佐藤和真“英雄化”計画【未完】   作:大淵 蒼夜

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この素晴らしい世界に祝福を!の時系列がよくわかりません……。ファンブックにはカズマは春頃?に来たことになっています。ところが、このファンの世界やファンブックではキャベツは秋に来るとなっているので、カズマは秋ごろに異世界に来たことになります。もし、春頃に来たのなら作者が採用している先代転生者の日記に基づいた〈異世界生活〇〇日目〉だと、一巻で360日ぶんの話を書かなければならず、とてつもなくオリジナル展開が含まれることに気がつきました…。よって、『このファン』時空を採用し、カズマは秋頃に来たことにします。
あと、今回は最初の方は原文から改造したのではないので、キャラが迷走してます。
 場面が切り替わるところに、《このすば!》といれてみたのですが、必要でしょうか?
 そして、このすばの八巻を読んでないと把握できない内容が含まれます。
 流れがおかしいところがありますが御留意ください。


異世界生活二日目

 

 

 

 

「はぁ……。異世界生活ってラノベやゲームみたいに上手くいかないもんだな………」

 

 俺は宿屋で格安の朝食を食べながら、昨日《きのう》のカエル討伐を終えてからのことを思い出していた。

 

 

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KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

こ の す ば/KONO SUBA

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

 

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 アクアを公共浴場に送り出した俺は、冒険者ギルトのカウンターへ行き、クエストの報告を行っていた。

 

「えっと……受付のお姉さん。クエストの討伐報告に来たんですけど…」

 

「えっ!! もう、あのクエストを達成されたんですか!!」

 

 そんなに驚くことなのか。日本からの転生者の相手をしている人たちだからもう慣れているものだと思っていたんだが。

 

「ああ。いえ、達成はしてないんですけど、ジャイアントトードを3匹討伐したんで……」

 

「なるほど。わかりました。では、冒険者カードを見せてください」

 

 冒険者カード? 疑問符を浮かべながら、お姉さんに自分のカードとアクアから預かったカードを見せる。

 

「あぁ。そういえばサトウさんはクエストの報告はこれが始めてでしたね。討伐したモンスターの種類(しゅるい)討伐数(とうばつすう)は冒険者カードに記録されていくんですよ」

 

 なるほど。便利なことだ。科学の代わりに魔法が発達した結果なんだろうが、この世界の技術もあながちバカには出来ない。

 

 俺から受け取ったアクアと俺のカードをカウンターに置いてある箱の形をした魔道具(まどうぐ)を操作して、それだけでチェックを終えていた。

 

「はい、確かに。ジャイアントトードを3匹討伐したことを確認しました。」

 

 お姉さんから、受け取ったカードを改めて見ると、そこには冒険者レベル1と記されている。

 

 …………レベルが上がってねぇ。

 

 

 わずかに経験値は入ってるようだが、それ以外の変化は全くない。

 こういう所は似て欲しくはないが、本当にゲームみたいだ。

 

 まぁ、唯一の救いはスキルポイントの欄には22とそれなりの数値が記載されていることだろうか。

 

「それで、サトウさん。ジャイアントトードの買い取りですが、移送サービスを利用されるということでよろしいでしょうか?」

 

 そう、モンスターの討伐報酬というのは基本的にモンスターの買い取りによるものだ。

 今回、俺たちはギルドにカエルの肉を売って報酬を得た。

 しかし、あんな巨大なカエルは俺たち二人じゃ運べない。そこで、ギルドの移送サービスを利用することにした。

 

「しかし、サトウさん。凄いですね……。あのクエストは本来なら四人から六人のパーティーで行うものなんですよ。」

 

「では、ジャイアントトード3匹の討伐報酬から移送費を差し引いた金額として一万五千エリスとなります。ご確認くださいね」

 

 それにしても、あの巨大カエル3匹の討伐で一万五千か。

 だいたい、一匹辺り移送費込みで五千円程度での買い取り。

 そして、さっきのお姉さんの話ならこのクエストは四から六人のパーティーを組んで行うもの様だ。

 なので、普通の冒険者の相場だと、今日1日命懸けで戦い、カエル3匹の報酬、一万五千円。五人パーティーだったとして、一人当たりの取り分が三千円。

 

 

 

 .......割に合わねぇー。

 

 

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 昨日の回想をしながら朝食を食べ終えた俺は、財布を見て、もう一度ため息を着いた。

 

「はぁ。ほんとゲームとかラノベとかの世界って、冒険者に都合良くできてたんだなぁ……」

 

 周りを見渡すと、駆け出しから半分抜け出した冒険者たちが俺よりもちょっと格の高い朝飯を食べていた。

 

 俺とアクアみたいな駆け出し冒険者は一人もいない。

 基本、駆け出しの冒険者は貧乏だ。

 まず、冒険者は基本的に収入が不安定だ。

 だから、毎日宿屋で部屋をとって暮らすなんてことはあり得ない。

 

 本来の駆け出し冒険者は、大勢で金を出しあって雑魚寝(ざこね)か、馬小屋で寝るのが普通らしい。だから、俺たちのような駆け出し冒険者は珍しいようだ……。

 

 その点では他の駆け出し冒険者よりはまだましな生活を送っているかもしれない。

 そして、異世界の人たちから見れば俺たちもチート持ちの日本からの異世界転生者と変わらないのかもな……。

 まぁ、資金難には代わりない。

 

 まず、昨日のカエル討伐の報酬は3匹で一万五千エリス。

 次に俺たちが泊まった宿は一室1泊七千エリス。

 これで、貯金なんてない俺たちは残り五千エリス程度しか残金が残ってない。

 かなりの痛手だが、これでも格安ってのは驚きだ。

 

 資金難に関してはライダーの力を使えば解決はできる。できるが、経験値が入らないという最悪のデメリットが存在している。

 

 けど、変身しないと使える魔法が制限されるし、セフィロトの宝珠を由来とする固有魔法も使えなくなる。

 

 さらに、変身しなければ俺の身体能力は常人とあまり変わらない。つまり、威力の高い魔法が使える固定砲台みたいになってしまうのだ。

 

「はぁ、どうすっかなー」

 

