この白狐の戦士に祝福を   作:仮面大佐

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第18章
第162話 カズマの決意


 アクアが魔王を倒す為に家出をしたと判明した。

 そんな中、カズマ達はというと…………。

 

ルナ「さて、冒険者の皆様に集まっていただいたのは、他でもありません。この街に、魔王の軍勢が襲撃に来るとの噂についてです。」

 

 冒険者ギルドの方へと赴いていた。

 実はあの後、冒険者ギルドから招集がかかったのだ。

 ギルドのテーブルが円を描く様に配置され、街中の冒険者達が集まっていた。

 呼び出しの内容は、魔王の手先によるアクセル襲撃計画への対策とのことだ。

 セレスディナを尋問した結果、指揮官がいなくても、アクセルへの襲撃は止められないとの事だ。

 それを聞いて、冒険者達が顔を顰めると、一人が口を開く。

 

冒険者「それって、いつぐらいに攻めてくるって分かってるんですか?規模はどのくらい、とか。来ると事前に分かっているなら、王都の騎士に救援要請をすれば……………。」

 

 女性の冒険者がそう聞くと、他の冒険者も頷く。

 だが、ルナは首を横に振る。

 

ルナ「先日捕らえられた幹部の話ですと、計画当初はアクセル内部からの手引きも考え、少数部隊による襲撃が計画されていた様です。しかし、指揮官が囚われた今、その身柄を取り返そうとしてくるでしょう。となれば、敵の規模は増大すると予想されます。」

武劉「やはりか。仮にも魔王の幹部だ。生きていたら、救助に向かう可能性はあるか。」

 

 ルナさんはそう説明する。

 それを聞いた武劉がそう言うと、ルナさんは頷きつつ口を開く。

 

ルナ「はい。正確な数は分かりませんが、駆け出し冒険者ばからのアクセルの戦力では、厳しい戦いが予測されます。そして、王都への救援要請ですが……………。実は、ここへの襲撃と同時進行で、魔王軍主力による王都襲撃も計画されているらしく……………。なので、ハッキリ申し上げまして、援軍は期待できない物と思ってください。何せ、国の中枢が落ちてはどうしようもありません。各街のギルドにも既に襲撃計画が知らされ、腕利の冒険者や兵士たちは、現在続々と王都へと向かっております。なので、この街は我々だけで守らなければなりません……………。」

白夜「そういう事か……………。」

朱翼「魔王軍は、王都とアクセルの両方を落とそうとしているのでしょうか?」

トウカ「そうなるわね。」

 

 ルナさんは申し訳なさそうにそう言う。

 実は、王都への大規模な襲撃が予想されている以上、王都の防衛に回されているのだった。

 デストロイヤーや雷ジャマト祭り以来となるアクセルの危機だが、冒険者達には悲壮感はあまり感じられなかった。

 冒険者達は、思い思いに意見を言い合うが、決定打になる物は出なかった。

 

カズマ「どうする…………?とてもじゃないが、アクア捜索の為に、手を借りることが出来なさそうだが……………。」

白夜「まあ、無理もねぇがな。」

 

 カズマと白夜はそう話す。

 アクアの捜索の手伝いをしてほしいというのが頼めるような雰囲気ではなかったのだ。

 すると。

 

ミツルギ「佐藤…………佐藤和真。アクア様や湊翔の姿が見えないがどうした?」

カズマ「?…………なんだ、ヤマザキか。」

ミツルギ「ミツルギだ!いい加減に僕の名前を覚えてくれ!もう掠りもしてないじゃないか!な、なあ、いつものそれは、本当はわざとやっているんだろう?…………ま、まあいい。そんな事より、アクア様と桐ヶ谷湊翔はどうしたんだ?」

 

 ミツルギがカズマにそう話しかける。

 カズマがそう言うと、ミツルギは訂正しつつ、アクアのことを聞く。

 

