この白狐の戦士に祝福を   作:仮面大佐

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第156話 謎のプリースト

 俺たちは、紅魔の里からアクセルの街に戻ってきた。

 ゆんゆん、狼菜、アクセルハーツ、父さんと母さんと分かれて、俺たちはギルドに赴いていた。

 めぐみんが爆殺魔人もぐにんにんの討伐をしたので、ギルドにその報告をする為だ。

 

アクア「まさか、私が居ない間にもぐにんにんを倒していたなんてね。でも、私たちはパーティーなんだから、たとえ寝ていたって、賞金は山分けよね?」

ダクネス「ま、まあ、本当に夜の運動会に励んでいたとは思わなかった。すまないな、カズマ、めぐみん。そうだアクア!今夜は2人の活躍を祝い、高級食材を買って宴会しないか?」

アクア「全くもって問題ないわね。寧ろ、素晴らしい考えだと思えるわ。頭カチカチなダクネスにしては名案よ!」

 

 アクアとダクネスは、そんな風に手のひらを返す様にそう言う。

 それを聞いていた俺たちは。

 

湊翔「…………見事な手のひら返しだな。」

トウカ「あはは…………。」

白夜「しっかし、たった2人でもぐにんにんとやらを倒してたなんてな。俺も誘ってくれりゃ、手伝ったのによ。」

朱翼「しょうがないですよ。私たち、お酒を飲んじゃいましたし。」

武劉「変に動くのも嫌だからな。」

 

 俺たちはそんな風に話をする。

 ちなみに、アクアに頭カチカチ呼ばわりされたダクネスは、こめかみをピクつかせながらも、笑みを浮かべていた。

 そんな話をしつつ、ギルドへと到着する。

 カズマがもぐにんにんの賞金を受け取っていると、突然声を掛けられた。

 

???「あの、あなた方が、サトウカズマ様と桐ヶ谷湊翔様ですか?」

 

 そんな風に声をかけられて、俺たちは振り返る。

 そこに居たのは、いかにも神官みたいな格好の女性だった。

 腰にはメイスを下げていた。

 

湊翔「あの、どちら様ですか?」

セレナ「失礼しました。お噂はかねがね………。あなた様方のご高名は伺っております。私はセレナと申します。……突然ですが、どうか貴方様方のパーティーに入れて頂けませんか?」

 

 俺がそう聞くと、その女性はセレナと名乗り、そんな風に言う。

 恐らく、紅魔の里に向かう直前に、ルナさんが言っていた、カズマに会いたいと言っていた自称ファンの美人冒険者とは、この人の事だろう。

 その女性の言葉に、ギルド内が静まり返ると、アクアが口を開く。

 

アクア「はあー?いきなり現れて何言ってるのよ?このパーティーには既に私がいるので、他のプリーストは要りません。分かったら、あっちへ行って。ほら、あっちへ行って!」

 

 ギルド内に、憤るアクアの声が響き渡る。

 恐らく、自分の存在意義を奪われないかと警戒しているようだ。

 そんなセレナという人物は、アクアを相手にせずに、口を開く。

 

セレナ「サトウカズマ様、桐ヶ谷湊翔様。どうか、この私を貴方様方の従者の1人として、そばに置いておくわけには参りませんか?」

 

 セレナはそんな風に言いながら、ニコリと笑みを浮かべる。

 少し、怪しいんだよな…………。

 それに、過去を知られたくないし…………。

 すると。

 

カズマ「アンタ、魔王の手下か何かだろ。突拍子もなく仲間になりたい?湊翔はともかく、俺の悪評を知っていたら、うちのパーティーに入ろうだなんて奴は居ない。そう、アンタの正体は、数多の魔王の幹部討伐に関わってきたこの俺を危険視し、魔王が送ってきた暗殺者…………。」

アクア「セイクリッド・ハイネスヒール!」

 

 カズマはそんな風に言う。

 そう。

 あまりにも突拍子もなく、言ってきたのだ。

 少し、疑いを向けてしまうな。

 すると、アクアはカズマに回復魔法をかける。

 

白夜「…………お前、なんでカズマに回復魔法をかけてんだ?」

アクア「最弱職で、レベルもそんなに高くないカズマが、魔王に狙われる妄想に取り憑かれたみたいだから、頭にヒールを掛けてみたの。」

 

