海賊王のやり直し   作:血ロスト

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前回のあらすじ

フーシャ村へとやってきたシャンクス率いる赤髪海賊団、そしてウタ。
再会した幼馴染を救う為に、ルフィはシャンクスが持っていたゴムゴムの実を食べ新たな力をつける。

再び、互いの夢を誓い合ったルフィとウタ。
そしてついに183回の勝負を終え、ウタがエレジアへ行く日が来た。
その航海に連れて行ってもらう為にルフィはシャンクスにお願いをする。


4話 元海賊王は歌姫を救う。そして歌姫は……

 ルフィの頼み事に、シャンクスは目を見開いて驚いた。

 

「次の航海、って言うとエレジアか……どうした急に。今までそんなこと言ってこなかったくせに」

 

 未来におけるルフィは、シャンクスが来てからというもの何度も何度も航海に連れて行ってくれ、とお願いしていたが、その度に軽く受け流された。

 

 しかし、今回は違い、ルフィは一度もシャンクスに連れて行って欲しいとお願いしなかった。

 確実にウタを救う力を身につける為に、最悪の結果を二度と起こさない為にも、ルフィは鍛錬し続けた。

 

 そして、ついに、その力を行使する時が来たのだ。

 

「頼む、シャンクス」

「……」

 

 この村に来てから、いまだかつて見たことがない程の真剣な顔をしたルフィを黙ってシャンクスは見つめる。

 ウタも、初めて見る幼馴染の表情にタジタジしていた。

 

「……軽くテストをしてやる。来い」

 

 少ししてシャンクスが、その重たい口を開いた。

 そのまま、カウンターからテーブル席へと移るシャンクスとルフィ。

 

 互いにテーブルに向かい合う形になったシャンクスは目の前にコップを三つ伏せて置いた。

 真ん中のコップの上に一つのコインを置き、その脇にある二つコップを高速でシャッフルし始める。

 大の大人でも目に追えなくなる速度で二つのコップをシャッフルしていると、キン、という音と共に真ん中にあったコインが消えた。

 そのまま静かに三つのコップを並べたシャンクスはルフィに問う。

 

「コインはどこだ?」

 

 周りにいる船員達は「大人気ねぇ」「お頭、それは難しいだろ」と、笑みを浮かべて盛り上がっている。

 ウタもまたコインがどこに行ったのか分からない為、心配そうな顔でルフィを見つめていた。

 

 そして、ルフィは

 

「……シャンクスの口の中」

「「「っ!!??」」」

 

 あっさりと見抜いた。

 

 これにはシャンクスも先ほどまでゲラゲラと笑いながら見ていた船員達も一様に驚きの表情を浮かべた。

 

 シャンクスは静かに口を開き……その舌の上にあったコインを出す。

 

「……二回戦だ」

 

 コインを別の物に変えながらそう言うと、シャンクスは先ほどと同じようにコップの上にコインを置く。

 今度はコップが三つから五つに増えた。そして先ほどよりも素早い動きでコップ四つをシャッフルする。

 

「今度はどこだ?」

「ここ」

 

 再びコインが消え、シャッフルを終えたシャンクスはコップを並べる。

 そして、すぐにルフィは自分から見て右から二つ目のコップを手に取った。

 コップを持ち上げると、もちろん、そこにコインが置いてある。

 

「「「……」」」

 

 またしても、あっさりと見抜いたルフィにシャンクスもベックもルウも他の船員達も真剣な面持ちになる。

 コインがどこに行ったのか何も見えていないウタは驚愕して口をぽかんと開けていた。

 

「……最後だ!」

 

 再びコップが増え今度は七つ。

 シャンクスも少し本気を出し始めたのか、腕やコップが残像で増えて見える程の速度でシャッフルをする。

 もはや、ベックやルウ、ヤソップ等、歴戦の船員でないと目に追えない速度だ。

 

 そして、再びコインが消える。

 

「さぁ、どこだ?」

 

 シャッフルを終え、若干、口元に笑みを浮かべてシャンクスが尋ねる。

 

 そんなシャンクスに……

 

「にししっ」

 

 ルフィもニカッと笑みを零す。

 

 そして

 

「ベックの右手の中!」

 

 自身のすぐ後ろにいたベックを指差しながらルフィは答えた。

 

「なっ……!」

「はぁ……諦めな、お頭……ルフィには全部見えてる」

 

 シャンクスは開いた口が塞がらない。

 一息吐くとベックはそう言いながら右手を開き、その中にあったコインを見せる。

 

「「「なぁっ!!??」」」

「うそ……ルフィ、すごい!」

 

