フーシャ村へと帰ってきたルフィとウタ、シャンクス赤髪海賊団の一行。
帰ってくるとルフィとウタの関係に気づいたマキノが女神の笑みを浮かべながらウタにナニカを教える。
その後、改めてウタにも覇気を覚えてもらうために修行をつけるルフィ。
日常でも修行の中でもイチャイチャする二人に毎回白く染まるシャンクス。
そんなある日、いつもの酒場で騒いでいると突如としてヒグマ率いる山賊団が入ってくる。
酒を頼むもののシャンクス達が飲んでいるお酒でちょうど切らしていたため、ヒグマは頭に来ていたもののルフィとウタのせいで白く染まっているシャンクスに拍子抜けになり、いろいろと察した後、酒場を出ようとする。
その時、ルフィとイチャイヤしていたウタがシャンクスの手配書をヒグマに手渡し、その懸賞金を見たヒグマ達は慌てて酒場を去っていった。
(ついでにシャンクスの左腕とヒグマの命が助かった)
その日の夜、マキノから教わった普段のキスとは違う深くて甘い愛のキスをするウタとルフィ。
今日もフーシャ村は平和である。
赤髪は(以下略)
なぜかヒグマが助かり、シャンクスの左腕も守られ平和な日々が続くフーシャ村。
港ではいつもより短い航海から終えた赤髪海賊団が荷下ろしをして慌ただしく動いている中、船長であるシャンクスは大事な娘であるウタと共に酒場の一室で話をしていた。
ルフィは赤髪海賊団の荷下ろしを手伝ったり走り回ったりして、とにかく自身の覇気に耐えられる身体を作ろうと精を出している。
ちなみに、シャンクスから“大事な話”と念を押された為、見聞色を閉じてシャンクスとウタの会話を盗み聞きするようなことはしていない。
「さて、ウタ……大事な話ってのは」
「そろそろ、ここを離れるって事だよね」
「……気づいてたか」
早速、話を切り出そうとすると、ウタからいきなり図星を突かれ、シャンクスはフッと柔らかな笑みを浮かべる。
このフーシャ村を拠点に活動しだして既に一年。そろそろ、ここを離れようとしていたのだ。
「そりゃぁね。わたしだって赤髪海賊団の音楽家でシャンクスの娘だもの」
「なんて言いつつ、この間の航海はルフィとべったりでついてこなかったくせに」
「そ、それは仕方ないじゃない……ルフィが好きで……離れたくないんだもの……」
まだ育っていない胸を張って赤髪海賊団の音楽家とのたまうウタであるが、シャンクスに痛いところを突かれ口を尖らせる。
そう、今回の航海の際、ウタは「ルフィも乗せてくれないなら行かない」と言って、シャンクス達についていかなかったのだ。
「あぁ、分かってる。未来で起こった話をルフィから聞いたからな……本当にすまなかった」
エレジアからフーシャ村へと帰る船の上でルフィ話してくれた未来の話。
ウタがトットムジカを歌ってしまった事により魔王が降臨し、エレジアをウタが眠るまでの数分のうちに破壊しつくした悲劇。
その直後、海軍がすぐ近くまで来ているのが見え、時間の猶予がなくシャンクス達は娘の罪を被り『赤髪海賊団がウタを利用してエレジアを襲撃した』という嘘でウタをエレジアへと置いて行ってしまった。
その結果、ウタは愛するルフィと十二年……ルフィに至っては前世も含め約二十年もの間、離れ離れとなり今回、奇跡的な出来事が重なり再会を果たしたのだ。
だからこそ、二人が互いの傍から離れたくない、という気持ちはシャンクス達も痛いほど理解していた。
その、離れ離れになった要因が自分達にあるからだ。
シャンクスはウタの頭に手を置き、そっと撫でる。
「それで、だ。おれ達は次の航海でもうフーシャ村に帰ってくることはない。ウタは……どうしたい? おれ達と共に来るか、それとも……」
「もう決まってるよ、シャンクス……わたしは……」
その話し合いの数日後……シャンクス達と別れの日が来た。