カズマ「アクアなら、書き置き残して家出しちゃって、湊翔は諸事情で動けなくなってるよ。」

トウカ「というより、何でここにいるんだ?」

武劉「王都の防衛に駆り出されてると思っていたが。」

ミツルギ「アクセルの街が危ないと聞いて援軍に来たんだ。ここはアクア様が拠点にしている街だからね。…………しかし、家出?とうとうアクア様に愛想を尽かされたのか?肝心のアクア様は今どこに?というより、諸事情というのは何があったんだ?」

 

 カズマがそう言うと、トウカと武劉はそう答える。

 ミツルギはそう答えつつ、アクアの家出について食いついてきた。

 すると、カズマと白夜が口を開く。

 

カズマ「アクアがどこほっつき歩いてるのは、俺だって知りたいよ。あいつ、魔王退治に行くって言って書き置き残して、夜中のうちに出てっちゃったみたいでさ。」

白夜「アクアなら、深夜便の最終馬車を使ってれば、今頃はアルカンレティアだろうな。魔王の幹部も減ったから、魔王城の結界を破れるかもってよ。」

ミツルギ「魔王退治⁉︎」

 

 カズマと白夜は、そう説明していく。

 それを聞いたミツルギがそう叫ぶと、周囲が静まり返る。

 すると、ミツルギはカズマの胸ぐらを掴んで叫ぶ。

 

ミツルギ「魔王退治だと?アクア様はたった一人で魔王退治に旅立ったのか⁉︎君たちはこんな所で何をやっているんだ!」

白夜「お前、アクア絡みになると本当に面倒だな!」

カズマ「アクアが居なくなった事に気付いたのがついさっきで、その後招集があったから、ここにこうしているんだろうが!」

 

 ミツルギはそんな風に叫ぶと、白夜はそう言う。

 ミツルギは、アクア絡みの話になると頭に血が昇りやすいのは相変わらずだった。

 カズマがそう言うと、それを聞いた周囲の冒険者は。

 

冒険者「アクアさんが一人で旅に⁉︎おいおい、無茶だろそれは!」

冒険者「あの人を一人で旅に出させるなんて、無謀にも程があるだろ!しかも深夜便って、アンデッドホイホイじゃないか!」

冒険者「アクアさんの生活力の無さは筋金入りよ。あの人、この街に住んでもう長いはずなのに、今でもたまに迷子になったりするのよ?魔王の城になんて行けるわけないじゃない!」

朱翼「…………こうして聞くと、散々な言われ様ですね。」

武劉「無理もない。」

 

 それを聞いた冒険者達は、蜂の巣を突いた様な騒ぎとなった。

 散々な言われ様に朱翼がそう呟くと、武劉はそう言う。

 すると。

 

ルナ「落ち着いて!皆さん、落ち着いてください!…………この中で、今日、アクアさんを見かけた人はいませんか?」

 

 ルナさんは冒険者達を落ち着かせつつ、そんな風に問いかける。

 それを聞いて、冒険者達は話し合うが、有力な手がかりはなかった。

 

トウカ「…………アクアって、意外と人望があったのね。」

白夜「まあ、酒飲み友達みたいな感じだろうがな。」

 

 それを見て、トウカと白夜はそう話す。

 酒飲み友達みたいな感覚で、アクアはアクセルの街の人たちと交流を深めていったのだ。

 すると。

 

ミツルギ「こ、こうしちゃいられない!僕はアクア様の後を追う!佐藤和真、キミ達はどうするんだ⁉︎もちろん、後を追うんだろ?僕と一緒に行くかい?」

カズマ「ちょっ…………!」

ルナ「こ、困りますよ!ミツルギさんの様な高レベル冒険者には、王都かこの街の防衛に回ってほしいんですが………!アクアさんの捜索願いについては、各街のギルドへ至急伝達しますから…………!」

ダスト「おい、行かせてやれ!」

 

 ミツルギはそんな風に叫ぶ。

 カズマが何かを言おうとする中、ルナさんはそう叫ぶ。

 確かに、ミツルギにはアクアの捜索よりも、王都かこの街の防衛に回ってもらった方が良いだろう。

 すると、ダストはそう叫ぶ。

 