 白夜がそう聞くと、アクアはそんな風に答える。

 申し訳ないけど、断るか。

 

湊翔「悪いけど、アクアが居るから、他を当たってほしいな。」

カズマ「悪いけどな。」

セレナ「………仕方ありません。今日はこれで失礼します。ですが、私が居ると役に立ちますよ?」

 

 俺とカズマがそう言うと、セレナはそう言って、引き下がっていった。

 すると、トウカが口を開く。

 

トウカ「どうしたの?カズマのパーティーはともかく、私たちのパーティーには、アークプリーストは居ないじゃない。」

湊翔「そうなんだけど…………なんか、過去を知られるのが怖くてさ…………。」

白夜「まあ、良いんじゃね?アクアもいるわけだし。」

朱翼「無理に新しい仲間を入れても仕方ないですからね。」

武劉「そうだな。」

 

 トウカの質問に対して、俺はそう答える。

 やっぱり、仲間でない人に過去を知られてしまうのは、気が引けるからだ。

 それを聞いた白夜達は、納得していた。

 翌日、ギルドは凄い事になっていた。

 

セレナ「では、討伐に出る方はこちらに並んで下さいね。効果が長時間持続する支援魔法を、無料で掛けさせて頂きますので…………。」

 

 ギルド内には、列を作っている冒険者達の姿があった。

 セレナがタダで支援魔法をかけていた。

 

セレナ「あら、カズマ様に湊翔様ではありませんか。どうですか?支援魔法のサービスを受けていきませんか?支援魔法は宗派が違えば重複します。私はそちらのプリーストの方とは宗派が違うと思いますので、きっと重複可能ですよ?」

 

 セレナは俺たちに気付いたのか、そんな風に言ってきた。

 確かに、プリーストは需要の割には、なり手が少ないからな。

 すると。

 

アクア「ちょっと、アンタ。ここで勝手にそんな事されると、他のプリーストに迷惑なんですけど。私たちのありがたみが薄れるので、勝手な事はやめて頂けます?」

 

 アクアはそんな風に言って、突っかかってきた。

 チンピラか、お前は。

 すると、セレナは口を開く。

 

セレナ「その様な言動は慎んだ方がいいですよ?でないと、カズマ様と湊翔様の評判が落ちる事になります。カズマ様に悪評が多いのは、あなた方のせいでもあるのではないですか?…………それに、プリーストが無償奉仕をして何が悪いのですか?プリーストのいないパーティーに救済の手を差し伸べる。それは、悪い行いなのですか?」

アクア「悪くないです。」

セレナ「別に、あなたに無償で支援魔法を掛けろとは言いません。私よりもプリーストとしての力がありそうなあなたですが、今まで他の冒険者に支援魔法を掛けなかった事にも何も言いません。…………ですが、私の行為は誰に恥じる事もない、正しい行いのはず。それを止める権利はあなたにはありませんよ?」

アクア「はい。」

 

 アクアが突っかかってきたものの、セレナに正論を言われて引き下がった。

 完全に言い負かされたな。

 

アクア「…………負けたんですけど…………。」

白夜「……………そ、そうか…………。」

 

 アクアはトボトボと歩き、そんな風に呟く。

 白夜も、何とも言えない表情を浮かべる。

 女神がプリーストに言い負かされてどうすんだよ。

 流石に、アクアの傷口に塩を塗る真似はしないが。

 すると。

 

ダスト「…………気に入らねえなぁ。」

湊翔「ダスト?」

トウカ「何が?」

ダスト「気に入らねえなあ…………。あんな聖職者らしい聖職者、見た事ねえ。…………他の連中は支援魔法一つでホイホイ心を許してやがるが、俺は騙されねえぞ。プリーストとしての腕なら、昔、俺を生き返らせてくれたアクアの姉ちゃんの方が上だろ。俺はこっちを推すぜ。…………気に入らねえ、気に入らねえなぁ…………。」

 

 ダストはそんな風に呟く。

 ダストは捻くれてるからな。

 なんだかんだ言って、アクアの方が付き合いは長いからな。

 すると。

 