 昨日知ったことだが、街の近くの森に住んでいたモンスターは、とっくの昔に軒並み駆除されたらしい。

 門番もいるが、(あり)の子一匹(いっぴき)出入りさせないなんて警備をずっと続けるより、それ程大きな森でないならとっとと人に害をなすモンスターを駆除すればいい話だ。

 

 ゲームみたいな素人に毛が生えた程度の冒険者でも簡単に見分けが付く様な薬草や(きのこ)だのを、森に入って半日ほど採取しただけで、その日のホテル代と三食分の金が稼げる。

 

 そんな都合の良い仕事なんて、現実にはあるわけないってか。

 

 考えてみれば、裕福な日本ですらホテル暮らしのフリーターなんていないからな。

 最低賃金や労働基準法なんてない異世界だ。

 最低限の文化的な生活なんて保証してくれるはずもない。

 

 まぁ、ここの女将の話では強力な武器やステータスを持った駆け出しが何人かは誕生していっているようだが。

 

 絶対に俺たち同様、日本からの転生者だと思うけどな。

 

 駆け出しを乗り越えた中堅の冒険者なら、もう少しよい宿に泊まっているらしいが……

 

『異世界生活とやらも、そう上手くはいかんようだな……』

 

 そう言ってくるのはマギアドラゴン。

 

 どういうわけかはわからないが、こいつは精神世界(アンダーワールド)内部から直接話しかけられるようになったらしい……

 

 また、オーレギオン(アイツ)が手を加えたのだろうか。

 

 

 

 昨日、俺たちが借りることができたのは時間帯や資金の関係で一室のみだった。

 

 この女神が

 

「女神の私をソファーなんかで寝かせて恥ずかしくないの!? 私はベットじゃないと嫌よ!!」

 

 と、駄々をこねたので仕方なく、俺がソファーで寝て、アクアの奴はベットで寝た。

 

 そして、案の定……朝になって俺が起きても、コイツは気持ち良さそうに“ぐーすか”寝たままだった。

 

 何回か起こそうとはしたが、寝言を言うだけで起きる様子を見せない。

 

 仕方がないので俺だけ身支度を済ませて下の食堂で朝飯を食べることにする。

 

 そうして朝食を食べながら、食べ終えた後もアクアを待っていたのだか、いっこうに降りてこない。

 

 仕方がないので見に行くことにした。食堂から客室がある二階に行くにはまず廊下に出て、階段を上る必要がある。

 

 経年劣化でギシギシとなる廊下や階段を進んで上りなから、“この宿も長いんだなー”とか、色んな事を考えていると、二回の廊下に出た。

 

 階段から見て廊下の右側の一番端から入る201号室。それが俺たちの借りた部屋だ。

 

 鍵を使って扉を明け、玄関から見て右側にあるシングルのベットを覗くとアクアの奴は……まだ寝ていた。

 

「おい、アクア!! 起きろ! 朝だぞー」

 

「ったく! こいつ、気持ち良さそうに寝やがって……」

 

 色々と呼び掛けてみるが、いっこうに起きないのでアクアが寝ている布団を引っ剥がし、無理矢理起こすことにした。

 

 

 布団を剥がされるのに巻き込まれたアクアはベットから落下したが、その衝撃で目は覚めたようだった。

 

「ちょっと何すんのよ!!」

 

「もう、朝御飯の時間過ぎてんだよ!!」

「女将さんを待たせてるからさっさと身支度して降りてこい!」

 

「ちょ、ちょっと待ってカズマ!!」

 

 俺を止めるアクアを無視して食堂に戻り、女将さんにアクアが目覚めたことを伝えて、朝食の準備をしてもらうことにする。

 

 そうして、少し待っていると駆ける音がすると共に、アクアが勢いよく食堂に入ってきた。

 

「置いてくなんてひどいじゃない!!」

 

「いや、お前が朝食の時間になっても降りてこないのが悪いんだろ…」

 

 

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「へぇ、なかなか行けるわね、この定食!」

 

 そういいながら、定食を簡単に済ませたアクアと今日は何をするか話し合うことにした。

 

「おい、アクア。今日も昨日のクエストの続きだ」

 

「え、それって……カエル狩りってこと?」

 

「そうだよ。」

 

 嫌そうな顔で返事をしたアクアに向かって答える。

 

「えぇぇぇーー、 違うのにしましょうよ」

 

「仕方がないだろ……。昨日、討伐目標数に到達できなかったんだから」

 

「嫌よ、カエルはもう嫌!! また、私が食べられるに決まってるじゃない!!」

 

 いや、昨日のはお前が考えなしに突っ込んで行ったからだろ……

 

「とにかく、お前がなんと言おうと今日はジャイアントトードの討伐だ!!」

 

 そういった俺は泣きじゃくりながら拒否をするアクアを無理やり宿から引っ張り出し…

 

 アクセルの街を抜けて、外側の平原地帯へと向かった……

 

 

 

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 アクセルの外側に広がる平原地帯。昨日は黄昏時に来たから空は夕焼けだったが、今日は雲一つ無い快晴だ。

 

 今、視認できる範囲にいるジャイアントトードは二匹。一匹は遠くにいるがこちらに気付いて向かっている。もう一匹のジャイアントトードも逆方向にいるが、こっちに向かってきている。

 

 懐から“ドライバーオンマギアリング”と“オソールマギアリング”を取り出すと、マギアドラゴンが話しかけてきた。

 

『変身はせんのか?』

 

「ああ、昨日は変身してカエルと戦ったけど、経験値が入らなかったからな……」

 

 そういった俺は“ドライバーオンマギアリング”を腰にかざし、“マギアドライバー”を出現させる。

 

「おい、アクア。今日は変身せずに魔法だけでアイツらと戦うことにするな。近い方からまず倒すから、お前はここで待っててくれ。あ、あと、眩しいから目を閉じていてくれよ…」

 

 ハンドオーサーを右側に傾け、

 

〔ルパッチマジック タッチ ゴー!〕

 

 エンチャンターから流れる音に反応したアクアが、カエルを見るのを止めて話しかけてきた。

 

「ねぇ、カズマ。聞こうと思ったんだけどその音なんなの? 」

 

「仕様だ。気にするな。」

 

 “オソールマギアリング”をかざす。

 

〔ルパッチ《オソール プリーズ》〕

 

