一等星の煌めきを   作:不思議ちゃん

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よんじゅういち

 分かった分かったとその場凌ぎで返事したが最後。

 かのんはすぐにスマホを取り出し、グループで送ってしまったため。

 

「面倒な……」

「全部話すまで帰れないと思いなさい」

「そうデス。全部包み隠さず話してくだサイ」

「ラブライブに向けて練習しなきゃだし、早いとこ済ませるよ」

 

 部室のドアから一番遠いところに座り、周りをメンバーに囲まれて逃げられない状況というのが出来上がっていた。

 

 かのんだけでなく他の面々も変にテンション高い感じするが、何故こうも人の夢についてここまで興味を持てるのか。

 ……いや、それに関しては俺もあまり人のこと言えないが。

 

「まずは何から話したらいいかな」

「昨日の帰り、優が私を泣かしたことから話せば?」

「優くん!?」

「何をしているのですか!?」

「話ややこしくするなら帰るよ」

「だって、なんとなく腹が立ったから……」

 

 俺を責めるような目で見ていた千砂都と恋の視線がかのんへと向く。

 正直なところ、何をどう話したら良かったのか分からなかったので助かった。

 それを口に出して伝えることはないけど。

 

「色々と省くけど、かのんから一つお願いを聞いてと頼まれて。それがピアノをやって欲しいってものだったからヤダって断ったの。そしたらかのんが泣いたってだけ」

「何で断るのよ」

「そうデス! 素晴らしい音を奏でるのデスから!」

「何度も言ってると思うけど、好きで弾いてるだけだから。別にピアニストになりたくて始めたわけじゃないよ」

 

 本心で言ってるのは伝わったと思う。

 だからといって五人が納得した、というわけでもなさそうだが。

 

「すみれには一度話しているけど、俺は努力している人が好きで、夢へ向かって一生懸命になっている人を手助けするのが好き。だから今の状況は結構良いんだよね」

「優君は将来なりたいものとかある?」

「お母さんの喫茶店引き継いで、ノンビリ過ごすこと」

「……そういえば中学の時にもそんなこと言ってたね」

 

 なんなら言ってないだけで、小学生の時からすでに思っていた。

 

「いま、どこかに通われている訳でもないのにあれ程の腕前……なんだか勿体ない気もします」

「才能があるからといって、それがその人の本当にやりたいことかはまた別だよ。その人のことを思って言っていたとしてもね」

「私が優のピアノをやっている姿が見たいと言っても?」

「気が向いた時なら何時でも弾くよ」

「それは嬉しいけどそうじゃなくてぇ……」

 

 こうなって欲しい、ああなって欲しい。

 そう願いたい気持ちは分かるし、現に俺はみんなにそれを願っている。

 

 みんなも同じ気持ちであるため俺の願いは叶っているが、残念ながら俺はかのんの願いには応えられない。

 

「ねえ、優」

「ん?」

「優がやりたくないのは分かった」

「あ、うん」

「でも私は優のピアノを聴きたい」

 

 いや、そんなに圧かけられても……。

 流石にこればかりは勢いに押されてやるとは言えない。

 

「だから今だけ。高校生でいる間だけでいいの。私たちに、『Liella!』に曲を作って欲しい」

「……そうきたかぁ」

 

 まさかかのんからそのような案が出てくるとは思わず、少し感心してしまった。

 

「優君! 返事は当然丸だよね!」

「素晴らしい曲をお願いしマス!」

「私もまた、優の作った曲を歌いたいわね」

「私からもお願いします、優さん」

 

 そんなかのんに続いて四人も期待を込め一歩、こちらに近づいてくる。

 

 『ノンフィクション!!』を俺が手がけたことになった時から、きっとこうなるんだろうなとは思っていた。

 

 あの時の気持ちは未だ胸の内へと残るが、ショックはそれほど大きく無い。

 それは曲への思い入れの違いか、それとも慣れなのか。

 尺的な問題もあり、毎回曲作りの場面があったわけでは無いため、気が楽な部分もある。

 あとは今更という諦めか。

 

「……かのんたちにも手伝ってもらったりすると思うけど、それでもいいのなら」

「え、いいの!? ほんとに!?」

 

 また断られると思っていたのか、さらに詰め寄ってきたかのんは『嘘じゃないよね? ね?』と何度も確認してくる。

 

「嫌なら別にいいけど」

「嫌なわけないよ! いくらでも手伝うし何でもするよ!」

「……そっか。何でもするって言質をいただいたし、みんなにも頑張ってもらうから。その期待に応えられるよう俺もやれるだけの事はやるよ」

「かのんちゃーん?」

 

 付き合いの長い千砂都、そして察しのいいすみれはかのんへと詰め寄っていく。

 かのんも自身の言った言葉の重みに気付いたのか、『あ"っ!?』と女の子が出していいものじゃない声を出している。

 

「ね、ねえ優……?」

「どうしたの、かのん。まさかさっき交わしたばかりの約束を無かったことになんてしないよね?」

「あ、あはは。そんなことするわけないって。……ちーちゃん、すみれちゃん、ごめん」

 

 千砂都とすみれもどうにかなるとは思っていないため、考えなしに口走ったかのんへと八つ当たりをしている。

 そんな中、何故二人がかのんに詰め寄っているのか理解できていない可可と恋。

 

「どうしてかのんを責めるデスか。せっかくユウさんが曲を作ってくれるとなったのに」

「そうです。私たちもできる限りのことは強力しましょう」

「あんたたち、もうちょっとよく考えなさいよ。いい曲が思い浮かばないからちょっとグラウンド走ってこいとか言われたらやるしかないのよ?」

「すみれちゃん!」

「なによ…………あ」

 

 千砂都が止めるにはあまりにも遅すぎた。

 というか千砂都も俺に対してそんなこと思っていたんだ。

 そう思われるようなことをした覚えは……うん、無いな。

 

「早く説明も終わったことだし、今からでも練習始めよっか。先に行って待ってるね」

 

 各々の反応が面白いなと思いつつ、先に屋上へ。

 日も少し傾き、空はオレンジへと変わりつつある見慣れた空。

 だけど今日はいつもより綺麗に見える気がした。

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