「行っちゃうんだな」
港には多くの人が集まり、シャンクス達を見送りにきていた。
ルフィはウタと手を繋いで、船に乗ろうとしているシャンクスに声をかける。
「あぁ、長い拠点だったが、とうとうお別れだ。ルフィ……ウタのこと頼んだぞ」
「任せろ! ぜってぇウタのことは離さねぇ!」
「ルフィ……わたしも、ルフィと一緒に行くからね、シャンクス達のとこまで!」
シャンクスはギュッと手を繋いで力強く約束するルフィとウタに優しく微笑む。
白くならなくなった辺り、多少、精神が鍛えられたのだろうか。
「シャンクス! おれはいつか、ウタと一緒にこの一味にも負けない仲間をたくさん集めて、シャンクス達に会いに行って! ワンピースを手に入れるぞ!」
「わたしも! ルフィと一緒に世界中を仲間たちと回って、たくさんの歌を作って、シャンクス達に会いに行く!」
「おれは」
「わたしは」
「海賊王になる男だ!!」
「新時代の歌姫になる女よ!!」
その宣言と共に……ルフィとそしてウタの体からシャンクス達に向け膨大な量の覇気が放出され、レッド・フォース号と視界に広がる海面を大きく揺らした。
“覇王色の覇気”だ。
「なっ……!?」
「「「っ!?」」」
子供二人から発せられたその膨大な覇気に、ヤソップ達は目と口を大きく開き、ベックですら咥えていたタバコをポロッと落とし、シャンクスも冷や汗をかきながら目を見開いた。
「ルフィは持っているとは思ったが……まさか、ウタまで……」
数百万人に一人の“王の資質”を持つ者にしか体得できない“覇王色の覇気”。
未来のことを話してくれたルフィはその未来の内容から持っているだろうと感づいていたものの、まさかウタまで持っているとは思わず、シャンクスも苦笑いするしかなかった。
「当然よ! だって、わたしは……わたしは……!」
「あぁ、分かっている、ウタ……」
ウタはそんな疑問を呈するシャンクスに何かを言おうとしたものの涙が溢れて来て上手く言葉に出せず、シャンクスはそんなウタの頭を撫でて代わりに口を開く。
「どんなに離れていても、お前はおれの娘だ。おれ達の大切な家族だ!」
「うん……! ありがとう……お父さん!」
"お父さん"と初めてウタの口から出たその言葉に微笑んでいたシャンクスも一瞬で涙をグッと堪える表情になり、そっと離れた。
そして頭に被っていた麦わら帽子を“左手”で取るとルフィの頭に被せる。
「ルフィ。そしてウタ。この帽子をお前達に預ける。おれの大切な帽子だ。いつか必ず二人で返しに来い。立派な海賊と歌姫になってな。約束だぞ!」
そのシャンクスとの約束に、ルフィもかつてと同じように涙を流した。
二人して泣きじゃくるルフィとウタに背を向け、シャンクスは船に乗り込み、レッド・フォース号は港を離れる。
「達者でなー!」
「お元気でー!」
「気を付けてー!」
そして、いつしかフーシャ村の住人全員から慕われていた赤髪海賊団は大勢の人に見送られ船を進ませる。
「お頭、あいつらは大きくなるぜ?」
「あぁ、ルフィはおれがガキの頃とそっくりだ。ウタもおれ達の娘だし、当然だ」
「ふっ、そうだな……」
甲板の上で船員達がフーシャ村に手を振り続ける中、ベックとシャンクスは小さくなっていく二人の子供を見つめながら微笑みそんな会話をする。
やがて、レッド・フォース号が見えなくなるまでルフィとウタはジッと涙を流しながら見送っていた。
その預かった麦わら帽子を二人でしっかりと持ちながら……
シャンクス達と涙の別れと約束の日から数日が経った。
ルフィとウタは一日は朝のおはようのキスから始まり、日中普段の無邪気な勝負をしながら覇気の修行、身体作りに精を出し、家に帰ると相変わらずイチャイチャとおやすみのキスまでして体を休める毎日を送っていた。
