とあるモブ男子の奈桜ルート攻略   作:Sh1Gr3

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※少しでも吐き気を催したらそっ閉じ推奨です。

 奈桜空ルート進行中。


彼女たちとの日常②

 

 

 

 「信吾君、この()()()()ってなんですか?」

 「……」

 

 目が点、とはまさにこのことだろう。たぶん、今の俺の顔がそうなってると思う。

 まさか、高科さんの英語の学力が、ここまで低いとは。さすがに想定外だった。

 

 「いや、be(ビー)動詞っすよ。ベーじゃないっす」

 「あー!それならあたしでも知ってますよ!」

 

 つい先日習ったかのような物言いに、俺は乾いた笑みを浮かべた。

 いったい、どこから教えればいいんだ……。

 

 英語の小テストが、明日に迫った今日の放課後。

 俺と高科さんは、教室でテスト勉強に勤しんでいた──勤しんでいるのは、主に俺だけど。

 

 「あの、このカンケイダイメイシってなんでしたっけ?」

 「えっ?」

 「これですよこれ。ナオっちにはチンプンカンプンなんですけど」

 「あ、ああ……それは──」

 

 特にひねり要素もない、基本的な英文。中学の時に英語の授業を聞いていれば、簡単に解けるレベルだ。

 それが分からないということは、高科さんは中学の時に、ちゃんと英語の授業を聞いていなかったということになる。

 

 まったく、何をやっていたのやら……。

 

 高科さんのことだから、中学の時もこんな感じだったんだろうけど。

 というか、よくこの高校合格できたな。

 

 「いや、それ違うっす」

 「あれ?じゃあ、こっちですか?」

 「いやいや、それは先行詞が人なんで。whoにしないと」

 「せんこーし?フー?誰かの名前ですか?」

 「……一から説明しないとダメそうっすね」

 

 俺はため息を吐いて、自分のノートを開いた。

 そして、一番後ろのページに、簡単なマトリクス表を書いていく。

 

 「うわあ、きれいな字ですねえ~」

 

 高科さんが、ノートを覗き込んでくる。

 

 「これを見ただけでも、信吾君は頭がいいんだなって分かりますよ」

 「別に高科さんだって、字はきれいじゃないすか」

 

 目の前にある高科さんのノート。

 見ると、ちゃんと板書を写せていることが分かる。まとめ方も丁寧だ。

 

 「そうですか?それは嬉しいですよ」

 

 ニコッと微笑む高科さん。

 まあ、客観的に見てもきれいだと思う。新聞部を名乗るだけあって、そこはさすがだ。

 

 ただ、高科さんで証明しているが、字のきれいさと頭の良さは比例しない。

 俺もよく、周りから字がきれいだとは言われるけど、そこまで頭がいいわけでもないしね。精々、中の中か中の上程度だと思う。

 

 「よし、書けた」

 「なんですか?それ」

 「マトリクス……まあ、簡単な表っす」

 

 そんな教科書に載っているような表は作れないので、本当に基礎的なことをまとめた簡素な表だ。

 もっとも、これが高科さんに通じるかというと、たぶん無理なんだけど。

 

 「ちなみに、これどこまで分かります?」

 

 念のため確認してみると、

 

 「フッ……そんなの、あたしに分かるとでも?」

 

 鼻で笑いながら、堂々と分からない宣言されてしまった。

 そんな高科さん前にして、自然とため息が零れる。

 

 芳槻さん。あなたの姉と思わしき方は、コミュ力と行動力に全振りしすぎて、学力が終わってるみたいです……。

 

 しかし、教えると言ってしまった以上、放置するわけにもいかない。

 せっかく表も作ったので、これだけは説明するとして、あとはテストに出そうな単語を暗記してもらって、点数を稼いでもらうしかないかな。

 

 単語で稼げれば、たぶん二桁には届くはずだ。よし、この作戦でいこう。

 

 「じゃあ、とりあえずやりますか……」

 「なんか疲れてないですか?休憩します?」

 「いや、大丈夫っす」

 

 別に疲れてはいない。

 ただ、呆れと困惑を通り越して、変に吹っ切れただけだからね……。

 

 

