一等星の煌めきを   作:不思議ちゃん

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さんじゅうよん

 放課後に少し友達と雑談をしていたため、いつもより少し遅く部室へと着いたが、丁度セッティングが終わったところであった。

 

 撮影用のスマホ、配信状況確認のノートパソコン、自身がどのように写っているか見えるよう画面が恋に向けられたスマホ。

 ……ここまで整ってるのは割と凄い事なのでは。

 

 朝方、SNSで放課後に生配信をやると予告しているため、始まるのを今か今かと待っている人が何人かいることだろう。

 

 恋がどうしたらよいか困った顔をしているが、かのんたちは誰一人として説明をするつもりが無いらしく、そのまま始めるらしい。

 やってる事、俺よりも酷いぞ……。

 

「それじゃ恋ちゃん。今から始めるから、合図したら簡単な自己紹介してね!」

「は、はい!」

 

 正直、ネットに個人情報を晒すなんてと思ったが、スクールアイドルを続けて有名になれば扱いは芸能人と変わらない。

 クーカーだって一度しか出ていないのに、家が特定されて喫茶店には人が溢れていたし。

 

「さん、に、いち……どうぞっ!」

「は、はいっ! 私、結ヶ丘女子高等学校に通う葉月恋と……あの、この画面を流れているものは一体何なのでしょう?」

 

 よく分かっていないまま始められた動画配信。

 当然、流れてくるコメントに興味が出てくるわけで。

 

「か、かわっ!? なんですかこれはっ!?」

「動画を見てくれている人のコメントだよ」

「ちゅ、中止です! 一旦終わりです!」

 

 可愛い、綺麗といった賛辞のコメントが並び、それに耐えきれず真っ赤な顔で両手をワタワタとさせる恋。

 続行不可とのことで、配信の停止をしたかのんはとてもいい笑みを浮かべている。

 

「これが動画配信だよ、恋ちゃん!」

「だよ、ではありません! どうして誰も教えてくれなかったのですか!」

「その方がおもし……実際に体験した方が分かりやすいから」

「確かに、説明では難しいところはありましたが! 隠すならもっと隠してください!」

 

 一頻りはしゃいで満足したのか、各々まったりし始めたが……。

 

「本来の目的、忘れてない?」

「そうデス! グループ名の募集でシタ!」

「次は皆さんもですからね?」

「流石にそこで放り出したりしないわよ」

 

 みんなが動き出し、カメラの前へ移動する中。

 一人だけイスから動かずにいる人が。

 

「かのんさん、何をしているのですか?」

「私は撮影係としてこっちに……」

「それは優君がいるから大丈夫だよ」

「もしかして映らないつもり?」

「うっ、優……」

「行ってこい」

 

 何を期待していたのか分からなくはないが、散々楽しんだのだから逃げられるとは思わない事だ。

 

 端っこにいこうとするが、先ほどの仕返しとして恋に捕捉され真ん中へ。

 助けを求める目でこちらを見てくるが、そっと目を逸らす。

 

「あ、一つ伝えておくけど」

 

 俺に目を逸らされた事で助けは無いと絶望していたかのんだが、一抹の希望を見出した目で再び見てくる。

 だけど残念、蜘蛛の糸は垂らされなかった様で。

 

「間違っても俺の名前、出さない様にね」

「……ここまできたら優も道連れに」

「いや、ここ女子校でしょ? 男がいるって一応変だからね? あと、一部のファンは離れてくよ」

「大袈裟じゃない?」

「男女関係なく、オタクってのはそういう習性を持つから」

 

 正直、バレたところで問題のない世界線だと思う。

 けど気にするに越した事はないし、本音を言えば配信に映るなんてごめんだ。

 

 それっぽいことを言って納得してもらったところで仕切り直し、再び配信を始めることに。

 一度止めたところでSNSに『少し時間を置いて再度始める』といった旨を書いているため、まだ待ってくれている人は居るだろう。

 

 再開しますとSNSに書き込み、少し間を置いてからかのんたちへ合図を送る。

 待機人数が万に届きそうとなっているのは見なかったことにしよう。

 

「さん、に、いち……はい」

「あっ、こんにちは! 私たち、結ヶ丘女子高等学校スクールアイドルです! えっと…………あー、配信、やめよっか?」

「何を言うのですか! 始めようと言ったのはこの口ではありませんか!」

「やめっ、れんふぁん!」

 

 ヘタレたかのんの頬を恋が引っ張り始めたのを皮切りに、千砂都が丸を連呼しながら体を揺らしたり、可可と平安名でグソクムシの歌を歌い始めたりと。

 控えめにいって、見ていられない状況が出来上がっていた。

 

 身内がいるし、他の面々もマネージャーとして一緒の時間を過ごしてきているため、俺の情報は一切出ていないはずなのに居た堪れない恥ずかしさが込み上げてくる。

 

 これを見ても好意的なコメントがきているため、やはり男が居たとしても大丈夫なんだろうけど……これの後に映りたくないため黙っていよう。

 

「た、たふけて……!」

 

 かのんがこちらに手を伸ばしながら助けを求めたところを写真に撮り、そっと配信を終了した。

 

 SNSにも先ほど撮った写真を載せ、『予定していた事があったのですが、恥ずかしさに耐えきれず暴走し始めたのでここで終了します。今後とも、彼女たちの活躍を生暖かい目で見ていただけたら嬉しいです。』と書き込んでおく。

 

 すぐにいいねやリツイート、コメントにも『生暖かい目www』などの反応が。

 生配信と同時に録画もしていたので、あとで切り抜きなんか作って載せておこう。

 

 生配信を止めたと伝えていないため、未だ目の前にはカオスな状況が起こっているが、何だかんだでみんな凄いんだなと尊敬である。

 こういったところから新たなファンを獲得していくなんて、俺には無理だもの。

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