ダスト「この街の防衛くらい、ここにいる連中だけでどうにも出来んだよ。それによ、俺だって仮面ライダーだし、ここには高レベル冒険者がたくさん居るんだからな。少しは俺たちに頼れや!」

 

 ダストはそう叫ぶ。

 近くには、ゆんゆんと狼菜の姿もあった。

 すると、冒険者ギルドの扉が開かれる。

 

トウカ「リア!シエロ!エーリカ!」

リア「アクセルの防衛は、私たちにも任せてほしい!」

シエロ「アクセルは、アクセルハーツの拠点でもあるんです!」

エーリカ「私たちも力を貸すわ!」

 

 そこに居たのは、アクセルハーツの面々だった。

 アクセルハーツも仮面ライダーであるのだ。

 さらに。

 

聡介「では、私たちも加勢するとしよう。」

朱美「ええ。あの子の拠点は、絶対に守ってみせるわ。」

英鬼度「なんやかんやで、アクセルの街は住み心地がいいからな。守ってやるよ。」

浬鳥「あなた達は、アクアちゃんの捜索に専念して。」

朱翼「皆さん…………!」

 

 そこに、父さん、母さん、伊田英鬼度、魔黒浬鳥の姿がいた。

 

進「なんか凄い事になってるが、アクセルは守ってみせるさ。」

アルカ「うん。進と一緒に!」

炎魔「やってやるよ!」

彩花「子ども達は、絶対に守る。」

隼「ああ。」

龍牙「アクセルの街に迫る魔王軍は、ぶっ飛ばしてやるよ!」

白夜「お前ら…………!」

 

 さらに、進にアルカ、炎魔達もやってくる。

 これまでに、俺たちが縁を紡いできた仮面ライダー達。

 更に。

 

冒険者「俺、レベル32だけど。」

ルナ「えっ?」

 

 その冒険者の一人の声を皮切りに、冒険者達も立ち上がり、自分のレベルを告げる。

 立ち上がったのは、誰も彼もがレベル30以上の者ばかりであり、中にはレベル40を超えていた者も居た。

 その人達の冒険者カードを確認して、ルナさんは口を開く。

 

ルナ「…………な、なぜ皆さん、これだけレベルが上がっているのに、この街に居たんですか⁉︎この街の周辺のモンスターなんて、レベル上げの効率も悪いでしょうに…………?」

冒険者「そんなの、この街が好きだからに決まってるさ。」

 

 ルナさんは、驚きと困惑が入り混じった声を出す。

 すると、冒険者の一人はそう言う。

 それを聞いたルナさんは。

 

ルナ「み、皆さん…………!守りましょう!いけます、いけますよ!これだけ腕利きの冒険者が揃っているなら、きっとこの街を守れます!」

 

 ルナさんやギルド職員達は、感極まったのか涙を流し、そんな事を言う。

 だが、カズマはその高レベル冒険者達がアクセルに留まっている理由を察した。

 

カズマ『……………サキュバスの店の常連さん達じゃないですか。』

 

 カズマはそんな風に言う。

 高レベル冒険者達は全員、サキュバスの店の常連さん達だった。

 ギルド内が異様な盛り上がりを見せる中、ミツルギは地図を取り出して、テーブルに広げる。

 

ミツルギ「ここが魔王城だ。見ての通り、魔王の城に行くには、王都へテレポートして、そこから徒歩で向かうのが1番早い。王都と魔王の城の境界線となる国境付近には、要塞化した村が幾つかあるんだ。そこで食料の補給が出来るだろう。」

 

 ミツルギはそんな風に説明をする。

 魔王の城に向かう最短コースがそれなのだ。

 すると、めぐみんが口を開く。

 

めぐみん「…………あのアクアが、果たしてそんな風に素直に向かうでしょうか?案外回り道をしてるのでは?」

トウカ「確かにね…………アクアの事だから、きっとややこしく考えたり妙な事を始めてるでしょうね。」

白夜「あいつの事だ。真っ直ぐ魔王城には向かわないだろうな。」

 

