この白狐の戦士に祝福を   作:仮面大佐

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第161話 アクアの家出

 セレスディナを捕縛し、アクセルへの襲撃は未然に防ぐことに成功した。

 だが……………。

 

カズマ「おい、湊翔は大丈夫なのか⁉︎」

ツムリ「それが……………。」

拓巳「湊翔は……………意思なき神になりかけている。」

白夜「おい、それはどういう事だ?」

 

 カズマがそう聞くと、ツムリと拓巳はそう答える。

 すると、白夜はそう聞く。

 それに対して、ギロリさんが口を開く。

 

ギロリ「彼は、レジーナによって傀儡にされた冒険者達を解放した。だが、レジーナは邪神だ。邪神の支配から解放するには、それ相応の力が必要だ。その結果……………。」

武劉「湊翔は創世の力を使って、意思なき神とやらになりかけているのか?」

ギロリ「ああ。何とか、我々の方でも、彼をどうにか出来ないかやっている。信じて欲しい。」

朱美「湊翔……………。」

聡介「そうか……………。」

 

 ギロリさんはそう説明する。

 邪神レジーナの支配を解除させるのに、相当な力が必要となり、それを引き出した結果、意思なき神になりかけているのだと。

 それには、父さんと母さんは悲しみの表情を浮かべていた。

 一方、俺はというと。

 

湊翔「うっ………ここは…………。そうか。俺、創世の力を使って…………。」

 

 俺は意識を取り戻す。

 そこは、柱が並んでいる空間で、俺は有刺鉄線に腕を絡まれて、動けなくなっていた。

 髪の色は白のままだ。

 チラリと右手の方を見ると、指先の方が徐々に石化しだしていた。

 

湊翔「いずれ、意思なき神になるってのは、こういう事か……………。」

 

 俺はそう呟いた。

 つまり、完全に石化してしまったら、俺は意思なき神とやらになり、道具として扱われる。

 それだけは避けたい。

 だが、今の俺には何も出来ない。

 俺はそんな歯痒さを感じていた。

 一方、カズマ達の方は。

 

アクア「カズマ、起きて!朝よ、朝!ほら早く!早く起きて!」

 

 アクアはカズマの部屋に入り、そんな風に叫んだ。

 すると。

 

カズマ「…………今何時だよ…………。」

アクア「そろそろ5時?」

 

 カズマがそう聞くと、アクアはそんな風に言う。

 それを聞いたカズマが布団に潜ろうとすると、アクアは飛び乗ってくる。

 

アクア「何二度寝なんてしようとしてるの⁉︎ほら早く!起きて、起きて!さっさと支度して、クエストに行ってレベル上げをするわよ!」

カズマ「勘弁してくれよ…………。俺、まだ眠いんだよ……………。」

 

 アクアがそんな風に言うと、カズマはそう答える。

 どういう事かというと、あの後、レベル1にリセットしたセレスディナを、警察に預けたのだ。

 そして、これまでに得た情報を警察の人に話した。

 弱体化したセレスディナは、もう強力な呪いをばら撒く事が出来ず、警察署の署長は、セレスディナを相手に色々と取り調べを行うとの事だ。

 その後、カズマはデザイアグランプリの運営のもとに向かい、ある事を聞いたのだ。

 

アクア「起きてー、起きてー!ほら、早く起きて!そして、人類の為、未来の為!魔王退治に行くの!」

カズマ「ったく…………朝早くからうるさいんだよ…………。」

 

 アクアはある事を聞いてから、この様に魔王討伐を急かす様になったのだ。

 ある事とは……………この世界の危機に関してだ。

 カズマがアクアを連れて行った事で、後任の天使が担当する事になった。

 だが、後任の天使は大変真面目であり、勧誘の際に誤魔化しをせずに、今までに送られた日本人の末路と現在の生存率、異世界語習得の際の副作用やこの世界の世知辛さを詳しく話している。

 その結果、カズマ以降、誰も転生してこないのだ。

 

カズマ「俺たちにちゃんとした説明もせず送り出しやがって。このまま昼まで抗議の不貞寝をしてやる。」

アクア「ちょっと!アンタの場合は昼まで寝てる事が多いじゃない!ねえ、女神様のお願いよ!こんなに麗しくも儚い女神様が泣いて頼んでるのに、どうして聞いてくれないの⁉︎」