 右手の方向に黄色の魔法陣が出現。

 その魔法陣の中心がバチバチと螺旋状に放電し、球体が形成されていく。

 

 1、2秒で完成した中心部が蒼く外側が黄色い雷の球体は、さっきよりも激しく放電しながら、回転している。

 

 カエルに狙いを定めて、球体の回転を止める。

 

 それと同時に……

 

 落雷の様な轟音、眩しい閃光と共に、稲妻の砲撃がカエルに向かって放たれた。

 

 

 

 平原に一条の閃光が走り抜ける。

 目も眩む光を放つ閃光はそのままカエルに突き刺さり、カエルを木端微塵に消滅させた。

 

 

「ちょっと、カズマ!! あんなに眩しいなら一言ぐらい言っといてよ!」

 

 先程の閃光で目をやられたらしく、アクアが文句を言ってきた。

 

「いや、だから目を閉じてろっていったのに。 もうちょっとキチンと人の話聞けよ……。」

 

 ほんと、天界のヤツは人の話聞かねーな……

 

「おまえ、仮にも女神だろ……。もうちょっと女神らしいところを……」

 

 そう言ってる俺と向かってくるジャイアントトードをみて何らかの結論に至ったアクアは

 

「そうよ、女神がたかがカエルに黙って引き下がってどうするのよっ…………。カエル相手に引き下がったなんて知れたら、美しくも麗しいアクア様のなが廃るわ!! 見てなさいカズマ!! 」

 

 そう言いって遠くにいるジャイアントトードに向かって駆け出し、拳を前に突きだした。

 

「ゴッドレクイレム!!」

 

 拳を中心にピンクと金のオーラがアクアの前を覆うように展開していく。

 

「いや、レクイエムって、鎮魂歌だろ。それ絶対に対アンデット系の魔法じゃ……」

 

「ゴッドレクイレムとは女神の愛と悲しみの鎮魂か………ヒグッ」

 

 

 食われた。

 

 

「お、お前ぇぇぇぇえ!! 食われてんじゃねぇええ!!」

 

 俺は、アクアが身を挺して動きを封じたカエルにとどめを刺し何とか、三日以内にジャイアントトード五匹討伐のクエストを完了させた。

 

 

「うっ……うぐっ……ぐすっ……。生臭いよう……。生臭いよう」

 

 アクセルの町に向かう俺の後を粘液まみれのアクアがめそめそと泣きながら付いて来る。

 

「ねぇ、カズマ……。カエルの……体内って………臭いけどいい感じに温かいのよ」

 

「知るか!!」

 

 余計な知識を増やすんじゃねぇ。

 

「はぁ、どうするアクア。この時間帯だと公共浴場開いてないぞ…………」

 

「えぇぇぇぇーー。かじゅまさーん、なんどがじてよーー」

 

 

 はぁ、とりあえず《ウォーター》でカエルの粘液を洗い流して……

 

 

 

 ん?

 

 

 

「どうしたのよカズマ? 急に立ち止まったりして……」

 

「いや、ここからちょっと離れた場所で結構な魔力の流れがあった気がしてな……」

 

「ああ、そういえばそんな感じがするわね」

 

 

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「はい、確かに。ジャイアントトードを三日以内に五匹討伐クエストの完了を出し ました。ご苦労様でした」

 

 アクアの生臭さはどうなるかと思ったが、アクアの魔法と俺の魔法でなんとかなったので冒険者ギルドの受付に報告をして、規定の報酬を貰う。

 

 仕留めたカエルの内一体は《オソール》で消滅したが冒険者カードに討伐数は記録されているので問題はなかった。

 

 俺は改めて自分のカードを見ると、そこには冒険者レベルと記されている。 あのカエルは駆け出し冒険者にとってレベルを上げやすい部類のモンスターなのだそうだ

 

 今日は俺一人でカエルを二匹狩った訳だが、それだけで一気にレベルが3に上がった。

 

 低レベルな人間ほど成長が速いらしい。 カードに記されているステータスの数値が多少は上がっているが、あまり強くなったという実感は無い。

 

「…………しかし、本当にモンスターを倒すだけで、強くなるもんなんだなぁ・・・」

 

 

 カードにはスキルポイントと書かれていて、そこに25と表示されている。

 

 昨日から3、数値が上がっている。

 これを使えば、俺もスキルを覚えられるわけだ。

 

「ではジャイアントトード二匹の買い取りとクエストの報酬を合わせまして、 十一万エリスとなります。 ご確認くださいね」

 

 十一万か。

 

 あの巨大なカエルが、 移送費込みで五千円程での買い取り。

 

 そして、カエル五匹を倒して報酬が十万円

 

 五人パーティーだったとして、一人当たりの取り分が二万二千円。

 

 

・・・・・・割に合わねー。

 

 

 クエストが一日で済めば日当二万五千円。

 

 これだけ見れば一人にしてはいい稼ぎに思えるかもしれないが、命懸けの仕事にしては割に合っていない気がする。

 

 一応ほかのクエストにも目を通すと、そこに並んでいたクエストは......。

 

『森に悪影響を与えるエギルの木の伐採、報酬は出来高制(できだかせい)

 

『迷子になったペットのホワイトウルフを探して欲しい』

 

『息子に剣術を教えて欲しい〈ルーンナイトかソードマスターの方に限る。〉』

 

『魔法実験の練習台探してます〈強靱な体力か強い魔法抵抗力を必要とします〉』

 

『マンティコアとグリフォンの討伐』

 

『イシヤキイモが接近中のため進路の偵察』

 

『タワーオブパンプキンを筆頭とするカボチャの群れが接近中のため進路の偵察』

 

『畑のサンマの収穫の手伝い』

 

『街の郊外にある屋敷の墓掃除』

 

『共同墓地でのゾンビメーカー討伐』

 

『家出したお嬢様の捜索』

 

『泉の水質調査。土木工事の急な増加により、廃棄された土砂が湖に流れ込んでいるとの報告あり』

 

 

 うん。

 

 この世界で生きていくのは甘くない。

 

 冒険開始二日目だが、異世界生活よりも日本での生活の方が楽だと知った。

 

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「なあ。聞きたいんだがスキルの習得ってどうやるんだ?」

 

 午後、俺たちはギルドで遅めの昼食をとっていた。

 

