ぷるぷる、ぼく悪いメモリだよ   作:裏風都の浮浪者

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第9話 悪魔のS/さよならpartB

「ハハハハハハ!」

 

拳のぶつかり合った衝撃をそのまま利用するように後ろに跳んだオータム。空中で左腕を振るうと四枚の羽が放つ光が一層強くなり、ダブルの方へ風が吹き荒ぶ。風はどこからともなく現れた大量の枯葉を運び、枯葉は刃となって襲い掛かる。

当然、ダブルも黙って切り裂かれるわけはなく、自身を中心に旋風を巻き起こして枯葉の軌道を逸らす。

 

「サマーに続いてオータム。これはウィンターやスプリングも併せ持っていると思って対処した方がよさそうだ」

(そりゃバレるか。まあ勝つ必要はないんだから関係ないが)

 

枯葉を防がれたオータムは大振りの剣を出現させると再びダブルの元へと駆け出す。見れば既にダブルは銀のメモリを手に持っており、接近の結果がどうなるかは簡単に予想できた。

 

『サイクロン メタル』

 

振り下ろした剣は棒状の武器(メタルシャフト)に弾かれ、そのまま半回転したシャフトの反対側がオータムの胴を捉えた。自身の突進の威力を上乗せされたカウンターアタックは、決して低くないダメージを発生させながらその体躯を後ろに吹き飛ばす。

 

(いいぞ、この分なら無事倒してくれそうだ。怪しまれない程度の抵抗はさせてもらうが)

 

オータムが左腕の羽をもう一度光らせると、右手に持った剣や宙に舞う枯葉が激しく燃える炎を纏い始めた。

追撃しようと接近して来ていたダブルは速度を緩めないまま、すかさず赤いメモリを取り出す。

 

『ヒート メタル』

 

右半身が赤く染まり、オータムの剣と、同じく炎を纏ったメタルシャフトとがぶつかり合う。ヒートメモリを使用した段階でダブルは炎、熱への耐性を獲得しており、状況はオータムが炎を出す前とほとんど変わらないものとなる。むしろダブルの側が攻撃力を増した分有利になった。

 

「……相棒」

「ああ」

『バット』

 

電子音と共にどこからか現れたカメラがコウモリ型のメカへと変形、カメラのフラッシュを利用した目くらましを行う。

 

「ちぃっ!」

「今だ」

『デンデン』

 

今度はゴーグル状の機械がカタツムリ型のメカに変形し、コウモリメカ(バットショット)の目くらましに怯んだオータムへとレーザーのようなものを照射する。ただしそれに殺傷力は無く、体の表面を一通り通過した後収まった。組成解析用のスキャンレーザーだ。すかさず近くの地面に横たわるすずの方へも同じレーザーが照射される。

 

「やはり変身者はいないようだ。純粋なエネルギーの塊にガイアメモリのデータで形を与えた疑似的な肉体……エネルギーの正体共々興味深いが、それどころではなさそうだ。未知のウイルスのような物を検知した。星原 風鈴も同様で、しかも少しずつ肉体を蝕んでいる……? 理屈は不明だが彼を倒さなければ死ぬというのは本当らしい。だが何故そんな情報をわざわざ伝えてきた?」

「っと、あぶねえ!」

 

違和感を覚えつつも解析した情報を戦いながら考察し始めようとするフィリップだったが、足元が唐突に隆起し、飛び出してきたそれを素早く反応した翔太郎が飛び上がって躱したのに気付き、一旦思考を中断してそちらへ意識を向ける。

 

「これは、桜の木……?」

『スプリング』

 

見ればオータムの居たはずの場所には緑色の狼を思わせる怪人、スプリング・ドーパントが威嚇するように姿勢を低く構えていた。

 

「喰らえよ!」

 

スプリングが吼えると同時に綿毛のようなものが大量に発射され、ダブルの()()()()()()殺到する。綿毛が地面に潜り込んだ瞬間、緑色の蔦が表れ、鞭のようにダブルの元へと叩きつけられた。

 

「あの姿は猟犬座か。戦闘中に変化できるとはね」

「厄介だな」

「ああ、だが問題ない」

『ヒート マキシマムドライブ』

 

抜き取ったヒートメモリをスタッグフォンに装填すると、炎を纏ったスタッグフォンがダブルの周りを旋回し、襲ってくる蔦を片っ端から焼き切っていき、その間にダブルは二本のメモリを取り出す。

 

『ルナ トリガー』

 

黄色い右半身と青い左半身に、銃を携えた姿へと変わったダブルはそのまま青い方の(トリガー)メモリを抜き取り、青い銃(トリガーマグナム)へ弾丸を込めるように装填する。

 

「「トリガーフルバースト」」

 

警告を発するような甲高い電子音を立てる銃の引き金を引くと無数の光の弾丸が発射される。あろうことかそれらすべてがそれぞれの意志を持ったように軌道を捻じ曲げ、未だ宙に浮いている綿毛を全て蒸発させ、桜の木を抉り、なぎ倒していく。何割かは当然スプリングの方へ向かい、その体を大きな軌道で吹き飛ばす。

 

(ははは、仮に本気でやっても勝てる気がしねぇ)

 

地面にたたきつけられたスプリングは思わず内心で乾いた笑いを上げる。負けるのが目的なので大したショックは無いが、勝つつもりで挑んできたドーパント達はこの対応力に泣きたい気分だったことだろう。何かするたびに対処され一歩ずつ詰みへ向かって歩かされているのが分かる。