 

 カズマがそんな風に言うと、アクアはそんな風に叫んだ。

 すると。

 

白夜「朝っぱらから喧しいんだよ!」

武劉「一体何の騒ぎだ。」

 

 カズマとアクアの喧騒を聞きつけたのか、白夜と武劉がそんな風に言いながら、カズマの部屋に入る。

 

カズマ「白夜、武劉!アクアが夜這いをかけてきたー!」

アクア「わぁぁぁぁ!やめて、カズマさぁぁぁぁん!」

 

 カズマがそう叫ぶと、アクアはそんな風に叫ぶ。

 しばらくして、白夜達は、カズマ達を落ち着かせるのだった。

 すると。

 

トウカ「…………え?どういう状況?」

朱翼「トウカ!無事だったんですね!」

めぐみん「ファイアと激しい戦いを繰り広げていたと聞きましたが…………。」

ダクネス「大丈夫なのか?」

トウカ「大丈夫。治療してもらって、元気になったわ。」

 

 そこに、傷を治したトウカがやってきた。

 トウカが正座をしているアクアを見て、そんな風に呟くと、朱翼達がトウカが帰ってきた事を知り、そんな風に話をする。

 

トウカ「……………それで、アクアは何で正座をしてるの?」

白夜「実はな……………。」

 

 トウカがそう聞くと、白夜は事情を説明する。

 アクアがカズマに魔王討伐を急かしている事を。

 

トウカ「なるほどね…………。」

朱翼「トウカ。湊翔さんは………その…………。」

トウカ「事情はツムリから聞いたわ。私は信じてるんだから。湊翔は絶対に帰ってくる。きっと……………きっと、帰ってくるんだから…………。」

朱翼「トウカ…………。」

 

 トウカが納得していると、朱翼は申し訳なさそうにそう言う。

 すると、トウカはそんな風に言う。

 最後の方は、涙を滲ませていた。

 トウカの肩に朱翼が手を置く中、カズマが口を開く。

 

カズマ「あのさ…………確かに仮面ライダーだけどさ。今の俺、レベル1なんだぞ。俺が行ったって、足手纏いになるだけなんだよ。」

 

 カズマはそう言う。

 実際、セレスディナをレベル1にした際、レジーナの復讐の効果で、カズマもレベル1にされてしまったのだ。

 その為、足手纏いになるのではないかと気にしていた。

 すると。

 

白夜「お前、忘れてないか?」

カズマ「えっ?」

朱翼「カズマさんがレベル1になるのは、これが初めてではないでしょう?」

トウカ「そうね。ほら、ベルディアが復活した時よ。」

カズマ「えっ?………………あっ!」

 

 白夜はそんな風に言う。

 カズマが首を傾げる中、朱翼とトウカがそう言うと、カズマはある事を思い出した。

 それは、かつて、ゾンビジャマトによってベルディアが蘇った時、ベルディアによって、レベルドレインの呪いをカズマが受けた。

 その時にもレベル1になったのだ。

 

ダクネス「そんな事があったのか…………。」

トウカ「そういえば、ダクネス達は、ベルディアに操られてたからね。」

カズマ「そうじゃん!レベル1になっても、スキルは使えたし、スキルポイントも入ったから!」

武劉「俺たちで出来る限りのサポートを行う。新たなスキルの獲得や、レベル上げをやるぞ。」

 

 ダクネスはそんな風に呟くと、トウカはそんな風に言う。

 実際、その時はベルディアに操られていた為、知らなかったのだ。

 カズマは、その時にスキルが問題なく使えて、スキルポイントも入った事を思い出した。

 そうして、武劉達のサポートの元、カズマのレベル上げが行われる事になった。

 

カズマ「それじゃあ……………行くぜ!」

白夜「ああ。」

めぐみん「ふっふっふっ!やってやりますとも!」

ダクネス「行くぞ!」

 

 カズマ達は、アクセルの周辺のモンスターを倒して、カズマのレベルを上げていく。

 もちろん、トドメを刺すのはカズマだ。

 それと並行して。

 

