トットムジカの楽譜を破壊しエレジアの悲劇を防いだルフィ。
その時、未来でトットムジカにより魂を囚われていたウタもまた記憶を取り戻し、およそ20年ぶりの再会を果たしたルフィとウタはようやくお互いの想いを通じ合わせた。
約二十年に及ぶ長い年月、離れ離れになっていたルフィとウタはようやく奇跡的な再会を果たした。
その後、互いに口付けを交わした二人は泣き疲れたのか、シャンクス達を待たずして夢の中へ落ちていった。
そして、翌朝.....
「ルフィ.....起きて、朝だよ」
「ん~.....あ、ウタ.....」
ルフィより少し早く目を覚ましたウタは、横で穏やかな顔をしながら眠る最愛の少年の顔を撫でながら声をかける。
はその声にルフィも目を覚まして目の前にいる最愛の少女の顔を寝ぼけた目で見つめる。
「おはよう、ルフィ」
「しし、おはよう、ウタ」
朝の挨拶を交わしながら、二人は自然とそのまま近づき、口付けをする。
中身は両方二十歳を過ぎてるが身体は子供なのでなかなか異様な光景である。
「えへへ、これが、おはようのキスかぁ」
「にっしし! 何か分かんねぇけど、すっげぇ嬉しい気持ちになるなぁ!」
そっと、数秒触れ合うだけのキス。
それだけで二人は顔を綻ばせ、幸せを噛み締める。
「うん.....ずっと傍にいてね、ルフィ……」
「あぁ、ずっと一緒だウタ.....二度と離れねぇ」
身体を寄せ合って抱きしめ、先程のキスとはまた違う長い口付けを交わす二人。
約二十年の時を埋め合わせするかのような深いキスだ。
今後、何があろうと二人の仲を引き裂く事はできないだろうし、離れる事もないだろう。
「「(クゥ~……)」」
「「んっ!?」」
そんな時、どちらからともなくお腹の音が小さく鳴った。
長い口付けを終えた二人は、それと共に笑い合い
「にししっ! 飯行くか!」
「ふふっ、そうだね! 食堂に行けばシャンクス達もいるだろうし!」
ベッドから起き、部屋を出た二人は互いの手をギュッと恋人繋ぎで握り合い、シャンクス達もいるであろう食堂へと足を運んだ。
「おっ、起きたか。ルフィ、ウタ……何か雰囲気変わってねぇか、お前ら?」
「おはようさん、お頭は察しな」
「あぁ、ルフィ君にウタ! 無事で良かった.....!」
「「おはよう、みんな!」」
食堂に着くと、案の定、そこにはシャンクス達赤髪海賊団とゴードンにエレジアの国民達が朝食を摂っていた。
にこやかに声をかけて来たシャンクスだったが、恋人繋ぎで入ってきた二人を見た瞬間、真顔になり、その横でベックが色々と察する。
そして、二人に気づいたゴードンは足早に近づくと涙混じりに無事を喜んだ。
昨晩の事もあり、幼い二人の事を思うと気が気ではななったのだ。
そんな様々な反応をする人達に元気よく挨拶をするとルフィとウタは互いに用意された朝食の前の椅子に座り、食事を摂り始める。
「はい、ルフィ。あーん」
「んぐっ.....……んめぇ!」
その間もウタがルフィにあーんをしたりと仲睦まじい行動をする二人を見てシャンクスを除いた人々は暖かい笑みを浮かべる。
それを見たウタの父シャンクスはと言うと
「.............」
魂が抜けたかのように、そのトレードマークの赤髪も顔も真っ白に染め上げ、口をポカンと開けたまま、そこだけ何故か甘い空間となった二人を眺めていた。
「おい、お頭! 気をしっかり持て!」
「だはははは! ありゃ、もう完全にそういう事だな!」
「ヤソップ、食事中は静かにしろ」
「いいじゃねぇか、ホンゴウ。それより、お頭を何とかしろ」
「ありゃ、もう無理だろ」
二人の仲に気づくベック達船員はそれぞれの反応を示し笑い転げ、ゴードンやエレジアの国民達もそれを見てニコニコと笑っていた。
その後、終始イチャイチャしながらルフィとウタは食事を済ませ、復活したシャンクスもハイライトを失った目でモソモソと食事を済ませた。
