「ぬきたし」のSSです。
淳之介・麻沙音・文乃、そして礼の四人が橘家で大晦日を過ごすお話です。
時系列は礼ルートの後を想定しています。

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礼と橘家の大晦日

★場所:橘家

 

【礼】

「――文乃、蕎麦麺はもう茹でていいか?」

 

【文乃】

「はい、お願いします。わたくしは海老を揚げております故……」

 

【礼】

「あぁ。わかった」

 

【麻沙音】

「いやぁ~……年越しそば楽しみだねぇ~兄ぃ~……」

 

【淳之介】

「コタツに突っ伏しながらよだれ垂らしちゃめーでしょ~……」

 

【麻沙音】

「兄も似たようなもんだろうがぁ~……むにゃむにゃ……」

 

【礼】

「あの兄妹はコタツでぬくぬくとずいぶん良い御身分だな」

 

【文乃】

「家主でございますので……」

 

【礼】

「いやだからといって……文乃は怒っていいと思うぞ」

 

【淳之介】

「配膳と後片付けは手伝うから……心配するなぁ礼ぇ~……」

 

【礼】

「眠そうに言うな」

 

【麻沙音】

「…………」

 

【礼】

「……淳之介、()()()が舟を漕いでる。起こしてやれ」

 

【文乃】

「……年越しそば、完成しました。配膳を――」

 

【橘兄妹】

「「わーーーい!!」」

 

【礼】

「現金な兄妹だなまったく……」

 

 

 

   ◆

 

 

 

【麻沙音】

「いやぁ~……年越しと言ったらやっぱこれだよねぇー……あーこの辛めのツユが美味ぇ……」

 

【礼】

「あぁ。麺はもちろん、海老天にネギにかまぼこ……どれをとっても美味いよ」

 

【淳之介】

「もしかしてこの蕎麦麺……文乃の手作りか?」

 

【文乃】

「はい。昨日から手打ちで仕込んでおりましたので……」

 

【淳之介】

「え? 昨日は明日のための(もち)を仕込んでたんじゃなかったのか?」

 

【文乃】

「同時並行で作業しておりました……! ふんすっ……!」

 

【礼】

「プロか?」

 

【麻沙音】

「文乃がいればそこは料亭と化すので……」

 

【礼】

「……というか、お前たちは手伝ってないのか? 文乃ひとりじゃ大変だろう?」

 

【麻沙音】

「いや、手伝いたいのは山々なんですけど……」

 

【淳之介】

「文乃のレベルが高すぎてついていけないんだよ……」

 

【礼】

「あー……まぁ、それはたしかにそうだな……」

 

【文乃】

「おふたりは放っておくとすぐ火から目を離すので、熟考の末、わたくしひとりで取りかかったほうが早いと判断しました」

 

【礼】

「そのレベルなのか……」

 

【淳之介】

「その点礼は寮でよく食事支度してたからな。文乃の手伝いしてくれてありがとな」

 

【礼】

「まぁ、家族水入らずに私ひとりだからな。何もしないわけにはいかないだろう」

 

【麻沙音】

「そういえば冷泉院さんたちはどうしてるんですか?」

 

【礼】

「桐香様たちならSSのみんなを集めて寮で年越しパーティーをしてるらしい。具体的に何をしているかはよくわからないけど」

 

【淳之介】

「いつもなら礼はそっちに参加してるはずだもんな。今年はひとりだけこっちだが、寂しいか?」

 

【礼】

「寂しくないと言えば嘘になるが……ほら、今は淳之介――橘家と一緒だろ。そんなに気にしてはいないよ」

 

【文乃】

「ふふっ……そうでございますか」

 

【麻沙音】

「兄と付き合い始めてからなにかとうちで過ごすことが多くなりましたからね。もはやこっちのほうが家と言っていいぐらいに」

 

【淳之介】

「そのおかげで礼とアサちゃんも昔より仲良くなったしな……俺にとってはそれが何よりもの喜びだよ」

 

【礼】

「ゲームの件に関してはまだまだ反省してもらう必要があるけどな」

 

【麻沙音】

「うっ……その、すみませんでした……」

 

【礼】

「冗談だよ。……でも、二度とああいうプレイはするなよ? ただ人を不快にするだけだからな」

 

【麻沙音】

「はい……」

 

【文乃】

「いったい何があったのでしょうか」

 

