F.S.S.〜ファンタジー.ショート.ストーリー.〜 作:Jakki
「…つー訳で、ジキルちゃんよ?なんか中等1級の依頼で良さそうなの、ない?」
ヘラヘラとしたいつもの調子に戻ったハイドは、そう言い椅子に座りなおす。
「良さそうなのって、例えば?」
「簡単ですぐ終わって、それで報酬が高いやつ。」
「あるわけ無いじゃん。そんな依頼。」
あるんだったら他の冒険者に取られてるし。と愚痴るジキル。
「そもそも等級が下がったんなら、受ける依頼が減るんじゃない?たしかに僕の等級の依頼を一緒にやることはできるけど。」
それはあまりやりたくない。とジキルは言う。下の等級のものが等級を上げられなくて困ることが多いのだ。
「等級なんざどーでもいいんだよ。カネのほうが百倍重要だね。」
いや冒険者なら確かに報酬は大事だけども、等級も同じくらい大事なのだが。
「…まあ取り敢えず、依頼が欲しいならクエストボード見れば良いか。」
一先ず今日はもう心労でやる気が起きないから、軽目の依頼でも。とジキルがクエストボードのところに行こうとすると。
「待った。俺が行く。」
そう待ったをかけてきたのはハイドだった。
「え、何?」
「ジキルちゃんよ〜?ど〜せ疲れたからって簡単で低報酬な依頼持ってくる気だろ?」
何故バレたんだ…!?
「いや、色々お金掛かると言って、まだ多少蓄えはあるし、心労でやる気が起きないし、何よりハイドだって口頭弁論で疲れたでしょ?今日のところは簡単なヤツやろうよ。」
ハイドだって簡単なやつがいいって言ったしね。とジキルは言う。
「バ〜カ。簡単は簡単でも、報酬が低いなら意味がねぇの。簡単で報酬が高いからやり甲斐があるんだろ〜が。てかオマエに任せてたら薬草採取とか下水道のバカデカネズミとかビックローチとかスライム駆除とかしか持ってこねぇだろ。」
良いじゃないだって楽だし。依頼があるからには立派な仕事じゃん。たしかに安いけど。
「つ~訳で、オマエは座ってろ。安心しろよ。いい感じの依頼見つけてくっからよ。」
「あっちょっと!………不安だ…。」
〜クエストボード〜
「よ~し。じゃ、なんかいい依頼はっ、と。」
え〜何々?橋を占拠しているトロールの討伐。狩りごたえはあって報酬が良いけどあいつらくせえからパス。他は?村の近くにある洞穴に住み着いたゴブリンの討伐。雑魚のくせに数多いし報酬が低い。さらにあいつらくせぇからこれもパス。次。え〜病気の母のために薬を作ってあげたいので薬草を取ってきてください。詳細はこちらまでお越しください。お願いします?ほ~ん感動的だな。次。これは?新薬の効能を知りたいので協力お願いします。嫌だ。次。
「ん~。あんまいいのねぇな。」
「どんな依頼をお求めでしょうか?」
依頼を見ていると横から、よく知っている、何ならさっきまでドヤされてたやつの声が聞こえた。
「よ~ヘレンちゃん。さっきぶり〜。」
「そうですね。それでどういったご依頼をお探しでしょうか?」
完全に職員としての顔になってやがる。つまんね~な。
「簡単で報酬が高い依頼を探してんの。」
つまらなさそうに鼻を鳴らしながら依頼の要点を言う。だがギルドの職員として働いてるなら、いい感じの依頼を見繕ってくれそうだと多少期待しながら返答を待つ。
「そうですか。でしたら~。」
そう言いつつボード眺めながら、幾つかの依頼書に手を伸ばす。そうして手に取ったいくつかの依頼書を見、その中の幾つかをこちらに見せてくる。
「これらの依頼はどうでしょうか。」
「お?どんな依頼だ?」
え〜何々?橋を占拠するトロールの討伐。…村の近くにある洞穴に住み着いたゴブリンの討伐。……病気の母のために薬草を…って。
(これ全部さっきのやつじゃねえか!?)
「どうでしょうか?」
「…あ~。もっとこう、簡単なやつ、無い?」
「簡単なものですか?それでしたら。」
と言いつつ次に見せてきたのは…。
「…新薬の効能検査…。」
「はい。見たところ体を動かすわけではないようですし、簡単な部類かと。」
いや「簡単な部類かと」じゃねえよ。明らかに怪しさ満点のやつを所属冒険者に勧めんな。
「…もっとこう、サクサクやれてなおかつ一年は遊んで暮らせるようなやつとk「そのような依頼はありません。」…。」
めちゃくちゃ食い気味に否定してきやがった…!?
「…なんでよりにもよってこんな感じのしか残って無いんだよ。」
「ほとんどの依頼は他の冒険者の方々が受けて行きました。現在残っているのはこれらの依頼か、もっときつくて安い報酬の依頼か、現在の貴方の等級では受けられないような依頼しかありません。」
「俺は元々中等2級だぜ?実力はあるからそのくらいの依頼をよこせよ。」
「貴方は例の件の罰則として降級されていますから。ギルドの原則として、等級以上の依頼を回すことはできません。」
困ったような笑顔(細めた目からかすかに見える目が笑ってないから絶対演技だ。間違いない。)を浮かべながらそう言うヘレンとそのヘレンをイラつき半分面倒くささ半分といった顔で睨むハイドの二人を見て、絶対に関わろうとしない周りの冒険者。そしてその様子を離れたところから見て頭を抱えていたジキルはやがて溜息を付きながらその二人の元へ向かうのだった。
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