きっとみんなピンとくるに決まってる。──左遷だって。
まだ隅は真っ暗な闇夜が支配する室内稽古場。
静かな空間を鋭く裂く剣の音だけが響く。時計はまだ、L字をさしていて普段なら誰もいるはずのない時間。
黙々と剣を振り続ける乙女のシルエットが小さなランプの灯に照らされ、部屋に大きな影を広げている。
(みんなに、何て言って切り出せばいいんだろう……)
剣を振りながらも、シャニーはずっと同じことを考えていた。
答えの出ない問いを自身に繰り返し、そのたび浮かびあがる仲間たちの顔に首を何度も振る。
いったい、どんな顔をするだろうか。自分だってまだ飲み込めたわけではない。けれど、アルマとも約束した。いま短気を起こせば、イリアの人々を裏切ることになる。イリアを想うからこそ、何もできない。
もどかしくて、苦しくて、悔しくて……こんな気持ちのままで、仲間たちが納得してくれるか不安だ。
(あのとき、あんなことをしなければ、こんなことには……)
去年の7月……あの団長選出戦でイドゥヴァに従っておけば、今頃こんな時間から剣を振らなくても良かったかもしれない。とは言え、間違ったことをしたとは、今だって一切思っていない。
(どうすれば良かったんだ、どうすれば良いんだ……なんでさ、なんでなのさ……ッ)
ビュンビュンと空を裂く剣の音がどんどん激しくなる。ついには彼女の怒りはゴオッと青焔を滾らせた。
「くっそおおおっ!!」
湧きあがる怒りに呼応するように膨れ上がったセチの魔力に任せ、力いっぱい叩きつける。足らない。案山子を真っ二つにしたくらいでは全然足らない。それを止めるように、中の住人が呆れた声を漏らしはじめた。
「やれやれ。そんな感情で、私をまとわないで欲しいかな?」
身を包む青焔が収まり、剣を地面に突き刺し膝を突く。荒れる呼吸に肩が跳ねて、剣に預けないと体を支えられない。
それがセチには不満らしいが、言われなくとも分かっている。今のは、殺意────魔剣だ。こんな使い方は、本望ではない。
「ごめん……」
「エーギルの消耗、スゴかったね。今のは本気で〝殺り〟にいったのかな?」
「……」
「らしくないなぁ。ま、キミのホンキも見てみたいし? カチこむなら助太刀するよ?」
警告か、それとも、彼女なりに気にかけてくれたのか。見通すような、透き通ってサッパリした気性のセチは、奔放でイマイチ考えていることが分からない。
特に剣のことになると目を輝かせ、こうしておっかないことを平気で言う。穏やかな風の精霊と聞いていたのに。
それでも、話しかけてくれて少しだけ気が紛れた。
「ねえ。あたし、みんなになんて言えばいいと思う?」
独りで考えていると、どうしても良くないことを考えてしまう。相棒がいるのを思い出し、アドバイスを欲しくて声をかけたのだが、返ってきた言葉はあまりにもあっさりしていて困惑するばかり。
「どうも何も。事実をそのまま言うだけだと思うけどな?」
「そりゃ、そうなんだけど……」
「そんなことで雑味が出るなんて、隙だらけだね」
仲間をがっかりさせないように説明するには、どうしたらいいかを聞きたかったのに。
それからしばらく、剣を振り続けていた。
心を落ち着けて、もう一度考えてみる。……ループする世界。剣を槍に変えてみても、どうにも良い案は浮かんでこない。左遷という事実が、全てを砕いてくれる。
「あーっ、サボリ魔がいたッス!」
そのときだ。ふいにドアが開く音がしたと思ったら、すっとんきょうな声が飛んできた。はっとして窓の外を見れば、いつの間にか朝日が差し込んで青空が見えている。
(みんな来ちゃった……)