ルナ「冒険者の皆さーん!本日も、張り切って討伐に行きましょう!さて、本日は少々いつもとは事情が異なりまして…………。」

朱翼「事情が異なる?」

武劉「何かあったのか?」

 

 ルナさんがそんな風に叫んだ。

 それを聞いて、朱翼と武劉は首を傾げる。

 実際、掲示板には依頼の紙が張り出されていなかったのだ。

 すると、ルナさんは一枚の紙を取り出しながら、口を開く。

 

ルナ「実は昨夜から、街の共同墓地周辺に大量のアンデッドが発生しておりまして。本日はこれらの討伐を行なって頂きたいのです。何せ、街に近い物ですから、いつ住人に被害が出るか分かりません。特に、プリーストの方は絶対参加でお願いします!」

 

 ルナさんはそんな風に叫ぶ。

 共同墓地からアンデッドが大量発生ね………。

 それを聞いて、俺たちの視線は、アクアに集まった。

 

アクア「何⁉︎どうしてそんな目で私を見るの⁉︎私、ちゃんと週一ぐらいで墓場の城下に行ってるから!今回は私、手抜きしてないから!」

白夜「…………お前、手抜きの前科があるじゃねぇか。」

 

 アクアが必死にそんな風に弁解すると、白夜は胡乱げな視線を向ける。

 屋敷を手に入れた際、墓地に結界を張ったことだろう。

 確かに、前科があるな。

 すると。

 

アクア「ねえ、皆そんな目で見ないで⁉︎私、今回はちゃんと仕事してるから!嘘じゃないから!いいわ、見てなさいな!今日はアークプリーストの本気を見せてあげるわ!ゾンビやスケルトンなんて、私1人で十分よ!」

 

 アクアは開き直った様に、そんな風に大声で宣言をする。

 その後、共同墓地に向かうと、アンデッドが大量にいた。

 

冒険者「なんじゃこりゃー!」

 

 そんな冒険者の悲鳴が聞こえてくる。

 実際、百や二百ではきかないアンデッドがひしめいていたのだ。

 

湊翔「多すぎやしないか?」

トウカ「そうね…………うん?」

白夜「どうした?」

トウカ「いや…………なんでもない。」

武劉「早く片付けるか。」

朱翼「ですね。この辺りが本当に臭いので。」

 

 俺たちはそう話すと、変身アイテムを取り出して、変身する事に。

 

MARK(マーク) (ナイン)

LIGHTNING(ライトニング) TEMPEST(テンペスト)

 

 その音声と共に、ブーストマークIXレイズバックルとライジングテンペストレイズバックルを分離すると、俺たちはそれぞれのレイズバックルを装填する。

 

SET(セット) IGNITION(イグニッション)

SET(セット) AVENGE(アベンジ)

SET(セット)

SET(セット) STERNLY(スタンリィ)

SET(セット) COMBINE(コンバイン)

SET(セット) AGRESION(アグレシオン)

 

 それぞれの音声が鳴る中、俺たちは叫んだ。

 

『変身!』

 

 そう叫ぶと同時に、俺と白夜はデザイアドライバーのリボルブアンロックを押して、ドライバーのロックを外して、半回転させる。

 

REVOLVE(リボルブ) ON(オン)

 

 その音声が鳴るとバックルが展開して、俺の方は九尾の狐の様な形状に、白夜の方は虎の様な形状になる。

 そして、それぞれがレイズバックルを操作する。

 

DYNAMITE(ダイナマイト) BOOST(ブースト)

GEATS(ギーツ) IX(ナイン)

BLACK(ブラック) GENERAL(ジェネラル)

BUJIN(ブジン) SWORD(ソード)

GREEN(グリーン) FEMALE(フィーメイル) SOLDIER(ソルジャー)

VALKYRIE(ワルキューレ) SWORD(ソード)

VOLTEC(ボルテック) LIGHTNING(ライトニング)

RAIKOU(ライコウ) RISING(ライジング)

FANTASY(ファンタジー)

AMAZING(アメイジング) POWER(パワー)

CORRIDA(コリーダ)

HAMELN(ハーメルン)

BORRELOAD(ヴァレルロード)

REDAY(レディ) FIGHT(ファイト)

 