 めぐみんとトウカ、白夜はそんな風に言う。

 アクアの行動をよく分かっている為に、そんな風に言うと、ダクネスと朱翼と武劉も頷く。

 カズマが地図を眺めていると、口を開く。

 

カズマ「…………遠回りだけど、アルカンレティアからも魔王の城へ行けるんだな。」

武劉「ああ。アルカンレティアの北西方面には、あまり整備されていないが、魔王城へと向かう道がある。」

 

 カズマがそう呟くと、武劉はそう説明する。

 実際、武劉の言う通り、アルカンレティアの北西方面には、あまり整備されていないが、魔王城へと向かうルートが記されていた。

 

朱翼「だとしたら、アクアは王都には向かわずに、アルカンレティアに向かうでしょうね。」

カズマ「ああ。そこで腕利きの冒険者を雇おうとするが、どうせ高望みして仲間が誰も集まらないだろう。そして、どうしようもなくなって、一人で行くのは怖いと、アルカンレティアのアクシズ教徒達に泣きつくんじゃないか?」

ダクネス「……………うむ。間違いないな。」

めぐみん「その様子が手に取るように想像できますね。」

白夜「あいつの事だ。そうなるに決まってる。」

ミツルギ「い、いや待ってくれ。アクア様をなんだと思ってるんだ、君たちは。」

 

 朱翼がそう言うと、カズマはそう言い、めぐみんとダクネスと白夜も頷く。

 それを聞いて、ミツルギは異を唱えた。

 ミツルギは、アクアがどんな人物像であるのかを知らないのだ。

 

武劉「伊達にアクアとは長い付き合いじゃない。このルートを通っているのは間違いないだろう。」

ミツルギ「そ、そうか…………。なら、急けば観光用の便には間に合いそうだ。それじゃあ…………!」

 

 武劉がそんな風に言うと、ミツルギは半信半疑の態度を取るが、そんな風に言う。

 すると。

 

狼菜「あの。ゆんゆんも湊翔達のパーティーに付き添う感じでもいいかしら?」

トウカ「えっ?」

ゆんゆん「私も、湊翔さんの力になりたいんです!」

トウカ「ええ。お願いね。」

 

 狼菜がそう話しかけてくる。

 トウカがそう聞くと、ゆんゆんはそんな風に答える。

 それを聞いて、トウカはそう答える。

 

白夜「お前はいいのか?」

狼菜「私はいい。大勢で移動するのは精神的にもきついし。アクセルの街を守ってるわ。親友の大切な街を守る為に。」

朱翼「狼菜さんらしいですね。」

ミツルギ「そ、そうか…………。それじゃあ、行こうか。アクア様を追いかけるのは、僕と君たちのパーティーだね。僕は好機だと思うよ。魔王軍がアクセルや王都に攻め込むというのなら、魔王の城には最低限の敵しかいないだろう。結界で守られて油断している所を、アクア様が結界を解いて、僕たちが乗り込む。うまく行くだろう。」

 

 白夜がそう聞くと、狼菜はそう答える。

 集団で旅をするのがまだ慣れていない狼菜は、アクセルの街の防衛に回る事にした。

 ミツルギはそんな風に言う。

 すると。

 

カズマ「悪いけど、先に行っててくれないか?」

ミツルギ「は?どういうつもりなんだ⁉︎アクア様と長く一緒にいたのに、人に任せるつもりなのか⁉︎」

武劉「落ち着け。カズマはレベル1にされたばかりだ。それに、湊翔の事もどうにかしないといけない。」

カズマ「それに、俺、やりたい事があるんだよ。」

白夜「心配すんな。なんとか湊翔も動ける様にして、すぐに追いついてやるよ。」

 

 カズマがそう言うと、ミツルギはカズマの胸ぐらを掴みながらそう言う。

 武劉はミツルギを落ち着かせる為に宥めるようにそう言い、カズマと白夜はそう言う。

 

ミツルギ「…………というより、諸事情と言っていたが、桐ヶ谷湊翔と佐藤和真に一体何があったんだ?」

トウカ「実は……………。」

 