 アクアはジャイアントトードの唐揚げを片手に手近な店員を捕まえて酒のおかわりを注文している。

 

 アクアがジョッキを片手にこちらに向き直ると、

 

「スキルの習得? そんなの、カードに出ている、現在習得可能なスキルってところから......。ああ、そういえばカズマさんの職業は冒険者だったわね。初期職業って言われてる冒険者は、 誰かにスキルを教えてもらう必要があるのよ。 まずは目で見て、そしてスキルの使用方法を教えてもらう。 そしたら、カードに習得可能スキルという項目が現れてるから、ポイントを使って必要なスキルを選べば習得完了よ」

 

「そして、スキルポイントってのはね………」

 

 頼んでもいないのに、スキルポイントの概要まで説明し出した。まぁ、分からないところもあったし、一応聞いておくか。

 

「職業に就いた時に貰える、スキルを習得するためのポイント よ。優秀(ゆうしゅう)な者ほど初期ポイントは多くて、このポイントで様々なスキルを習得するの。 例えば、 超優秀(ちょうゆうしゅう)な私なんかは、まず宴会(えんかい)芸スキルを全部習得し、 それからアークプリーストの魔法も全て習得したわ」

 

「……宴会芸スキルって何に使うものなんだ?」

 

 アクアは俺の質問を無視して先を続ける。

 

「スキルは、職業や個人によって習得できる種類が限られてくるわ。 」

 

「で、宴会芸スキルってのは何時どうやって使うものなんだ?」

 

「例えば水が苦手な人 ふつう は氷結や水属性のスキルを習得する際、普通の人よりも大量のポイントが必要だったり、 最悪、習得自体ができなかったり……………」

 

 宴会芸スキルについて聞いているのにいっこうに返事が帰ってこない。

 

「はぁ、もういいか……」

 

 上級職にも就けたが、〈冒険者〉を選んだのは初期職業だから全てのスキルを習得できるっていうメリットからだ。

 そのメリットを活かすためにもなるべく複数の職業のスキルを獲得したい。

 

「なあ、アクア。 お前なら便利なスキルたくさん持ってるんじゃないか? 何か、スキルを教えてくれよ。 習得にあまりポイントを使わないで、それでいてお得な感じの」

 

 俺の言葉に、アクアは水の入ったコップを握り、しばらく考え込む 。

 

「…………しょうがないわねー。本来なら、誰にでもホイホイと教えるようなスキルじゃないんだからね?」

 

 勿体(もったい)を付けるアクアだが、教えてもらう立場なのでここはじっと我慢だ。

 俺は神妙(しんみょう)に頷きながら、アクアがスキルを使う所を観察する。

 

「じゃあ、まずはこのコップを見ててね。この水の入ったコップを自分の頭の上に落ちな いように載せる。 ほら、やってみて?」

 

「いや、ちょっと待て。それ、なんのスキルなんだ? 宴会芸スキルじゃないよな?」

 

「え? 宴会芸スキルを教えてほしいんじゃないの? 」

 

「何でだよ! 〈アークプリースト〉のスキルを教えてくれって頼んだんだよ!!」

 

「ええーーーーー!?」

 

 

 なぜかショックを受けたらしいアクアが、しょぼんとしながらテーブルの上でどこからか取り出した種を指で弾いて転がしている。

 

 何を落ち込んでいるのかは知らないが、目立つから頭の上のコップを下ろして欲しい。

 

「あっはっは! 面白いねキミ! ねえ、キミ、有用なスキルが欲しいんだろ? 盗賊スキルなんてどうかな?(彼が、レギオン先輩たちが私たちに無断で進めてた『佐藤和真“英雄化”計画』の主役ですか………。)」

 

 それは、横からの突然の声。

 

 となりを見れば隣のテーブルには一人の女性がいた。

 

 俺に声をかけてきたのは革の鎧を着た、身軽な格好をした女の子。

 頬に小さな刀傷があり、ちょっとスレた感じだがサバサバとした明るい雰囲気の銀髪の美少女だ。

 

 俺より一つ二つ年下だろうか。そして、よくわからないが、若干ながら申し訳なさそうな顔をしている。

 

「えっと、盗賊スキル? どんなのがあるんでしょう?」

 

 俺の質問に、盗賊風の女の子は上機嫌で。

 

「よく聞いてくれました。盗賊スキルは使えるよ! (わな)の解除に敵感知(てきかんち)潜伏(せんぷく)窃盗(せっとう)。持ってるだけでお得なスキルが盛りだくさんだよ。 キミ、初期職業の冒険者なんだろ? 盗賊のスキルは習得にかかるポイントも少ないしお得だよ? どうだい? 今なら、クリ ムゾンビア一杯でいいよ?(申し訳ないですし、なるべく協力はしたいです)」

 

 安いな!

 

 と思ったが、よく考えればスキルを教えた所でこの子にはリスクなんてない。

 

 本気で俺が盗賊スキルを教えて欲しければ、そこらの他の盗賊に頼んでもいい訳だし。

 

「よし、お願いします! すんませーん、こっちの人に冷えたクリムゾンビアを一つ!」

 

「あ、あとスキルを教えるにはもう一人いるから、君の相方もつれてきてもらっていいかな?」

 

「あ、はい。わかりました」

 

 

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こ の す ば/KONO SUBA

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「まずは自己紹介(じこしょうかい)しとこうか。あたしはクリス。見ての通りの盗賊だよ。」

 

「俺はカズマって言います。クリスさん、よろしくお願いします」

 

「私の名前はアクア!! そう、アクシズ教団で崇められている水の女神、アクアよ!!」

 

「女神?」

 

「──を自称してる可哀想な子なんだ。たまにこう言ったことを口走ることがあるんだけど、そっとしておいてやって欲しい」

 

 首を絞めにくるアクアをあしらいながら、クリスに向かってそう答えた。

 

「女神? ま、まさかね……」

 

 

 冒険者ギルドの裏手の広場。

 

 俺とクリス、そしてアクアの三人は、人気()のない広場に立っていた。

 

「では、まずは《敵感知》と《潜伏》をいってみようか。罠の解除とかは、こんな街中に罠なんてないからまた今度ね。じぁあ………アクアさん、ちょっと向こう向いててくれる? 」

 

「えぇぇー………」

 