 周りにいる見えていなかった船員も顎が地面に着くほどの驚きの表情を浮かべ、ウタも驚きつつ笑みを浮かべてルフィを褒める。

 

「まさか……その歳で、ここまで……」

 

 シャンクスもこの時点で10億4000万という超高額の懸賞金をもつ大海賊。

 ルフィのおそらく見聞色の力には一回戦目のコップ三つの時点で察しがついていたが、七歳の子供がまさかここまで、とは思わず驚きを隠せずにいた。

 

「シャンクス……頼む」

 

 ルフィは笑みを消して、今一度シャンクスにお願いする。

 その七歳の子供とは思えない力、そして真剣な表情にシャンクスも折れた。

 

「……わかった。その代わり、今回だけだ。戦いの際はウタと一緒に船番だぞ」

「! わかった!」

 

 シャンクスの言葉に、満面の笑みを浮かべてルフィも力強く答えた。

 

「野郎ども! 明日からの航海はルフィも連れて行く! とりあえず、今は宴だ!!」

「「「おおーー!」」」

 

 場を仕切りなおすようにシャンクスが声を上げると、再び、酒場は大盛り上がりを見せた。

 

「(あの爺さんの孫だしな……とはいえ、それだけじゃないような気がするが、それはいずれルフィが話してくれるだろう)」

 

 飲めや歌えやのドンチャン騒ぎの中、先ほどの見聞色の精度を思い返しながらシャンクスは考えるが、詳しくは聞かないことにした。

 今は、ウタと一緒にジュースを飲んで皆と楽しんでいるルフィにそっと笑みを零すだけだった。

 

 

 

 翌朝、空も快晴で波も穏やかな絶好の船出日和の中、ルフィも乗せたレッド・フォース号はフーシャ村を発った。

 

 船の上では、憧れのレッド・フォース号に乗ったルフィに副船長であるベックマンとウタが色々と案内してまわった。

 

「他の海賊や海軍と戦いになったら、この倉庫かあっちの部屋の中に隠れろ。ウタもそうしている」

「わかった!」

 

 ベックの指示に力強く従うルフィ。そんなルフィをウタも微笑ましく眺めていた。

 

「時にルフィ。あれほど見聞色を使えるってことは、まさか武装色も使えるのか?」

「使えるぞ! ほら!」

 

 シャンクスと共に一つ気になったことがあったベックがそう尋ねると、ルフィは両腕を真っ黒に硬化させて見せた。

 その様子に再び、シャンクスまで含めた他の船員は驚きの表情を浮かべた。

 

「すげぇな……」

「本当に七歳か?」

「あれ下手したらベック達に並んでねぇか?」

「さすがにそれは無いだろ」

 

 そんなルフィにベックはフッと笑みを浮かべる。

 

「そうか。それだけ使えりゃ十分だ。万が一、何かあればウタを守ってやってくれ」

「おう! 任せろ!!」

「ちょ、ちょっとベック! わたしがルフィを守ってあげるのよ!」

 

 ベックとルフィのやり取りに頬を膨らませて抗議する歌姫。

 いかに覇気というものが使えようとルフィは年下であり、今回が初めての航海なので、やはりお姉さんぶりたいのだ。

 

 そんな微笑ましい光景に船員達は笑みを浮かべながら船は進んで行った。

 

 

 

 

 偉大なる航路に入り、数日が経った頃、ようやく目的の島エレジアが見えてきた。

 この数日間、何度か海賊や海軍と戦いになったものの、特にルフィやウタに危険が及ぶことはなかった。

 

「ここがエレジアかぁ!」

「あぁ。世界一の音楽の都として知られる島だ」

 

 未来で見た、凄まじい破壊痕が残る廃墟と化した寂しい島とは違い、音楽が鳴り響き、活気に溢れた光景にシャンクスの隣でルフィは目を輝かせた。

 

 やはり、海賊に音楽は欠かせないものなのだ。

 

 やがて、港に着き船を降りたルフィはシャンクスやウタと共に島内を見て回っていた。

 

 そんな中、船員の一人が今日コンサートを開いていることを聞きつけてシャンクス達に伝える。

 

「シャンクス! わたしもそこで歌ってみたい! 飛び入りで参加できないかな!」

「どうだろうか。一度聞いてみようか」

 

 それを聞いたウタが目を輝かせてシャンクスにお願いすると、シャンクスも笑みを浮かべて、そのコンサートが開かれている会場に足を運んだ。

 もちろん、ルフィもついていった。

 

「私は、この国の治めているゴードンというものだ。君はもしや、赤髪のシャンクスかね?」

「ほう、俺を知っているのか」

 

