翌朝、身体も軽くいつも通りに動けているが、体温は三十七度半ば。
学校は休まなければいけないのだが、熱を測っていなかったら普通に登校していたくらいに元気だ。
夜に何も食べず寝てしまったためお腹がとても空いており、朝からご飯のおかわりをするほどである。
あまりに暇であるし、身体を動かしたいので店の手伝いでもと思ったが、食べ物を扱うので諦めた。
いつもの感じだと明日には治って学校に行けると思っているが、念のため母さんの言う通り部屋にて大人しくしていることにしよう。
特にやることもなく、何となくスマホを手に取れば知らない人から連絡がきていた。
と思えば、昨日交換した七草さんからである。
言っていた通り、帰ってすぐに中身を確認したらしく、それに対する賛辞と分からない部分の質問がきていた。
夜寝ていたので返信が遅くなったことの謝罪と、分からないという部分を出来るだけ簡潔に、分かりやすく纏めて返しておく。
何かあれば連絡が来るだろうし、明日にでもタイミングみて直接意見の交換ができれば良いなと。
なので今日は何もやる事が無くなってしまった。
おでこにヒンヤリしたものを感じ、目が覚めた。
布団でゴロゴロしていたのは覚えているが、いつ寝たのかは記憶にない。
人間、暇すぎても寝てしまうものなんだな。
「あれ、すみれ……?」
「んなっ!? ア、アンタいつから起きて……」
「いまかな……?」
まだボーッとしながらも目を開ければ、視界の端にすみれの姿が。
手を上に伸ばした変な姿勢をとっているが、何をしているのだろう。
「ど、どうしたのよ」
「いや、ヒンヤリしてて気持ちよかったような」
おでこに手をやる俺をみて、少し変な様子ながらも声をかけてくれるが。
俺の返しを聞いてそっぽ向いてしまった。
「まあいっか」
寝起きで上手く働かない頭を動かしたところで何か分かるわけでもない。
身体を起こし、近くに置いていたペットボトルを手に取り水分を取る。
「もう大丈夫なわけ?」
「明日からまた学校行けるよ。たぶん」
「そう。なら体調を崩すほど無茶をしたアンタに説教しても大丈夫そうね」
「それを言うなら俺も、明後日本番なのに病人の部屋にいることに対して説教が必要かな」
「…………やっぱりやめておくわ」
「それがいいよ、お互いにね。話し変わるけど、他のみんなは?」
かのんが居るなら分かるが、何故すみれだけなのだろう。
純粋な疑問であったが、少し不機嫌になったようにみえる。
「かのんの部屋にみんな居るわよ。今日はみんなで衣装の仕上げを手伝ってるの。交代で優の看病ってわけ」
「なるほど」
「…………ねえ」
「ん?」
「前に神社で話した事、覚えているかしら」
「あったね、そんなことも」
目も覚めた事だし看病は充分だと思っていたが、先ほどよりも真面目な雰囲気を出して話し始めた。
「みんなに頼るって、嘘だったの?」
「別に嘘をついたつもりは無いよ。結果的にそうなっただけで」
「そんなんで誤魔化せると思ってるわけ?」
「俺がやっていたことをかのんたちに任せるのは負担がでかすぎたってだけ。今は他の人に任せてるよ」
「アンタが倒れてからじゃ遅いのよ!」
いきなり大きな声を出す物だから少しビックリしてしまった。
あと、かのんの部屋は隣なので。
「何があったの!?」
ほら、みんな来ちゃった。
「何でも無いわよ。ちょっと優に揶揄われただけ」
「そ、そう……。ならいいのかな?」
「大丈夫大丈夫。まだ作業が残ってるのならさっさと終わらせてきな」
すみれの纏う雰囲気から嘘だというのはバレているだろう。
みんな納得していないだろうが、手を振って無理やり返した。
ドアが閉まり、少し待ってからすみれへと向き直る。
「落ち着いた?」
「んなわけないでしょ」
「だよね」
それにしても少し体調崩しただけだというのに、過剰に反応しすぎではないだろうか。
死ぬわけでもないし、寝ていれば治るのに。
「アンタ、ほんとタチ悪いわよ」
「よく言われる」
「結局、何を言ったとしても無駄ったら無駄なのね」
「これからは善処するよ」
「少しは気持ち込めて言いなさい」
と言われても、こればかりはすぐにどうこう出来る物でもない。
それはすみれも分かっているだろうし、もう少し素直になった方がいいのはお互い様である。
「俺、みんなの披露するステージが好きなんだ。それを最高のものにするためなら多少の無茶だってやるよ。それはこの先もね」
──だからいいものを観せて、魅せてくれ。
作者は基本箱推しですが、すみれ好きです。
中の人はペイトンさんと絵森さん。