炎魔「それで、俺たちのスキルをカズマに教えて欲しいって?」

白夜「ああ。あいつ自体は、仮面ライダーとして戦ってきて、センスは悪くねぇが、いかんせん、ステータスが俺たちと比べると低いからな。」

トウカ「そういう訳で、カズマにスキルを教えて欲しいの。」

彩花「そういう事ですか…………。」

隼「分かった。可能な限りは教えよう。」

龍牙「まあ、そんなに時間はないけどな。」

 

 白夜達も、様々な冒険者達に、カズマのスキルの習得の協力をお願いしていった。

 そこから、数日が経過した。

 トウカは、デザイアグランプリの運営へと赴いていた。

 

トウカ「……………それで、ファイアはどうなったの?」

ジーン「無事に無限地獄に封印されたよ。妙に大人しく言うこと聞いてたのが不気味だったけど。」

クロス「あぁ、意外とお前に負けたのが相当堪えたのかもな」

トウカ「そう……ファイアの信者達は?」

ケケラ「多少の混乱は見られたけど、比較的すぐに落ち着いたわ。思っていたより統率が取れてたみたい」

キューン「なんだかんだ言って、ファイアが、自分に頼らずに強くなる様に指示した事もありますから。」

アーン「こんな感じにな。」

 

 トウカはそう聞く。

 ファイアはあの後、無限地獄に再封印されたのだった。

 ケケラ達がそう言うと、ある映像が映し出される。

 

信者『ファイア様が負けた…………⁉︎』

信者『そんな…………⁉︎』

 

 ファイアの敗北の情報が流れ、王都での戦いの準備をしていた信者達はあからさまに狼狽えだす。

 

信者『ファイア様がいなくなった……俺たちはどうやって奴らに………』

信者『弱気になるな!馬鹿野郎!!』

信者『ぶえっ!?』

 

 そんな中、信者の一人が狼狽えていた信者の顔面を思いっきり殴り付ける。

 

信者『な、何を………‼︎』

信者『ファイア様は常日頃から仰っていただろう!『常日頃から、神である自分をアテにするな』と!ファイア様がいなくなったところで俺たちは変わらない!!この世界の問題は!俺たちでどうにかしないといけないんだ!』

信者『っ!そ、そうだな!俺たち自身でどうにかしないといけないよな!』

信者『見ていてください、ファイア様!俺たち、この世界を変えて見せます!』

信者『よーし!薄汚ねぇギャング共を!腐り果てた貴族を!嘘吐きの教会の連中の目を覚まさせてやるぞー!』

「「「オォォォォ!!!」」」

 

 信者達のやり取りの一部始終がそんな風に映し出されていた。

 最初こそ、ファイアが倒された事で、動揺していたが、すぐに持ち直しており、更に団結していた。

 

トウカ「…………何かやらかさないわよね?」

ジーン「うーん、大丈夫………とは言い切れないね…………。一部で、革命の動きが見られているから、何かする可能性は高いだろうね。」

トウカ「……ゼウスがあそこまで情報統制した理由の一つが分かってきた気がする………」

クロス「まあ、それはいったん置いておいて、そっちはどうだ?」

トウカ「こっちも、カズマのレベル上げや新たなスキルの獲得に向けて動いているわ。でも…………あんまり芳しくないわね。」

 

 トウカは不安げな表情を浮かべて、そんな風に聞くと、ジーンはそう答える。

 実際、各地で革命の動きが見られているのだ。

 クロスがそう聞くと、トウカはそう答える。

 

ケケラ「どういう事よ?」

トウカ「あなたも分かってるでしょ。本来、転生者は転生特典を上手く使いこなせる様になってから送られる。でも、アクアを連れて行ったカズマは実質、転生特典無しで行った様な物だから、ステータスはこの世界と比べると貧弱だって。」

ケケラ「まぁね…………。」

アーン「大方、そろそろ伸び悩んでいるのではないか?」

 

 ケケラがそう聞くと、トウカはそう言う。

 カズマのレベル上げが、そろそろ伸び悩む頃ではないかと。

 それを聞いて、サポーター達は何とも言えない表情を浮かべていた。

 実際、カズマ達の方は。

 

カズマ「やべぇな…………レベルが伸び悩んできたな……………。」

白夜「マジか……………。」

武劉「そうか…………。」

朱翼「でも、どうすれば……………。」

めぐみん「ですが、流石にこれ以上は…………。」

ダクネス「言いづらいのだが…………レベルのカンストが近いのだろう。」

アクア「……………。」

 