 コンサートの開かれている会場につくと、この国の王であるゴードンがおり、シャンクスはさっそく訪ねた。

 

「名乗るまでもないが、一応礼儀だ。この海賊団の船長をしているシャンクスだ。よろしく頼む」

「こちらこそ、よろしく頼む。噂に名高い赤髪海賊団が、この島に何か用があるのかね?」

 

 シャンクスの人柄や、略奪等の悪事を働かない赤髪海賊団の噂はエレジアの中で知れ渡っていた。

 だからこそ、王であるゴードンや島内の人達も歓迎ムード一色だったのだ。

 

「あぁ、用があるのはこの子の方だ」

 

 そう言ってシャンクスは隣にいたウタを前に出させる。

 

「はじめまして。わたしはウタ! ここにいるシャンクスの娘で、赤髪海賊団の音楽家よ」

「おお、かの海賊団の音楽家か! それで、ご用件はなにかな?」

 

 赤髪海賊団の音楽家、と聞くや否やサングラスの奥で目を輝かせるゴードン。

 

「この会場でコンサートが開かれてる、って聞いて、ぜひ一曲だけ歌わせていただけないかな、と」

 

 そんなウタのお願いに、ゴードンは満面の笑みを浮かべて答える。

 

「もちろん構わないさ! 海賊だろうと何だろうと歌を愛する者であれば構わない。ぜひ歌ってほしい!」

「! ありがとう!!」

 

 こうして、コンサートに飛び入り参加することができたウタは、大喜びで会場に入っていった。

 

 

 

 数多くの音楽家達による演奏が終え、飛び入り参加のウタの番がやってきた。

 緊張を感じさせない、リラックスした声で歌い始めるウタ。

 

 曲はやはり一番好きな『風のゆくえ』だ。

 

 場は大きな静寂へと包まれ、中にはその歌声を聞いただけで涙を流す者も大勢いた。

 

 やがて歌い終わると、大気が震える程の拍手喝采の嵐が巻き起こった。

 ウタも自身の歌でこんなに感動してくれた多くの人達がいることに胸が温かくなっていた。

 

「素晴らしい!! 君の歌声はまさに世界の宝だ! ここには音楽の専門家達や、楽器、楽譜が集まっている! 是非このエレジアに留まってほしい! 国を挙げて歓迎する!」

 

 この国の王であるゴードンを筆頭にたくさんの音楽家達がウタのもとに集まって絶賛の声を上げている。

 

「にししっ、やっぱりウタの歌はすげぇや!」

 

 ルフィもそんな光景を眺めながら、笑みを浮かべていた。

 

 

 

 コンサートも終わり、ウタ達は島の学校や数多の楽器が展示された場所等を案内してもらい、そのまま夜のパーティにまで参加させてもらった。

 

 音楽家達による演奏が鳴り響き、普段の宴では飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎの赤髪海賊団の一行ではあるが、ここは他の人が数多く集まる場所なのでさすがに自重した。

 

 シャンクスとウタは、パーティ会場となった部屋の外で何か話をしているようだ。

 

 そして、そんな中、ルフィは……

 

「……」

 

 食事も早々に済ませ、一人、鋭い目つきでジッと辺りを警戒していた。

 

「どうした、ルフィ? いつもならそこら中の食べ物食い漁ってるのに」

 

 そんな普段とは様子が全く違うルフィに副船長であるベックは何気なく声をかける。

 

「大丈夫だ、ベック。気にすんな」

「……?」

 

 そんなベックに、問題ない、と笑みを浮かべながら返すと、再び警戒に移るルフィ。

 

 実はパーティが始まると同時にルフィは常に見聞色の覇気を発動させているのだ。

 未来においてウタとゴードンから聞いた話では、エレジア滅亡の悲劇はこのパーティの最中に起きたのだ。

 

 すなわち……トットムジカがウタを利用して蘇ろうとしている。

 

 それを何としても防ぐ為に、ウタに近づいてくるというトットムジカの気配をいち早く察知しようと常に警戒しているのだ。

 

 そして、シャンクスとウタが戻ってきた。ウタは何か泣いた痕があり目元を少し腫らしていた。

 もちろん、ルフィは見聞色を発動させているのでシャンクスとウタが何を話していたのかは知っている。

 だが、それはウタが決めることなので特に関わることなく黙っていたのだ。

 

 ウタはエレジアには残らない。

 それをシャンクスとウタから聞いたゴードンやエレジアの国民達は残念がりながらも納得した。

 

 ならば、最後に、とエレジアの音楽家達は様々な歌をウタに歌わせようとした。

 ウタもそれを喜びながら承諾し、ゴードンもせっかくの機会だからパーティ会場にいない他の国民にも聞かせようと国中にウタの歌声が響き渡るようにした。

 

