ラブライブにエントリーしてから日が経ち、曲や振り付けも出来上がってみんなの調子もいい感じとなっていたが。
地区予選の説明を聞きに行っていたかのんたち五人。
先ほど帰ってきたが、その様子は大人しくなっていた。
「配信で見てたから何となく察するけど、曲の課題であるラップが引っ掛かってる?」
「……うん。私も、恋ちゃんもあまり聴いてこなかったジャンルだから」
「取り敢えず、どうなるのか試してみよっか」
というわけでかのん、可可、千砂都、恋と順番に試していくが上手くいかず。
みんな諦めの気持ちの中、まだ残っている平安名へと注目すれば。
「えっ」
「嘘っ」
「すみれさん、凄いです!」
この程度、なんてことないといった風にスラスラと平安名の口からラップが。
可可は納得いっていないようだが、今回の地方予選のセンターは決まりである。
早速屋上へと移動し、センター以外はまだ仮であるが立ち位置につけば。
キョロキョロと辺りを見回し、混乱している平安名の姿が見れる。
「あれっ、この立ち位置ってもしかしてもしかしなくても?」
「うんっ! 今回はすみれちゃんがセンターだよ!」
普通に考えれば当たり前のことであるはずだが、思考の根本から自分が主役になれると思っていないようで。
時間をかけてようやく理解したかと思えば、それを譲ろうとする始末。
可可にとっては有難い話であるが、本当に予選を勝ち抜く気があるのならばやはり出来る人が目立つ位置にいるべきである。
「可可」
「うっ……分かってマス」
気持ちで納得できていないのだから二つ返事が出来ないのは分かっている。
だがこれ以上はただ空気を悪くするだけなので、一声かけておく。
説明会前に作った曲はラップが入っていないため使えないが、平安名がセンターとなったときのイメージを掴むため、出来上がっているもので一度仕上げてみることに。
そうした方が近道だったのは確かなのだが。
「やっぱ、私の出番は決勝まで取っておくべきよ。今回は他の誰かに譲るわ」
出来上がったパフォーマンスを同級生に見てもらい、意見をもらった結果がこのような事に。
歌も振り付けも良いが、センターは他の人がいいのではないか。という意見に、平安名のまだ脆い心の芯は折れてしまったようで。
「逃げるのデスか?」
「……何よ」
「センターは私たち『Liella!』で決めたことデス。他の方の意見は関係ありまセン。それにユウさんにも手伝ってもらいながらこうして衣装も出来たのデスよ!」
「…………っ」
「もう一度言いマス! センターは誰が何と言おうとアナタなのデス!」
「う、うるさいっ! 無理に決まっているのよ! どうせ最後は私じゃ無くなるんだから放っといてっ!」
色々と俺が口を出してしまったため少し遅くなってしまったが、衣装初披露である。
それを目の当たりにした平安名の瞳が揺れたが、それだけでは足りなかったらしく。
引き止める間も無く走り去ってしまった。
今まで要領よく、そつなくこなしてきた平安名の口から初めて出てきた『無理』という本音。
残されたかのんたちはそれぞれ思うところがありながら、練習する空気で無くなってしまったため帰りの支度を始めるのであった。
少し話をしようか、と可可に声をかけ。
場所を移動し、今は公園のベンチに並んで腰掛けている。
「今の素直な気持ちとしては?」
「……やっぱり、ダメダメデス。腑抜けデス」
「まあそうなるよね」
「でも、それでもセンターに立つべきだと、今でも思ってマス」
当然の意見だと思わず笑ってしまったが、可可は真剣な表情のままそう続けた。
「どれを取っても決して一番ではありまセンが……努力しているところをこの間、見かけまシタ。ソレだけでセンターに、華々しい舞台に立てる世界ではありまセンが、彼女のソレは立つに相応しいと思ってマス」
「随分と見方が変わったね?」
「……多少、意地になっていた部分があるのは認めマス」
多少では無いことは顔を見れば分かるが、へたに突く必要もない。
「逆算してギリギリまで、少し様子を見ようか。すぐに行っても話を聞く気はないだろうし」
かのんたちにもそう連絡を送っておき、平安名には『サボるなよ』と釘を刺しておく。
すぐに『放っておいて』と平安名から返ってきたのに対し、俺はもう一度『サボるなよ』とだけ送り返すのであった。
明けましておめでとうございます。
本年も気長にのんびり更新していきたいと思いますので、よろしくお願いします。