【淳之介】

「その辺は俺もよくわかんない」

 

【礼】

「そういえば橘家は年末になんの番組を観るんだ?」

 

【麻沙音】

「『ハメトーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーク年末6時間SP』は欠かせませんね」

 

【淳之介】

「長い」

 

【文乃】

「それは先日だったと記憶しております」

 

【麻沙音】

「じゃあ『TVゲーム総選挙』だね」

 

【淳之介】

「それこそもっと前だろうが」

 

【礼】

「そういや『ブレ猥』が1位になったな。あれは納得というか、さすがって感じだったなぁ……」

 

【麻沙音】

「あれは無限に時間を溶かせますからね……!」

 

【淳之介】

「話を脱線させるなゲーマー共」

 

【礼】

「大晦日の定番と言ったらやっぱあれだよな。笑ってはいけないやつ」

 

【麻沙音】

「えっ、カウントダウンするやつじゃないんですか……?」

 

【文乃】

「紅白では……?」

 

【淳之介】

「三者三様」

 

【礼】

「そういう淳之介はどうなんだ?」

 

【淳之介】

「駅伝はもちろん格付けするやつも欠かせないよな……!」

 

【麻沙音】

「年始の番組ばっかじゃん」

 

【淳之介】

「じゃあ礼のリクエストに答えて笑ってはいけないやつ観るか」

 

【天の声】

『"包茎"、OUTー』

 

【包茎】

『んほぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!』

 

【麻沙音】

「あ、ちょうどよくケツバイブだ」

 

【淳之介】

「これ本当にオリジナルか?」

 

【礼】

「やっぱり紅白にしよう」

 

【文乃】

「ぬっへっへ」

 

【淳之介】

「あ、文乃。餅のことなんだけど――」

 

【文乃】

「餅でしたらすべて一口サイズにカットし冷凍保存しておりますが……」

 

【淳之介】

「そうじゃなくて、味付けのほう。ほら、礼も食べていくから」

 

【礼】

「今晩はこのまま泊まって明日の朝にいただこうと思ってるんだけど……その、磯辺餅とかあるかなー……と思って」

 

【文乃】

「もちろんご用意しております。海苔に甘めの砂糖醬油がございます。翌朝、言っていただければお作りしますのでご安心を」

 

【麻沙音】

「おい文乃。きな粉はあるんだろうな?」

 

【文乃】

「抜かりはありません。他にも餡子(あんこ)は当然のこと、お雑煮にクルミ、ずんだに生姜味噌と多種そろえております」

 

【礼】

「淳之介ぇ~! SS寮にも文乃ほしいよぉ~!」

 

【淳之介】

「文乃はモノじゃありません」

 

【麻沙音】

「あの、SS寮で年越してた時は誰がお餅作ってたんですか?」

 

【礼】

「一番隊のみんながよく作ってくれてたよ。郁子主導の下でな」

 

【淳之介】

「えっ、郁子が? 意外――とまでは言わないが、あまりイメージが湧かないな……」

 

【礼】

「まぁな。たしかに普通の餅とはちょっと違うんだが、これがかなりイケるんだぞ? 地元の名物の餅らしいんだが……なんだったかな」

 

【淳之介】

「郁子の出身って……たしか長崎だったような……」

 

【文乃】

「……もしや、"かんころ餅"ではありませんか?」

 

【礼】

「あっ! それだそれ! かんころ餅!」

 

【淳之介】

「よく分かったな文乃。長崎ってだけで」

 

【麻沙音】

「なに? かんころ餅って」

 

【文乃】

「簡単に申し上げますと、干したサツマイモに餅を混ぜ合わせたものになります」

 

【文乃】

「干したサツマイモのことを五島地方の方言で『かんころ』と呼び、かんころ餅は冬期の保存食として作られるのです」

 

【礼】

「そうそう。だから正月に作って食べるのがイクにとっての師走の風景だ、みたいなこと言ってたよ」

 

【淳之介】

「へぇ、なんかスイーツみたいで美味しそうだな。無性に甘いものが食いたくなってきたよ。今度郁子に作ってもらおうかな」

 

【文乃】

「わたくしでよろしければ今度お作りいたします。材料さえあればすぐにご用意できますので」

 

【淳之介】

「地方の伝統食まで押さえてるのか文乃は……」

 

