「あの、かのんさんと千砂都さんの相談なのですが、私に解決できるものなのでしょうか」
「うーん……今すぐにってのは無理だと思う。相談ってより、具体的にいうなら問題解決に手を貸してほしい感じかな?」
翌日、半日で練習を終えると優は荷物をまとめさっさと何処かへ行ってしまった。
残された五人は風邪をひかないよう取り敢えず汗を拭き、着替えぬまま腰掛け話始める。
「すみれさんと可可さんも、お二人に協力をされているのですか?」
「出来る範囲で、だけどね」
「私は出来る限りの事をしたいのデスが、どうすればいいか分からないのデス」
四人は何とかしようとしているが、どうにもなっていないことを把握した恋。
詳しい話を聞かないとどうしようもないため、かのんへと向き直る。
「相談ってのは私たちのマネージャーをやってくれている、優についてなんだ」
「優さん、ですか?」
予想外な名前が出たことで恋の頭の中には疑問符が浮かんだ。
スクールアイドル部のマネージャーとして、細かなところまで気配りのできる彼に一体何があるのだろう。
といった考えを四人は読み取っていたが、説明を続けるためにかのんはスマホを取り出し、ある動画を開いて恋へと向ける。
「これは……もしかして優さん、ですか?」
「恋ちゃん、ピアノやっていたよね? どう思う?」
「凄く上手だと思います。今もどこかに通われているのですか?」
「ううん。小学校上がる前には辞めてるよ」
一つ目の動画が終わり、続いてまた別の曲を弾いてる動画を流し始める。
「コンクールなども出られていないのですよね?」
「一度だけ習い事やめる前に出たけど、弾かなかったんだよね」
「弾けなかったのですか?」
「ううん、弾かなかったって。課題曲が好きじゃなかった、みたいなこと言ってたかな」
一応その時の動画もあるよ、と千砂都は自身のスマホを開き。
すみれと可可にも見えるよう真ん中へと置く。
そこにはイスに座り、両足をプラプラと遊ばせている男の子の姿が。
両手はイスについており、顔を少し上げてどこかを見ている姿からは微塵も弾く気が無いというのが伝わってくる。
ふと何を思ったのか指一本で白い鍵盤を一つ弾き、立ち上がって客席に礼をして去っていく所で動画は終わった。
「今じゃ考えられないくらい生意気な感じね」
「本当はこれすら出たくなかったらしいんだけど、通っていたところの先生が一度だけでいいからって。……まあ、結果は今見た通りだけど」
「そりゃ本人に弾く気がなければこうなるわよ」
「あの、優さんは何故そんなにも嫌がるのでしょう。音楽が嫌い、って訳でも無いと思いましたが……」
「実はそれもよく分かっていないんだよね……」
それこそ小さい頃は深く考えず、ピアノはもうやらないのかと何度も尋ねたかのんと千砂都。
毎度、簡単に『飽きた』の一言で片付けられていたことを伝える。
「でも、どこか寂しそうな顔してたのは覚えてるんだ」
「訳があって辞めたってことデスか?」
「私とちぃちゃんはそう思ってるんだけど……」
「何よ。ハッキリしないわね」
「かのんちゃんと長い間探ってるけど、その理由が未だに分からないんだよね」
誰も続く言葉が出てこず、静かとなった部室。
そんな重くなった雰囲気を飛ばすように千砂都は手を一つ叩き、明るい声を出す。
「はいっ! 今悩んでいても解決しないから今日はここで終わり! みんなも深く考えず、頭の片隅に置いておくだけで大丈夫だからねっ!」
「あの、最後に一つよろしいでしょうか」
「恋ちゃん、どうかした?」
「かのんさんと千砂都さんが優さんをどのようにしたいのか、いまいち分からないのですが……」
根本の一番大事なところを説明していなかったなと、かのんと千砂都は苦笑する。
二人は一度視線を交わし、口を開く。
「優にも夢中になれる何かを見つけて欲しいんだ」
「今はスクールアイドルに二人とも夢中だけど、私にダンス、かのんちゃんに歌と楽しいことを教えてくれたのが優くんなんだ」
「ピアノを勧めているのは寂しそうな顔が引っかかっているのと、私たちが優の弾くピアノの音が好きだから」
「……今、こうして皆さんとスクールアイドル活動が出来るようになったのも、優さんのお陰です。私も出来る限りのことをお手伝いさせて下さい!」
ありがとう、とテンションが高くなるかのんと千砂都。
そこへ私も頑張りマス! と加わった可可。
テンションだけで盛り上がっている四人を少し羨ましそうに見ていたすみれだが、可可の煽りを受けて私に任せなさいったら任せなさい、と加わるのであった。
すみれっていい立ち位置にいるなと個人的には思います。
この話の中でも割と動かしやすいです。