 「もう……む……りです」

 

 かすれた声を発して、机に突っ伏す高科さん。

 かなりお疲れの様子だが、本格的に勉強を始めて、まだ一時間ぐらいしか経っていない。

 

 とはいえ、このまま続けてもどうにもならなそうなので、いったん休憩を挟むことにした。

 

 「休憩しますか」

 

 高科さんが、机に突っ伏したまま頷いた。

 まったく、今までどんだけ勉強してこなかったんだよ……。

 

 俺はため息を吐くと、カバンから財布を取り出して、椅子から腰をあげた。

 高科さんの顔だけが、こっちを向く。

 

 「あれ、どこか行くんですか?」

 「トイレっす」

 

 本当は、購買に行くつもりなんだけど。

 

 「ごゆっくり~」

 

 やれやれ、やる気があるんだかないんだか……。

 

 教室を後にして、購買へ向かう。

 この時間は部活に励む生徒が多いので、休み時間などに比べると人が少ない。そのため、品選びも会計もスムーズに済ますことができた。

 

 ここはレジが一つしかない上に、おばさん一人で回してるから、混むとえらい時間がかかるんだよな……。

 

 おばさんから品物の入った袋を受け取り、足早に教室に戻る。

 

 そして、教室のあるフロアに着いた、その時──。

 

 「あれ? 神城君」

 

 不意に横から声をかけられた。

 その声に、俺の身体がビクッと反応する。声のした方向に目をやると、そこには芳槻さんが立っていた。

 

 なんというタイミング……。

 

 そのまま、こっちに歩み寄ってくる芳槻さんに、俺は軽く頭を下げる。

 

 「うっす」

 「まだ校舎にいらしたんですね」

 「まあ……ちょっとテスト勉強してて」

 「テスト勉強ですか?」

 

 首を傾げる芳槻さんに、明日のテストについて話す。

 

 「明日英語の小テストがあるんで、その勉強っす」

 「な、なるほど……」

 

 ふと、芳槻さんが目を伏せる。会話も止まってしまった。

 

 (あれ、どうしたんだ……?)

 

 なんともいえない気まずい空気に、苦笑いを浮かべていると、

 

 「あ、あの!」

 

 突然、芳槻さんが口を開いた。

 その勢いに、身体がビシッと引き締まる。どうも芳槻さん相手だと、まだ緊張が取れないな……。

 

 すると、芳槻さんは目を伏せたまま、予想だにしていなかったことを言ってきた。

 

 「その……もしお一人でされているようでしたら、私もご一緒してもよろしいでしょうか?」

 「へ?」

 

 情けなくも、思わず訊き返してしまう自分。

 そしてすぐに、葛藤に苛まれることになった。

 

 今の俺には、高科さんという先約がいる。こちらを無下にはできない。

 だから、芳槻さんのお誘いはすごく嬉しいけど、今は断らなければならない。

 

 分かってはいるのだが──。

 

 (断りづれえ……)

 

 俺という人間の悪いところだ。優柔不断、この一言に尽きる。

 返答に困っている俺に、芳槻さんがしゅんとした顔をして、尋ねてくる。

 

 「あの、ご迷惑だったでしょうか……?」

 「い、いや、全然迷惑じゃないっすよ!」

 

 声を張って、慌てて返答する。言うまでもなく、迷惑なはずがない。

 俺はしどろもどろになりながらも、続けて言った。

 

 「ただ、今他の人とやってて……」

 「あっ……そうだったんですね……」

 

 明らかに、芳槻さんの声のトーンが下がっている。

 心の中が、申し訳なさでいっぱいになる。せっかく、こんな自分を誘ってくれたのに──。

 

 「申し訳ないっす」

 「あ、謝らないでください!急にお誘いした私が悪いので!」

 

 おろおろしながら、芳槻さんが言う──身振り手振りを添えて。

 

 優しい……。

 これで友達がいないって、詐欺じゃないか?

