俺にナイショの話があった日以降、特に何もなく肩透かしをくらった。
正直、かのんと千砂都の相談は俺が関わっているものかなと勝手に思っていたが、恥ずかしい勘違いである。
そんな自身の事はさておき、なんだかんだであっという間に学園祭前日を迎え。
みんな真剣に練習へと取り組み、いい仕上がりとなっている。
「それじゃ、今日はここまで。明日に向けてしっかり身体を休ませておいてね」
本番に支障が出ないよう軽い調整にとどめておき、本日は終了。
緊張から少し硬い表情をしているみんなの姿を一枚撮り、先に部室へと向かい荷物をまとめて帰る準備を。
特に何か予定があるわけでもないが、自室でノンビリゴロゴロしたい。
明日は俺に出番はないし女子校に男がいるってのも変なので、一日ゆっくり出来るという事にワクワクしている。
金曜日、定時で上がれた社会人の気分だ。
「あ、優さん」
「ん?」
さあ帰るぞ、といったところで。
部室に戻ってきた葉月さんに呼び止められる。
「あの、理事長が一度会ってお話ししたいとの事で、この後に用事がなければ一緒に来ていただいても大丈夫でしょうか」
「……うん、大丈夫だよ」
何だか嫌な予感がするので予定があると逃げたかったが、流石に一度も挨拶しないというのはどうかと思うため向かう事に。
……こんなことならもっと早くに自分から挨拶しておくべきだった。
☆☆☆
ハロー、文化祭。
グッバイ、俺の休日。
今現在、俺は『関係者』と書かれたストラップを首から下げ、スタッフの腕章もつけて校門のところでチラシ配りをしている。
昨日の嫌な予感は当たり、挨拶だけで終わらず今日のお手伝いまですることとなった。
マネージャー的立ち位置とはいえ、外部の人間でしかも男である。
立場的に圧倒的弱者であるため、余程の無茶でなければ首を縦に振るしかない。
来場者に何で男がここにいるのか不思議な目をよく向けられるが、俺のせいでこの学校に変な噂など立てられても困るため。
精一杯の笑顔を浮かべ、意識的に少し高い声を出しチラシを配っていく。
「こんにちはー! 本日、午後から結ヶ丘女子高等学校スクールアイドル部のステージがありまーす! よかったら観ていって下さーい!」
そうするとほとんどの人が気にしなくなるのだが、一体どう思われているのだろう。
あと、他校の男が手伝っているこの現状、今更ながら人の手が足りてませんといったマイナスアピールにならないか不安が出てきた。
「……先輩、何してんだ?」
声に反応して振り向けば、四季メイが立っていた。
メイが口にする疑問はもっともだが、それは俺が聞きたい。
「気付いたら手伝うことになってた。まあ、俺のことは気にせず二人はライブ楽しんできな」
はい、これ。と二人にチラシを渡して見送り。
俺は文化祭を楽しみに兼来年入ろうかなといった下見に来た親や娘さんにチラシを配っていく作業へと戻る。
「はわわ……都会の学校は文化祭も凄いっす……」
「お」
何やら聞き覚えのある声が聞こえたと思い、そちらをみれば。
入り口のところでアワアワとしている少女の姿が。
もう既に来年入学することを決めていて、学校の雰囲気を感じるために来たのか。
北海道からの旅費もバカにならないため、まだ幾つか絞ったうちの一校なのか。
隣に立ってニコニコしているのが母親だろうし、どちらにせよヘマな事は出来ない。
「こんにちはー! こちら、良かったら観ていって下さーい!」
「はわっ!? あ、ありがとうございますっす!」
「そんな緊張しないで大丈夫だよ。楽しんで!」
「は、はいっす!」
声をかけるほど逆効果になりそうな気がしたため、チラシも渡したことだしさっさと次へと思っていたが。
「あ、あの」
「どうかしましたか?」
何故か呼び止められたため、足を止める。
「せ、先輩はこの学校の方なんですか?」
「あー……いや、他校生なんですよね。姉がここに通っていて、半ば強制的に手伝いをさせられていて」
「姉……あっ、もしかしてきな子と同い年っすか! それなら来年、同級生っすね!」
「あはは……」
「ほら、きな子。困ってるからその辺にしておきなさい」
説明が面倒でどうしようか困っていたが、彼女の母親が助け舟を出してくれた。
彼女の中でどのような距離の詰めかたがあったのかは分からないが、来年入ってきた時に俺がいなくてショックを受けるのだろうか。
あと、今のでこれまでの親たちがどう思っていたか、何となくわかった気がする。
俺が男だと気が付いた上で無害だと判断し、興味を無くしたのだろう。
娘さんたちについては分からん。
絵森さん、好き……
箱推しなんですけど、今回のライブでブッ刺さりました