ふと、目が覚めた。
まだ起きる時間じゃないのは何となく分かっていたが、妙に頭が冴えているような、部屋が冷えているような……。
「いや、何してるの」
「あ、起こしちゃった?」
起こしちゃった、じゃなくて。
窓を開けて朝の空気を楽しむのはいいけど、自分の部屋でやってくれ。
それを口にするほどの活力はまだないため、思うだけに留まっているが。
今の時刻を見てまだ眠れることを確認し、二度寝をすべく目を閉じる。
もしかしたら歌う直前になってダメになるかもしれないが、少なくとも今の時点ではとても楽しそうな良い笑みを浮かべていたことだし。
まあ、なるようになるかと眠りについた。
今回、理事長を通してこちらからも条件というか、お願いをしていたことがある。
かのんが歌っているところを撮影し、後日動画投稿サイトにて公開すること。
それと次のラブライブにて披露するステージの許可を得るための力添えとして、一筆欲しいこと。
動画に関しては生徒が映らなければ何も問題ないらしく、簡単に許可が降りた。
力添えも喜んで協力するとお返事をいただいているため、俺は一筆書いてもらった物を受け取りに向かい、かのんの歌を聞いていくことなくその場を後にする。
どうなったにせよそのうち千砂都から連絡が来るだろうし、やることやっていかないと。
なんて思っていたが、思っていたよりも時間がかからずに予定が終わってしまったため、また戻ってきた。
千砂都たちとは合流せず、講堂を一望できる管理室へと入れてもらっている。
ここならかのんにバレることもなく、ゆっくり見ることも出来るし。
まだ始まるまでに少し時間があるので、舞台袖に居るであろうかのんへ一言送っておくかと『楽しんで』なんて打ち込んだが。
結局それは送ることなく文字を消していった。
何となく、大丈夫な気がしたのだ。
それは歌える場面を知っているからなのか。
それとも、これまで一緒に過ごしてきたかのんを知っているからなのか。
きっと後者だろうと、そう思いたい。
これまで積み重ねてきた時間が確かな物だと思うために。
少しだけ感傷的になってしまったが、いつの間にやら時間になっていたようで、ステージにかのんが現れる。
「……ふふっ」
自信満々で、とても楽しそうな笑みを浮かべている姿を見て思わず笑みが溢れる。
ちょっと機嫌が良いので、そのうち好物のハンバーグでも作ってあげることにしよう。
簡単な自己紹介の後、披露される一皮向けたかのんの歌声。
色付き、ハッキリとした声。
それは今ここで聴いているみんなの心に響き渡っただろう。
かくいう俺もその一人であるし、千砂都なんかは今頃泣いているのではないだろうか。
歌が終わり、かのんが一礼を終え少しの間が空いた後、講堂を拍手で埋め尽くさんばかりの音が。
俺も少しびっくりしたし、ステージ上にいるかのんは思わず一歩引いている。
まだ拍手の鳴り止まぬ中、ステージへと駆け抜けていく白が一つ。
当然、居ないと思っていたかのんは驚きを露わにしながらも、抱きついてきた千砂都を受け止める。
他の面々もステージに上がり、かのんが一人で歌えた喜びを分かち合うのは良いが、残念ながらまだ授業中である。
せっかくなのでこのままみんなで歌ってもらうことにしよう。
『あー、テステス。リエラのみなさん。全員お揃いのようなので、同じ曲を今度は五人で披露していただきたいと思います』
「優!?」
おっ、流石に声だけでも分かるか。
ちなみに五人でも歌う許可は事前に取ってあるので問題はない。
『それでは整列し、改めて自己紹介をお願いします』
かのんは五人でも歌えると分かって嬉しそうにしているが、四人からは聞いていないといった視線を向けられる。
初めはどこにいるか分かっていなさそうであったが、放送から場所の当たりをつけ見つけられた。
残念ながら既にステージへと上がっているので、今更どうにかすることは叶わないので諦めたまえ。
そんな俺の雰囲気を感じ取ったのか、気持ちを切り替えたようで。
というか結局みんな歌うのが好きなのだから、俺を悪者にするのはやめよう。
「えー、みなさん! なんだかんだありましたが改めて自己紹介をさせて下さい! 私たち──」
──『Liella!』です!
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