「おい、アクア。話がすまないから、早くしてくれ」

 

「はぁ、しょうがないわねー」

 

 アクアが、言われたとおりに反対を向く。

 

 すると、クリスはちょっと離れた所にあるタルの中へ入り、上半身だけを出す。

 そしてアクアの頭に、何を思ったのか石を投げつけ、そのままタルの中に身を隠した。

 ひょっとして、これが潜伏スキルだとか言う気だろうか。

 

「ねぇ、ちょっとなにするのよ!!」

 

 石をぶつけられたアクアが、怒りを(あらわ)にしながら、ぽつんと一つしかないタルへ歩いていく。

 

「敵感知......。敵感知……アクアさんの怒ってる気配をピリピリ感じるよ! ごめん!! アクアさん!! これはスキルを教えるために仕方なくやる必要があったんだよ!! 」

 

「そんなこと関係ないわ!! 謝って! 私に石をぶつけたことを謝ってよ!」

 

「ご、ごめん。アクアさん。後でお酒おごるから」

 

「本当? お酒だけじゃなくておつまみも忘れないでね」

 

……こ、これでほんとにスキルを覚えられるんだろうな……。

 

「さ、さて。それじゃあたしの一押しのスキル、窃盗をやってみようか。 これは、対象の持ち物を何でも一つ(うば)()るスキルだよ。相手がしっかり握っている武器だろうが、(ふところ)の奥にしまい込んだサイフだろうが、何でも一つ、ランダムで奪い取る。スキルの成功確率は、ステータスの幸運値に依存するよ。 強敵と相対した時に相手の武器を奪ったり、大事に隠しているお宝だけかっさらって逃げたり、色々と使い勝手のいいスキルだよ」

 

 アクアに服を捕まれて揺さぶられ、目を回していたクリスが復活し、説明をしてくれる。

 

 確かに、スキルはなかなか使えそうだ。

 

 しかも、成功率が幸運依存って事は、俺の2番目に高いステータスを活かせるって事だ。

 

「じゃあ、キミに使ってみるからね? いってみよう!『スティール』ッ!」

 

 クリスが手を前に突き出しと同時、その手に小さな物が握られていた。

 

 それは………。

 

「あっ! 俺の指輪!」

 

 あろうことかクリスは俺のマギアリングを窃盗したのだ。

 

「おっ! 当たりだね! まあ、こんな感じで使うわけさ。 それじゃ、この指輪を……」

 

 クリスは、俺に指輪(マギアリング)を返そうとして、そしてにんまりと笑みを浮かべた。

 

「……ねえ、あたしと勝負しない? キミ、早速窃盗スキルを覚えてみなよ。 それで、あたしから何か一つ、スティールで奪っていいよ。 それが、あたしのサイフでもあたしの武器でも文句は言わない。 どんな物を奪ったとしても、キミはこの自分の指輪と引き換え・・・どう? 勝負してみない?」

 

 いきなりとんでもない事を言い出す子だ。

 

 そんなことをせずに俺としてはすぐにマギアリングを返して欲しいのだが……

 

 彼女は俺が勝負を受けなくとも指輪は返してくれないだろう。

 

 俺はしてやられたのだ。

 おそらく、彼女は俺から金を巻き上げようとするたちの悪い冒険者なのかもしれない。

 

 もし、彼女が本当にたちの悪い冒険者なら、さらに小細工(こざいく)を重ねている可能性もある。

 

 それに、俺は幸運値が高いらしい......。

 つまり、スキルに失敗したら何も貰えないって事じゃないだろう。

 

 ………やってみるか。

 

 これはおそらく、先輩冒険者からの洗礼だろう。これを乗り越えられれば、それなりに冒険者としてやっていけるはずだ……

 

 自分の冒険者カードをすると、そこに習得可能スキルという欄が新たに表示されているのを確認した。

 

 そこを指で押してみると、三つのスキルが表示される。

《敵感知》1ポイント

《潜伏》 1ポイント

《窃盗》1ポイント、

 

 俺はひとまず、カードの中のスキル《窃盗》《敵感知》《潜伏》を習得する。

 

 25ポイントあったスキルポイントが消費され、残りスキルポイントが22になる。

 

 なるほど、こんな感じでスキルを覚えるのか。

 

「早速覚えたぞ。 そして、その勝負乗った! 何盗られても泣かないでくれよ?」

 

 そう言って右手を突き出す俺に、クリスが不敵に笑って見せた。

 

「いいねキミ! そういう、ノリのいい人って好きだよ! さあ、何が盗れるかな? 今ならサイフが敢闘(かんとう)賞。当たりは、魔法が掛けられたこのダガーだよ!こいつは四十万エリスは下らない一品だからね! そして、残念賞はさっきアクアさんにぶつけるために多めにっといたこの石だよ!!」

 

「マジか……。できれば当たってほしくなかったぜ……」

 

 クリスが取り出した石を見て、思わず呟く。

 

 確かにゴミアイテムを持っておけば、大事なアイテムがられる確率も減り、スティール対策になる。

 

「これどんなスキルも万能じゃない。 こういった感じで、どんなスキルにも対抗策はあるもんなんだよ。 一つ勉強になったね! さあ、いってみよう!」

 

 勉強にはなった。

 それに心底楽しそうに笑うクリスを見ていると、俺がマヌケな気分にすら思えてくる。

 

 なるほど。ここは日本じゃない、弱肉強食の異世界だ。

 

 ここでは俺の常識は通用しない。法律は存在するだろうが、日本ほど細かくはないのだろう。

 

 ここでは甘っちょろいヤツが悪いのだ。

 それに、勝負の分が悪くなったってだけで、まだ残念(ざんねん)賞に当たるとは決まっていない。

 

「よしっ! 昔から運はいいんだ! 『スティール」』ッ!!」

 

 叫ぶと同時に、俺が突き出した手には何かがしっかりと握られていた。

 

 成功確率は幸運依存といっていたが、一発で成功した所を見ると、やはり俺は運には恵まれているらしい。

 

 自分が手に入れた物を広げ、マジマジと見ると

 

「…………なんだこれ?」

 

それは一枚の布切れだった。

 

それを両手で広げにかざして見ると・・・・・・。

 

「ま、マジでかぁぁあ!!」

 

