海賊王のやり直し   作:血ロスト

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前回のあらすじ

シャンクスに見聞色の覇気を見せつけ、エレジアへの同行の許可をもらったルフィ。
そして、悲劇の夜。ウタに近づくトットムジカの気配に気づいたルフィはその楽譜をシャンクスの覇王の一撃によって消し去ってもらい、エレジアの滅亡を未然に防ぐことに成功した。

その時、魔王が消し去られた影響からか、ウタに未来の記憶が蘇り……?


5話 元海賊王と歌姫の本当の意味での再会

 つい先程まで音楽が鳴り響き和やかなパーティが行われていたとは思えない程に荒れ果ててしまった会場の中……

 

「未来の、ウタ? ルフィ、いったい何を言って……」

 

 大事な家族であるウタに起きた異変の正体に気がついたルフィの一言に、傍にいたベックがその詳細を問うが

 

「わりぃ、ベック……少し、ウタと二人きりで話させてくれ……」

「ちょ、ちょっと、ルフィ!?」

 

 ルフィはウタをお姫様抱っこの形で抱き上げ、申し訳なさそうにベックの顔を見上げる。

 

 幼くなったルフィとは思えない力で抱き上げられたウタは驚きと恥ずかしさから顔を赤く染める。

 

「……分かった。お頭には俺から伝えておこう」

「にしし……ありがとベック」

 

 何かしらの事情が二人にある事を察したベックは微笑みながら了承し、先程、ゴードンと共にどこかへと向かったシャンクスの後を追うように部屋を退室した。

 

 ルフィもまた色々と察してくれたベックに感謝し、ゴードンから教わったエレジア城にある一室の方へウタと共に向かった。

 

 その間、ルフィにお姫様抱っこされた状態のウタは終始顔を真っ赤に染めたままだったが、特に抗議する訳でもなくルフィの服をキュッと掴んで離さなかった。

 

 城の宛てがわれた一室に着いたルフィはベッドの上に優しくウタを下ろして寝かせた。

 ウタは名残惜しそうにルフィの服を離したものの、今度はルフィの手をそっと握った。

 それをルフィは振り払うわけもなく優しく握り返すとベッドの端に腰かけた。

 

「やっぱり……そうなんだな、ウタ」

「うん……そうだよ……落ち着いたら、だんだん思い出してきた……」

 

 七歳の体にして既に本気を出せばルフィの見聞色は相手の過去も未来も見れる程の力を持っている。それでも海賊王となった時の見聞色には程遠いが。

 その為、ルフィは今のウタが自分と同じように未来から逆行した事に気がついたのだ。

 

「ルフィも、そうなの?」

「おう、おれも海賊王になってから戻ってきたんだ」

「……そっか……ルフィは夢、叶えたんだね」

 

 ウタもまた見聞色が使えるわけではないが、幼いルフィの雰囲気が自分の知っている過去のルフィと全く違う為、未来から戻ってきたのだろうと気がつき、そして海賊王という夢を叶えたルフィに優しく微笑んだ。

 

「って言っても、その五年後におれ死んだけどな!」

「……えっ!?」

 

 と、そこで突然、あっさりとルフィが若すぎる死を迎えた事にウタは驚きガバッと身を起こした。

 最期に別れた時から順調に航海が進んだとして、それから海賊王になったのだとすればルフィは二十四か五で亡くなったという事になる。

 

「えっ、なんで、どうして……」

「あぁ、おれ、海賊王になってから新時代作ったけどよ! その後、病気にかかって、そのままな!」

「びょ、病気!? ルフィが!?」

 

 あの病気とは無縁に思えるようなルフィが病気……しかも、命に関わる程のものにかかったのだと知り、ウタは驚きを隠せずにいた。

 

「実はチョッパー……あ、チョッパーてのはおれの仲間にいた船医な! そいつの作った薬飲めば助かる病気だったんだ」

「じゃ、じゃあ、なんで……!?」

 

 しかし、その病気も治せるものだったと知り、ウタはなぜその薬を飲まなかったのか、なぜ未来に生きる術を自ら絶ったのか、と少し怒りを伴いながら問うが……

 

「お前が……ウタがいなかったから」

「!?」

 

 先程まで笑みを浮かべていたルフィの顔が悲しみに満ち、自身の手を握る手がギュッと締まった瞬間、ウタは頭が真っ白になり怒りなんて吹き飛んだ。

 

「おれ……しっかり、お前との約束守ったぞ……海賊王なって、誰もが自由に笑って幸せに暮らせる世界に、新時代を作ったんだけどよ……」

 

 先程まで笑っていたルフィの瞳からポロポロと涙が零れ始め、握られたウタの手に落ちて濡らしていく。

 新時代……幼い頃に拳を合わせて誓い合い、最期にルフィに託して行った二人だけの約束。

 