振りむけば、ミリアだけではなくレンやルシャナも一緒だ。あれだけ長い時間があったというに、心の準備なんか何もできないまま。
「シャニー、今度はどんなサプライズだったわけ?」
今日という今日はとっちめてやるとでも言いたげに、指をぽきぽき鳴らしながら寄って来るルシャナの頭には間違いなく角が生えている。おまけに一本どころではないから普段なら逃げ出すところ。
でも、槍を下したシャニーはうつむいて下唇を噛んだ。
(サプライズ……ホントだよ。酷いサプライズだよ……本当に)
シャニーの肩を抱きこんで捕まえたルシャナだったが、反応が無かったからか困惑が浮かぶ。ミリアと二人で首を傾げ合っていると、背の低いレンがうつむくシャニーのもとに潜り込むようにして見上げて視線を合わせた。
「シャニー……昨日、総務部長さんに何を言われたの?」
目の前に銀色の瞳があって見つめてくる。もう逃げ場がなくなってシャニーは顔を上げた。困惑した六つの瞳。怒り……いや、不安をずっしり抱えた、朝とは思えない眼差したち。
(やっぱり、そのまま言うしかないよね……)
その瞳をゆっくりと見渡しながら、唇を噛んでぎゅっと槍を握る手に力を込めた。
どれだけ考えても、気の利いた言葉なんて思いつかない。リキアに飛ばされた事実は否定できず、イリアを守る道を絶たれた……。
その気持ちに全ての笑顔が掻き消され、シャニーは真顔のまま口を開いた。
「みんな、落ち着いて聞いて。あたしたち第十八部隊は……リキア連絡所へ出向になった」
自分が落ち着いていないのに、周りに落ち着けとは、何とマヌケで不安にさせるようなことを言ってしまったのだろう。
稽古場には重い沈黙が広がった。普段ならこの沈む空気を笑って払うところだが、今は火が消えて一風も吹けない。
その沈黙を破ったのは、やはり絶望という名の驚愕だった。
「どっ、どういうことッスか?! しゅっこう? 何スか、それ! リキアの連絡所をどうするんスか??」
動転した声。ミリアが周りをきょろきょろしながら答えを求めて叫んでいる。
まず、言葉の意味が分かっていないらしい。その裏にある本当の意味を、どうやって説明すればいいだろう。
慎重に言葉を選んでいたときだった。
「……リキアに常駐して、リキアの中で仕事するってことだよね」
信じたくない、そんな気持ちがレンの声をさらに小さくするようで、今にも掻き消えてしまいそう。弱々しく彼女の銀の瞳が見つめる。
いつものように笑って、冗談でした! とでも返してあげたかったが、唇を噛むしかできない。いや、それが精いっぱいだった。
「ちょ、ちょっと待って欲しいッス。この前、存続が決まったばかりじゃないッスか!」
ミリアは何度も舌を噛みながら早口にくり出し、両手を広げはじめた。
(あたしだって、そう思ってたよ……)
もしかしたらイドゥヴァの中では、あのときから既に決まっていたのかもしれない。そうだとしたら、掌の上で転がされていたことになる。
「部隊の存続だけってか、約束したのは。あのクソババめっ」
静寂の稽古場に、怒声と共にガシャン! と腹を震わせるような音が響く。ルシャナがテーブルを殴りつけ、目を血走らせていた。その衝撃に崩されるように、ミリアがへなへなとテーブルに手を突いている。
「リキアでのお仕事、何?」
そんなミリアを支えながら、レンは話を先に進めた。でも、ルシャナの顔にはありありと困惑が浮かぶ。
「リキアに仕事なんかあるの?」
「リキアは復興が進んでるから、そこを見て勉強して来いって」
口にした任務内容に、ルシャナの顔が一層に厳しくなるのがはっきり見えて、腹にわっと不安が膨らむ。ルシャナだけではない。自分を見つめる六つの瞳すべてが、同じことを考えているようだ。