 

『ウィンター』

 

無事に追い詰められたのを感じたスプリングはウィンターに変化し、冷気で最期の足掻きを演出する。それも炎を纏ったスタッグフォンに減衰させられ、大した威力は発揮されない。

 

『サイクロン ジョーカー』

 

対するダブルは基本形態のサイクロンジョーカーに戻り、開いたベルトをすぐさま閉じて頭上に飛来した鳥のようなメカを受け入れる。

 

『エクストリーム』

 

体の中央に走った銀のラインが幅を広げるように開き、光を反射する白い結晶体のボディが現れる。

緑、白、黒の三色に変わったダブルのボディに素早く光が走る。ほんの数秒にも満たないわずかな時間でそれが収まると、ダブル、サイクロンジョーカーエクストリームはゆっくりとウィンターの方へ歩き出す。

 

「敵のすべてを閲覧した。彼をそのまま撃破するのは危険だ。爆発で周辺一帯が壊滅する恐れがある」

「ならどうする?」

「対処方法も検索済みだ。プリズムを使う」

「了解だ」

「「プリズムビッカー!」」

『プリズム』

 

ダブルは白い結晶部分から盾に収まった剣を取り出す。剣の柄に薄緑色のメモリを装填すると、一気に抜き放ち、物語の剣士のようにそれぞれの手に構えると徐々にスピードを上げて走り出す。

対するウィンターも冷気を右拳に一点集中して構え、全力で走り出す。

 

『プリズム マキシマムドライブ』

 

剣に備えられたスイッチを押すと音声と共にまずメモリが、次いで刀身が輝き始める。

 

「おおおおオオオオオオ!」

「「プリズムブレイク!」」

 

叫び声と共に突き出されたウィンターの右拳を左手の盾で受け止めたダブルは、その勢いを利用するように体を右回りにひねりながら、輝く剣をウィンターの左腕に突き立てた。

 

「ぐぅッ……!」

 

心臓と脳が同居していると言っても過言ではないメモリ本体を損傷したウィンターは苦悶の声を上げながら数歩後退し、地面に膝をつく。

ダブルは剣を盾に収め、ゆっくりとそれをウィンターの方へ向けた。

それを見上げたウィンターは、表情があるなら祈りが通じてほっとしたような、そんな顔を浮かべているだろう雰囲気でふっと笑う。

 

「検索して……分かってるって事かな?」

「勿論だ、妖精くん。()()()()()()ね?」

 

頷いたウィンターが盾に左手を触れると、大穴の開いた腕から4枚の羽根が抜け落ち、ふわりと浮かんで盾の四隅に備えられたガイアメモリ装填スロットへ収まる。

 

『スプリング』

『サマー』

『オータム』

『ウィンター』

「「ビッカーファイナリュージョン」」

 

真上へと構えられた盾から大量の光の粒子が放出され空へと昇っていく。光からは雪、桜の花びら、蛍、紅葉が滲みだすように出現し、地面へと降り注いでは消えていく。

 

「季節ごちゃまぜで、訳分かんないことになってるけど……結構、きれいじゃないか」

「ああ、同感だ」

「……だな」

 

降り注ぐ葉や雪が消えていく度、少しずつウィンターの体が透けていく。既に完全に倒れ伏しており、穴の開いた左腕をスパークさせながら顔だけをダブルの方へ向ける。

 

「仮面ライダー」

「……どうした?」

「……あの娘の事……頼んでいいかな?」

「任せろ。絶対無事に帰してやる」

「ありがとう」

「馬鹿野郎が。なんでこんなことになるまで黙ってた」

「ハハハ……もしかして変身前にキレてたのってそれ? なんだ、最初っから全部ばれてたか」

「あの娘を助けるのが目的だっての、()()()()言わなかったからな」

 

探偵を騙すことの難しさと、それを毎度やってのける風都の女に薄ら寒さを感じつつ、ほとんど透明になった自身の体から最期の瞬間が目前に迫っているのを確認したウィンター……シズは徐々に霞んできた視界に、倒れているすずを収めると絞り出すように語り掛ける。

 

「すずちゃん、多分聞こえてないだろうけど……君と出会えてよかった、なんて……殺しかけといてこんな事言えないな。その……出会えて嬉しかったよ」

 

当然返事も反応もない。すずの精神は分離されて肉体には宿っていない。だから一体化しているはずのその心に届いているのを祈って独り言をつぶやく。

 

「お母さんの件とか……気になるけど、そっちは何もできそうにない。ごめんね?」

 

ダブルの持つ盾から放出される光の粒子はその量を徐々に減らしていき、最後には完全に放出が止まってしまう。

 

「さよなら」

 

ドーパント、あるいはゾディアーツとしての体がエネルギーをすべて失ったことで完全に消え去り、破損してバラバラになったシーズンメモリの残骸が地面に転がった。

 

「……シズ?」

 

繭に包まれたままだったすずの目がゆっくりと開き、次いでその視線が散らばる残骸へ向けられる。

 

「シズ……! シズっ!」

 

すずは上手く動けないのか、這いずるようにしながら残骸へと手を伸ばす。重度のメモリ使用者がメモリブレイクを受けた際よくやる行動だったが、涙を流し嗚咽を漏らしながら残骸を拾い集めるすずの意図がそれらとは全く違うという事は探偵でなくとも一目で分かるものだった。

 

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