 ミツルギは落ち着いたのか、どうしてそうなったのかの説明を求めてきた。

 それを聞いて、トウカは説明をする。

 俺とカズマは、セレスディナの捕縛の一件で、俺はセレスディナの傀儡化を解除する為に創世の力を使った結果、動けなくなり、カズマもセレスディナの復讐の権能によって、レベル1にされてしまった事を。

 

ミツルギ「そ、そうだったのか…………。まあ、事情は分かったよ。とにかく、僕は先に向かうよ。どこで合流しようか?」

白夜「ひとまず、アルカンレティアとかで合流するか?あんまり気乗りしないが。」

ミツルギ「そ、そうか………。分かった。だが、なるべく早く来てくれ。さもないと、僕が魔王を倒すからね。」

カズマ「言ってろ。」

 

 ミツルギはそんな風に言うと、白夜は顔を顰めつつ、そんな風に言う。

 それを見て、ミツルギは苦笑しつつも、カズマに挑発をかける様にそう言う。

 そうして、ミツルギはゆんゆんを連れて旅立った。

 なぜ、ゆんゆんを連れていくのか。

 それは、スパイダーフォンで連絡を取り合う為だ。

 当のゆんゆんは。

 

ゆんゆん「あんまり、湊翔さん以外と行くのは嫌なんですけど……………がんばります!」

 

 あんまり乗り気ではなかったが、そんな風に答えていた。

 すると。

 

白夜「それで、やりたい事って何だよ?」

カズマ「ああ。ウィズの店に行くぞ!」

 

 白夜がそう聞くと、カズマはそう叫ぶ。

 それには、トウカ達は苦笑しながら見ていた。

 その後、ウィズの店に向かう。

 バニルとウィズに、アクアの書き置きを見せながら説明すると。

 

バニル「フワーッハッハッハッ!フハッ、探してください!なんという構って女神か!誰かが追いかけてきてくれるのを心待ちにしながら、後ろをチラ見しながらの魔王討伐の旅⁉︎ブワハハハハハハハ!」

ウィズ「バニルさん、笑いすぎですよ!アクア様が一人で旅に出ちゃったんですよ⁉︎ああっ、どうしましょう…………!」

 

 バニルはアクアの書き置きを見て、そんな風に大爆笑をしていた。

 それを見て、ウィズはバニルを咎めながら、狼狽えていた。

 

武劉「それで、ウィズの店で何をするつもりだ?」

カズマ「バニル、レベルリセットポーションをあるだけくれ!ボッタクリ価格でもいいぞ!」

ダクネス「お、おいカズマ。そんな物をどうするつもりなんだ?」

カズマ「レベルをリセットするんだよ!更にスキルポイントを手に入れる為にな!」

 

 武劉がそう聞くと、カズマはバニルにレベルリセットポーションを売るように頼み込む。

 それを聞いて、ダクネスがそう聞くと、カズマはそう叫ぶ。

 カズマは、己の考えを言う。

 レベルが下がっても、スキルやスキルポイントは失われない事に気づいたカズマは、スキルポイントの無限増殖法をやろうとしていたのだ。

 それを聞いたバニルは。

 

バニル「…………なるほど、なるほど。面白い事を考えるな、人間は。レベルを何度も下げて、再び上げ直し、スキルポイントを稼ぐと。………でもまあ、普通はそれが出来てもわざわざやらないだろうな。」

カズマ「…………やらないの?なんで?スキルポイント稼ぎ放題じゃないのか?」

 

 バニルはそれを聞いて、面白そうに頷きつつも、そんな風に言う。

 それを聞いて、カズマがそう言うと、武劉は口を開く。

 

武劉「発想としては悪くないが、普通はスキルポイントには困らない。人は誰しもが、生まれながらにある程度のスキルポイントを持っていると聞いた事がある。」

バニル「その男の言う通りである。それに、生まれながらに魔法使いの高い素養を持つ紅魔族は、ほとんどの者が上級魔法を習得している。上級魔法の習得に最初のポイントだけでは届かなくとも、奴らには養殖と呼ばれる経験値稼ぎや、スキルアップポーションがあるからな。」

 

