俺は手伝い程度のはずであったが、共同制作と言っても過言でないほど手伝わされ曲が完成した。
発表の日まで一週間と少しだが、歌だけなのでなんとかなるだろう。
「で、どうしてこうなっているのよ」
「可可、もうダメデス……」
「これは普段の練習よりも少し辛いですね……」
本日の練習場所は音楽室となっている。
一人が歌の練習をしている間、残りの四人は筋トレといったメニューだ。
分かっていた事だが可可は早々に潰れ、床に転がっている。
「後で五人の合わせもやるけど、いい機会だから個人の歌唱を伸ばしていこうかなって。次はサニパさんにも勝たなきゃいけないし」
当日、かのんが一人で歌うための練習も兼ねているため、半分本当で半分嘘である。
すみれたちにも例の件は千砂都から伝えてあるので意図する事は分かっているはず。
かのんはアホだから言葉通り受け取ってる。
「こう言っちゃあれだけど、歌うのは普通なのに教えるの上手いわね」
「実は俺、人前で歌えない呪いにかかってるんだよね」
「そうなのデスか!? なら今度録音して聞かせて欲しいデス!」
「録音も誰かに聞かせるってなるとダメだね」
「そうなのデスか……」
「ああ言えばこう言うわね」
その後の練習は先ほどまでよりも少しだけ負荷をかけたりしたが、べつに私怨なんて入ってない。
☆☆☆
本来予定していたよりも少し早いけど、千砂都の提案により一週間前に伝えたはいいが。
本番前日となった今でも不安が付き纏っているようで。
「いつまでこうしてるのさ」
「もうちょっと」
家に帰れば正面から抱きついて離れない、っていうのがここ何日か続いてる。
外でも誰かしらの側にいる場面しか見かけない。
寝る前には部屋から追い出しているが、朝になると隣で寝ていたり。
甘えん坊と片付けるには度が過ぎているような。
少し、依存し過ぎている気がする。
何かきっかけでもあって立ち直ってくれたら良かったが、明日には本番なためどうにかしなければいけない。
これがまた、深く依存させていく原因なのか……?
「離れて」
「ヤダ」
「……ピアノ、弾くから」
ピアノを弾くという言葉に反応し、少ししてようやく離れてくれた。
クーカーから順番にこれまでの曲を弾いていけば、暗い顔をしていたかのんの表情も少し明るくなる。
「明日の」
「うん」
アイコンタクトでタイミングを合わせ、奏でていく。
この状態でも上手い歌を歌うが、つまらない歌である。
「何を怖がっているの?」
「別に……」
歌い終え、軽い調子で問いかけたが、そっぽを向いて一言のみ。
「俺や『Liella!』のみんなの前では歌えるのに」
「…………」
「集まった人たちは、敵じゃないよ」
「そうなんだけどさ……」
年単位で抱えていた問題。
そう簡単に何とかなるのは思っていないが、今回は博打要素が強過ぎる。
本当は歌えなくなったあの時になんとかしたいと思ったが、そうしてしまうと今が無くなっていた。
「ごめんな、かのん」
「なんで優が謝るのさ」
「……自己満足、かな」
「なにそれ」
どうにか出来たかもしれない。
でも何もしなかった。
謝罪の言葉が口から出たのも、ただの自己満足。
「みんなと歌うのは好き?」
「好きだよ」
「一人で歌うのは?」
「好き」
「それが分かっているなら大丈夫だよ」
「なにそれ」
正直なところ、俺もよく分かっていない。
ダメだったらダメでどうにかしよう。
ただ漠然と、何とかなるだろうという思いがある。
だからかのんの頭を雑に撫でて誤魔化し、さっさと寝ることに。
「今日で最後にするから、いい?」
「いつも勝手に入ってくるくせに」
「なんか、そんな気分」
「なにそれ」
入ってこれるよう端の方にズレてやれば、躊躇いなく入ってきては身体を寄せてくる。
「ありがと、優」
「自分のベッドで寝て欲しいんだけどね」
「いや、まあ……これもだけど、他にも色々と」
「気にしなくていいよ。俺がやりたくてやってる事だし、これぐらいしか出来ないし」
「優は自分のことをそうでもないって言うけど、私や、みんなはそう思っていないってことだけは分かってほしいな」
「過大評価だけど、頭の片隅には入れておくよ」
「うん。……明日は頑張るから」
「頑張る必要はないよ。楽しんでおいで」
「えへへ、そっか。楽しんでくるねっ!」
その後にもかのんは何か話していたような気がするが。
微睡の中におり聞いていなかったうえ、翌朝には忘れているのであった。
ちょっとしたアンケートです。
本編に影響するかは未定です。
恋愛を絡めた場合
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ハーレム
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選ばれるのは一人だけ
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初めから一人だけ