 俺はギーツIX、カズマはタイクーン・ブジンソード、トウカはラウンズ・ワルキューレソード、白夜はライコウ・ライジングフォーム、朱翼はスワン・ハーメルンフォーム、武劉はダイル・ヴァレルロード、めぐみんはナーゴ・ファンタジーフォーム、ダクネスはバッファ・コリーダフォームに変身する。

 

湊翔「ふっ!はっ!」

 

 俺はギーツバスターQB9で銃撃をしていく。

 

カズマ「オラっ!ハァァァァァ!」

 

 カズマは、ジャマトの攻撃を躱しつつ、武刃で攻撃していく。

 

トウカ「ハァァァァァ!はっ!」

白夜「おらっ!ハァァァァァ!」

 

 トウカと白夜は、斬撃と雷と風を纏った格闘戦を行なっていく。

 

朱翼「ふっ!はっ!」

武劉「はっ!ハァァァァァ!」

 

 朱翼は、ハーメルンソードで攻撃をしていき、武劉は格闘戦を行なっていく。

 

めぐみん「ハァァァァァ!」

ダクネス「てやっ!ハァァァァ!」

 

 めぐみんはファンタジーフォームの力で調整した爆裂魔法を放ち、ダクネスは格闘戦を行う。

 そんな中。

 

アクア「ターンアンデッド!」

 

 アクアはターンアンデッドを放つ。

 すると。

 

「「…………あれっ?」」

 

 カズマとアクアはそんな声を出す。

 俺たちも驚いていた。

 なぜなら、アクアのターンアンデッドがどういう訳か効いていなかったのだ。

 

白夜「あ?アクアのターンアンデッドが効いてないぞ⁉︎」

湊翔「どうなってんだ?」

トウカ「…………なんか、変な感じがする。」

朱翼「言われてみれば…………。」

武劉「目の赤いゾンビは、見た事がないな…………。」

 

 それには、俺たちはそう話す。

 実際、アクアのターンアンデッドが効いていないのは、見た事がないのだ。

 すると、武劉の言葉で、あるやり取りが蘇る。

 

ゆんゆん『見回りという名のそけっとのストーキングに、警戒という名の散歩でしょうに。』

ぶっころりー『うるさいよ!里の周辺の警戒は意外と馬鹿に出来ないんだからね!ここ最近、魔王軍がおかしな動きばかり見せてるんだ。此間だって、里の近くで、目の赤いゾンビやゴーレムが彷徨いていたし…………。』

 

 それは、牢屋に入れられたカズマとめぐみんを引き取りに来た際に、ゆんゆんとぶっころりーのやり取りだった。

 目の赤いゾンビというのは、ぶっころりーの発言の通りだった。

 何か、関係しているのか?

 アクアのターンアンデッドが効かないのを見て、他の冒険者達が慌てると。

 

セレナ「ターンアンデッド!」

 

 セレナのそんな声が響き渡る。

 すると、アンデッド達は、まるで糸が切れた操り人形の様に次々と地に崩れ落ちる。

 それには、冒険者達も歓声を上げる。

 その後、ギルドに戻って、冒険者達はセレナを取り囲んでいた。

 

冒険者「いや、アンタ凄いな!うちのパーティーに入らないか?うちには1人だけだが、上級職がいるぜ?」

冒険者「いやいや、ウチに入ってくれよ!俺たちのパーティーはそこそこ名も売れてるからさ!」

冒険者「ぜひ私たちのパーティーに!うちは女ばかりだから、色々安心ですよ!」

セレナ「…………いえ、その…………。私は、カズマ様達のパーティーに入りたいので………。」

 

 セレナは大量の冒険者に取り囲まれていて、勧誘を受けていた。

 それに対して、セレナは困った表情を浮かべながらそう言う。

 

アクア「さあ!テーブルに置かれたこのコップに、離れた所からこの松ぼっくりを投げ入れます。すると、コップの中から、ニョキニョキと…………!」

 

 アクアは芸をやろうとしているが、冒険者達は、セレナの勧誘に忙しいのか、見向きもしなかった。

 そんな中、俺たちは話をする。

 

湊翔「それにしても…………なんで、アクアのターンアンデッドが効かなかったのに、セレナのターンアンデッドは効いたんだ?」

トウカ「確かに…………セレナ本人も、アクアより力は弱いって言ってたし、赤い目のゾンビなんて、見た事ないのよね…………。」

白夜「なんか引っかかるな…………。」

朱翼「ですね…………。これまで、アクアのターンアンデッドが効かなかった事なんて、見た事ないですし…………。」

武劉「何かあるのか?あのセレナという人物には………。」

 