 武劉は、カズマの発想を認めつつも、そんな風に語る。

 そして、バニルも紅魔族を例に説明する。

 

カズマ「…………それでも、誰だってたくさんのスキルポイントは欲しいもんだろ?街の外でカエルを数匹狩れば、レベルの二つ三つは上がるし…………。」

トウカ「カズマ…………。普通はそんな簡単にレベルは上がらないわよ?」

カズマ「……………え?」

 

 それを聞いたカズマがそんな風に言う。

 すると、トウカはそう言い、カズマが呆気に取られていると、めぐみんとダクネスが口を開く。

 

めぐみん「トウカの言う通りです。通常、レベル十まで上げるのに順調に行って一年。二十には、五年は掛かると言われています。」

ダクネス「めぐみんは爆裂魔法で強敵を一掃できたし…………私は経験値の詰まった食材で、人より早くレベルを上げられたが…………。」

バニル「生まれつき、才能の無い者ほど、レベルが上がりやすいのはこの世界の常識であるな!」

朱翼「あっ。」

 

 めぐみんとダクネスは、言いづらそうにそう言う。

 すると、バニルは嬉々としてそんな風にぶちまけて、カズマはいじける。

 バニルは口を開いた。

 

バニル「そもそも、レベルをリセットするなどと簡単に言えるのは、貴様が異世界人だからだ。ライコウ、スワン、ダイル、ギーツも含めてな。過酷なこの世界で生きる者は、一時的に自分が弱くなる事は受け入れられぬからな。」

「「…………異世界人?」」

 

 バニルはそんな風に言うと、めぐみんとダクネスはそう反応する。

 すると、めぐみんとダクネスは口を開く。

 

めぐみん「異世界の住人とは、どういう事でしょう?カズマ達はこの世界の人ではないのですか?」

ダクネス「…………確かに以前、遠い国からやってきたとは言っていたが…………。」

 

 めぐみんとダクネスはそんな風に呟く。

 すると、白夜と武劉が口を開く。

 

白夜「まあ、それについては今度話すさ。」

武劉「それと、言い忘れていたが、レベルリセットポーションは手に入らないぞ。あれは本来、禁制品だからな。生産自体が禁止されているんだ。」

カズマ「はっ⁉︎マジかよ⁉︎お前、俺の事を見通したんだから、最初から何が欲しいのか分かってただろ!」

 

 白夜がめぐみんとダクネスにそう言う中、武劉はそう言う。

 カズマがそう言うと。

 

バニル「フハハハハハ!悪感情を馳走になりたかったからな!とはいえ小僧、諦めるにはまだ早いぞ。悪感情の礼として、我輩がいい事を教えてやろう。」

カズマ「いい事?」

バニル「要はレベルを下げたいのだろう?この世には、レベルドレインという状態異常攻撃がある。貴様らが対峙したベルディアも使っていたから分かっておろう?これを使えるモンスターを上手く使えば…………。」

カズマ「な、なるほど!それでレベルを上げ下げできるってわけか!」

 

 バニルは笑いつつも、カズマにそう話しかける。

 バニルはレベルドレインの事を話した。

 とはいえ、復活したベルディアが使っていたので、それは知っていたが。

 カズマがそう言うと、バニルは口を開く。

 

バニル「うむ。本来、レベルドレインは一部の超大物アンデッドモンスターだけであるが…………幸運な事に、ここには超大物のアンデッドにして、友好的なリッチーがいる!」

白夜「なるほどな。ウィズが居たか。」

カズマ「すごい!どっかの女神と違って、お前ってたまに頼りになるよな!」

 

 バニルはそんな風に言うと、白夜はそう言い、カズマはそう叫ぶ。

 アクアと比較された事を嫌そうにバニルが口元を歪めると。

 

朱翼「でも、そう簡単に行くんですか?」

ウィズ「それは無理です。確かにレベルドレイン能力はありますが、それを狙って引き起こすのは不可能なんです。リッチーが敵意を持って攻撃すると、ランダムでどれか一つ、レベルドレインを始めとして、様々な状態異常が起こります。中には、即死や石化なんて致命的な物もありまして…………。」

