「他に聞きたいことはある?」
この際、話してくれるのなら大なり小なり関係なく相談に乗ろうかなと。
後々、小出しにされるよりはある程度まとめて終わらせたい。
といっても、あとは具体的なステップのアドバイスとかになるだろうけど。
今回の悩みが例外なだけで、基本的に困ったことがあれば溜め込むことなくみんなに相談しているし。
「…………えっと少しだけ、本当に本当の、ほんのちょっと気になる事なのデスが」
「あ、うん。どうした?」
「…………平安名のことを名前で呼ばないのは、まだ認めてないからデスか?」
凄く念押しするほどの前置きがあるなと思えば、そういうことね。
神津島でのライブを終えた後も名前呼びしないのか、という話はかのんと千砂都からもされていた。
「さっきも少し話したけど彼女、スペックはあるのよ」
「悔しいですが、その通りデス」
「それだけだったら十分だけど、根本的に足りてないところがあるかなって」
「足りていないところ、デスか?」
「それに関しては平安名自身も分かっているし、その時が来たら何とかするから大丈夫だよ」
「べっ、別に心配なんかしてないデス!」
思わず笑みが浮かんでしまい、それを見た可可が顔を赤くさせながら必死に否定している。
「俺が名前で呼び始めた時、可可も認めて名前で呼んでいるかもね」
「そ、そんな事にはならないデス!」
「あはは、そうなった時の可可が楽しみだね」
いい時間になったのでそろそろ帰らなければ。
あまり遅くまでいるものでもないし。
「あ、可可」
「はい、どうしましたか?」
「かのん、平安名に千砂都、そして葉月さん。メンバーも五人になって賑やかになったけど……これも全部、可可が初めに行動を起こした結果だよ。他の誰でもない、可可が今を作ったんだからそこは自信持って」
「ユウさん……」
最後に少し……いや、後々思い返すとだいぶ恥ずかしいことを言った気がするけど、可可の支えになる大事な一本になれたらなと。
☆☆☆
翌日、葉月さんを交えた五人での練習二回目。
やはり可可がどうしても目立つが、昨日ほど気にしている様子はない。
千砂都と平安名が何をしたのかと目で訴えてくるが、それを話したら内緒の意味がなくなってしまう。
自身に足りないところを自覚し、キチンとそれを補うために努力している。
周りもそれを分かっているため、追い詰めるようなことは言わない。
本当、理想的なぐらい素敵なチームだ。
可能であるならば一年目で優勝させてあげられたらなとは思うが、たぶん無理だろうな。
「そろそろ学園祭に向けて披露するステージの構成とか考えようかなと思うけど」
「んー、そうだねー」
「どうしよっかー」
一通りの基礎練を終え、最後にストレッチをしているみんなにそう声をかければ。
伸ばす身体に合わせて間延びした返事が。
「……ねえ、恋。一つ聞いてもいいかしら」
「はい。なんでしょう」
「来年度の入学希望者数が少ない、って噂は本当なのかしら」
「……はい。その通りです」
平安名の唐突な質問だが、なんとなくどういった流れに持っていきたいのか分かった。
俺と目があった時、気まずそうな顔をしながら逸らしているし。
「なら恋をセンターにして、この学校がどれだけ素敵か伝えればいいと思うのだけれど」
「わ、私がセンターですか!?」
「それ、いいアイデアだね!」
「なるほどなるほど。誰がって言われたら、間違いなく恋ちゃんが一番学校のことを想っているもんね」
「で、ですが私はまだ入ったばかりですし……」
「そんなの関係ないデス! 大切なのは気持ちデス!」
「そうだよ! みんなに届けよう!」
まだ入って二日目だというのにセンターへと抜擢され、戸惑いを隠せない葉月さん。
まあ、そらそうなるわな。
葉月さんを囲い、盛り上がるかのんたち。
そんな中、一人輪の中から外れている人へ寄っていき声をかける。
「へーあんな」
「な、なによ……」
そんなあからさまに嫌そうな顔をしないでくれ。
反応が良くてもっと構いたくなる。
「いや、自分自身でよく分かっているようだし、深くは言わないけど」
「けど、何よ」
「一応、釘だけ刺しとこうかなって」
「…………別に、そんなのいらないったらいらないわよ」
「どうしようもなくなったら、マネージャーにいつでも相談してくれていいからね」
何か抱え込んでいるのは基本的に可可と平安名だけ。
葉月さんの件もつい先日終わったし、ノンビリ出来るかなと思っていたが。
「あ、あの優さん。私はどうしたらよいでしょう……」
あれ、こんなイベントあったかな……。