 俺たちはそう話す。

 実際、セレナ本人も、アクアより力は劣るというのを口にしているからな。

 どうにも引っかかるんだよな。

 そんな会話をしていると、あるやり取りが聞こえてくる。

 

ダスト「最初見た時から、アンタは違うなって思ってたんだよ!どこぞのガッカリアークプリーストに比べて、なんて人間が出来てるんだ!金に汚くないってとこがいいよな!」

カズマ「……………あいつ、あんな事言ってるぞ。」

アクア「…………ねえ、カズマさん。カズマさんは、最後まで私の味方よね?」

 

 ダストは掌を返したのか、そんな風に言う。

 どういう事かというと、セレナは報酬を必要最低限の物を受け取り、残りを他の冒険者達に渡したのだ。

 それを受け取り、ダストがそう言うと、カズマとアクアはそう話す。

 アクアが追い詰められているな。

 セレナがこの街に来てから、しばらくが経った。

 

冒険者「セレナさん、ちょっと討伐で傷負っちゃってさ。治してくれないか?」

セレナ「ええ、もちろん構いませんとも。傷を見せて下さい。」

冒険者「セレナさん、次、俺お願いします!」

冒険者「セレナさん、マジ女神!」

 

 冒険者ギルドの酒場では、セレナが女神だと崇められる様になっていた。

 ちなみに、ダクネスは、俺とカズマを除く全員を連れて、何処かへ行った。

 

アクア「気に食わないわね…………!」

ルナ「アクアさん、こんな所に入って来られると困るんですが…………。」

 

 アクアはギルド受付のカウンターに勝手に入って、そこから監視していた。

 ルナさんはアクアに注意するが、アクアは一切取り合わない。

 すると、職員達は俺とカズマに視線を向ける。

 

湊翔「アクア、何やってんだよ。」

カズマ「そんな所に居ると迷惑だから。多分バレバレだし、出てこいよ。」

アクア「…………あの女、ギルドでの私の人気を横取りするなんていい度胸だわ。本来、あそこで冒険者達を治療して癒しの女神扱いされるのは私の仕事なはずよ。」

 

 俺とカズマがそう言うと、アクアはそんな風に言う。

 アクア、一度もそんな事してないだろ。

 俺はアクアの言葉に呆れ果てた。

 だが、やはり気になるな、あのセレナってプリースト。

 

湊翔『アクアのターンアンデッドが効かなかったのに、セレナのターンアンデッドは効いた。何かあるのか?あのセレナって女には。それに…………違和感を感じるんだよな…………。』

 

 俺はそんな風に考える。

 実際、アクアは一応は女神なので、ターンアンデッドが効かないなんて事はない筈だ。

 それに、ここ数日、セレナの事を慕う様になった冒険者は、基本的に、セレナに回復魔法を掛けてもらった面子ばかりだ。

 中には、ほとんど傷らしい傷もないのに並んでいる追っかけみたいな存在もいる訳だし。

 そんな風に考えていると。

 

冒険者「ギルド1の美人プリースト…………。」

冒険者達『…………ブフッ!』

アクア「今笑ったの誰よー!そっちから聞こえたわよ!出てきなさいよ!あっ、あんた昔、私が蘇生してあげた人じゃない!笑うんだったらお金払って!蘇生は本来、高いお布施を貰う超高等魔法なんだから、お金払って!」

 

 冒険者達のそんな声が聞こえてきて、アクアがキレていた。

 ギルド内の酒樽に駆け寄り、手を突っ込もうとするアクアを、ギルド職員や冒険者達が慌てて静止しようとしていた。

 すると。

 

カズマ「なあ、湊翔。」

湊翔「なんだ?」

カズマ「セレナがお前にも話があるってよ。」

湊翔「俺にも?」

 

 カズマがそう話しかけてきて、俺はそう首を傾げる。

 何の用だ?