「でもよぉ……いねぇんだ……一番隣にいてほしいやつが……一番一緒に喜んでほしいやつが……ウタがいねぇんだ……」

「……ル、フィ……!」

 

 その言葉に、ウタもまた溢れる涙を止められずにいた。

 

「新時代を作って……それからしばらくして、やっと気づいた……やっと……気づかされた……!」

「あっ……」

 

 ルフィは握った手を手前に引き寄せ、自身の胸に飛び込む形になったウタを強く抱きしめる。

 

「おれ……ずっと……ウタの事が好きだった……愛してたんだって……やっと、気づいたのに……もう、どこにもウタはいなくて……!」

「っ! う、ぅぅ……!」

 

 ウタもまたルフィの背中に手を回していた。

 二人の瞳から溢れる涙が、互いの肩を濡らしていく。

 

「ごめん……ごめんね……ルフィ……!!」

 

 自身の大切な幼馴染が、愛する人が、病により生きる事よりも死ぬ事を選ぶほどに悲しんでくれた事、自分を想っていてくれた事にウタは何度も、何度も、謝罪する。

 

「ウダァ……ずっと……ずっど……会いだがった……!!」

「わたしも……わたしも……会いたかった……ルフィ……!」

 

 その後も、しばらくの間、二人は抱き合ったまま涙を流し続けた。

 

 過去に戻ってきたルフィは、ようやく……本当の意味で愛する歌姫に再会する事ができたのだった。

 

 

 

 少しして、落ち着いた二人は名残惜しそうに離れた。

 

「そういえば、なんでウタまで未来から戻って来たんだ……?」

「う~ん……たぶん、アレの、トットムジカの影響だと思う」

 

 ルフィは、未来からの逆行が自分だけだと思っていた為に同じように未来から戻ったウタに尋ねる。

 

「未来ではあの時トットムジカが完全に顕現したから観客の心まで取り込まれた……でも、わたしの場合、器になった影響からか魂みたいなものまであれに縛られる事になったの……」

 

 十二年後のあの時、ウタはトットムジカを召喚した。

 トットムジカは呼び出したウタウタの実の能力者が眠る事でその姿を消すが、ウタはこの時、食べたら眠れなくなると言われる毒キノコ【ネズキノコ】を食べており最悪の展開となっていた。

 その後、時間と共にトットムジカは完全に顕現し、ウタの世界(ウタワールド)にいた観客達の心を取り込んでしまった。

 

 その後、ルフィやシャンクス達の手によりトットムジカは倒されたが、その力の残滓がウタの世界に残っていた。

 

 そして魔王の器となったウタは、死後、その魂が消滅せずトットムジカの力に取り込まれたらしい。

 

「ルフィが未来から戻った際にトットムジカもまた過去に戻った……その時、取り込まれた未来のわたしの魂まで一緒に戻ってきた……そして、今日、顕現する前にトットムジカが完全に破壊された事で縛られてた魂が解放された……その時、近くにいた幼いわたしの魂と同化した事で記憶が戻ったの……」

 

 ルフィとしては、今回、未来でウタを苦しませる元凶となったエレジアの滅亡を防ぐ事だけが目的だった。

 

 その為、ウタがトットムジカを召喚してしまう前に楽譜を取り上げ、瞬時に自分ではコレを破壊できないと察したルフィはシャンクスに向けて投げ、そしてシャンクスの手により破壊する事に成功した。

 

 その際に未来で取り込まれていたウタの魂が解放され、その場で消滅するはずだった……しかし、そのすぐ近くには同じ魂を持つ幼いウタがいたのだ。

 

 解放された未来のウタの魂は、近くにいた幼いウタの魂に引き寄せられて同化……そして未来の記憶を取り戻した。

 

 一つ一つの小さな幸運が……ルフィとウタ、二人の奇跡の再会に繋がったのだ。

 

 もし、本当に神というものがいるのであれば、全力で褒め讃えたい。

 

「う、ぅうう……ウタァ……」

「もぅ……ルフィったら……本当に昔から……泣き虫なんだからぁ……」

「ウタだっで……泣いてんじゃねぇかぁ……」

 

 再び涙を流すルフィを揶揄うウタもまた同じように泣き出し、二人はまた抱き合った。

 

 十二年……ルフィからすれば約二十年ぶりの幼馴染であり、いつしか最愛の人となったウタとの再会。

 

「もう、ぜってぇ離さねぇからな、ウタ……」

「ルフィ……」

 

 ルフィはウタを抱き締める力を強める。

 

「お前を苦しめ続けた全ての元凶になった悲劇は消えた……もう……お前の『罪』は、どこにもねぇ!」

「う……ぅ……うぅぅあぁああ……ルフィ……ルフィ……! ありがとう……ルフィ……!」

 