(あたしだってそう思うよ……)
聞かされたときは、一日どこで何をしていたか覚えていないくらいショックを受けた。仲間たちの反応も仕方ない。
(やっぱりみんな動揺してる)
でも今は、少なくとも皆よりこの任務の意味を理解している。リキアで何をしなければならないか、アルマと話して自分なりに少しは前を向いたはずだ。リーダーとして、彼女たちに前を向いてもらうために引っ張らねば。
シャニーは両手を広げながらパっと笑って見せた。
「大丈夫だって! リキアも良いところだよー。ほら、張り切ってがんばろ!」
沈み込んだ朝の稽古場に響く爽やかな声。だけどそれは、仲間たちに笑顔を取り戻すことはなかった。
「リーダー、無理しなくていいよ」
すぐにルシャナが止めた。大丈夫……そう言い返すより先に彼女は続けてきた。
「もう10年以上の付き合いなんだからさ。励ましてくれるのは嬉しいけど、あんたがボロボロになるのは、もう見たくないよ」
こう言われてしまうと、なにも言えなかった。どうしても笑った顔が萎んで引きつってしまう。
「そんなの出向してまでやることじゃないじゃん。数日で終わるでしょ」
ルシャナに何も言い返せずに、視線を逸らし黙ってしまった。こういう場面になにか気の利いたことを言えればいいが、自分だって最初に辞令を受け取ったときは同じことを考えた。
広がっていく動揺を止められなくて、ただ自身の無力と罪悪感が心の中に圧し広がって突き破ってくる。
「シ、シャニー……これってやっぱり……」
嘘と言ってくれと言わんばかりに見つめてくるミリアは、途中まで口にしてそれ以上を噤んでいる。
違うと言ってあげたい。何とか言葉を絞ろうとした唇を噛んで、表情を悟られまいと必死に顔を逸らす。出てこない。否定したいはずなのに、なにも出てこない。
「ん、左遷だね」
おまけに、必死に避けてきたその言葉を、レンがきっぱり言い切ってしまった。
分かっていた。イリア外の連絡所への移動人事が、明確な左遷だということは。ただただ、信じたくないだけで。
ぐっと奥歯を噛みこんで、目をぎゅっと閉じてももう堪えきれない。
腹の中に溜まった黒く、絡みついて膨らむ罪悪感を吐き出すように、シャニーはテーブルに手をついて頭を下げた。
「みんな、ごめん!! 会議で企画のアピールが足らなかったのかも知れない。あたしが、イドゥヴァさんに評価してもらえなくてこんなことに!」
まさか、仲間にまで被害が及ぶとは思ってもいなかった。
団長選出戦での棄権以降も、事ある毎にイドゥヴァとは対立してきた。だけどそれは、イリアの人々のためと思って戦ってきたからに他ならない。
間違っていたとは思っていない。だけど……突きつけられている現実は、今までの行動の結果だ。
「シャニー、違う」
駆け寄ってきたレンに両手を取られた。頭を上げた先に見えたのは、いつもとは別人のような強い瞳。
「謝って欲しくない。今までの私たちを否定することになる」
今までの自分たちは嘘か? そう問われ自然とここまでの軌跡が頭を走る。
必死に戦ってきた。イリアにたくさんの軌跡を残して、人々と絆を繋ぎ、イリア連合からも評価してもらえた。否定なんか、したくない。
「先頭を走ってきたシャニーを信じて、ここまで来た。盲目についてきたわけじゃない」
「そうッスよ! これは十八部隊の問題ッス!」
やり場のない怒りを払うように、レンに続いたミリアが振り下ろした両拳で思い切り空を裂いた。それだけでは収まらないのか、傍にあった道具入れを、足が天を向く勢いで蹴り上げている。短気な奴だが、こんなに怒りをぶちまけるのは初めて見た。