相変わらず性行為というものに対して疎い部分のあるルフィではあるが、ウタとする“ディープ・キス”というものの気持ち良さと、してる間の幸せな気持ちには完全にハマっており常に二人のキスは深く甘い。
ちなみに、二人がこのキスをしていることは未だにシャンクスも知らない。
知ったら完全にシャンクスの息の根が止まるだろう。
元凶であるマキノさんは悪魔か何かだろうか。
「んぅ……ルフィ……」
「ぷはぁ…………ウタ、愛してる」
「わたしも、ルフィ……」
数十秒から一分近くの長くて深いキスを終えて唇を離す。
二人して風邪を引いたかのように顔や体が火照って熱いが、それすらも何故か心地良いため辞められない。
改めて言っておくが、中身は二十歳を過ぎてる大人な二人だが身体は七歳と九歳である。
傍から見れば卒倒ものである。
ルフィに関しては……何やら下半身の一部分が硬く大きくなるという謎の現象に見舞われるが本人はその意味が分からず、それをマキノに聞いたところ
「うーん、まだソレを教えるのは早いわね。あと十年くらい経って大きくなったら教えてあげる♪」
「「えー」」
と流されてしまった。
その時のマキノの笑みはまさに”女神にして悪魔”だったという。
そんな日々を送っていた、ある日の事……
「ルフィーー!! じいちゃんが来たぞぉ!!」
ルフィとウタの幸せで平穏な日々を脅かす声が二人のいる酒場に響き渡った。
筋骨隆々とした巨体に黒いスーツを着込み、頭は短く刈り込んだ白髪の短髪。口周りに同じように白い髭を蓄えた老人が酒場の入り口に堂々と立ち、豪快な笑みを浮かべていた。
「え、誰……」
「げぇっ、じ、じいちゃん!?」
「じいちゃん!? この人が!?」
ウタは初めて見る人物に首を傾げるが、ルフィの爺ちゃんの一声により驚愕する。
そう、この筋骨隆々の老人こそルフィの祖父であり、シャンクス達海賊と対を為す存在“海軍”の中でも“英雄”と謳われる中将『モンキー・D・ガープ』である。
実力的に見れば“大将”にいける程の力を持つが、ルフィのように“自由”に行きたいが為に長年中将の地位に留まっている。
まぁ、大将以上になると“ある奴等”の直属の部下になってしまうという点もあるが。
「久々に会ったじいちゃんに向かって、げぇっ、とはなんじゃ!!」
「ぐへぇっ!」
そんなガープは会いたくなかったという反応を見せるルフィの頭にゲンコツを落とし、ルフィは痛みのあまり床に蹲る。
「ちょっと! ルフィになんてことするの!!」
それを見たウタはルフィとガープの間に立ち塞がり、ルフィを守るように両手を広げガープを睨みつける。
「ん!? 誰じゃ、この小娘は?」
「わたしはウタ! 赤髪海賊団の船長シャンクスの娘! そして、ルフィと一緒に海賊になる歌姫よ!」
ガープの迫力に引けを取らないウタの強い言葉に拳を引くガープ。
しかし、シャンクスの娘、と聞いたガープは顔をしかめっ面に歪ませた。
「赤髪の小僧の娘じゃと!? あやつに子がおったとは……ええい、しかし、海賊になるのはこのワシが認めんぞ、ルフィ! こんな小娘と仲良くするのは辞めるんじゃ!」
「嫌だ! シャンクスと約束したんだ! おれはウタと一緒に立派な海賊になってこの帽子を返しに行くって!! じいちゃんがなにを言ったっておれはウタから離れねぇし海賊になるのを諦めねぇぞ!!」
それにルフィも涙を抑えて立ち上がり、麦わら帽子を手に取るとウタと同じようにガープに立ち向かった。
そんなルフィに普段の子供らしいわがままな感じとは違った大人びた真剣みを感じたガープは口元をニヤッと歪ませ微笑んだ。
「ほぅ、ワシにそこまで逆らうか! ならば……」
そして、ガープは上のスーツを脱いでシャツ一枚の姿になると拳をボキボキと鳴らした。
「ワシと戦い、その覚悟を証明してみせろルフィ!!!」