 取り敢えず、聞くだけ聞くか。

 俺達は人気の無い路地に移動していた。

 

湊翔「……それで、話って何ですか?」

セレナ「そうですね…………。あまり、お店の中でする様なお話ではありませんので………。ここは人通りもありませんし、誰かが来ても、話題を変えればいい話です。ここで、ちょっとお話をさせていただきましょうか。」

 

 俺がそう聞くと、セレナはそんな風に語る。

 その表情は、今までの穏やかな笑顔から一変して、真剣な面持ちになった。

 そこから、セレナが語った話というのは、一言では語り尽くせぬ様な話だった。

 

セレナ「…………そして、その者はやがて邪悪な力に飲み込まれ…………。いつしか世界中の人々に、その名で呼ばれる様になったのです。…………魔王、と。魔王は、何も自ら望んでこの世界の人たちを傷つけようとしている訳ではないのです…………!」

カズマ「なんてこった…………。そんな、そんな漫画みたいな展開が現実にあるだなんて…………。」

湊翔「……………。」

 

 セレナはそんな風に言うと、カズマはそんな風に言う。

 そんな中、俺は疑わしい視線を向けていた。

 セレナ曰く、魔王は邪悪な力に飲み込まれた少女だそうだ。

 正直言って、胡散臭い。

 まるで、同情を買って、手出しをさせない様にするみたいな気配を感じるのだ。

 すると、セレナは口を開く。

 

セレナ「…………ともかく、そんな理由で美しい少女は魔王と呼ばれる事になりました。今も、呪いで醜悪な姿に変えられておりますが、その呪いもやがて解けようとしています。…………お願いです、カズマ様に湊翔様。貴方がたこそは神に選ばれし者。きっと、今も人類を苦しめる魔王を退治したいと願っている事でしょう。ですが魔王も、元は憐れな1人の少女!魔王を退治するのは今しばらく待ってて頂けませんか?そして、どうしても待てないと…………!どうしても魔王を退治すると言うのなら、どうか、この私をパーティーに入れて、魔王の元に連れて行って欲しいのです…………!」

 

 セレナはそう言うと、俺たちの手を掴み、下から見上げる様にして縋ってきた。

 カズマが感動する中、俺はセレナを疑っていた。

 確かに、そういうドラマチックな展開はよく聞くが、真っ当なファンタジー展開がこの世界にあるのか?

 実際、俺はゼウスの介入で、とんでもない悲劇を味わったのだから。

 まあ、その件に関しては、今となってはターニングポイントになったから、何も言わないが。

 俺はセレナに話しかける。

 

湊翔「…………話が進まないから、魔王の正体に関しては一旦置いておく。それは分かったけど、何で俺達が神に選ばれた存在だって断定出来るんだ?」

セレナ「実は、貴方がたの変身する仮面ライダーと言う力を聞いて、直感しました。稀にとてつもない力を秘めた者が現れるのと合致するんです!」

 

 俺がそう聞くと、セレナはそう語る。

 まあ、実際、デザイアグランプリは神々が運営していて、サポーターとなった神に選ばれたのだから、強ち間違いではないのだが。

 とてつもない力を秘めた者というのも、チート持ちの日本人だろうしな。

 カズマとセレナが何かを話していて、俺がそんな事を考えていると。

 

ウィズ「セレスディナさん?セレスディナさんじゃないですか⁉︎」

 

 そんな風に声をかける存在がいた。

 ウィズだった。

 まさか、こいつ魔王軍の幹部か?

 だとしたら、先ほどの話も信憑性が薄れてくるな。

 まあ、俺は最初から信じていなかったが。

 

ウィズ「あっ、カズマさんに湊翔さんまで!2人って、私といいバニルさんといいセレスディナさんといい、魔王軍の幹部に随分と縁がありますね!」

 

 すると、俺たちに気づいたウィズは、そんな風に話しかける。

 確定だな。

 ウィズって、天然なのか?