 

 俺はコホンと一つ、咳ばらいをしてから言った。

 

 「また別の日でもいいすか。自分だいたい暇してるんで」

 「えっ?」

 

 芳槻さんの目が大きく見開く。まさかの台詞が飛んできて、びっくりしてるって感じだ。

 

 「で、でも、神城君は高科さんと付き合ってるんですよね?ご迷惑なんじゃ……」

 「あー……たぶん大丈夫す。普通に友人と勉強するって言えば」

 

 うん、問題ない。別にやましい気持ちがあるわけでもないし。

 そもそも、芳槻さんと友達になるように頼んできたのは、高科さんだしね。

 

 そう頭の中で再確認していると、顔を伏せたまま、芳槻さんが口を開いた──心なしか、頬がピンク色に染まっている気がする。

 

 「それでは、その時はその……よろしくお願いします」

 「うっす」

 

 よかった。言っといてなんだけど、断られたら地味にショックだった。

 芳槻さんの台詞に、ホッと胸をなでおろしていると、

 

 「あーっ!こんなところにいましたよ!」

 

 横から、高科さんの声が飛んできた。見るとムスッとした顔で、こっちに歩いてくる。

 

 しまった、長話しすぎたか……。

 

 俺は芳槻さんに、戻る旨を伝えようとする──が、芳槻さんは目を伏せたまま、

 

 「では私はこれで。失礼します」

 

 そう言って、この場からスタスタと立ち去ってしまった。

 

 (あらら……)

 

 俺はなんとも言えない、複雑な気持ちになる。

 目を伏せたままなのは同じでも、高科さんの声を聞く前と後で、芳槻さんの雰囲気がガラッと変わった。

 

 あの急激な感情の変化は、ハッキリ言ってえげつない。

 いったい、この姉妹(仮)にどれだけのことがあったのか……。

 

 「どうしたんですか?」

 

 もはや誰もいなくなった空間を見て、高科さんが首を傾げた。

 さっきまで芳槻さんが立っていた場所は、高科さんからは死角になっていた。なので、俺が何をしていたのかは、高科さんには分からないだろう。

 

 「……なんでもないっす」

 

 少し考えてから答えた。芳槻さんと話していたことは、なんとなく言う必要はないかなって。

 高科さんは「ふーん」とだけ言って、それ以上は何も聞いてこなかった。二人並んで、教室に向かって歩き出す。

 

 その途中──。

 

 「ん?何持ってるんですか?」

 

 高科さんが、手に持った袋を見て訊いてきた。

 俺は前を向いたまま言う。

 

 「お菓子っす」

 「えーっ!酷いですよ!置いていくなんて!」

 

 憤慨したように声をあげる高科さん。

 いや、あなたさっきまで疲れ果ててたじゃん……。

 

 「うう……ナオっちは拗ねましたよ。こうなったら、そう簡単には機嫌は戻らないですよ」

 (なんでだよ……)

 

 顔を背ける高科さんを見て、俺は大きなため息を零した。

 まあ、このまま無視してもいいんだけど──。

 

 俺は袋から飲み物を取り出す。うん、まだ充分冷たい。

 そして、手に持ったそれを、そのまま高科さんの首元に押し付けた。

 

 「ひあっ……?!」

 

 小さな悲鳴とともに、ビクッと体を震わせる高科さん。相当びっくりしたようで、何事かと目を見開いて、こっちを見てくる。

 そんな高科さんに、俺はフッと僅かな笑みを浮かべながら、飲み物を差し出した。

 

 「え、あっ……ありがとうございます」

 「……うっす」

 

 なんか思ってた反応と違った。もっと何か言ってくるかと思ったのに。

 

 なんともいえない空気のまま、教室に入って自分の席に腰を下ろす。

 

 ふと、高科さんのノートに目がとまる。

 そこには、さっきまで書かれていなかったことが追記されていた。

 

 たぶん、俺がいない間に書いたのだろう。一応、間違ったことは書かれていない。

 

 (へー、やればできるんだな)

 

 少しだけ感心した。これなら、まあなんとかなるだろう。

 

 「さて、続きですよ!」

 

 高科さんが、手に持ったペンをひと回しして言った。

 俺も、購買で買ったコーラを、一口飲んでペンを持つ。

 

 そして、冗談混じりに訊いた。

 

 「機嫌は直ったんすか?」

 「仕方ないので直しましたよ。もしあたしの分がなかったら、本当に拗ねてましたけど」

 「はあ……」

 