 カズマ達はそう話していた。

 実際、カズマのレベル上げは、序盤はうまく行ったのだが、ここに来て、伸び悩みが見えてきたのだ。

 レベルの伸び悩みにより、頭を悩ませていた。

 すると。

 

アクア「…………そうよ!魔王城の結界よ!」

白夜「あ?いきなりなんだよ。」

アクア「魔王城の結界は今、残り二人で維持されてるの!それで、あと1人になれば、確実に結界は解除出来るの!そうすれば、魔王を倒せるわ!ちょっと、出かけてくるわ!」

武劉「おい!どこへ行くんだ⁉︎」

カズマ「めぐみん、ダクネス!2人は待ってろ!」

 

 アクアは、何かを思いついたかの様にそう叫ぶ。

 白夜がそう聞くと、アクアはそう言って何処かへと向かう。

 カズマ達は、アクアを追いかけていく。

 めぐみんとダクネスは、屋敷で待つ事になった。

 すると、途中でトウカとすれ違う。

 

トウカ「アクア?どこへ行くのよ?」

カズマ「おい、トウカ!着いてきてくれ!アクアがウィズの店に向かうつもりだ!」

トウカ「えっ?……………まさか。」

 

 トウカは、アクアが走って行ったのを見て、訝しむが、カズマはそう叫ぶ。

 それを聞いて、トウカはある可能性へと至り、アクアを追いかける。

 しばらく走ると、ウィズ魔道具店に到着する。

 

アクア「ウィズはどこよ!隠してないで出しなさいよー!」

バニル「話を聞かない奴め!サボり店主は留守であると言っておろうが!目を離すと碌な物を仕入れてこないポンコツ店主を我輩も探して……………こ、こらっ!いい加減、仮面から手を離すがいい!」

 

 ウィズ魔道具店から、アクアとバニルの罵声が響いていた。

 カズマ達が中に入ると、アクアはバニルの仮面に手をかけて、引き剥がそうとしていた。

 すると。

 

バニル「ぐううういらっしゃいませ!飼い主達よ!この狂犬女神を何とかするがいい!」

カズマ「飼い主にするなよ、傍迷惑な。」

白夜「おい、何する気だ。」

武劉「とにかく、一旦落ち着け。」

 

 バニルがカズマ達に気づいて、そんな風に言う。

 それに対して、カズマがそう言うと、白夜と武劉はそう言い、アクアは渋々仮面から手を離す。

 

アクア「ちょっと、ヘンテコ悪魔。アンタの力が詐欺じゃないなら、ウィズが今どこにいるのかぐらい見通して見せなさいよ。」

バニル「ふん、戯け。全知全能を謳いながら、何の役にも立たぬ神々。その詐欺の様な誇大広告と、この我輩の力を一緒にするな。というか、以前から言っているであろうが。強い力を持つ相手ともなると、見通し辛くなるのだ。あのポンコツ店主は、商才は無いが、力だけはあるのでな。」

 

 アクアはそんな風に言うと、バニルは乱れた襟元を直しながらそう言う。

 そう。

 バニルの見通す力は、相手の力が強いと、見通す事がうまく出来なくなるのだ。

 それを聞いたアクアは。

 

アクア「偉そうな事言ってるけど、つまり分かんないって事ね。アンタって、肝心な時になるとちっとも役に立たないわね。自分で言うのも何だけど、それって私以下って事じゃ無いかしら。」

バニル「……………よかろう。久しぶりに我輩の本気を見せてくれる。表に出るがいい。今日こそ忌々しい神との決着をつけてくれるわ。」

朱翼「落ち着いて下さいって!」

 

 アクアは呆れた様にそんな風に言うと、バニルはそんな風に言う。

 そんな2人を朱翼が落ち着かせる中、ウィズが入ってくる。

 

ウィズ「あっ、カズマさんにアクア様、白夜さんに朱翼さん、トウカさん、武劉さん、いらっしゃいませ!ちょうどいい所にいらっしゃいました。実は、面白い物を仕入れてきまして……………!」

 

 ウィズは幸せそうな表情を浮かべながらそう言う。

 ウィズのそばには、ゼーレシルトの姿もあった。

 それを見て、バニルが固まる中、白夜は口を開く。

 