「望むところだ!!!」
こうして、英雄と呼ばれる祖父と海賊王を目指す孫の大勝負が決まった。
「ワシは先にお前をよく放り投げてるジャングルの中で待つ!! 準備ができたら向かって来い!!」
ガープはそういうと、その場から姿を消して、よくルフィに課している拷問のような修行をしている森の中へと入っていった。
「ルフィ……大丈夫なの?」
ガープが姿を消すのと同時に、気が抜けたのかウタはその場にヘタッと座り込み、ルフィに不安な声を上げる。
「大丈夫だ、ウタ! まだ、じいちゃんに勝てるか分かんねぇけど……」
それにルフィは手に持った麦わら帽子をウタの頭に被せて、ニカッと笑いながら告げる。
「おれは負けねぇ!!」
「ルフィ……うん! 信じてる!!」
そして、ルフィはガープの待つ森の中へ向かった。
ウタは涙を抑えてマキノと一緒に酒場の前に立ち、ルフィとガープが戦う森の方を見つめていた。
ただ、
森の中の少し開けた場所にガープは立っていた。
そこに、ルフィも遅れて着く。
「来たか、ルフィ!!」
「じいちゃん、勝負だ!!」
もはや、二人の間に言葉は不要だった。
今は己の拳で祖父から勝利を勝ち取るのみ。
ルフィは先手必勝とばかりに、ガープに近づきながら右腕を後ろに伸ばす。
「腕が伸びたじゃと!? ルフィ、お主、悪魔の実を!」
「ゴムゴムのぉ!!」
ルフィの腕が伸びた事に一瞬驚愕するガープであるが、悪魔の実を食べたと分かればすぐに冷静になる。
だが、驚愕するのはそれだけではなかった。
ルフィの後ろに伸ばした腕が“真っ黒に染まった”のだ。
「(まさか武装色!? なぜルフィが!?)」
「
ルフィが武装色の覇気を纏った事、それにもまた驚愕したガープではあるが、そこは海軍の英雄と呼ばれる男。
しっかりとルフィの拳を武装で強化した左腕で受ける……が
「(なんじゃ、この威力は!?)」
そのまま受けるのは不味いと歴戦の経験から一瞬で判断したガープは衝撃と共に後ろに飛んで受け身を取りダメージを減らした。
たかが七歳の孫が放つレベルではない威力にガープは少し冷や汗を流す。
「やっぱ、一筋縄じゃいかねぇか、じいちゃん!」
「ルフィ……お主、どこでその覇気を……赤髪の小僧か?」
そして大したダメージも与えられなかったルフィはニカッと笑う。
ガープはここ一~ニ年程、海軍の仕事のせいで会えてなかったルフィが覇気を使ってきたことを尋ねるが……
「おれに勝ったら、教えてやる!!」
ルフィはそれと同時に今度は両腕を伸ばす。
ガープもニヤッと豪快な笑みを浮かべて応え、次に来る技に構える。
「生意気な! 来い、ルフィ!!」
「ゴムゴムのぉ……バズーカァ!!!」
再び覇気を纏った強烈な一撃を防いだガープは、そのまま後ろに吹き飛び木々を数本破壊しながら着地した。
だが、瞬時に海軍が扱う体術である六式の一つ“
が、まるで“未来を読んでいる”かのように、振り下ろされる前に避けたルフィにまたしてもガープは驚愕する。
「(見聞色もか! しかも、恐ろしい精度じゃ!!)」
その後も、ルフィとガープの戦いは熾烈を極めた。
フーシャ村にまで響き渡る山全体が揺れてるかのような轟音。木々がなぎ倒され更地となっていく森。
酒場の前にいながらも、これまでの修行で慣れてきた見聞色を使い、うっすらとルフィとガープの戦いを見届けるウタはギュッと両手を胸の前で握り祈っていた。
「ルフィ……信じてるから……!」
戦いは数時間にも及び、昼間から始めた戦闘はすでに夕方に差し迫って来ていた。
そんな中……
「……」
ガープは腕や顔に多少のアザや傷を作りながらも、息の一つも上げずに堂々と立っており
「ぜぇ……ぜぇ……ぐっ……!」
ルフィは両手足が“ボロボロ”になりながら、息を荒げて全身に走る痛みに顔をしかめていた。
