一等星の煌めきを   作:不思議ちゃん

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にじゅうに

「こんにちは、葉月さん」

「あなたは……」

 

 校門前にて目当ての人物を待っていれば、彼女はだいぶ険しい顔つきをしており。

 俺の存在に気付いていなかったのか、軽い感じで声をかければ驚いた顔をしていた。

 

 かのんから生徒会長選挙が終わり、葉月さんが就いたと聞いている。

 文化祭への準備も少しずつ進んでいっていることや、来週の月曜日に全校集会があることも。

 

 だから金曜日である今日が、行動するのに一番いい日なのかなと個人的には思った次第。

 

「少し長くなりそうなんだけど、いいかな?」

 

 

 

 スクールアイドル部の部室に連れてきたはいいものの、気を張っているように見える。

 パーソナルな部分に触れるとはいえ、もう少し肩の力を抜いてくれたら話も楽だったが。

 

「それで、本日は私にどのようなご用件でしょう」

「あんまり個人の事情に入っていくのは嫌なんだけど、葉月さんがスクールアイドルに否定的な事に対してハッキリさせておきたいなと思って」

 

 かのんたちと比べ、何故か俺に対しては少し柔らかくあった葉月さんだけど。

 今のでグッと距離ができたように感じる。

 

「……ただの個人的な感情によるものです。それ以上でも、それ以下でもありません」

「自分で気付いているか分からないけれど、校門のところで声をかける前なんか凄く険しい顔だったよ。笑っている方が何倍も素敵なのに勿体ない」

「きゅ、急に何を言い出すのですか!」

「いや、普通に事実を述べただけ……」

 

 大切に育てられてきたのか、だいぶ耐性が無いように見える。

 顔を真っ赤にさせ、ワタワタしている姿にギャップ萌え。

 

 学校を存続させていくために色々な考えや想い、責任を背負っているけれど。

 こうして見るとただの女の子なんだよな。

 当たり前の話だけど。

 

「まったく。何の話をしていたか忘れてしまいました」

「スクールアイドルについてだよ」

「……そうでした。先ほども述べた通り、私の個人的な感情によるものです」

「ごめんね、勿体ぶって。本当は知ってるんだ」

「…………何をでしょうか」

「といってもそんなに詳しくはないけどね」

 

 葉月さんの母親がスクールアイドルをしていたこと。

 それらの活動が一切、家に残されていないだろうこと。

 だから葉月さんは、母親がスクールアイドルをやっていたのが本当は嫌だったのではないか、後悔しているのではと思っていること。

 

 葉月さんからしてみれば精度の高い推測のように感じるだろうが、ただ単にズルしているだけである。

 ネタ明かしは誰にもできないが。

 

「もしかしたら色々と言いたいことがあるかもしれないけれど、続けさせてもらうね」

 

 ポケットにしまっていた部室の鍵を取り出し、葉月さんの前に置く。

 それにはこの部室のドアの鍵とは別に、少し特殊な形をした鍵が付いている。

 

「あの、これは……」

 

 疑問に答えることなく、続けてテーブルのど真ん中に置かれていた宝箱のような形をした箱。

 それも葉月さんの方へ寄せ、開けて中を見るよう促す。

 

 葉月さんは促されるまま手に取り、恐る恐るといった感じで鍵を回し。

 何が入っていても大丈夫なように一度深呼吸をし、箱を開けた。

 

「…………っ」

「優、それはやり過ぎだよ!」

 

 中にあった物の配置を少しだけ弄らせてもらい、葉月さんの母親がみんなと楽しそうに笑っている写真を開けてすぐ分かるように置かせてもらった。

 額縁に入れられ、大切にされてきたであろうその写真はみんな幸せそうであり。

 

 それらがしっかりと伝わったのか、感極まり涙が出た葉月さんだが。

 物置の方で覗き見をしていた四人は俺がこれまでの仕返しとばかりに彼女を泣かせたと思ったのか、大人しくしているよう伝えたのに出てきては葉月さんを慰めている。

 

「ごめんね、葉月さん。うちの弟が」

「いえ、澁谷さんには感謝しております」

「へ、感謝?」

 

 いや、これ勘違いしてるのかのんだけで、可可に千砂都、平安名は何とも言えない表情をして俺を見ている。

 

「かのん」

「……なに?」

「取り敢えず、箱の中を見てみ」

 

 思い込みの強さは良いように働けばいいが、面倒な方に働くと手間がかかる。

 

「これって」

「はい、私の母が学生時代にスクールアイドルをやっていた時の写真になります」

「……つまり?」

「感極まって泣いていただけ」

 

 かのんは勘違いだと気付き、顔を真っ赤にさせて視線をあちこちへと向けている。

 出てきちゃったものは仕方がないと諦め、変な空気になってしまったが話を続けることに。

 

「たぶん、葉月さんのお母さんは葉月さんにもスクールアイドルをして欲しかったんじゃないかなって思うんだ」

 

 でなければ既に廃校したこの場所で、学校を新設する意味がないし。

 思い出の全てをここ、スクールアイドル部に置いていかないだろうし。

 

「一緒にスクールアイドル、やってみない?」

「…………いえ、皆さんにはこれまで沢山ご迷惑をお掛け──」

「一緒にやろうよ!」

 

 始めてみたいという気持ちが瞳に出ていたが、これまでの自身の行いを振り返りみて相応しくないと、諦めようとしている。

 ここまできて、そんなものを気にしているのは葉月さんだけだというのに。

 

 当然、かのんが逃すわけない。

 

 側から見ていて少し引くぐらいの熱い気持ちをぶつけ、一緒にやろうと声をかけており。

 その熱量に押されてか、伸ばされたかのんの手を取る葉月さんだが、まだ少し戸惑いの面があるように見えた。

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