 そして、様々な音楽家達から渡された曲を歌い終わり、パーティ会場に置かれたイスの一つにウタが近づいた時だった。

 

 そのイスに五枚くらいの何か古びた楽譜が置かれていた。

 

 それをウタは躊躇なく手に取り……

 

「ウタァーーー!!!」

 

 見ようとした瞬間、ルフィの叫びが会場中に響き渡った。

 

「な、なに、ルフィ……きゃぁ!!」

 

 辺りも急に上がったウタを呼ぶ叫び声に、その発端となった少年を見ると、それを気にせずルフィは腕を伸ばしてウタを掴み、自身のもとに手繰り寄せた。

 

「う、腕が伸びた!?」

「まさか、悪魔の実の!?」

「おい、どうしたルフィ!?」

「ちょ、ルフィ! 何してるの返して!!」

 

 悪魔の実の能力の使用、そしてルフィの謎の行動に国民や赤髪海賊団の一行が慌てる中、ルフィは自身のもとに引き寄せたウタから強引にその古びた楽譜を取り上げた。

 

「わりぃ、ウタ!! でも、これだけはダメだ!!!」

 

 そのまま、五枚程の古びた楽譜をグシャリと雑巾絞りのように丸めると……

 

「シャンクスーーー!!!」

 

 自身が一番憧れる、今この場にいる中で最も強くて信頼できる船長に向かって、その楽譜を投げた。

 

 シャンクスはルフィの突然の行動に訳が分からないままだったが、今度はベックが声を上げた。

 

「お頭ぁ! そいつはやべぇ!! 斬れ!!」

 

 ベックもまた、ルフィの突然の行動に訳が分からないままだったが、何かを感じたのだろうと自身も見聞色を発動させ……その楽譜から感じたおぞましい気配に冷や汗を流した。

 

「……っ!?」

 

 自身が最も信頼する副船長であるベックの普段は見られない様子に、シャンクスもまた見聞色を発動させ……

 

「野郎ども!! この場にいる奴らを守れ!!!」

「「「おう!!」」」

 

 腰から愛剣『グリフォン』を抜き、武装色を流して黒刀へと変えながら、周りにいる赤髪海賊団に指示を出した。

 

 そして……

 

「おぉおおおおお!!」

 

 自身に飛んでくる楽譜に向かって、漆黒に染まった剣を振りぬこうとした瞬間。

 

「「「……っ!?」」」

「「「うわぁあああ!!」」」

 

 まるで楽譜に意思があるかのように、その剣を防いだのだ。

 

 楽譜から感じるおぞましい気配とシャンクスの覇気がぶつかりあい、辺りに凄まじい衝撃が襲い掛かる。

 

 部屋の照明や窓が全て吹き飛ばされ、砕け散る中、月明かりに照らされ、楽譜とシャンクスの鍔迫り合いは続く。

 

 ゴードンやエレジアの国民達は皆その場に頭を抱えて伏せ、それを守るかのように赤髪海賊団の面々が散らばり踏ん張っている。

 

 ルフィもまたウタに覆いかぶさるように伏せ、そんな二人を守るかのようにベックが前に立っていた。

 

 数秒、そのような鍔迫り合いの状態が続いたが、その時、シャンクスの纏う気配が変わった。

 

「俺の娘に……何しようとしたぁあああ!!」

 

 自身の大事な娘に危険が及んだ、その事にシャンクスの怒りは頂点に達した。

 纏う覇気が武装色から覇王色に変わり、手に持つ剣に炎のような赤いオーラが迸る。

 

 次の瞬間、一瞬にして楽譜を切り裂き、その凄まじい覇気による衝撃で粉々にした。

 

『■■■■■■ーー!!??』

 

 そして、化け物のような断末魔が響き渡り……ルフィ達が感じたおぞましい気配はその姿を消した。

 

「はぁ、はぁ……野郎ども! 無事か!?」

 

 楽譜を切り裂き、塵一つ残さず消し去ったシャンクスは息も絶え絶えになりながら声を上げる。

 

「こっちは全員無事だ!」

「こっちも、傷一つねぇ!」

「一人割れたガラスでケガしてる! ホンゴウ!」

「任せな!」

 

 エレジアの国民は多少の負傷者は出たものの全員無事であり、赤髪海賊団の船医であるホンゴウや島に住む医師達が応急処置に回っている。

 

 ルフィとウタも無事なようで、ベックが様子を伺っている。

 

「ゴードン!!」

 