彼女は入団してすぐから慕ってくれていた。あの怒りは、きっと左遷に対してだけではない。
「全く、バカ考えないでよね。今回はミリアに賛成だよ。あんたは悪くない」
ルシャナは肩を抱き込んで、しっかりしろと何度も揺すってくる。
お前は悪くない────そう言ってもらえることが、どれだけ傷ついた心を癒すだろうか。
必死に堪えて前を向こうとしていたが、どうしてもダメだった。腹がびくっと引きつったかと思うと、喉が震えて声が漏れてしまう。崩れる顔を隠してうつむくと、ぽろぽろと悔しさが玉となって零れ落ちていった。
「へへっ……あたしの誕生日だったんだよ……昨日。とんだサプライズだよ……」
とんでもない辞令を、おまけにたった一枚の紙切れで。
一度は前を向いたつもりだった。でも、自分の手から全てを奪われた気がして、しばらく涙をすすり嗚咽を堪えるしかできなかった。
リキアで手柄を残せとアルマは言ったが、いったいリキアで何をすればいいのか、さっぱり見当がつかない。
「せっかくケーキ買って待ってたのに、帰ってこないから!」
ミリアの言葉に、涙に濡れていた心が少しだけ救われた気がする。仲間たちは忘れていなかった。皆に祝ってもらいながらケーキを頬張っていられたら、どれだけ幸せだっただろう。
湧きあがるのは、申し訳ない気持ちばかり。
「ありがとう。だって……みんなにどうやって言えばいいか、分からなくてさ」
最初から、昨日のうちからこうして素直に言えば良かった。結局、よけいな心配をかけただけ。ロイやディークのように、逆境でも仲間を鼓舞する一言を放ち、どんどん切り拓いて行ける人に憧れる。
「あんたはいつもこうだ。大して強くも無いのに、リーダーだからって勝手に独りで背負おうとしちゃってさ」
お前は違う────ルシャナにそうはっきり言われてしまった。彼女は両手を広げながら続けた。「ハッ、人事が怖くて叙任騎士なんてやってられないでしょ」
豪胆に笑うルシャナは、啖呵を切った勢いのままバンバン肩を叩いてくる。
「あんたが気負うことじゃないよ。少なくとも、私はあんたのそんな顔は見たくない」
「ん、らしくない」
ルシャナにレンが続き、ミリアも何度も頷いている。
憧れの人たちみたいな強さはない。けれど、信じてくれる仲間たちを裏切れない。彼らはもう前を向いている。自分より遥かに覚悟を決めている気がした。
(そうだ。こんな顔してちゃダメだよね。イリアに必要なことなんだ)
仲間に勇気づけられて、シャニーははっと我に返っていた。前を向かなければ、なにも見えてこない。それを今まで学んできたはずだ。
外の世界を見ることだって、大事なはず。そう自身に言い聞かせ、シャニーはもう一度顔を上げて笑って見せた。
「へへっ、あたしらしくなかったね。ありがと、みんな」
凍りついた場に、ようやく少しだけ明るさが戻った気がしたが、それは束の間のこと。
やはり、みんな不安な顔のまま。無理もないかもしれない。ただでさえ左遷という現実が突き刺さり、見習い修行で赴いたルシャナ以外は、リキアを知らないのだ。
それでも、ミリアとレンの間に入って二人の肩を抱きこんだ。一度前を向くと決めたら、もう後は進んでいくだけだ。
「心配ないって! 少し遠回りだけど、イリアのために必要なことだしね! ほら、笑って、笑って」
精いっぱい明るい声を出してみたが、沈んだ場に少しは新しい風を吹き込めただろうか。
そのまま壁を指さした。そこには、つい先週決めて飾ったスローガンが貼ってある。
────笑って、前向いて、未来を切り拓こう!