 ハンスの時も、世間話をするかの様なノリで正体を明かしてくれたし。

 すると、セレナ改め、セレスディナは口を開く。

 

セレスディナ「…………人違いでありませんか?私はセレナという名のプリーストです。どなたかと間違われて…………。」

ウィズ「セレスディナさん、せっかくこの街に来たのなら、私の店に寄って行きます?カズマさんと湊翔さんもご一緒に。お茶でも入れますよ?」

 

 セレスディナは他人の空似として誤魔化そうとするが、ウィズは自然と遮った。

 絶対黒だ。

 俺がそう思う中、セレスディナはウィズにヒールをかけて、ウィズは怒りながら帰って行った。

 それを見送ったセレスディナは。

 

セレスディナ「……変わった方ですね、ヒールを掛けたら煙が出ました。」

湊翔「そりゃあ、リッチーだからな。」

カズマ「そんな事はご存知でしょうセレスディナさん。」

 

 セレスディナは誤魔化そうとしたのか、そんな風に言うと、俺とカズマはそう言う。

 もう誤魔化せないのに、なかなか大した人だ。

 すると。

 

セレスディナ「………違うんです!」

カズマ「ほう?」

湊翔「………何が違うのか、聞いてもいいか?」

 

 セレスディナはそう叫ぶ。

 まだ諦めないんだ。

 もうほぼバレたような物なのに。

 すると、セレスディナは口を開く。

 

セレスディナ「確かに、彼女の言うとおり、私は魔王軍幹部の1人、セレスディナ。でも、聞いてください!あなた様方に語ったあの話は本当なのです!私は、実は、呪いで魔王と化した少女の姉。妹を助けたいがために、仕方なく魔王軍へと入ったのです!ああっ…………今でも妹の事を想うと…………!」

 

 セレスディナはそう語っていく。

 どう考えても嘘だろ。

 俺だけでなく、カズマも疑わしい視線を向けていると。

 

バニル「妹の事を想うと何だ?汝、良いところで邪魔をされ、呪いに掛かっているのではと悩むタイクーンに、人の手には有り余る力を手に入れたギーツよ。今方、嬉々としてガラクタを仕入れて帰ってきたガッカリ店主から、貴様らが店の近くに居ると聞き、参上したぞ。謝礼によってはその悩みに答えてやるぞ。店に寄ってはどうか?」

 

 そう言ってバニルが現れた。

 セレスディナは、バニルに苦手意識を持っているのか、体を震わす。

 すると、セレスディナは口を開く。

 

セレスディナ「…………こ、こんにちは、初めまして。私、セレスディナと申します。カズマ様と湊翔様のお知り合いの方ですか?あの………どうもお忙しい様なので、私はもうこれで…………。」

バニル「初めましてぶりであるな。なんら怪しいとこなど何一つない清く正しいプリーストよ。まあそう急いで帰る事もあるまい。ここはお近づきの印として、現在は炭素と化している丸こげ店主が、先ほど嬉々として仕入れてきた愉快な品を譲ってやろうと思う。」

 

 セレスディナはそんな風に言うと、バニルから離れようとする。

 バニルの発言にセレスディナがほっと一息を吐くと、バニルは小さなカップアイスの様な形状の物を取り出す。

 

バニル「本日のおすすめはこちら!野営する冒険者に最適、虫コロリンである。この可愛らしい名前とは裏腹に、その力は絶大。ネズミよりも小さな生物を対象に、この魔道具の周囲に強烈な死の呪いを掛ける一品である。即ち、これを枕元に置いておけば、煩わしい虫刺されなど気にする事なく眠りに就ける。」

「「「へぇ…………。」」」

 

 バニルが出してきた商品は、虫コロリンというらしく、これを使うと、虫刺されを気にする事なく寝れるらしい。

 それを聞いて、俺、カズマ、セレスディナはそう言う。

 この世界にも蚊がいるかもしれないからな。

 それはありがたいな。

 だが、ウィズが仕入れたってことは………。

 

カズマ「どうせ、碌でもない副作用があるんだろ?低確率で人にも呪いが掛かって死ぬとか。」

バニル「とんでもない。鼠よりも大きな生物にはなんら効果はない。死ぬのはネズミよりも小さな生物のみである。」

セレスディナ「素晴らしいです!つまり、枕元に置いておけば、あの黒くて素早い艶やかな恐怖の大王も、近寄ったら死ぬのですね!是非ともお一つ…………!」

バニル「毎度あり!」

 

 カズマがそう聞くと、バニルは珍しくそう否定する。

 絶対に何かあるだろ。

 それを聞いたセレスディナは、バニルから虫コロリンを受け取った。

 俺は気になる事があり、口を開く。

 