 エレジアの滅亡……そして世界の七割の人を巻き込んだ未来のウタが起こした罪……その元凶は消え、もうウタが罪を犯す事も無くなった。

 ウタはルフィの胸に顔を埋め、泣きながら感謝の言葉を繰り返す。

 

 ルフィは、そんなウタの頭を撫でながら、未来の……自分の気持ちに気づいた時の記憶を思い浮かべた。

 

 

 

ーーーーーー

 

 ルフィが海賊王となってから二年目の宴の日。

 

 故郷であるフーシャ村にシャンクス達赤髪海賊団やカイドウ、ビッグマム、カタクリ、ローやキッド、バルトロメオや麦わら大船団といった海賊、海軍の元帥やじいちゃんを含む将校達、元革命軍の首魁にして父親のドラゴン、参謀総長にして兄のサボといった、もはや村の中に入り切らない程の人が集まりどんちゃん騒ぎをする中、ルフィの傍には彼に好意を寄せる女性陣が大量に集まっていた。

 

 ……サンジはそれを見て血の涙を流していた。

 

 もちろん、ルフィと女性陣が話してるのは結婚だとかそういった話だ。

 ルフィも、もう二十一になった為、そろそろ決めないといけない。

 

 ちなみに、しらほし姫はそのままだと大きすぎるので、チョッパーの作った薬により今日一日だけ小さくなっている。

 

「まず、ルフィって結婚の意味分かってる?」

 

 と、ナミに聞かれたルフィは肉を食いながら答える。

 

「それぐらい、おれにだって分かるぞ! あれだろ? 愛する人と生涯? 一緒にいるって事だろ?」

「うーん、まぁ、大まかに言えばそうね……一応、知ってんだ」

 

 分かってるような分かってないような答えに苦笑いする女性陣。

 

「でもよ~、その愛する? って気持ちがよく分かんねぇんだよな」

「「「はぁ~~……」」」

 

 そして恋というもので一番肝心な部分が抜けているルフィにため息を吐く女性陣と周りで聞いているシャンクスやサボ達。

 

「そうですね……その人の事を想うと、こう……胸の奥がギュッと締め付けられる、と言いますか……ズキっと痛むと言いますか……」

 

 と、しらほし姫。

 それに周りも、うんうん、と同意して頷く。

 

「なんだそりゃ? 病気か?」

「違うわよ! それが恋ってものなの! 誰かを愛するって気持ち! ルフィにそう思い浮かべて感じる人はいないの!?」

 

 そして、相変わらず見当違いな方向にいってしまうルフィにナミはプンスカ怒りながら叫ぶ。

 

「うーん……」

 

 ナミに言われて、ルフィは今までに出会った女性を思い浮かべた。

 

「そんなやつ、特には……」

 

 と、そこまで言いかけて

 

「(出た、負け惜しみィ!)」

 

 よく勝負で負けた自分を揶揄ってきた少女を思い浮かべた時、ズキっと胸が痛むのを感じた。

 

「……あれ?」

 

 気のせいか? と感じたルフィは更に思い浮かべる。

 

「(わたしはウタ! 赤髪海賊団の音楽家で、シャンクスの娘!)」

 

 初めて出会った時を思い浮かべ、また、ズキっ……と痛む。

 

「(ルフィーー!)」

 

 ズキっ……

 十二年後、ウタワールドの中で再会した時、胸に飛び込んできた少女を思い浮かべ、またしても痛む。

 

「(いつの間にか、ルフィの方が背高くなってたんだね.....)」

 

 ズキッ……!

 数多くやった勝負の終わりを告げるような言葉を思い浮かべ、更に強く痛む。

 

「(いつかきっと、これがもっと似合う男になるんだぞ!)」

 

 ズキッ!!

 自分に麦わら帽子を被せて消えていく幼馴染を思い浮かべ、涙が出るほど痛む。

 

「……ウタ……!」

 

 その名前を呟いた瞬間、ルフィの胸は締め付けられた。

 締め付けられ、先程からズキズキと痛む胸を抑え、そこでようやくルフィは自分の目から涙が溢れていることに気づいた。

 

「……なんだ。いるじゃない、ルフィ……あんたが……想ってる子が……」

 

 その様子にナミだけでなく、他の女性陣、周りで気にしていた人まで涙を浮かべてルフィの傍を離れ、シャンクスもルフィの頭を少し撫で、去って行った。

 

何かを思いたったルフィはその場でスッと立ち上がると、一瞬にして消え、フーシャ村から離れた崖の上に……ウタの墓の前まで行った。

 

「(帰ってきたら少しは強くなったか見てあげる!)」

 