十八部隊は皆で守り、皆で行く先を決める。自分一人で決めてはいけない。一緒に前を向けば、きっとなにか見える。仲間たちに思い出させてもらった。
「今回は三月のときみたいにはいかないんスかね」
やはり皆もまだ諦めがつかないようだ。部隊の解体を阻止したように、今回も……そう言ってくれたミリアに、静かに首を振った。
「アルマに止められちゃったんだ。思うツボだから短気を起こすなって」
あのとき、アルマが来てくれなかったらどうなっていたかと思うと震えが来た。あのまま打ち捨てられた城の端で、思考を停止したまま凍りついていたか、激情に駆られて団長の下へ刃を掲げて飛び出して、今頃天馬騎士でなくなっていた……いずれにしても、この場にはいなかったに違いない。
「あのクソババ、まだ私たちに恨みでもあんのかね。マジでムカつく!」
しゅんとするミリアを跳ね飛ばす勢いで、ルシャナが火を噴いている。
部隊長でなければ、そうだそうだと相槌を打ちたいところ。受けた屈辱は今もくっきりと脳裏に焼き付いていた。でも、今はそんなことより大事なことがあるはず。とにかく、前を向かなければ。
「身分剥奪になったら……みんなを裏切ることになるからさ。リキアで活躍して、ぎゃふんと言わせてやろうよ!」
屈したつもりなどない。
必ずここに返ってきて、背負った信との約束を必ず果たす。だから今は、できることを果たそうと決めただけだ。
まっすぐ前を見据えて、仲間たちをぐるっと見つめる。
真っ先にうなずいたのはルシャナだった。ふうっと大きく息を吐きだして気持ちを切り替えたのかと思ったが、再び口を尖らせている。
「アルマって本気で副団長になったんでしょ? アイツ、やっぱクソババの腰巾着なの? 人事権もってるよね、アイツ」
アルマを疑っているのだろうか。ルシャナの顔に浮かぶ怒りの矛先が、アルマに向いている気がした。
「アルマは……最善を尽くしてくれた。アルマが動いてくれなかったら、あたしたち、西方三島だったんだ」
西方……それを教えた途端、ルシャナの目がぎょっとして、すぐに困惑へと変わった視線が返ってきた。
「アルマを信じるよ、あたし。時を見て戻してくれるって」
自分の立場を危険に晒してまで守ってくれた親友を裏切るわけにはいかない。彼女のためにも、なにも分からないからと踏み込まずに泣いていられない。
死にかけていた青の瞳に再び焔が宿る。
(まだ……後悔するときじゃなかったよ。やれるだけやってからすればいい)
アルマは手柄を残せと言った。未だに、リキアで何ができるのかは分からないまま。
だけど、歩きながら考えればいい。決まったのなら、前を向いて、力の限り飛んでいくだけ。そう決めた。
「だからほら、前を向いて笑って、まずは一歩踏み出そうよ!」
目の前のやれることを一つずつ、小さなことを一つずつ。十八部隊が積み重ねてきたことを、リキアでもやるだけ。
ばっと手を突き上げ、一歩踏み出した顔に降り注ぐ陽が眩しい。 なんと爽やかな朝だろう。
「じゃあまずはケーキで誕生日をお祝いするッス!」
そう音頭を取るミリアに手を取られ、シャニーは出口へと向かう。
ひとまず、みんな前を向いてくれたのだろうか。まだ朝だと言うのに、なんだか一日分の仕事が終わったかのようにほっとした。
「はー、気合入れたらお腹空いちゃったよ~」
朝っぱらから頭を使ったし、セチの力も使って、もうお腹ペコペコだ。
朝からケーキとは何て贅沢と、ミリアやレンに手を引かれるまま歩いていこうとするとルシャナに呼び止められた。
「シャニー、全部あんたが背負う必要はないんだよ。一緒に頑張っていこうよ」
「うん! みんなで見つけていこう。リキアでできること!」
今回も仲間の温もりに助けられた。仲間がいるから、何度折られても立ち上がれる。
親指を立て、白い歯映える顔に弾けたのは、透き通る春風のような爽やかさだった。