湊翔「……なあバニル、それって虫以外も、ネズミよりも小さかったら死ぬのか?」

バニル「もちろん死ぬ。」

カズマ「……じゃあ、人の体の中の微生物やら抗体とかも?」

バニル「もちろん死ぬ。」

 

 俺とカズマがそう聞くと、バニルはそう答える。

 ガラクタじゃないか。

 それって最悪、死ぬ可能性があるだろ。

 抗体が無かったら、病気になっても、手の施しようが無いくらいに悪化しかねないから。

 セレスディナはそれを聞いて返品しようとする。

 すると。

 

バニル「おっと、初対面の人よ。商売人として、お客様の個人情報は厳重に守る我輩だが、返品などされると、汝はお客様では無くなってしまう。ふうむ…………見える、見えるぞ。誰かの未来が…………。とある仮面紳士により、様々な事がぶちまけられ、冒険者達に袋叩きにされる誰かの姿…………。」

セレスディナ「買います!是非買います!おいくらですか⁉︎」

 

 セレスディナはバニルに虫コロリンを返却しようとすると、バニルはそんな風に脅しをかける。

 容赦ないな…………。

 セレスディナは慌てて、財布を取り出す。

 

バニル「フハハハハハ!本日の我輩は機嫌がいい!ポンコツ店主が仕入れたガラクタが、珍しくこうして金になったからな!本来ならば、四十万エリスのこのアイテム。特別に、初めまして価格と上機嫌価格をサービスし、百二十万飛んで、八百エリスにしてくれようか!」

セレスディナ「増えてるじゃねーか、クソッタレ!なんであたしの持ってる金の額を知ってやがる!何でもかんでも見通すんじゃねぇぞ!」

 

 バニルは高笑いしながらそんな風に言うと、セレスディナはそう叫び、財布ごとバニルに投げつけた。

 その際に、チンピラ言葉になっていた。

 恐らく、これがセレスディナの本性なのだろう。

 バニルは、セレスディナの財布をキャッチすると。

 

バニル「フハハハハハ!ではまたな、小僧ども!ついでに初対面の短気な人よ!悪感情、美味である、美味である!フワハハハハハ!」

 

 バニルは愉快そうに笑いながら、ウィズ魔道具店の方に去っていく。

 それを呆然と見送りながら、魔王軍幹部の1人、セレスディナは口を開く。

 

セレスディナ「……あ、有り金が……。」

『『…………気の毒だなぁ…………』』

 

 そんな風に呟くのを見て、俺とカズマはそう思ったのだった。

 さて、どうしたもんか…………。

 俺がそんな風に思っている中。

 

???「アクセルの街に着きましたね。」

???「ああ。ジットによると、あいつはこの街に居るみたいだな。」

???「どうします?」

???「決まってんだろ。あいつに………桐ヶ谷湊翔に久しぶりに会って、あいつから色々奪うんだよ。」

 

 アクセルの街の近くに、多くのギャングを連れた二人組がいた。

 その二人組は、目の下にクマができていたり、髪の毛のところどころが色が抜けて白くなっていたり、顔に大きな傷があった。

 果たして、何者なのか。

 そして、脱走したファイアは。

 

ファイア「ほぅ……しばらく見ないうちにアツくなってるじゃねぇか。だが、まだ足りねぇ。ここからもっとアツくしてやらねぇとな………。」

 

 ファイアは、そんな風に呟く。

 果たして、その目的とは。

 今、アクセルの街に、三つの脅威が迫ろうとしていた…………。

 そして、ここから、物語の最終章へと加速していく。




今回はここまでです。
今回で、このすばの原作14巻の話は終わりです。
魔王軍幹部の1人であるセレスディナが湊翔やカズマ達の前に現れる。
セレスディナは、何かを企んでいるのか、アクアよりも有能である事を見せていく。
湊翔とカズマを嘘で騙そうとするが、ウィズとバニルによって露見する。
そして、二人組の男にファイアも動き出そうとしていた。
アクセルの街に危機が迫る。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
15巻の内容では、カズマがセレナに操られる展開がありますが、それをどうしようかなと思っていまして。
ブジンソードを手に入れたカズマが、今更傀儡にされるのもどうかなと思いますし。
展開でリクエストがあれば、活動報告から承っております。
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