「いやああああああああ!ぱ、ぱんつ返してええええええええええええええ」

 

クリスが自分のスカートの裾を押さえながら、涙目で絶叫した。

 

 

 俺にパンツを盗られたクリスがアクアになだめられて落ち着いた頃。

 

「ねぇ、カズマさん。さすがに人の下着を盗るのはどうかと思うの」

 

「いや、《スティール》で盗るのはランダムだから今回のは偶然なんだよ……」

 

 アクアに弁明をしながらクリスの方に向き直り、

 

「おい、クリス。パンツを返してほしかったら、俺の指輪を返せ。」

 

「ほんとに? 指輪を返したらパンツを返してくれるの? 」

 

「ああ。悪かったから、早く交換してくれ……」

 

 

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KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

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 スキルを覚えて冒険者ギルドに帰ってくると、なんだか騒々しくなっていた。

 

 近くにいた冒険者に話を聞いてみると、

 

「ああ、それがな。近くの森で悪魔型のモンスターが目撃されたらしいんだよ。それも、上級の。」

 

「悪魔? それって」

 

 と冒険者を話している最中に、背中から睨むような視線を感じ、

 

 後ろを振り返ると……

 

「ねぇ、今、悪魔っていった?」

 

「悪魔なんて害虫はこの世に存在しちゃいけないんだよ」

 

 物凄(ものすご)威圧感(いあつかん)を出すアクアとクリスがいた。

 

 

 

 冒険者ギルドの一角のテーブルにて

 

「ねぇ、カズマ。悪魔なんてのはね、人間の感情がないと生きられない寄生虫みたいなものなのよ。今すぐに討伐にいきましょう。」

 

「そうだよ。アクアさんの言う通りだよ。すぐに討伐に行こう。」

 

「いや、ちょっと待てよ。アクアとクリスが悪魔を嫌ってるのはわかったからさ。まずは、偵察とか」

 

「クリス。こんなところにいたのか」

 

 アクアとクリスが悪魔討伐の話を押し進めようとしているところで、誰かが話しかけてきた。

 

 声のした方向を見ると、クールな印象を受ける女騎士、それもとびきりの美人がいた。

 

「ああ、ダクネス。実はね────」

 

 クリスの知り合いらしいその金髪碧眼(きんぱつへきがん)の美女は事情を聞いて、

 

「なに!? 悪魔だと! エリス教徒として見過ごすわけにはいかんな……。カズマといったか。頼む。一緒に討伐に行ってくれないだろうか。」

 

 クリスの意見に同意した。

 こいつ等どんだけ悪魔嫌いなんだよ……

 

「はぁ、わかったよ」

 

 とりあえず悪魔討伐を行う方針で話を進めることにしよう。

 

「まずは、情報収集とかアイテム補充とか、色々と準備を進め───」

 

「いいえ、そんなことをする必要はないわ!! 」

 

 自信満々の様子で俺の言葉を遮ったアクアは

 

「この〈アークプリースト〉たる私がいるのよ。 どんな悪魔が来たとしても問題ないわ!!」

 

 と、宣言した。確かにゲームではプリーストは対悪魔のスペシャリストだが……

 

 

 

「あ、あの!!」

 

 またか……

 

 声のする方に振り向くと、いかにも魔法使いと言った風貌をした紅い瞳の少女が話しかけてきた。

 

「あ、悪魔の討伐に行かれるんですよね……」

 

 なぜか途中から声がしぼんでいっているが。

 

「あ、ああ。そういうことになってるんだけど、君は?」

 

「あっ、えっと、え…ぇっ…」

 

 俺に名を訪ねられて、あたふたしていた彼女は決心したのが、バサッとローブをはためかせ……

 

「我が名はゆんゆん! アークウィザードにして中級魔法を操りし者、やがては紅魔族(こうまぞく)(おさ)となる者! 」

 

 一風変わった自己紹介をしてきた。

 

 いや、ゆんゆんってなんだ。

 

「・・・・・・その赤い瞳。もしかして、あなた紅魔族?」

 

 アクアの問いにその子はこくりと(うな)いた。

 

「・・・・・・ええと。 カズマに説明すると、紅魔族は、生まれつき高い知力と強い魔力を持ち、大抵(たいてい)は魔法使いのエキスパートになる素質を秘めているわ。 紅魔族は、名前の由来 となっている特徴(とくちょう)的な紅い瞳と………。 そして、それぞれが変な名前を持っているの」

 

 疑問符(ぎもんふ)を浮かべた俺に、アクアが言った。

 

「えーっと、ゆんゆん……だっけ? 何のようだ?」

 

「えっと、あの……。実はですね……その悪魔が来た理由に……ちょっと心当たりがあるというか………私のライバルが関係してそうっていうか……」

 

 ゆんゆんのライバルが悪魔に関係してそうと聞いたからだろうか。

 

 アクアとクリスがゆんゆんに(つよ)(せま)り出した。

 

「ねぇ、ゆんゆん。あなたのライバルが悪魔に関与してるってどういうこと?」

 

 と、アクア。

 

「事と次第によってはそのライバルも………」

 

 と、クリス。

 

「ち、違います。私のライバルの使い魔がこの前も上位悪魔(じょういあくま)に狙われてて……。もしかしたら今回もかな……って」

 

「なるほどな……。まぁ、事情はわかったよ」

 

「んで、そのライバルはどこにいるんだ?」

 

 ゆんゆんが(ゆび)()した先には……ギルドの椅子に寝転がったゆんゆんと同じく紅い瞳の少女がいた。

 

 俺たちに見られていることに気がついたのだろうか、俺たちの方に向き直った彼女は、

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業(なりわい)とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操るもの!!」

 

「何をしているのですかゆんゆん!!なぜ、一緒に討伐をする話になっているのですか! どうにかして彼らの討伐を諦めさせ、我々で手柄を独り占めする作戦だったではないですか!!」

 

 いや、なんで寝転がりながら自己紹介してんだこいつ。しかも、その後とんでもない事を言ってるぞ。

 

「めぐみん!! もしもアーネスみたいな上位悪魔だったらどうするのよ!! 頭数は多い方が良いに決まってるでしょ!!」

 

「そんなんだからゆんゆんは紅魔の里でボッチだったんですよ!! もっと紅魔族らしくしないと!!」

 

 めぐみんとゆんゆんは紅魔族らしさか慎重さのどちらを優先するかで喧嘩を始めた。

 

「なぁ、なんで寝転がりながら自己紹介して、喧嘩してんの?」

 

「えっと、めぐみんは爆裂魔法っていう高威力の魔法を使えるんですけど……」

 

 爆裂魔法?