そんなルフィの状態をガープは戦いながら理解していた。
「ルフィ。その覇気はワシから見ても確かに脅威じゃ。じゃが、その覇気にお主の身体が追い付いておらん!! それ以上、使えば二度と手足が動かなくなるぞ!!」
覇気の強さと身体の未熟さ。凄まじいアンバランスの上に立っているルフィの技はその凄まじい威力と同時に代償として自身の身体を痛め続けていた。
そのことをガープは警告するも、ルフィの目から闘志は消えなかった。
「(ルフィ……信じてるから……!)」
「ウタが……信じてくれてんだ……おれの勝利を信じてくれてんだ!」
ルフィは痛む体を無理やり起こして、ガープを睨む。
「ウタが信じてくれるから、おれも、おれが信じる、おれを信じる!! だから、おれは……負けねぇ!! おれは……海賊王になる男だっ!!!」
その瞬間……ルフィの身体から凄まじい“覇王色の覇気”が吹き荒れて地面を砕き、木々を、大気を揺らした。
「!? やはり、ルフィ! お主も持って生まれたか!!」
その覇気を真正面から受けたガープは一瞬驚いたものの、ニヤッと笑いながら構える。
そして、理解する。次に来る攻撃こそ“今のルフィ”が出せる最後で最強の一撃だと。
「ゴムゴムのぉ!!!」
その場で右腕を後ろに伸ばして、ルフィは覇気を“流す”。
それも武装色だけではなく……覇王色も一緒にだ。
「(ヒョウ五郎のじっちゃんが言ってた! 力むな! 流せ!! 留めたら腕が砕ける!! 思い出せ! 海賊王だった頃の一撃を!!)」
ルフィの体が金色に輝き、全身を巡る覇気が右腕一点に集中して流れていく。
そんな孫の異常な様子を、笑みを浮かべながらも冷や汗を流しガープも構えていた。
そして、繰り出す。
小さくはあるが、かつて最強の生物を打ち破った“神の一撃”を。
「
眼前に迫る、今のルフィの最強の一撃をガープは腕を交差させ……
「ぬぅおおおおお!!!」
自身が出せる“全力の武装色”を纏ってガードした。
凄まじい衝撃と轟音と共に地面は砕け散り、木々は吹き飛び、大気が裂け、雲が散る。
「「「うわぁああ!!」」」
「な、なんだ、この突風は!?」
「森の方からだ! さっき、ルフィとガープさんの入ってった!」
「何やってんの、あの二人!?」
「…………ルフィ……!!」
森を、山を吹き飛ばすかのような一撃は突風となってウタ達の待つフーシャ村を吹き荒れ、大海原すらも揺らした。
フーシャ村の住人達は突然の衝撃に悲鳴を上げる中、ウタだけは涙を浮かべながら最愛の人の名を呼び、信じ続ける。
パラパラと砕けた地面の破片が落ち、辺りに立ち込めていた土煙が晴れていく。
「…………」
そんな中、ルフィはシューと煙を上げる右腕を突き出したまま立ち……気絶していた。
そして最強の一撃を受けたガープは……
「……ふっ……がははははは! ワシの腕を一本持っていくとはな、ルフィ!!」
その自慢の鍛え抜かれた右腕が折れていた。
それでも、その痛みに耐え、口元から血を流しながら気絶した孫に称賛の声を上げ笑う。
「お主らの覚悟、しっかり見せてもらったぞルフィ! この勝負、お主らの勝ちじゃ!!」
こうして……ルフィとガープの戦いは、その覚悟を認めたガープの敗北で幕を閉じた。
「ルフィーー!!」
フーシャ村で待ち続けたウタは、森の方から帰ってくる二人に気づいて声を上げる。
気絶したルフィはガープの大きな左腕に抱えられていた。
「ガープさん……ルフィは……」
二人の元へ駆け寄ったウタは、ボロボロになったルフィを見て涙を浮かべながらガープに尋ねる。
「おぉ、ウタちゃん、だったか。ルフィなら無事じゃ。ちょいと力を使いすぎて眠っておるだけじゃ」
「!……良かった!!」
昼見た時とは違うガープの柔らかい笑みを浮かべた返答に、ウタもほっとし眠るルフィの頭を撫でる。
