かつて、一度だけ見た事がある。
それは、アルカンレティアでの一件で、ハンスが温泉の管理人のお爺さんを食ったと聞いた際の事と同じ状況だった。
ウィズ『確か、私が中立でいる条件、魔王軍の方には手を出さない条件は、冒険者や騎士など、戦闘に携わる者以外の人間を殺さない方に限る、でしたね?』
ウィズはかつて、ハンスに対してそんな風に言った。
今回の場合は、アクセルの街にいる一般人を危険に晒そうとするデュークにキレたのだろう。
ウィズの姿を見たデュークは。
デューク「よ、ようやくやる気になったのか。しかし、流石はリッチー。無詠唱であれだけの威力の魔法を即座に放てるとは…………伊達に年を経ているわけでは…………っ!?」
白夜「……………あいつ、結構なアホだろ。」
武劉「もしくは、真面目が高じた天然かだな。」
デュークはそんな風に言うと、不可視の魔力塊の様なものが発射され、デュークが吹き飛ばされる。
それを見た白夜と武劉はそう話す。
あいつ、ウィズがブチ切れてるのに、年齢の事で挑発するとか、かなりのアホか?
トウカ「……………大丈夫そうね。」
湊翔「だな。」
俺とトウカはそう話す。
本気になったウィズは、マジで強いからな。
カズマとめぐみんが何か話をする中、バニルは口を開く。
バニル「小僧共、ここからは目を離すなよ。見通す悪魔が宣言しよう。今から最高に素晴らしい物が見れるぞ。」
バニルはいつになく楽しげにそう言う。
本当、こいつは素直じゃねぇな。
すると。
デューク「ぐうううううっ!イ、インフェ…………!」
ウィズ「カースド・クリスタルプリズン。」
デュークは反撃と言わんがばかりに魔法を放とうとするが、それよりも早く、ウィズが魔法を発動して、デュークの上半身だけを凍らせる。
デュークは顔を青ざめると、氷を地面に叩きつけて割ろうとするが、そう簡単に砕けなかった。
ウィズ「降参しますか?」
ウィズは、とても静かな声でそう言う。
デュークは、窒息寸前だったのか、ふらつきながらも頷いた。
その後、デュークが氷から解放されると。
アクア「やったわな、ウィズ!振られた事への腹いせに、瀕死にまで追い込むだなんてやるじゃない!」
トウカ「確かにね。それくらいはやらないとね。」
ウィズ「待ってください、アクア様にトウカさん!振られた腹いせであんな事をしたんじゃありませんよ!」
アクアとトウカがウィズにそう話しかけると、ウィズは涙目で抗議をする。
普段通りの態度に戻ったか。
すると、カズマとダクネスが口を開く。
カズマ「おい、バニルに湊翔達も。なんでもっと早く、ウィズには勘違いだって教えなかったんだよ。そうすりゃここまで大事にもならず、適当に決闘して終わりで済んだのに。」
ダクネス「そういえばそうだ!私は、あの男をナンパする羽目になったのだぞ!」
カズマとダクネスはそんな風に言う。
それに対して、俺と武劉とバニルが口を開く。
湊翔「悪かったって。それを下手に教えて、警戒させたら、デュークも警戒するかなって思って。言うだろ?敵を欺くには、まず味方からって。」
武劉「それに、アクセルの街が狙われているというのは分かった。あの男が何を狙っているのかを探る意味でも、黙っていたんだ。」
バニル「あと、我輩は自らの美味の為なら、何だってしてくれる。そう、そこの汝ら2人と王女に好かれて調子付いているハーレム小僧が、ある日突然、愛想を尽かされ逃げられるとか、これまた極上の悪感情を味わえそうだ。」
カズマ「や、やめろよ。いや、まじでやめてください…………。また今度、お前のとこで何かいらない商品買っていくから…………。」
俺と武劉はそう話す。
カズマ達に黙っていたのは、不用意にデュークを刺激したくなかったからだ。
バニルの言葉に、カズマがそう言うと、バニルは口を開く。
バニル「それに…………事態はまだ、これで終わりではないぞ。」
カズマ「は?」
白夜「おい、何やってんだ!?」
バニルはニヤリと笑いながらそう言うと、カズマは呆気に取られる。
すると、白夜の叫び声と共に、俺たちはデュークの方を見る。
デュークは、即席で描いたと思われる魔法児の上で、黒いナイフを胸に突き立てていた。
朱翼「何ですか、あれ…………!?」
バニル「やりおった!見ろ小僧共!あやつ、降伏したふりをして、魔道の奥義の一つであるリッチーに成る儀式を執り行いおった!フハハハハハ、力欲しさに自らが忌み嫌う、先程まで罵っていたアンデッドに成るとはなんたる事か! フハハハハハ!これは実に滑稽である!」