 この国の王に話を聞くため、シャンクスはその名を呼ぶ。

 もちろん、ゴードンも無事であり、シャンクスのもとへ近寄った。

 

「しっかり……説明してもらえるんだろうな」

「はい、もちろんです……まさか、こんな事になろうとは思わず……」

 

 未来ではシャンクス達も含めて誰一人予想できなかった悲劇。

 今回、その悲劇はルフィによって防がれた。

 

「よく、気づいたな。ルフィ」

「にししっ、ずっと見聞色で見てたからな!」

「あぁ、よくウタを守ってくれた」

「約束だからな! 万が一何かあったらウタを守る、って!」

「ふっ……あぁ、偉いぞ、ルフィ!」

 

 ベックは、悲劇を未然に防いだルフィの頭をそっと撫でた。

 

 そんな中、自身の腕に抱かれたウタの様子がおかしい事にルフィが気付いた。

 

「ウタ? どうした?」

「あ……ぁ……」

 

 ウタは、焦点の合ってない目で虚空を眺めながら呻き声を上げていた。

 

 

 夢を見ていた。

 

『出た、負け惜しみぃ!』

 

 昔のようにチキンレースで負けたルフィを揶揄う自分。

 

『ねぇ、ルフィ。海賊やめなよ』

 

 (シャンクス)と同じように海賊となったルフィにやめるよう言う自分。

 

『ダメだよ……ルフィが海賊王になるのは』

 

 縛り上げたルフィを見下ろしながら、どこか寂しそうに言う自分。

 

『うるさい……もうシャンクスの話は……やめて!!』

 

 大嫌いな(大好きな)父の話をされ、怒り、叫ぶ自分。

 

『当てる気もないくせに……』

 

 ルフィの放った技が明後日の方向に飛んでいき、そんなルフィの顔を見つめる自分。

 

『わたしは……シャンクスのことを実の父親のように思ってた!』

 

 海賊を嫌いになった理由を聞かれ、再び怒る自分。

 

『なんで……なんでだよぉおおお!!!』

 

 過去の炎に包まれるエレジアの港から遠ざかるレッド・フォース号を見て、喉が千切れるほどに叫ぶ自分。

 

『こんなのは自由じゃねぇ! こんなのは新時代じゃねぇ! お前が誰よりも分かってんだろ!!』

『ルフィ……』

 

 友の……愛した幼馴染の少年(ルフィ)の一言に感情を取り戻し涙を流しながら名前を呼ぶ自分。

 

『あの子の歌は、世界を滅ぼす!!』

『はっ……はぁっ……!!』

 

過去の真実の映像を見つけ、その決定的な一言に息ができなくなり言葉を失う自分。

 

『もう、引き返せない……新時代を!』

 

 ファンの人たちの希望の為に、自身に言い聞かせるように叫ぶ自分。

 

『わたしは! 赤髪海賊団の音楽家、ウタだよ!』

 

 トットムジカに心を取り込まれた観客を救う為に、毒に侵されながらも立ち上がる自分。

 

『わたしにとっても大事な帽子……いつかきっと、これがもっと似合う男になるんだぞ!』

 

 いつの間にか背を越され、立派な大人になった愛する男(ルフィ)に麦わら帽子を被せて新時代を託す自分。

 

 

 

「(思い……出した……私は、あの時……)」

「……タ! おい、ウタ!!」

 

 夢の中で謎の記憶が急に蘇ってきたウタは、しばらくした後、ようやく現実へと帰ってきた。

 

 そして、すぐ近くから自分の名を呼ぶ少年に気が付く。

 

「え……ル、フィ?」

 

 そこには、最期に見た時とは違う、子供になったルフィの姿。

 

「なんで、小さく……」

「いや、お前だって小さいじゃんか」

「……え?」

 

 幼くなったルフィに頭が全く追いついていない中、そう言われ自身の体を見下ろすウタ。

 

 そこには確かに、二十一とは思えない程、小さくなった自分の体があり……

 

「え……えぇぇぇ!?」

「お、おいどうしたんだ、ウタ」

「ベ、ベック!? え、なんで、ここは!?」

「ここは、って……エレジアだぞ。どうしたんだ急に?」

「!?!?!?」

 

 驚きのあまり奇声を上げてしまい、そんな様子のおかしいウタに声をかけるベックに気づいて更に驚き、更に追い打ちをかけるが如く、ここはエレジアだと聞いて、頭がパンクしかけるウタ。

 

 そんな様子のおかしいウタの異変の正体に気が付いたのは……ルフィだった。

 

「もしかして、お前……未来(21歳)のウタか?」

「…………え?」




ルフィだけでなくウタも……
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