 思わず、苦笑いを浮かべる俺。

 高科さんが、静かに続ける。

 

 「でも、そんなことはなかったですね。休憩もあたしのためだし……」

 

 まあ、あのまま続けてもどうしようもなかったからね。

 

 すると、高科さんはニッコリ微笑んで言った。

 

 「信吾君のそういう何気ない優しさが、あたしは大好きですよ」

 「……やりますか」

 「照れてますか?」

 

 ニコニコした顔で追撃してくる高科さん。

 それを、俺は華麗にスルーする──できてるか分からないけど。

 

 「とりあえず、この単語覚えてもらって」

 

 教科書をめくりながら、ここからここまでと指し示す。

 

 「えっ、これ全部ですか?」

 「まあ……できれば全部がいいですけど。点数稼ぎやすいんで」

 

 といっても、全部がテストに出るとは限らないんだけどね。あくまでも、出題範囲というだけだから。

 

 高科さんが、ガクッとうなだれる。

 

 「うう、二桁って険しい道のりですね……」

 「そんなにすか?」

 

 「ナオっちの成績を、なめてもらっちゃあ困りますよ。信吾君の想像してるよりも、絶対に悪い自信があります」

 

 謎に胸を張って言う高科さん。

 

 なんでそんな堂々と言えるんだよ……。

 

 乾いた笑みを浮かべて、ため息を吐いていると、

 

 「でも、頑張りますよ」

 

 教科書に視線を移して、高科さんが言った。

 

 「信吾君に教えてもらってるこの時間を、無駄にしたくないもん」

 「……」

 「絶対に二桁は取ってみせますよ!」

 

 そう言って、さっき覚えるようにと示した、単語たちに目を通し始めた。

 

 やる気出すとこそこかよ──とは思いつつも、せっかくやる気になってくれているので、思うだけにとどめておく。

 

 (まあ、頑張ってもろて)

 

 俺は教科書に目を走らせる高科さんを見て、少しばかり笑みを浮かべると、自分のノートに目を移した。

 

 

 そして、迎えたテスト返しの日──。

 

 

 「今回のテストは、非常に出来が悪かったです。皆さん、よく復習しておくように」

 

 痛烈な先生の言葉。

 周りの生徒たちが、口々に「やべー」「終わった」などの台詞を発している。

 

 まさに、阿鼻叫喚の嵐だ。

 

 (高科さん、二桁取れたかな……)

 

 ちらっと高科さんに視線をやる。

 高科さんは、答案用紙をジッと見つめていた。何点かどうかは、ここからでは確認できない。

 

 まあ、0点はないだろう。あれでも、結構頑張ってたし。

 

 なんてことを考えていると、

 

 「なんとか平均点は取れたでやんす……」

 

 前の席の荷田君が、ホッとしたように言った。

 

 「パワポケ君はどうだったでやんすか?」

 「あ、ああ……燃え尽きたよ……」

 

 ガクッとうなだれるパワポケ君。

 後ろからでも、悲壮感が漂っているのがよく分かる。

 

 「あらら。やっちまったでやんすねえ」

 「こんなの、日本人に解かせるなよ。日本人は日本語だけできればいいだろ」

 「めちゃくちゃ言ってるでやんす……」

 

 荷田君のため息。

 

 二人の会話を聞いていて、思わず笑ってしまった。

 まあ、パワポケ君の言うことも一理ある──気がしなくもない。

 

 「神城君はどうだったでやんす?」

 「ん?」

 「うわ、49点!ほぼ満点でやんす!さすがでやんすねえ~」

 

 荷田君が、俺の机の上の答案用紙を見て言った。

 パワポケ君も、虚ろな目でこっちを見てくる。

 

 ちなみに、このテストは50点満点だ。荷田君の言うほぼ満点というのは、そういう意味。

 

 「すごいなあ。俺なんてこのざまだよ、ハハハ」

 

 乾いた笑いとともに、パワポケ君が自身の答案用紙を見せてくる。

 

 その点数は──。

 

 「0点はまじのやらかしでやんす。ノー勉でも0点はないでやんすよ」

 「やば」

 