白夜「ウィズ?何を仕入れてきたんだ?」

ウィズ「よくぞ聞いてくれました!これです!」

 

 白夜がそう聞くと、ウィズはそう言って、紙袋からある物を取り出す。

 それは……………。

 

カズマ「てるてる坊主?」

朱翼「似てますね……………。」

ウィズ「てるてる坊主って何ですか?これは、天候制御が可能な強力な魔道具なんです。これを軒先に吊るしておくだけで、強制的に天候を晴にできるんですよ!天候制御の魔法という物は、通常は長い儀式と希少な触媒をたくさん使って漸く行う物なんです。それが、これを吊るすだけ!どうです?凄くないですか?すごいですよね!」

 

 それを見たカズマと朱翼は、そう呟く。

 ぱっと見は、てるてる坊主に見えるのだ。

 ウィズはてるてる坊主という単語に首を傾げつつも、そう説明していく。

 それを見て、店の隅っこでカズマとバニルが話をする中。

 

トウカ「確かに凄いけど……………。」

朱翼「ここ最近、雨なんて降りましたか?」

武劉「降ってないな……………。」

白夜「それより、アクアの奴……………。」

ウィズ「あの…………?どうしたんですか、アクア様?」

 

 トウカ達は、そのてるてる坊主を見ながら、そう話す。

 実際、ここ最近、雨が降っていないので、あまり使えないのだ。

 そんな中、白夜はアクアが何をしようとしているのかを察していたのか、アクアの方を見ていた。

 ウィズがそう話しかけると、アクアは口を開く。

 

アクア「……………ウィズ。思えば、あなたと出会ってから既に一年以上が経とうとしているわ。皮肉なものね……………。私は女神であなたはリッチー。本来ならば、決して相容れない間柄なのに!」

ウィズ「もうそんなに経つんですね。………あ、魔道具と一緒にクッキー買ってきたんです。アクア様も食べますか?」

アクア「頂くわ。」

トウカ「頂くのね……………。」

アクア「…………そうじゃないの。ねえ、ウィズ。私たち、馴れ合いが過ぎた様ね。本来なら出会ったその日に浄化するのが私の仕事。そう、神とアンデッド。絶対に相容れない間柄なのだから…………!」

 

 アクアはそんな風に言う。

 それを聞いたウィズは、アクアにそう聞くと、アクアはクッキーを貰う。

 トウカがそう呟くと、アクアはそんな風に言いだす。

 そんな不穏な空気に、バニルと白夜は、ウィズとアクアの間に立つ。

 

バニル「何だ、暴力女神め。今の貴様からは、物騒な気配が出ておるぞ?」

白夜「おい…………!お前まさか…………!それ以上やるなら、俺にも考えがあるぞ。」

アクア「ウィズ……………分かって頂戴。あなたを倒さないと世界の平和が守れないの!友人であるあなたを倒すのは私だって心苦しいわ!でもウィズ、お願い!私、天界に帰りたいの!痛くしないから土に還って!」

朱翼「そういう事…………!」

トウカ「……………。」

 

 バニルと白夜がそんな風に言う中、2人の言う事は無視して、アクアは芝居掛かった大袈裟なセリフを叫ぶ。

 つまり、アクアはウィズを浄化して、魔王城の結界を破壊する事ができる様にしようとしたのだ。

 アクアが身構える中、白夜も身構える。

 すると。

 

ウィズ「…………私が土に還ると、アクア様が天界に戻る事が出来るんですか?」

アクア「そうよ!残念ね、ウィズ!今回は事情が事情なだけに、見逃してあげる事ができないの!恨むなら恨んで頂戴!でも、私は女神として……………!」

ウィズ「良いですよ。」

朱翼「えっ?」

 

 ウィズがそう聞くと、アクアはそんな風に言う。

 すると、ウィズはそんな風に言う。

 それを聞いて、朱翼が呆気に取られていると。

 

アクア「女神として……………!良いの?ていうか、ダメよ、ウィズ。そんなに生きる事を簡単に諦めちゃ。命を何だと思ってるの?罰が当たるわよ?」

 

 アクアはそんな風に突っ込む。

 すると、ウィズが口を開く。

 