バニルはそんな風に高笑いしながらそう言う。
だが、バニルが余裕なのも納得がいく。
デューク「油断したな、ウィズ…………!ゴハッ!?見ろ、この湧き上がる強大な魔力を…………!ああ、黒の短剣に刺された箇所から、徐々に力が湧き出してくる…………!体一つ一つの細胞から、命が失われていく傍から、不死の肉体に変わっていく様が分かる!俺は堕ちたとはいえ、元は天使の身。この手だけは使いたくなかったが、仕方がない…………!さあ、共に不死者同士の終わりなき戦いを…………!」
デュークはそんな風に言う。
すると。
アクア「セイクリッド・ターン・アンデッドー。」
トウカ「ハァァァァァ!」
デューク「ひぎゃあああああ!」
アクアとトウカの不意打ちを受けて、デュークはダメージを受ける。
まあ、トウカも女神だからな。
それに、敵対していた人物だから、容赦なく行ったし。
デュークが薄くなる中、ウィズは悲しそうな顔をして近づく。
デューク「ななな、これは何が起こって………!俺は最強のアンデッド、リッチーに成ったはずなのに、一体何が…………!」
ウィズ「私と関わったばっかりに、こんな姿になってしまって…………。せめて苦しまずに逝かせてあげます…………。ドレインタッチ………。」
デュークが困惑しながらそう言うと、ウィズはそう言って、ドレインタッチを発動して、魔力を吸い取っていく。
それを見て、デュークは口を開く。
デューク「やめろ、やめてくれ!待ってくれ!これは誤解だ!誤解なんだ!」
ウィズ「誤解?リッチーにまで成っておいて、一体何が誤解なんですか?」
デュークは自らの消滅を悟ったのか、ウィズに縋る。
ウィズが険しい声でそう聞くと、デュークは口を開く。
デューク「それがまず誤解なんだ!おお、俺がリッチーに成ったよは…………そう!お前に復讐する為なんかではなく、共に不滅の存在、リッチーとなって同じ道を歩もうと!」
朱翼「あからさまに嘘ですね。」
武劉「はぁ…………いくら何でも、そんなのに騙されるわけが……………。」
デュークはそんな風に叫ぶ。
まさに、今思いついたばかりの言い訳に、朱翼と武劉はそう話す。
それで、当のウィズはというと。
ウィズ「そ、そんな…………だ、騙されませんよ!またそんな甘い事を言われても!」
湊翔「あっ、意外と騙されそう。」
ウィズはそんな風に言う。
それを見て、俺はそう呟く。
すると、デュークは口を開く。
デューク「だ、騙すだなんてとんでもない!俺はお前との戦いを経て、真なる愛に目覚めたのだ!いやなに、いきなり結婚だのとは言わないさ。だから…………最初に言っていた、まずはお友達というやつでお願いしたい!」
ウィズ「ま、まずはお友達から…………。」
デュークは、勢いでどうにかしようとそう早口で叫ぶ。
それに対して、ウィズは流されそうになっていた。
すると、ワクワクした口元を隠さないバニルが、ウィズに話しかける。
バニル「騙されやすいお人好し店主よ。一つだけ教えてやろう。堕天する様な下っ端の天使族は、悪魔と同じく、性別という物が決まってないぞ。」
バニルは、追い討ちをかけると言わんがばかりに、そんな事をカミングアウトする。
すると、それを聞いたウィズはデュークを突き飛ばすと、呪文を唱える。
デューク「ちょっ…………!待っ…………!?」
ウィズ「エクスプロージョン!!」
デュークは何かを言いかけたが、涙目のウィズは爆裂魔法を発動する。
それにより、デュークは消し炭になった。
俺は白夜に話しかける。
湊翔「…………白夜。その話は、また今度にしたほうがいい。」
白夜「…………そうだな。」
俺がそう言うと、白夜は何ともいえない表情を浮かべながら、同意する。
これは酷い。
そうして、デュークとの対決は、ウィズの心に深い傷を残して、幕を閉じたのだった………。
今回はここまでです。
今回は、デュークとの対峙です。
白夜も、カッコよく登場させました。
ウィズの心に傷を残して、デュークとの対決は終わりました。
ただ、アクセルの街が、最重要攻略拠点になってしまったという。
次回で、13巻に相当する話は終わります。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
現在、雷影さんが投稿する転生したらフォルテだった件でも、この小説とのコラボエピソードが始まりましたので、良かったら見て下さい。