 バツだらけの答案用紙を見た、荷田君と俺の反応。

 荷田君は呆れた表情を浮かべており、対して俺は半笑い。

 

 パワポケ君は、一年生の頃からこんな感じだったしね。今更って感じだ。

 まあ、それでも0点はどうかと思うけど。

 

 「いいんだよ別に、俺は日本人なんだから。英語なんか使わないし」

 

 荷田君と俺の反応に、パワポケ君がフンと鼻を鳴らす。

 

 と、そこに──。

 

 「パワポケ君、0点だったんですか?これはおもしろいネタ発見ですよ!」

 

 俺と荷田君以外の声が響いた。

 パワポケ君にとって、最悪の人物の来襲である。

 

 「げっ、高科!い、いつからそこに?!」

 「たった今ですよ。それより、0点というのは本当ですか?」

 「だ、だったらどうだっていうんだよ」

 「パワポケ君の将来が心配ですよ。そんな成績で、将来どうするんですか?」

 「俺はプロ野球選手になるから、頭なんて関係ないんだよ」

 

 高科さんの鋭い指摘に、苦し紛れに言い放つパワポケ君。

 

 なるほど、プロ野球選手か。それなら確かに、成績なんて関係ないな。

 

 「そういう高科はどうだったんだよ」

 

 今度はパワポケ君のターン。 

 訊かれた高科さんは、ちらっと俺の方を見た。

 

 「あたしはパワポケ君と違って、勉強しましたからね。0点ではないですよ」

 「ぐっ……」

 「成果出たんすか?」

 

 悔しそうな顔のパワポケ君を横目に、俺が訊くと、高科さんはニコッと笑みを浮かべながらVサイン。

 そして、答案用紙をこっちに見せてきた。

 

 「もちろん!ちゃんと二桁取りましたよ!」

 

 胸を張って答える高科さん。

 荷田君とパワポケ君が、高科さんの答案用紙を見て言う。

 

 「おお、意外と頑張ってるでやんす。この難易度で3割なら、まあまあ及第点でやんす」

 「15点て、半分も取れてないじゃないか。そんなんで威張るなよな」

 「いや、0点のあんたよりは100倍マシでやんすよ」

 「そうですよ!0点のパワポケ君!」

 「……高科に言われると、虚しい気持ちになるのはなんでだろう」

 

 荷田君と高科さんのツッコミに、どこか遠い目で呟くパワポケ君。

 そんなパワポケ君を横目に、高科さんの答案用紙にざっと目を通す。

 

 正解できているところは、単語と選択問題、あとは和訳のところでお情けで点を稼いでいる。

 おおかた、俺の教えたところを、しっかり押さえた結果が出ている感じだ。

 

 高科さんが、俺を見て嬉しそうに言う。

 

 「いやあ、これも信吾君が教えてくれたおかげですよ」

 「……俺は教えただけなんで。そんな大したことしてないっすよ」

 「何言ってるんですか。信吾君が教えてくれなかったら、どこかの誰かさんみたいに、あたしも0点不可避でしたよ」

 

 台詞とともに、高科さんの視線がパワポケ君へと移る。

 

 「くっそ~……今に見てろよ、次のテストは負けないからな!」

 「勝者は常に相手になりますよっ!」

 

 高科さんとパワポケ君の間で、バチバチと火花が散る。

 その様子を、傍観する俺と荷田君。

 

 「神城君も大変でやんすねえ。あれの相手は、気の休まる暇がなさそうでやんす」

 「まあ……今に始まったことじゃないから」

 

 頭の中に蘇る、一年生の頃の記憶。

 男子校舎に侵入したり、寮にまで入ってきたり──よくバレずに済んだものだ。

 

 今の俺の顔、たぶん遠い目をしてるんだろうな……。

 

 そんなことを考えていると、高科さんがニッコリと笑みを浮かべて、こっちを見てきた。

 

 「というわけで、この次も頼りにしてますよ!あたしの頼れる彼氏さん!」

 「……うっす」

 

 俺は観念したように、ため息混じりに了承した。

 まあ、この次もっていうのは保証しないけどね……。

 

 

 

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