ウィズ「私が浄化されると、アクア様が天界に帰れるんですよね?よく分かりませんが、何か事情があるのでしょう?もう長い付き合いです。私は知ってますよ、アクア様の事。本当はとても慈悲深くて優しい方だって。…………そのアクア様が、私を浄化すると言うのなら、従います。」

トウカ「えっ…………⁉︎」

 

 ウィズはそんな突拍子もない事を口にする。 

 トウカが唖然となっていると。

 

白夜「ウィズ!何言ってんだよ⁉︎」

バニル「そこの雷小僧の言う通りである!ウィズ!貴様、我輩との約束を忘れたのか⁉︎悪魔との契約を破ろうとは良い度胸だ!貴様が天に還ってしまっては、我輩のダンジョンを誰が作る!これまで店で働いてきたのは、全てはその為なのだぞ!」

 

 白夜とバニルは、慌てた様にそんな風に言い出す。

 すると、ウィズは口を開く。

 

ウィズ「バニルさん。今度こそ、ちゃんと名前で呼んでくれたしたね。約束を守れなくてごめんなさい。…………その、今は深い森の中にある屋敷で長い眠りに就いていますが、1人だけリッチーの知り合いがいます。その方を紹介するので、どうかそれで…………。それと、白夜さん、すいません。こんな形で別れる事になってしまって。」

 

 ウィズはそんな風に語っていく。

 その言葉には、白夜とバニルは歯を食い縛り、動こうとしなかった。

 2人とも、納得していないのだ。

 すると、ウィズが口を開く。

 

ウィズ「本来なら、出会ったあの時に浄化されているのが当然なのに、今まで見逃してくれてありがとうございました、アクア様。お陰で、こうしてバニルさんとお店を経営したり、色んな方と知り合えたり、白夜さんと付き合う事が出来たり。随分永く生きてきましたが、この一年が人生の中で1番楽しかったです。本当ですよ?ですから、感謝こそしても、恨みなんかしませんから。」

「「……………。」」

 

 ウィズはそんな風に気持ちを語っていく。

 それを聞いたバニルと白夜は、無言で退いた。

 2人とも、まだ歯を食いしばっており、納得こそしていないが、ウィズの意志を尊重させる様だ。

 すると。

 

ウィズ「このお店は、昔の冒険仲間を迎える為の、皆が帰ってくるお家として作ったんです。ですが、つい先日。…………そうですね、あれは私とバニルさんの過去を尋ねられたアクア様が、途中でお昼寝をされていた時のことです。お店にやってきた大切な仲間に、お帰りなさいを言えたので…………だから、とても満足してます。」

アクア「う………うう…………。」

 

 ウィズはそんな風に語る。

 以前、アクアがウィズとバニルの過去を聞いた際、大切な仲間がやってきたのだ。

 それを聞いて、アクアは泣きそうな顔で後ずさっていた。

 すると、ウィズは子供を安心させる様な声でアクアに話しかける。

 

ウィズ「アクア様、私はいずれ、誰かに浄化される身ですから。でなければ、永遠に生き続ける存在です。そして、いつか誰かに浄化されると言うのなら、私はアクア様に浄化されたいです。それで、あなたのお役に立てるのなら。それに……………私は、アクア様の事が好きですから。」

 

 ウィズは、嘘偽りのない穏やかな顔で、アクアを安心させようとするかの様に、罪悪感を取り除こうとするかの様にそう言う。

 それを聞いて、カズマ達の視線はアクアに集まる。

 そんな皆の視線に耐えきれなくなったのか。

 

アクア「う…………うう…………わ、わああああああーっ!」

 

 良心の呵責に苛まれたのか、アクアはそんな風に叫びながら、店を飛び出して行った。

 

ウィズ「アクア様⁉︎」

バニル「何だったのだ、一体。」

白夜「ちょっと、事情があったんだよ。」

 

 アクアが飛び出して行って、ウィズが驚く中、バニルがそう言うと、白夜はそう言う。

 そうして、カズマ達は屋敷に戻った。

 だが、アクアは部屋に閉じこもってしまった。

 

朱翼「アクアは…………大丈夫かな………。」

トウカ「何やかんやで、ウィズは親友だったわけね。」

武劉「まあ、白夜としては、ウィズを浄化されなくて良かったな。」

白夜「まあな。」

 

 アクアが閉じこもる中、トウカ達はそう話す。

 そうして、白夜達は寝る事にした。

 その翌日。

 

トウカ「これって…………!」

白夜「あいつ…………!」

 

 トウカと白夜はそう話す。

 その理由は、めぐみんが持っていた手紙にあった。

 その後、カズマも起きてきて、その手紙を見る事に。

 

『拝啓 清々しい初夏の季節となりました。皆さんいかがお過ごしですか?

