ライブの時間が近づいてきたので残っていたチラシは受付に預け、みんなが集まっている舞台裏へと向かえば。
既に衣装へと着替え終え、各々の方法で集中を高めていた。
四人は少なくとも一度、ステージを経験しているためあまり問題はなさそうに見えるが、一人不安そうな子が。
「緊張することなんてないよ」
「優さん……」
「ステージの上は怖いところじゃない。お母さんもとても楽しそうに笑っていたでしょ? 楽しんでおいで」
「……はい!」
「それに」
だいぶ顔色が良くなったようだが、もうひと押し必要そうだ。
なので葉月さんの手を取り、反対の手でかのんの手を取る。
それだけで察してくれたのか、かのんは可可の手を取り、可可は少し辺な挙動をしたものの平安名の手を取った。
「ほら」
「素直になれデス」
「大丈夫だよ可可ちゃん。照れ隠しだもんね?」
「そういう事は分かっても言わないもんったら言わないもんよ」
少しぶっきらぼうに手を差し出す平安名のお陰か、他のみんなも表情に柔らかさが見える。
「ステージは一人じゃない。隣にはみんながいる。……ま、俺はいないけど」
「最後の一言、要らないわよ」
「優くんも素直じゃないね」
「ユウさんも女装して立ちマスか!?」
「私はその案、ありだと思う」
葉月さんが平安名の手を取れば円が出来上がり、どこを見ても頼れる仲間がいる。
話が少し逸れてきたが、余計な力も抜けたようで結果オーライ。
「みんなの楽しいを見せつけておいで」
返事はみんなの真っ直ぐな瞳と、力強い頷きであった。
「あれ、もっと前で見ないの?」
あれ以上あそこに居ても意味がないため、設置したカメラの確認も兼ねてステージが見える方へ移動したはいいものの。
もっと近くで見るものだと思っていた四季メイがこんな所に。
思っていた以上に人が集まっており、だいぶ離れているんだが。
「本当はもっと前で見たいけど、メイが目立って認知されるのにビビった」
「び、ビビってねぇよ!」
「まあ、ペンラ五本持ちなんて他にいないもんね」
新たに葉月さんが加わっていることも当然流しているため、オタ活に抜かりのないメイは準備万端である。
他の来場者の視線をチラチラと集め、割と目立っていることにメイは気付いていないらしいが、面白いのでこのまま黙っておこう。
「二人は来年、ここに入るの?」
「そりゃ、入れるなら入りたいけど……」
「来年度の入学希望者が少ないって噂を聞く」
「なら、問題ないね」
「どういう意味?」
「そのままの意味だよ。……ほら」
タイミングよく、ライブが始まる。
あれ、ステージに出てきたみんなが俺を見たような……いや、気のせいか。
『私たち、結ヶ丘女子高等学校スクールアイドル部です!』
☆☆☆
「よしよし、良かったね」
「わたし、ぜったいここにはいるぅ……」
「ミートュー。すごく、良かった」
メイはガチ泣きだし、四季も潤んだのか目元を指で拭っている。
取り敢えずポケットティッシュを渡し、涙や鼻水をどうにかしてもらおう。
可愛い女の子がいつまでもしていい顔じゃないし。
落ち着くまでの間にカメラを回収し、内容の確認を……うん、大丈夫そうだ。
「俺、そろそろ行かなくちゃいけないけど大丈夫?」
「うん。メイは私が見ておく」
「よろしく。文化祭もまだ終わりじゃないから、ゆっくりしてって」
ライブ直後のため、密集した人の流れができている。
仕方が無いけど少し遠回りでも人が少ないところをと思ったが。
「あっ! さっきの!」
「ん? ああ、観てくれたんだ。どうだった?」
「とっても凄かったっす!」
人がまばらになるまでノンビリしていたであろう桜小路親子に再び出会った。
ライブの興奮から先ほど会った時よりもテンションが高く、目もキラキラと輝いている。
「スクールアイドルを今日初めて知ったんすけど、こんなに素敵でワクワクさせてくれるものがあったんすね!」
「興味ある?」
「い、いやいやいや! きな子には無理っすよ!」
またグイグイと来たが、問いかけ一つで前のめりだった体勢が仰け反りへと変わる。
感情がそのまま行動に出ていてとても面白い。
「まずはやってみることから、じゃない? 来年ここに来るのかは分からないけれど、今日からでも出来ることやってみる?」
持っていたメモ帳へ今の彼女に合うであろうメニュー、そして続いたら増やす量を書いて渡す。
「まあ強制できる事じゃないから、要らなかったら捨ててね」
かのんから早く戻ってこいと催促する連絡がきたため、この場を後にし移動を始めたが。
道すがらにあるイスに毛先がピンクとなっている金髪少女が座って黄昏ていた。
誤字報告、ありがとうございます。
とても助かっています。
報告きて、何故こんな誤字してるんだ?ってなります。
載せる前にも読み返しているんですけどね……。