 

「消費魔力が大きすぎて、1日1発しか撃てないんです。今日はもう放ってしまったので、魔力が枯渇してしまってるんですよ」

 

「あぁ、なるほど。魔力の使いすぎか……」

 

「ねぇ、カズマ。早く悪魔を退治しに行きたいんですけど」

 

 我慢ができなくなったアクアから、催促が来た。ダクネスは普通にしているが、クリスも早く行きたそうにしている。

 

 これは急いだ方が良さそうだ。

 

「それで、ゆんゆんは悪魔討伐について来るのか?」

 

「えっーーと」

 

 ゆんゆんはどうするのか渋っているようだが……

 

「なっ!! なに抜け駆けをしようとしているのですか!! 行くとしたら私もついてきますよ!」

 

 なるほどな、めぐみんがものすごく駄々をこねている。ゆんゆんが渋っていたのはこれが理由か……。このまま放置していったら後で恨みを買いそうだ。

 

「はぁ、わかったよ。めぐみんの魔力不足は俺が何とかするから、ゆんゆんはめぐみんを背負うなりして、連れてきてくれ」

 

 

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 鬱蒼(うつそう)と木々が生い茂る森の前にて。

 

「それで、どうやって私の魔力を回復させるんですか?」

 

 ゆんゆんの背中でめぐみんが疑わしげな顔でこちらを見てくる。

 

「それじゃ、この指輪をまずは指に()めてくれ」

 

 そうやって俺は“プリーズマギアリング”を差し出した。

 

「ちょっと、カズマ。なにを考えてるの? 初対面の指輪を渡すなんて」

 

 想像の通り、不味いことなになった。アクアや周囲の女性から蔑みの視線を受けることになる前に弁明をせねば……

 

「いや、俺の魔法は相手に直接効力を及ぼすためにはこうするしかないんだよ……」

 

 そういった俺は“ドライバーオンマギアリング“を腰にかざした。

 

〔ドライバー オン!!〕

 

 スペルエンチャンターから流れる詠唱と共に“マギアドライバー”が出現する。

 

「お、おおおお!! カズマと言いましたね。そのカッコいいベルトはいったいなんなのですか!?」

 

 ……そんなにカッコいいのだろうか。まぁ確かに俺もこのドライバーを着けて魔法使いになった頃は興奮したしな。

 

「これは……簡単に言えば俺の魔法の杖……だな。そんじゃあ、指輪を着けた手をこのドライバーにかざしてくれ」

 

 そう言いながら、ハンドオーサーを右側に傾ける。

 

「こうですか?」

 

〔ルパッチマジック 《プリーズ プリーズ》 〕

 

「お……おおおお!! す、すごいですよカズマ!! 魔力が、魔力が流れてきます!! 」

 

「へぇ、そんな魔法があるんですね……」

 

 いや、この世界の魔法については詳しくないからな…………。あるのかは知らん。

 

 

 

「おい、めぐみん。それなりの魔力を送ったはずなんだけど……もういいか?」

 

「うーーん。まぁ、いいでしょう。爆裂魔法を撃てるぐらいには回復はしましたしね。本来ならばもう少し欲張りたいところですが、カズマに戦力外になってもらっては困りますから。」

 

 

「それじゃあ、俺も準備しますかね……」

 

「準備? 魔法の杖を出現させたのに、まだ何かあるのですか?」

 

「えぇ、そうよ。カズマは私の従者にふさしい変身があるのよ」

 

「いつ俺がお前の従者になったんだ……。て言うか、ふさわしい変身ってなんだ?」

 

 そんなことを呟きながら、ハンドオーサーを左側に傾け、“マルクトマギアリング”を取り出し、

 

 

〔シャバデゥビ タッチ ヘンシン!!〕

 

 

「変身!!」

 

 

 マギアドライバーにかざした。

 

 

〔ネクサム オン!! マルクト!〕

 

 

〔プリーズ ベラ ザ カプティム Prison warrior representing crystal and earth〕

 

 

 大小様々な歯車を伴った魔法陣が俺の体の真上と真下に出現。

 

 それらが歯車を回しながら俺の体を通過していく。

 

 通過した部分から変身が始まり、丁度二枚の魔法陣が腰の部分で重なり合って変身は完了する。

 

 このスタイルは[アドナイメレクスタイル]。外見は紫を基調としたデザインで、フェイスガードとセンターストーン、胸部マルクトラングストーンの色は紫。センターストーンやルーンイヤーは円形をしている。

 

 武器は片刃の大剣で、剣の柄にはハンドオーサーがあり、そこに“マルクトマギアリング”を読み取ることで必殺技を発動できる。

 

「おおお! カッコいい! カッコいいですよカズマ!! これ程、紅魔族(こうまぞく)の琴線《きんせん》に触れるとは、なかなかやりますね!!」

 

 

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 森の中を、俺を先頭にしてどんどん奥へと進んでいく。

 

 森の中のちょっと開けま場所にて、そこにいたのは───。

 

「『セイクリッド・エクソシズム』ーー!!」

 

「ぐぁぁぁぁああああ!!」

 

 そこにいた悪魔と(おぼ)しき存在は、遭遇して早々に放たれたアクアの破魔(はま)魔法によって、大ダメージを負った。

 

 金属(きんぞく)の様な光沢(こうたく)を放つ漆黒(しっこく)の肌はボロボロに。

 

 蝙蝠(こうもり)を思わせる巨大な羽は穴が開き、

 

 オーガーですらねじ伏せそうな体格は衰え、角はへし折れてしまっている。

 

 本来ならばどこからどう見ても最終ダンジョンに住んでそうなのに、もう見る影もない。

 

「てめぇら…………何しやがる!!」

 

 その悪魔は無機質な瞳ながら、怒りを露にしていた。

 

 が、めぐみんの方を見て驚いた様子を……いや、これはめぐみんやゆんゆんよりも、紅魔族に反応してるのか?