「頑張ったね……ルフィ……」
そこに、マキノさん達も近づいてきた。
「ルフィ! ガープさん! ……! ガープさん、その腕……!」
「あぁ、マキノ、すまんがルフィもワシも少しボロボロでな。医者を頼む」
「すぐに呼んできます!」
「まったく、この村にまで凄い音が鳴り響いてきおったぞ……家屋が吹き飛ぶかと思ったわ」
「すまんすまん! まさか、ルフィがこれほどまでに力をつけているとは思わんくてな!!」
がはは、と豪快な笑いを浮かべるガープを見て、村長達も「いつもの事か」と達観して笑みを浮かべていた。
その後、マキノが呼んできた医者の手によりルフィとガープは治療を受けた。
そして、日も落ち辺りも静まり返った夜。ルフィは目を覚ました。
両手足は包帯でグルグル巻きにされ痛々しい姿ではあるが、それを意に返さずガバッと起き上がる。
「……あれ? ここは!? じいちゃん……わっ!?」
「ルフィ!!」
「がははは! ワシはここじゃ、バカ孫め!」
目を覚ましたルフィにずっと傍にいたウタが飛びつき、右腕に副木を当て包帯を巻いて首から下げたガープも目を覚ました孫に笑みを浮かべた。
胸に飛びついて涙を浮かべるウタの頭をそっと撫でながらルフィはガープの目を見る。
「じいちゃん……勝負は……」
「あぁ、勝負はお前さんの勝ちじゃ、ルフィ! このワシ相手にあれ程の覚悟と誠意を見せたんじゃ。認めぬわけにはいかん」
気絶し、勝負の勝敗が分からなかったがガープから勝利をもぎ取ったルフィは涙を浮かべる。
「じゃぁ……!」
「あぁ、お前さんとウタちゃんの将来に、これ以上口は出さん! 好きにせい!!」
「しししっ……じいちゃん、ありがとう!」
「じゃが、覚えておけ!!」
口元に笑みを浮かべていたガープだったが、次の瞬間には海軍の英雄……そして中将の顔へと戻っていた。
「ルフィも、そしてウタちゃんも、将来、海賊になるというのであればワシの敵となる!! その時は、今回のように甘くはないぞ!! ワシは“海軍本部中将”じゃ!!」
海軍本部中将……そして“英雄”モンキー・D・ガープの気迫に、ルフィとウタも負けじと声を上げる。
「望むところだ!! 次こそ、しっかり勝利をもぎ取ってやる!!」
「わたしも! 今度こそルフィと二人で戦うから!! 絶対、負けない!!」
「ふふっ……そうか。ならば、これ以上言うことはない! ではな!!」
その言葉に、ガープもまたニヤッと笑いながら部屋から出て行った。
そしてガープが出ていくとルフィは今度はウタに頭を下げた。
「わりぃ、ウタ……ケガしねぇ、て約束したのにこんなケガしちまった」
ルフィが傷つけばウタが悲しむ、それを何としても防ぎたかったものの、結局、自身の覇気に体が耐えられずボロボロになったルフィはウタに謝った。
そんなルフィにウタは首を横に振り……
「ううん……たしかに、ルフィが傷つくのは見たくない……でも、そのおかげでルフィの覚悟がガープさんに伝わったんだもん……だから、ありがとう、ルフィ……」
「んっ……」
体が痛まないようそっとルフィに抱き着き、その唇を優しく触れ合うように塞ぐ。
そして、離すと、ウタもルフィに約束する。
「わたしも、もっと強くなる! ルフィに並び立てるくらい強くなって、今度はわたしが守ってあげるからね!」
「にししっ! あぁ、強くなるぞ! 二人で!!」
「うん!!」
再び顔を近づけ、今度は深いキスを交わす二人。
やがて“最強の海賊夫婦”と呼ばれる二人の道のりは始まったばかりだ。
ルフィの覇王色を纏わせた一撃の名前どうしよっかなぁと思いましたが、原作とは少し違うものの(巨大化・ギア5状態ではない)猿神銃を採用しました(これ以上かっこいい名前を自分の腕では書けません(本音))