ダクネスは、タンスの角に足をぶつける遊びを程々に。

めぐみんは、爆裂魔法の使用を少しは控えないと、やがて来るであろう温暖化現象の理由の一つに数えられると思います。

トウカは、湊翔とイチャコラするのは構いませんが、ちゃんとして下さい。

白夜は、良い加減にゴキブリを克服してください。ゴキブリだって生きてるんですよ。

朱翼は、特に言う事はないです。

武劉は、少しは優しくなってください。安楽少女だって生きてるんですよ。

湊翔は、トウカとイチャコラしすぎない様に。

カズマは、性欲を持て余しているのは分かりますが、良い加減、皆の洗濯物を床に敷いて、その上を転がりまわるのはやめてください』

 

 手紙には、そんな風に書かれていた。

 すると、カズマは手紙をクシャッと丸めて、部屋の隅に放り投げた。

 

「「ああっ!」」

朱翼「気持ちは分かりますけど、最後まで読んでください!」

白夜「あいつ、好き勝手に書きやがって………!」

武劉「何様のつもりだ。」

 

 それを見ためぐみんとダクネスがそう反応する中、朱翼達はそう言う。

 カズマ達は、続きを読む。

 

『さて、今の世は魔王が蔓延る荒廃した世界です。そんな中、麗しくも美しい女神であるおころの、この私が魔王を放置しておく事が出来るでしょうか?

いいえ、出来ませんとも。

世界に散らばる敬虔なるアクシズ教徒達。

この私を信仰する十億の信者の想いに応え、私は旅立ちます。

そう、伝説となる為に……………』

 

 続きには、そんな風に書かれていた。

 それを見て、カズマは口を開く。

 

カズマ「……………アクシズ教徒って、十億も居たのか?」

ダクネス「…………世界中の信者を集めても、数百人が良いところじゃ無いか?」

白夜「あんな頭のおかしい集団が十億も居てたまるか。」

トウカ「あはは…………。」

 

 カズマがそう聞くと、ダクネスはそう答える。

 つまり、アクアの誇張表現。

 それを聞いて、白夜はそう吐き捨て、トウカは苦笑する。

 そして、手紙には。

 

『という訳で、そんな崇高なる目的の為に…………!

ちょっと、魔王退治に行ってきます』

 

 そんな風に書かれていた。

 

カズマ「あのバカ……………ッ!」

トウカ「そう言えば、アクアはここ最近、カズマから貰ったお小遣いをコツコツ貯めてたわね…………。」

武劉「という事は、道中で凄腕冒険者を雇う気なんだろうな…………。」

朱翼「でも……………。」

白夜「ああ……………。」

 

 カズマがそう言って立ち上がる中、白夜達はそう言って、微妙な表情を浮かべていた。

 カズマが首を傾げると、めぐみんが手紙の隅っこを指差す。

 そこには、何かを書いて消した跡があった。

 恐らく、一度は書いたが、カッコ悪くて消したのだろう言葉。

 

『追伸。探してください』

 

 そんな事が書かれていた跡があった。

 それには、カズマも何とも言えない表情を浮かべる。

 アクアが魔王討伐の為に、旅立ってしまったのだった……………。




今回はここまでです。
今回で、このすばの原作15巻の話は終わりです。
湊翔は、創世の神になりつつあり、身動きが取れなくなりました。
そんな中、一度、ベルディアによってレベルがリセットされた事があるのもあり、レベル上げをスタートしました。
ただ、レベルの伸び悩みが発生してしまい、アクアはウィズを浄化しようとするも、良心の呵責から失敗。
遂には、魔王城へと向かっていく。
最後の方が若干、情けない手紙を置いて。
いよいよ、このすばとしての物語のクライマックスに向かってきました。
16巻に相当する話では、ベロバやシャドウケケラとの対決も書く予定です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
魔王やロキとの対決をどんな感じにして欲しいというのがあれば、活動報告から承っております。
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