「あ……」

 

 次々と脳裏をよぎるウタとの思い出……

 ルフィは膝から崩れ落ち、両手が地面に着いた。

 

「(ルフィ……)」

 

「ぁ……あァ……」

 

 救えなかった……エースの時と同じ……

 

「……ウタ……ウタァ……ウタァアア゙ア゙!!」

 

 気づいた時には何もかも遅すぎて……ルフィは涙を流しながら墓の前で(うずくま)り、最愛の少女の名を喉がちぎれる程に叫ぶ事しかできなかった。

 

 その叫びは、夜の闇に木霊し消えていった……

 

ーーーーーー

 

 

 そして今……数々の奇跡が起こり、未来でルフィが取りこぼしたはずの最愛の少女が帰ってきた。

 

 ルフィはそっとウタを胸から離し、力強く言う。

 

「ウタ……今度は一緒に叶えるぞ……おれ達の夢……」

「うん……うん……! 叶えよルフィ……一緒に!」

 

 止めどなく溢れる涙を何とか抑え込み、再び誓い合うルフィとウタ。

 

 そして

 

「ウタ……愛してる」

「わたしも……愛してるよ、ルフィ……」

 

 どちらからともなく近づき、そっと口付けを交わした。

 

 

 

 

 会場から離れ、王であるゴードンから先程破壊した楽譜が何だったのか説明を受けたシャンクスとベックはルフィ達のいる部屋に向けて歩を進めていた。

 

「まさか、ルフィに助けられるとはな、お頭……」

「あぁ……本当にルフィには返しきれんくらいの恩ができた」

 

 受けた説明から、あの楽譜をもしウタが歌ってしまった時の事を想像しただけで冷や汗が止まらない。

 

 しかし、七歳とは思えないほどに研ぎ澄まされた見聞色をもつルフィが真っ先に気づいたことにより、その結末は防がれた。

 

 感謝してもしきれないくらいの恩だ。

 

 そして、もう一つ気になったのはフーシャ村から始まったルフィの行動だ。

 

 普段の年相応の子供っぽいところからは想像もつかない程の真剣な眼差し、凄まじい見聞色の精度……そして、今回の悲劇の阻止……

 

 まるで、先に起こる事を全て知っていたかのようなルフィの行動がどうしても気になったのだ。

 

 そして、ルフィとウタがいる部屋の前に着く。

 シャンクスは扉の前に立ち、軽くノックをする。

 

「ルフィ? ウタ? ……入るぞ」

 

 ノックをしても呼びかけても返事がない為、シャンクスはそっと扉を開ける。

 

 そこには……

 

 手を繋ぎ合わせて互いの息がかかる程に身を寄せ合って眠る二人の子供がおり……

 

「これは……邪魔しちゃ悪いな、お頭」

「……あぁ、そうだな……話はまた明日にするか」

 

 その光景にベックと共に微笑みを浮かべ、起こさないようにそっと扉を閉める。

 

「ありがとう……ルフィ」




トットムジカの完全顕現による器の魂の呪縛は独自設定です...

未来ルフィと未来ウタの本当の意味での再会を実現するために必要でした。

かなりややこしい部分だったかと思います...

ざっくり説明しますと

未来ルフィ7歳→? ♡←未来ウタ9歳 離れ離れに

↓12年後

未来ルフィ19歳→? ♡←未来ウタ21歳 再会?(ウタワールドの中なので)

未来ルフィ19歳→? ♡←未来ウタ21歳 トットムジカ

未来ルフィ→?♡ ←未来ウタ死亡 トットムジカ(未来ウタの魂)

↓2年後

未来ルフィ21歳、自身の気持ちに気づく

↓3年後(年齢で言うと4年後)

未来ルフィ25歳死亡、そして逆行(未来ルフィ5歳に)
トットムジカ(未来ウタの魂)も逆行

↓1年後

未来ルフィ6歳→♡ ?←幼ウタ8歳 再会??

↓1年後

未来ルフィ7歳→♡ ?←幼ウタ9歳 エレジアへ

未来ルフィ→♡ ?←幼ウタ トットムジカ(未来ウタの魂)

未来ルフィ→♡ ?←幼ウタ (トットムジカ消滅) 未来ウタの魂 ←黄泉の国「こっちへいらっしゃい」

未来ルフィ→♡ 幼ウタ→同化←未来ウタの魂 ←黄泉の国「あれ?」

未来ルフィ→♥←未来ウタ →黄泉「尊いから帰るわ.....」



こんな感じ。

分かりづらいですね、すみません。これが限界です。

本当の意味での再会、というのは未来同士のルフィとウタが再会した、て事です。

誰だ、こんなややこしい設定にしたの.....自分だわ。
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