中学からの付き合いである友人がいたことで孤立することは無かったが、教室内でのイメージというか位置付けが決まってしまったような気はする。
無難に過ごしていこうと思っていたんだけど、過ぎたことをいつまでも考えていたって仕方がない。
昨夜、かのんに付き合った時点で半ばこうなるのは分かっていたことなのだから。
「…………何してんの?」
数少ない友人と部活動を見て回っていたため、普段よりも遅い帰宅であったが。
自身の部屋に入ると機嫌の悪い姉がいるのは何故なのか。
「優、そこ座って」
「はいはい、今度はどうしたの」
あのやさぐれかのんはどこいったと言いたいが、取り敢えず荷物を置いて話を聞いていけば。
俺のアドバイス通り、スクールアイドル活動なるものを手伝ったそうだが生徒会長に『認められないわぁ』されたとか。
そんでもって理事長も交えて話した結果、何か結果を残すこと、と。
「優もおかしいと思わない!? 他の部活はいいのにスクールアイドルだけダメだなんて!」
「まあ、確かにその生徒会長の感情論で認められないのはおかしいね」
「でしょ!?」
「それでも、その生徒会長を頭ごなしに否定するのもまた違うんじゃない? もしかしたら何か事情があるのかもしれないし」
「事情があったら認めなくてもいいって事?」
「そういう事じゃなくて……」
いったん内に引きこもっていただけで、まだやさぐれかのんは健在であった……。
何故か矛先が俺に向いてしまい、自分の部屋であるというのに逃げ出す選択肢しかなく、夕食までありあの部屋に匿って貰った。
☆☆☆
翌日の放課後。
千砂都のバイト先へと向かい、かのんにされた話をしてみた。
困ったような笑みを浮かべながらスマホを弄っているかと思えば何やら通知が。
開いてみれば千砂都から写真が一枚送られてきており、それはかのんがなにやら台車のようなものを引っ張っている写真であった。
側面にはスクールアイドルと書かれており、上には前に話していた留学生らしき子がメガホン片手に乗っている。
「…………」
すぐさまこの写真を保存し、かのんへ送りつけた。
その際、文は『クソワロwww』である。
すぐに既読はついたが、返事を見る前にスマホを閉じたので後は知らない。
少しだけ家に帰るのが怖いけど、それは未来の自分に任せよう。
「それで、千砂都は何を悩んでるの?」
「へっ? べ、別に悩みなんてないよ?」
「何度も言うけど隠し事が出来るとでも?」
「…………優くんには敵わないなぁ」
話を聞いてみれば、スクールアイドルをやらないかと勧誘を受けたそうな。
正確にはかのんが千砂都を推薦したそうだが。
「かのんと一緒にやれば良いのに」
「いやー、今の私にはまだ、ね?」
「何かを始めるのに資格だなんだってのは関係ないと思うけど、まあ千砂都が心の整理をつけるのに必要だっていうんならそれを否定しないよ。いつか二人が一緒のステージに立つの、楽しみにしてるから」
「いや、まだかのんちゃんもやると決まったわけじゃ」
「やるよ。かのんは」
良くも悪くも押しに弱いし、人の想いに敏感だし。
それになにより、かのんが歌から離れられるわけがないし。
「ね?」
「……こんなしっかり者の弟じゃ、私たちの姉としての立場がないね、かのんちゃん」
「いやいや、同級生じゃん……ん?」
何故か千砂都は俺ではなく、俺の後ろを見ているような。
嫌な予感がしつつも振り返りみれば、そこにはニッコリと笑みを浮かべるかのんの姿が。
「何も言わなくても分かるよね、優」
「…………姉なら弟のすることは笑って許すもんだよ」
「許すかぁー! 都合のいい時だけ弟を持ち出さない!」
怒ることに慣れていないかのんは俺の頬を引っ張りながらひたすら愚痴を言うだけである。
頬が痛いことを除けば無害みたいなものだ。
「いや、頬を引っ張られてる時点で害は出てるよ……」
横で千砂都が呆れているが、それは見なかった事にした。
あと、写真を送った罰として千砂都も頬をムニムニと遊ばれていたが、俺との扱いの差よ。