カズマ「そうか、それは残念。じゃあ、この話は無かった事に……………。」

 

 朱翼がそう聞くと、ウィズはそう答える。

 それを聞いたカズマは、そんな風に言う。

 すると、苦笑を浮かべていためぐみんとダクネスが口を開く。

 

めぐみん「人間、地道な努力が1番です。簡単に手に入れた強大な力なんて、いつかしっぺ返しが来る物ですよ。」

ダクネス「それに、カズマはレベルは下がったが、タイクーンの変身に関しては、変わらず使えるはずだ。無理をするな。」

 

 めぐみんとダクネスはそんな風にカズマを慰める。

 それを見て、カズマは決意を決めたのか、口を開く。

 

カズマ「……………なあ、ウィズ。テレポートの登録先を聞いてもいいか?」

ウィズ「私のテレポート登録先は、この街の入り口に一つ。二つ目は商売上の理由から、紅魔の里に書き換えました。」

バニル「よし、ウィズ。すぐさま紅魔の里の登録を余所に書き換えるのだ。」

武劉「カズマ?」

 

 カズマがそう聞くと、ウィズは首を傾げながらもそう答える。

 紅魔の里という単語を聞いて、バニルがそう言う中、武劉はそう言う。

 

ウィズ「最後の一つは、魔法の素材を集める為、この大陸で最も深いと言われるダンジョンの入り口に……………。」

カズマ「そこだ!…………ウィズ。俺をダンジョンで鍛えてくれ。そして、俺のレベルが上がってきたら、ダンジョン内でレベルドレインを使って欲しい。」

トウカ「えっ⁉︎」

 

 ウィズがそう言うと、カズマはそう叫び、ウィズにそう頼み込む。

 トウカが驚く中、めぐみんとダクネスは口を開く。

 

めぐみん「カズマ⁉︎ちゃんと説明を聞いていましたか⁉︎リッチーの状態異常攻撃は凶悪なんですよ⁉︎」

ダクネス「お前はいつも保守的なのに、時折無茶をするのは何なのだ!」

 

 めぐみんとダクネスはそう叫ぶ。

 すると。

 

カズマ「ああもう、うるせー!お前ら二人は今から街を駆け回って、もう一回、使えそうなスキルを持ってそうな冒険者に片っ端から声をかけろ!俺がダンジョンから帰ってきたら、すぐにスキルを教えてもらえるようにな!」

 

 カズマは二人に対して、そんな風に叫ぶ。

 カズマの心境は。

 

カズマ『ったく!どいつもこいつも!変な時だけお人好しになりやがって!』

 

 そんな事を考えていた。

 めぐみんとダクネスが、自分の気持ちを抑えているのは分かっていたのだ。

 めぐみんが、他の紅魔族を見返してやりたいと思っている事。

 ダクネスが、アクアを追いかけていきたい事を。

 それが分かっていたから、カズマは覚悟を決めたのだ。

 

白夜「お前、本気か?下手をしたら死ぬんだぞ?」

カズマ「本気に決まってんだろ!リッチーの状態異常攻撃は、呪いと石化と即死がハズレなんだろ?強運な俺がそう簡単にハズレを引くか!」

朱翼「全く…………。」

 

 白夜がそう聞くと、カズマはそんな風に言う。

 朱翼がそう言うと。

 

めぐみん「しょ、正気ですか、カズマ………!レベルを下げる際には、プリーストにブレッシングをかけてもらった方が…………!」

ダクネス「モンスターの盾代わりに私がついて行った方が……………!」

 

 めぐみんとダクネスはそう言うが、カズマは二人を無言で無理矢理お店から追い出した。

 トウカ達は無言でカズマを見ていた。

 

カズマ「というわけだ。悪いんだけど、俺を鍛えてくれ。」

ウィズ「そ、それは…………私もアクア様が気になりますし、構いませんが…………。私一人ではカズマさんを守り切れる保証はありませんよ?ダンジョンは広大なので、道に迷ったり、危険な罠もありますし、私のスキルでカズマさんが死なないか…………が…………。ああっ!そうです!」