 

「なぁ、お前ら二人って紅魔族だよな。それに、ウォルバク様の臭いもしてやがる。さて、」

 

「我が名はホースト。でっけえゴブリンではなく上位悪魔にして、やがてはとあるガキに使役される予定の者…………どうだ! 俺様の挨拶は。お前ら紅魔族だろ! こんな感じの挨拶が──」

 

 

「いい、めぐみん。こんな害虫の言うことなんて聞くこと無いわ」

 

「そうだよ、めぐみん。こんなゴミは私とアクアさんで始末しちゃうから」

 

 そう言って悪魔の言葉を遮ったアクアが白い炎を放ち、

 

「『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』ーー!!」

 

 クリスが悪魔に斬りかかった!!

 

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」

 

 悪魔はアクアの破魔魔法で大分弱っているらしく、クリスのダガーでもかなりのダメージを与えられているらしい。

 

 もう、一網打尽にできそうな勢いだ。

 

「しょうがない……か」

 

 もう、この調子では普通に戦うとか、そんな空気ではない。

 

〔ルパッチマジック 《マティン プリーズ》〕

 

 この[アドナイメレクスタイル]の能力は【拘束】。固有魔法の効果は簡単に言えば《幽閉》だ。この固有魔法によって幽閉されたものは解除しない限り、どうあがいても外には出ることはできない。

 

 悪魔を中心として魔法陣が展開され、悪魔を拘束する。

 

 

「おい、ゆんゆん、ダクネス。おもいっきり攻撃を食らわしてやれ!!」

 

「めぐみんは爆裂魔法の詠唱をして待機してろ!!」

 

 そう指示を出しながら、俺も次の魔法の準備をする。

 

「『ライトニング』ッ!!」

 

 ゆんゆんが中級魔法を放ち、

 

「はぁぁぁあああ!!」

 

 ダク…ネ…ス…が………ダクネスが斬撃を外し、

 

「ゴッドブローォォォオ!!」

 

 アクアの拳が炸裂し、

 

「たぁぁぁぁあ!!」

 

 クリスの攻撃が追撃する。

 

 

「いきますよ。我が必殺の爆裂魔法!!」

 

「よしっ!! 行くぜ必殺!!」

 

 武器の剣にあるハンドオーサーに“マルクトマギアリング”をかざし、

 

 

〔キャモナスラッシュ! スラッシュストライク!〕

 

 

 自分の死期を悟ったのか悪魔は、まるで愚痴る様に独白すると。

 

「《残機(ざんき)》が一人、減っちまうなあ。ウォルバク様との契約(けいやく)も、強制解除(きょうせいかいじょ)で晴れてフリー ……まいったな。 この流れだと、いつか本当にあのガキんちょに喚び出されて、使役(しえき)されちまいそうだ」

 

 そんな、よく分からない事を満更でもなさげに呟いた。

 

「…… 『エクスプロージョン』ツッッ!!!」

「………《レグーマ グラディオ》ッ!!」

 

 名も知れぬ悪魔は、めぐみんの爆裂魔法と俺の必殺技で跡形もなく消し飛ばされた。

 

 

「そういえば、あの悪魔この街に何しに来たのかしら」

 

「めぐみんの使い魔がどうとか言ってたけど……」

 

「なにも話さずに逝ってしまわれましたからね」

 

「あっ!! あの悪魔、ホーストというらしいですよ。冒険者カードにそう記載されてますから」

 

 

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 悪魔討伐を終えた俺たちは冒険者ギルドへ帰って、報告をし、

 

「え、えぇぇぇぇ!! 討伐されたんですか! あの悪魔型のモンスターを!!」

 

「おおおおおお!!」

 

「やるじゃねぇか!!」

 

 驚く受付のお姉さんと、冒険者たち。そして冒険者カードを見せびらかして自慢するめぐみん、それをなだめるゆんゆんを眺めながら、こういう生活も悪くないな……と、今朝とは全く違う感想を抱いた。

 

 冒険者が上位悪魔の討伐に沸き立ち、盛り上がりを見せる。

 

 酒場の店員はせわしなく料理や、飲み物を各テーブルにはこんで忙しそうにしている。

 

「今日は宴よっーー!! カズマも早くこっちに来なさいよ!!」

 

 アクアに呼ばれた方向を見ると、クリスとダクネスを連れて、もう席を確保したらしい。

 店員を捕まえて注文をしている。

 

 俺はため息をつきながら、どこか楽しくなってきて少し笑い、

 

 アクアたちがいるテーブルの方に手続きを終えためぐみんとゆんゆんを連れて向かった。

 

「もう、遅いじゃないカズマ。なにしてたのよ!」

 

「悪い悪い、めぐみんたちの手続きが思いのほか時間かかかってな……」

 

「私もお酒がのみたいです!!」

 

「いや、めぐみんにはまだ早い。」

 

「ねぇ、めぐみん!! このお肉美味しいよ!!」

 

「まぁ、たまにはこんな日も悪くないよね!!」

 

 こうして、異世界初の宴を堪能しながら、俺の異世界生活二日目は思ったよりも充実して終えた。

 

 

 

          <Not To Be Continued>




基本的に時系列はファンブックの内容を採用します。そして、このファンの物語は内容から時系列を推測し、作者が勝手に組み込みます。そして、都合を会わせるために改編します。

今回の主な改編点

◆カズマがクリスにスキルを教えてもらう際の実験台がアクア。

◆栗ネズミを討伐しためぐみんが宿に帰らず、ゆんゆんと共にギルドに残る。

◆めぐみん、ゆんゆん、カズマ、アクア、ダクネス、クリスが本来よりも早く会合する。

◆ホーストが本来の討伐日よりも早く討伐される。

◆レックス達が登場しない。セシリーが登場しない。

前回の主な改編点

◆アクアの神託がゼスタに届かない。

◆冒険者の登録料に困らない。

◆アルバイトに勤しまない。


─────────────────────

そして、クリスがたちの悪い冒険者と同じことをしようとしていたと読み取れる記述は『この素晴らしい世界に祝福を! よりみち』の『世にも幸運な銀髪少女』に存在しています。けして、クリスを陥れるつもりはありません。

 この世界でファントムのマギアースドラゴンは冬将軍やメルの様な大精霊と同じ扱いにしています。
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