懐いていた幼女をさらわれて助けに行かないわけがない   作:みそすうぷ

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4話

 今朝は街灯消しの当番なので、朝が早い。

 まだ暗いうちから街を回らなくてはならない。

 俺の担当は三つにわけられた地区のうちの最南だ。

 

 身支度を済ませると、コートについた大きなポケットにベーグルとオレンジを突っ込んで、部屋を出た。

 俺の部屋がある二階には個室が三部屋。一つは物置になっていて、もう一つは二つ歳上のハンスが使っていたもので今は空室だ。

 

 坂に造られた縦長の建物なので、三階建だが大きくはない。階段を降りて外に出ると、一階に入るためのドアを通り過ぎて坂を下っていく。一階にはキッチンやトイレ、風呂など必要最低限のものが備えられている。

 

 冬の早朝なので肌寒い。俺は黒いコートのボタンを上まで閉めた。

 眼下に広がるのは主に石造りの家屋で、市場の露店や船着場の建物は木で作られているものが多い。

 そこでは市場の用意をする人や、港に漁に向かう漁師がちらほら見えた。

 まず一つ目。宿舎から歩いて数分もしないところにある街灯だ。俺は立てかけられていた長い鉄製の棒の先を火に当てる。

 棒の先には白い鉱石がはめ込んであり、火を吸収する。水をかけたときとは違い、パキキと音を立てて火は消えた。

 あとは同じ作業だ。一時間半くらいかけて、街を回る。これには街の警備をする目的もある。

 悪魔が訪れた形跡はないか、人が襲われた形跡はないか、街の隅々まで目を凝らす。

 

 最後の街灯を消し終えたとき、俺は憂鬱だった。その街灯は、エミリーがさらわれた場所の真ん前にあるからだ。

 他の建物と大して違いもない石造りの民家。しかし、よく見るとドアにはエミリーの血が飛び散った跡がある。

 後から聞いた話だが、この家にはもう何年も誰も住んでいないらしい。俺はドアを撫でる。

 クリスマスのあと何回か俺はここを訪れていた。しかし、他のサンタが調べた以上のことはわからなかった。

 悪魔は時折り、扉酔わせという力を使う。空間的に離れた場所にある扉と、自分の目の前にある扉を繋ぎ突然現れる。エミリーのときもそうだった。

 わからないことがある。

 俺は悪魔がナイフを扱うところを見ていないのだ。

 いつのまにかエミリーは刺されていたし、俺は刺される前に気を失っている。

 そもそもサンタとはいえ俺はまだ十八になっていないので、悪魔に食われていてもおかしくはないのだ。しかし食べられることもさらわれることもなく、俺は生き延びた。

 俺には一つの考えがあった。

 ひょっとしたら、ナイフを刺したのは悪魔ではないのではないか。確かにあのとき悪魔は現場にいたが、別の何かが俺たちを狙ったということだ。

 

 

 宿に帰ると、次の街に向かったはずのハンスがいた。

「何かあったのか?」

 俺がそう尋ねると、ハンスは首を振った。

「何もないよ。ただ戻りたくなったのさ」

 俺は首を傾げた。

「ますます意味がわからない。どういうことだ?」

「それが俺の人生だからさ。これ以上危険な任務に行って死ぬ前に、嫁を見つけておこうと思ってな」

 

 俺はピンときた。

「そういうことなら、良い相手がいる。紹介するよ」

「ありがたいね」

「早速行こう。善は急げだ」

 そう言って俺たちは宿を出た。俺はある理由で涙を堪えていた。

 

 

 俺たちは鍛冶屋にきていた。鉄の扉をノックすると、顔見知りの親父が顔を出した。

「おお、ロディ。あれ、ハンスは街を出たんじゃなかったのか?」

「親父さん、娘さんを紹介してくれますか? どうも今年はオレンジの出来が悪いらしくてね」

 それが合図だった。

 親父は青ざめて、部屋の中に案内した。

 俺は鍛冶屋の大きな炉の前にハンスを連れてくる。

「あれ、娘さんは?」

「この中だよ、ハンス」

「そうか、なら挨拶しないとな」

 

 俺はハンスが炉の中に入ると、すぐさま扉と鍵を閉めた。

「親父さん!油蛙を!」

 それを聞いた親父が真っ赤な生きた油蛙を、炉の屋根の上から放り込む。

「ロディ?!」

 俺はハンスの声を無視して、扉についた覗き穴から杖で火を放つ。

 油蛙は火に飛びつき、口に入れる。

 すると、炉の中は大きな音を立てて爆発し、燃え始めた。

「下手な演技だったな」

 

 親父さんが俺に残念そうな顔で言う。

「全くです」

 

 俺は炉の中で絶叫するやつに言う。

「ハンスは女だよ。彼女は男になりたがっていたが、恋愛対象は男だ」

 

 ハンスは悪魔に取り憑かれていた。

 

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