動画配信の後は練習ではなく、再び話し合いの時間を設け。
そこで曲作りが全く進んでいないことに気がついた面々は可可の提案により後日、恋の家で『缶詰』をする事に。
といっても負担が掛かってるのはかのんだけだが。
当日、俺は家の手伝いのため不参加であるが、かのんから定期的に「助けて』と連絡がきている。
どれも既読無視で返事はしないけど。
晩、ヘトヘトになりながら帰ってきたかのんは俺と目が合うや否や奇声を上げながら飛び掛かり、俺の髪をクシャクシャにしていく。
それで一通り気が晴れたと思ったのだが、風呂上がりにギターを持って俺の部屋へとやってきた。
「進んだの?」
「……全然」
様子を見るにだいぶ煮詰まっているようで、詩のほうも進んでいないようだ。
今もウンウン唸りながら考えているようだが、このままじゃダメそうである。
「かのん」
頭を撫で、肩の力が抜けるようリラックスさせる時間を作る。
血の繋がっている姉弟だと思っているからこそ、こうして気を許してくれているのだろうなと思うと──いや、疲れているのか少し変な方に考えが飛んでしまった。
「難しく考え過ぎ。クーカーの時、神津島の時、文化祭の時、どうやって曲を作っていたのか思い返してごらん」
「んー……?」
「それと、名前にはその人の思いがある。人と人が出会う時には意味がある。今この時、かのんたちにしか出来ないことってあるはずだよ」
考え事をしているかのんの頭を撫でたまま、しばらく待っていると。
「……………………あっ!?」
突如声を上げ、何か閃いた様子のかのんは『お父さん! 辞書貸して!』と騒がしくしながら部屋を出ていった。
取り敢えず、これでまた俺の睡眠は守られる事だろう。
父さんから辞書を借りてきたかのんがまたこの部屋に戻ってきたような気がするけど、きっと聞き間違いだろうと睡魔に身を委ね──。
「なにこれ……」
違和感から目が覚めれば、横にはかのんが俺の腕を枕に寝ていた。
道理で腕が変な感じすると思った。
腕を引っこ抜き、痺れていない手で血流を促すよう揉みながら、どうしてこうなったのか思い返してみる。
深夜に一度、グループ名と詩が出来たから見てくれとかのんに起こされたような気がしないでもないが、記憶が定かではない。
間抜けなツラして寝ているかのんなら分かるだろうが、起こすのは何となく癪だ。
いい時間であるが、かのんはこのまま置いて一人で結女へ向かう事にした。
「あれ、カノンは一緒ではないのデスか?」
「まだグースカ寝てるよ」
「かのんちゃん、また何かやったの?」
「目が覚めたら俺の腕を枕にして寝てた」
「ちょっと! 腕枕ってことは一緒に寝てたってこと!?」
「かのんが勝手に入ってきた……んだと思う」
このまま深掘りされたところで俺に答えられるのも限られているため逃げたかったが、すでにみんな着替えているので場所が部室から屋上へ移っただけである。
とりあえずストレッチをさせながら、説明できる部分だけ話していたら。
「置いていくなんて酷いよ!」
「俺は悪くない」
走ってきたであろうかのんが、息を切らせながら屋上へとやってきた。
置いていかれて悲しそうな、怒っているような表情が面白い。
「優には後で仕返しするとして……みんな聞いて! 私たちのグループ名、思いついたの! あと歌詞も!」
手に持っていたノートを掲げ、嬉しそうにそう口にする。
ストレッチをやめてかのんを囲い始めたみんなを促し、一先ず部室へ戻る事に。
「本当に出来たのデスか!」
「うんっ! すっごく自信あるよ!」
早く教えろとみんなから催促され、かのんはホワイトボードにグループ名をデカデカと書き出す。
「私たちのグループ名は『Liella!』。結ヶ丘から結ぶ、繋ぐを意味した『lier』と、内面的な輝きって意味の『brillante』。まだ何でも無い私たち。これから先、いろんな色や形で輝いていく私たちにピッタリだと思って!」
「リエラ……Liella! とても素敵デス!」
「これからトップを目指す私たちにピッタリな名前ね」
「うん、うん! すっごく良い名前!」
「学校の名前から、お母様の想いを汲み取ってくださりありがとうございます」
「それでは早速、登録したいと思いマス!」
みんなで画面を見て、『私たちはLiella!』と声高らかに宣言してエントリーする光景に微笑ましさを覚え、写真をパシャリ。
SNSにもグループ名が決まったこと、ラブライブにエントリーしたことを書き投稿。
またすぐに試練が控えてるけど、彼女たちに幸あらんことを。
「そう言えば、優が考えたグループ名は何だったのよ」
「……余計なことばかり覚えてやがる」
「何ですって!?」
いい感じにまとまっていたというのに平安名は。
他の四人も興味を示してしまったので逃げることは叶わず。
箱を手元に持ってきて鍵を開け、中から紙を取り出してかのんへと手渡す。
「えーっと……なになに」
みんなが紙に注目してる間、荷物を持ってドアの方へ移動し、いつでも逃げられる準備を終えておく。
「名前なんて思い浮かぶか、バーカ……って優!」
「俺にネーミングセンスなんて無いんだよ! 今日は基礎練! 千砂都は振り付け、恋は曲を考え始めるように!」
それじゃまた、とセリフを残して俺はその場から逃げ出した。
この時、俺に振り返る余裕なんてなかったため気付くことは無かった。
かのんがとても悲しそうな顔をして、俺を見ていた事に。
もしかしたらこれが年内の更新最後かもしれないので。
数ある中から自身の作品を読んでくださりありがとうございます。
今後も不定期な更新でやっていくと思いますが、よろしくお願いします。
みなさま、良いお年を。