 

 カズマがそう頼み込むと、ウィズは渋い顔をしていた。

 知り合いを殺してしまっては、目覚めが悪いと思っているのだろう。

 すると、ウィズはある事を思いついた。

 

ウィズ「バニルさん!バニルさんなら、見通す力でカズマさんに致命的な状態異常が発動するかどうか、事前に分かるのではないですか⁉︎」

バニル「断る。」

 

 ウィズはそんな風に言う。

 確かに、バニルの能力を使えば、致命的な状態異常を防ぐ事が出来る。 

 だが、バニルはそう言って切り捨てた。

 

トウカ「アンタ…………この為だけに説明したのね?」

バニル「フハハハハハ!その通りだ!汝らの悪感情、大変に美味である!それに、魔王がどうなろうが知った事ではないが、なぜ悪魔であるこの我輩が、わざわざ女神の手助けになりそうな事をしなくてはならぬのか!ブワハハハハハハハ!愉快愉快!女神なぞ、旅の途中で道にでも迷い、その辺の雑草でも食んで当たって、ポックリ逝ってくれるが吉!まあ、あやつ一人では間違いなく城には行けぬだろーて!フワーッハッハッハッ!」

 

 トウカが呆れたようにそう言うと、バニルはそんな風に言うと、高笑いをする。

 それを見ていたトウカ達は。

 

トウカ「相変わらずと言うか…………。」

白夜「まあ、無理もねぇが。」

朱翼「ですが、どうしましょうか?いくらのカズマの強運でも、避けきれない可能性がありますし…………。」

武劉「無理にする必要はないと思うがな。」

 

 トウカ達はそう話す。

 その間、ウィズとバニルが攻防を繰り広げていると、カズマは口を開く。

 

カズマ「なら、バニル。お前、俺がウィズの店でいらない高額商品を買い取ると言ったら、どうだ?」

バニル「何?…………ほほう。ウィズ、貴様が仕入れたこのガラクタの数々が早速捌ける事になったぞ!だから…………ええい!この手を離すのだ!」

 

 カズマはそんな風に問いかける。

 それを聞いたバニルは、首を傾げるが、商売の取引だと判断したのか、そんな風に言う。

 

トウカ「いや、言っちゃ何だけど、ウィズの店の商品って、そんなに使える物はないわよ?」

ウィズ「ひ、酷い!」

カズマ「いや、買い取る物は決まってるんだよ。それも、買い取ったらバニルが大喜びするような…………。」

 

 トウカがそう言うと、ウィズはショックを受ける。

 カズマはそんな風に言うと、その欲しい物とやらを告げる。

 それを聞いた面々は。

 

トウカ「えっ…………⁉︎」

白夜「マジかよ……………⁉︎」

朱翼「嘘…………⁉︎」

武劉「おいおい…………!」

バニル「ほう…………!」

 

 トウカ達は、それを聞いた途端、引き攣った表情を浮かべ、バニルはニヤリと笑う。

 果たして、カズマの欲しい物とは…………。

 一方、俺はこの光景を己の力で見ていた。

 

湊翔「カズマ……………覚悟を決めたんだな。なら、見守るだけだ。己の力で成し遂げてみせろ。」

 

 カズマが覚悟を決めたのを見て、俺はそう呟く。

 どうせ、動けないしな。

 見させてもらうぞ、お前の覚悟を。

 一方、拓巳は。

 

拓巳「…………よし。知恵の樹に取り込まれた紅魔族を元に戻す。同行してもらうぞ、石井樹。」

樹「…………ああ。」

 

 拓巳は樹にそう話しかけると、拷問の末に精神が擦り切れたのか、石井樹は痩せ細った状態になりつつも、そう答える。

 果たして、どうなるのか。




今回はここまでです。
今回は、カズマがウィズにレベル上げを頼み込む話です。
カズマも、色々と覚悟を決めました。
更にスキルを獲得するために。
そして、バニルに頼んだ品とは……………。
次回は、ベロバとの決着になる予定です。
果たして、どうなるのか。
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