何故か苦かったはずの朝のコーヒーが甘く感じた。
食事を終え一息ついた後、シャンクス達赤髪海賊団、ゴードン、エレジアの国民達は港に止まるレッド・フォース号の前にいた。
「本当にいいのかゴードン? 修復を手伝わなくて」
「構わないさシャンクス。下手すればこの国全土が破壊されていてもおかしくはなかった.....それを防いでもらったのだ。この恩は一生忘れないだろう」
シャンクスが楽譜を破壊する際に生じた衝撃で昨晩のパーティ会場となった一室は今現在も悲惨な有様となっている。
赤髪海賊団は、その修復を手伝うつもりでいたがゴードン達に止められた。
この国を救ってもらった恩人達にそのような真似はさせられない、という国全体の判断だ。
「ルフィ君……本当に君には感謝してもしきれない。だから言わせて欲しい。ありがとう、この国を救ってくれて」
「にっししし! 気にすんな! おれはウタの為にやっただけだしな!」
たった一人の愛する少女の為だけに、危険を
ルフィは
未来で海賊王となり新時代を築いた後でも
「(おれは海賊王であって英雄じゃねぇ! だから感謝なんてもんはいらねぇ! くれるなら肉くれ!!)」
と世界中に豪語し笑いを誘った程だ。
そんな自由というものを体現したかのようなルフィにゴードン達も笑みを浮かべる。
「ははは、そうか。返す言葉もないな」
そしてゴードンはウタの方に向き直る。
「ウタ、我々の不注意で危険に晒してしまいすまなかった……! それでもまた……いつかまた、この国に遊びに来てもらえると嬉しい……!」
あのトットムジカがウタのもとに引き寄せられた一番の要因は国全体に響き渡るようにしたあの歌声だ。
ウタの歌声を広めるよう判断したのはゴードン達であり、そこだけは悔いても悔やみきれず頭を下げる。
「もちろんだよ、ゴードン! またいつか必ず来て、今よりももっと上達した歌を聴かせてあげる!」
そんなゴードンに華のような笑みを浮かべて応えるウタ。
今でさえ音楽の国の王をもってして世界の宝と言わしめるウタの歌声がこの先どうなるのか……楽しみで仕方がない。
「あぁ、君の歌声をまた聴かせて欲しい! その時はぜひ歌ってくれ!」
「うん!」
ウタとゴードンは最後に握手を交わして別れを済ませた。
その際、ウタは涙を堪えるような表情をしていた。
かつての未来では、シャンクスと別れた後、十二年に渡って懸命に育ててくれたゴードン……ウタにとって第二の親と言っても過言ではないのだ。
「よし、野郎ども! 出航だ! フーシャ村に帰るぞ!」
あらかた荷物も積み終えたことを確認し、シャンクスの号令のもとレッド・フォース号はエレジアの港を離れた。
今度はしっかりとウタを乗せ、大勢のエレジアの民に手を振られ見送られながら船は進む。
やがて、エレジアの港が見えなくなるまでウタとルフィも手を振り続けた。
フーシャ村に向け進むレッド・フォース号の甲板の上……
そこにシャンクス達赤髪海賊団の面々、そしてルフィとウタが集まり腰を降ろしていた。
「さて、ルフィ……少し話したい事がある」
いつになく真剣な眼差しを向けるシャンクスの顔をルフィとウタもしっかりと見据える。
……手は繋いだままだが。
「ゴホン……まぁ、なんだ。お前らの関係についてはまた後で聞くとして先に伝えておく……ありがとう、ウタを守ってくれて」
シャンクスはその言葉と共に少し頭を下げ、ベック達も静かに頭を下げた。
「にしししし! 当然だ、ウタの事が好きだからな、おれ!」
「る、ルフィ……」
あっさりとウタに好意を抱いてる事をシャンクス達に暴露し、ウタも嬉しさからか恥ずかしさからか顔を赤く染める。
「そ、そうか……って話はそこじゃない。ルフィ……お前のフーシャ村から始まった今回のエレジアまでの行動……まるで、先に起こる事を全て知ってたかのようだった……お前は、何者だルフィ?」