【麻沙音】

「…………糺川先輩」

 

【礼】

「……ん? あぁ、そうだな」

 

【淳之介】

「なぁ文乃、どうせなら郁子も呼んで――」

 

【礼】

「あー……その、ほら、そばも食べ終わったところだし。そろそろメインイベントと行こうじゃないか淳之介?」

 

【淳之介】

「ん? どうした急に」

 

【文乃】

「……そうですね、そばはもう片づけてしまいましょう」

 

【礼】

「あぁ、じゃあ()()()()を持ってくる――」

 

【淳之介】

「え? なんだなんだ?」

 

【麻沙音】

「はいはい。兄は座ってて」

 

【淳之介】

「――――?」

 

【礼】

「――……よいしょっと」

 

【淳之介】

「……? なんだそれ?」

 

【麻沙音】

「なんだ兄。まだわかんないか? 今日は大晦日以外にも特別な意味のある日でしょ」

 

【文乃】

「ええ……なんと言っても本日は――」

 

【礼】

「――淳之介の誕生日、だろ?」

 

【淳之介】

「――――っ!!」

 

【淳之介】

「――今日は……俺の……!」

 

【麻沙音】

「おっそ……完全に忘れてたのかこいつ……」

 

【淳之介】

「礼と大晦日を過ごせることに意識が向いててすっかり忘れてた……」

 

【麻沙音】

「ま、兄からしたらそれもそっか……。実はね、何日も前から糺川先輩とふたりで兄の誕生日ケーキをこっそり作ってたの」

 

【礼】

「でも橘家の冷蔵庫に置いていたらバレるからSS寮に隠してたんだ。それを今日持ってきていてようやくお披露目、ってことだ」

 

【淳之介】

「そうだったのか……ありがとな。素直に嬉しいよ」

 

【礼】

「なんだったら年越すよりもこっちのほうを楽しみにしてたんだぞ私は」

 

【文乃】

「実はわたくしもそうでございます……!」

 

【淳之介】

「そっか。礼はもちろん、文乃も俺の誕生日を祝ってくれるのは初めてか」

 

【礼】

「それにほら、前に言っただろう? 覚えてるか?」

 

【淳之介】

「え? 何を――」

 

【礼】

「『12月31日から2月13日。この一月半の間は……私たち、同い年なんだね』――――って」

 

【淳之介】

「…………」

 

【礼】

「だから今日から私たち……しばらくはタメなんだぞ? なんかこう、嬉しいな?」

 

【淳之介】

「…………」

 

【淳之介】

「俺の彼女が"最高"すぎる――――っ!!!!」

 

【礼】

「えぇっ!? ちょっ、ど、どうした淳之介!? 急に抱き着いて――――!!」

 

【淳之介】

「今すぐヤりたい――――!!!!」

 

【礼】

「ええぇ……なんでだよ……? まぁ、い、嫌ってわけではないけど……」

 

【麻沙音】

「おーいそこのバカップル。イチャついてないで蠟燭――」

 

【淳之介】

「ちょっとセッ〇スしてきていいか――――!!!???」

 

【麻沙音】

「誕生日ケーキを差し置いてドスケベ優先することある?」

 

【淳之介】

「勃起がひどくてケーキどころじゃない――――!!!!」

 

【礼】

「なぁ、これって私が悪いのか……?」

 

【文乃】

「麻沙音さん、主賓は淳之介さんです。情事が済むまで、わたしたちはてれびでも観て待つ――というのはいかがでしょうか」

 

【麻沙音】

「文乃の対応が臨機応変すぎる」

 

【礼】

「ご、ごめん……なんか、私も変な気分になってきたから……ちょっと淳之介の部屋に行ってくるな……?」

 

【淳之介】

「2時間ぐらいしたら戻ってくるからそれまでちょっと待っててくれ。ふたりとも」

 

【麻沙音】

「あーもうはいはい勝手にヤってくりゃいいじゃんかよ。何時間でもお好きにどーぞ」

 

【麻沙音】

「……あ、でも」

 

【礼】

「? どうした?」

 

【麻沙音】

「――()()()()()()()()漏らすのだけは勘弁してください」

 

【礼】

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!

 

【淳之介】

うおおおおおおおおおおお今外に出たら凍え死ぬぞ礼ぇええええええええ!!!

 

 

 

 


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