F.S.S.〜ファンタジー.ショート.ストーリー.〜   作:Jakki

3 / 4
 とある兄弟への依頼の続編です。ではどうぞ。


幻想世界小噺 とある兄弟への依頼➁

 「………。大丈夫かなぁ…。ハイド。」

 

 ギルド内に併設されている酒場でくすんだ金髪の頭を抱えながら呟いていた青年の声はしかし、騒がしい酒場の中では掻き消され、誰も反応することがなかった。

 

 「流石にこれ以上等級下げられたらお金に困ることになるし、勘弁してほしいなぁ。………無理だろうなぁ。ハイドだし。」

 

 しかしそんなこと気にすることなくブツブツと独り言をつぶやきているこの青年の名前は「ジキル」。このギルドでの等級は中等1級。降格される前のハイドの等級のさらに上の冒険者だった。そこそこ堅実であると有名な冒険者であるが、今の姿はこれからのことに不安を覚えている一人の青年だった。

 

 「最悪僕だけで、いや無理だよなぁ。ハイドならまだしも、僕術師よりだから、多少近距離対応できても、押し潰されるし。う~ん。どうするかな~。」

 

 と、ため息を付きながら、傍らにある金属製の鳥の頭のような意匠のついた杖に手を伸ばす。よく見ればただの杖でなく、全体の半分以上が金属製のその杖はたしかに殴る、突くといった攻撃でもダメージになり得るだろう。しかしそれを振るうものが例えば筋骨隆々な戦士ならもっと莫大な効果を生むだろうが。

 

 「…近距離するにしたってこの腕じゃあなぁ。」

 

 と言いながら自分の腕を軽く掴む。その腕は確かに、青年の学士のような顔つきには意外なほど、程々に鍛えられてはいるが、確かに比較的重い金属製の棒キレを振るうには心許ないように感じる。

 

 「…まあ、一応僕の等級で受けれる依頼をハイドとやればいいか。等級下がっても腕は下がらないし。ただハイドの等級が上がりづらくなるんだよなぁ…。」

 

 そう。それがジキルを悩ませいる問題だ。上の等級のものの依頼に下の等級のものがついていくと、上の等級のものが手を貸したから達成できたと思われる風潮がある。ジキルからすれば、自分の最後の肉親で弟であるハイドが不当な評価を受けてほしくない。異様なほど気が荒く、問題を起こすと言っても、放っておけないのだ。これを言うと甘チャンと言われるが。

 

 うんうんと悩んでいるとふと、酒場の雰囲気が変わった。来たかと思い、カウンター横の階段に目をやると、雰囲気の変わった原因が階段をゆっくり降りてきているところだった。自分と同じ、くすんだ金髪。おろしてある自分と違い、髪をかきあげ、顔をよく見えるようにしている。その顔はやや不機嫌そうに見える。その顔を見て、なんとなく理由がわかったジキルは頭痛をこらえるように頭に手をやり、反対の手を彼に向かって振り、声を掛ける。

 

 「ハイド。こっちこっち。」

 

 不機嫌そうな顔をした男。ジキルの弟ハイドがこちらを見、そのままこちらの席に向かって歩いてくる。カツカツと彼の靴音が近づくたび、他の客が目を合わせないように逸らしたり、道を妨げないように椅子を引き、ぶつからないようにしている。まるで因縁をつけられたら溜まったものでないと言うように。

 

 ドカッとジキルの座っていたテーブルの空いていた席に座ったのを確認して、酒場に徐々にざわめきが戻ってきたのを小さく舌打ちするハイド。それを無視しつつジキルが話しかける。

 

 「おつかれハイド。」

 「…………。おう。」

 

 確定。まじで機嫌が悪い。変なことを言おうものなら即座に拳が飛んでくるであろう機嫌の悪さだ。と心のなかで認識しつつ、確認のため話しかける。

 

 「…で、どうだった?やっぱり降格?」

 

 ピクリと。ハイドの片方の眉が動いた。それからため息を付き、言いにくそうに話し始めた。

 

 「……。2等級降格。報酬3分の2カット。月イチの口頭弁論。」 

 「………。」

  

 絶句してしまった。今までも降格はあったが、ここまで下がるのは聞いたことない。そして一番驚いたのが。

 

 「報酬3分の2カット…?3分の2になるんじゃなくて?」

 「3分の2カット。たとえ俺とお前で割ってもそこから俺の取り分から引かれる。」

 「……そうか…。」

 

 頭を抱えたくなった。報酬3分の2カット?それだと依頼のランクにもよるが、かなりの痛手だ。食費に装備の整備費、破損した場合の装備の購入費、薬品の補充、二人で借りてる部屋。それぞれの額を考えてもかなり厳しい。

 

 「……………。」

 

 ハイドが黙っている。いつもはこういうときはヘラヘラしているハイドが黙っている。これは相当まずい。

 

 「…まあ。なっちまったもんはしゃあねえ。」

 

 と思ったら急に切り替えるように声色を変えてハイドが言った。

 

 「とにかく依頼を受けてとっとと等級戻して、減額処分戻してもらおうぜ。」

 「…吹っ切れてるね?」

 

 そう言うとハイドは鼻を鳴らす。

 

 「しょーがねぇだろ?このままウジウジ悩んでも金が降りてくるわけでもねぇ。俺の処分が覆るわけでもねぇ。だったら動いたほうがいいだろが。」

 

 たしかにそうだ。3分の2カットはたしかに痛いが、それに絶望してても何も始まらない。たしかにそうだ。

 

 だが。

 

 「…カッコつけてるとこ悪いけど、原因はハイド。君だからね?わかってる?」

 「何言ってんのかわかんねえなぁ?」

 「こ、こいつ……!?」

  

 さては反省してないな…!?

 

 

 

 

 

 

 




 ここまで読んで頂きありがとうございます。宜しければ感想よろしくお願いします。
 ではでは。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。