それにシャンクスも非常に悩ましい顔を見せるが、瞬時に切り替えた。さすが未来で最後には海賊王に次ぐ【覇王】とまで言われた海の皇帝の一人だ。
そして、核心をつく問いをかける。
フーシャ村で急に凄まじい精度の見聞色を見せた事。
エレジアのパーティ会場における常時見聞色の展開。
明らかに、あのトットムジカがウタを狙ってくる、というのを知ってなければそこまでの行動はできないだろう。
事実、ルフィがいなければ確実にウタはトットムジカを歌い……想像もつかない事態になっていた。
「ルフィ……」
「大丈夫だ、ウタ。シャンクス達なら」
そんなシャンクスの真剣な問いに、ウタは握る手に力を込め不安な声をあげる。
それにルフィはしっかりと応えて安心させ、シャンクスに目を向けた。
「おれは、未来から戻ってきたんだ」
そしてルフィは全てをシャンクス達に話した。
海賊王になった事だけは伏せ、未来で死んだ後、気がついたら五歳の自分に戻っていた事。
その未来で実際に起きたエレジアのトットムジカによる悲劇、そしてシャンクス達とウタの突然の別れ。
その十二年後に起こした世界の七割の人を巻き込んだウタの罪、そしてウタが
ルフィが長年ウタの事を愛していた気持ちに気づいた事。過去に戻ってきてから、そのウタを救う為に行動してきた事。
そして、ルフィが過去に戻ってきた際、トットムジカと共に取り込まれた未来のウタの魂もまた戻ってきた事。
楽譜が破壊されトットムジカが消滅した時、その魂が解放され近くにいた過去のウタの魂と同化し記憶を取り戻した事。
「……いきなりこんな事話しても信じちゃもらえねぇと思った。だから、一人でウタを救うしかなかった」
「「「……」」」
そんなルフィの話を、シャンクス達は一言も発さず黙って聞き入っていた。
「……にわかには、信じ難い話だ」
少しの間、沈黙を挟みシャンクスが口を開いた。
たしかに、いきなりこんな話をされたとしても誰一人として信じはしなかっただろう。
「しかし、そのルフィのおかげでウタが救われた。守られた。信じないわけにはいかないだろう」
シャンクスはそう言って優しく微笑みながらルフィの頭に手を置き、そっと撫でた。
「本当にありがとう、ルフィ……ウタを救ってくれて」
「にしししし……う、うぅ……」
それにルフィはいつものように笑いながら涙を浮かべる。
そして、シャンクスはルフィの頭を撫でる逆の手でウタの頭も優しく撫でた。
「ウタも、その未来では辛い思いをさせたな……すまなかった」
「うぅぅ……シャンクスぅ……」
ウタもまたボロボロと涙を流して改めて再会を喜んだ。
そんな泣き出す身体は子供な二人を見て、シャンクスもまた涙を浮かべてケラケラと笑う。
「おいおい、泣くなよ。まだまだ子供だなぁ、お前ら」
「そういうお頭も泣いてんぞ」
「威厳ねぇな」
「うっせぇ! 泣いてなんかねぇ!」
「「子供じゃない!!」」
「「「ぎゃははははは!!」」」
そんな子供二人、大人一人なのか子供三人なのか分からない姿を見て、周りにいるベックらもゲラゲラと笑い出した。
「よーし、野郎ども!! 改めてルフィとウタ、俺たちの再会を祝して宴だ!! さっさと用意しろ!!」
「「「おおーー!!!」」」
途端に、いつもの赤髪海賊団に戻った面々は酒だ料理を用意して真昼間だというのに宴を始めた。
ルフィの目指す自由を体現する海賊団がそこにはあった。
「ルフィ……愛してる」
「おれもだ、ウタ……」
「…………」
「おい、お頭が息してねぇぞホンゴウ」
「……ご臨終です」
「「「お頭ぁーー!!」」」
その宴の最中でもルフィとウタは終始イチャイチャし、あげくの果てに口付けまで交わす二人を見てまた真っ白に染まるシャンクスを周りが慌ててフォローしていた。
フーシャ村まで生きていられるだろうか。
親バカンクス(シャンクス)は今後精神的にダメージを受け続けます。