──努力すれば報われる。
──夢は必ず叶う。
──諦めなけれは勝てる。
なんて素敵な言葉だろう。
なんて甘美な言葉だろう。
なんて■■な言葉だろう。
そんなことあるはずがないと心のどこかでは分かっているのに、『もしかしたら』なんて淡い期待を抱いてしまう。
世の中は不公平で、不平等で。
自分が平凡であることを忘れて特別であるかのように思ってしまう。
だからこそ遥か高くに輝く一等星に憧れ、愚かにも手を伸ばすのだろう。
☆☆☆
本番の日を迎えた朝、あまり良いとは言えない目覚めであったのは結果を知っている故であろうか。
ポイント集計が終わった時にふと思った。
モニターに表示された結果を目にし、どこか冷えていく気持ちを誤魔化すように空を見上げたが。
先ほどまで雪が降っていたため、そこには変わらず分厚い灰色の雲があるだけ。
結成一年未満とは思えないほどに『Liella!』は成長し、素晴らしいパフォーマンスを披露した。
けれど時の流れは平等で、自身たちが成長しているということは他のグループも当然成長している。
都大会優勝したサニパさんとの差はポイントにして三点。
数値にしてみればそれだけだが、たったそれだけが今は遥か彼方にある。
「みんながこんなにも素敵なステージを用意してくれたのに……」
「私たちは今までで一番のステージを披露したよ。それは間違いない」
「それでも届かなかったってことね」
「流石はサニパさん、デスね」
「とても苦しく、辛く。何より悔しいです……」
こう言った時、なんて声をかけるべきか分からない。
かけるべき言葉が頭の中をグルグルとまわるが、きっと何の慰めにもならないだろう。
「……悪いけど、時間があるから撤収始めるよ。かのんたちは風邪を引かないよう早く着替えて帰りな。今日は風呂でゆっくり温まって、しっかりご飯を食べること。明日は休みで明後日集まろうか」
それに今は気持ちを整理する時間も必要なはず。
あの時ああしとけば。
この時こうしておけば。
それ以前にもっと練習をしておけば。
着替えに向かうかのんたちはきっと、そんな事を考えているだろう。
けれどどれだけ後悔したとしても、結果は変わらない。
ならどうするか。
また同じ思いをしないよう、次に活かしていくしかない。
……こんな偉そうなこと、俺が言う資格は無いんだが。
撤収を滞りなく終えてようやく俺のライブは終わる。
一先ず気持ちを切り替え、作業に取り掛かるとしよう。
かのんたちは恋の家に泊まるらしく、諸々の作業を終えて疲れ切った身体をノンビリ休めることが出来ると嬉しく思っていたが。
なんだかいつもより家の中が静かなように感じた。
「…………」
ベッドに寝転がり、今回のことについて振り返る。
サニパさんのパフォーマンスは今回初めて見たが、身内贔屓無しに負けていないと思った。
足りていなかったのは演出面、つまり俺である。
地元の人たちと一緒に作り上げたであろうステージは、サニパさんの魅力を最大限に引き出し、活かしていた。
俺も少なくない時間を彼女たちと過ごし、理解したと思っていたが、理解したつもりになっていただけだろう。
それに作り上げたものも模倣であるし、俺よりも手伝ってくれた学校の子たちの方がよく分かっていた。
「もっと早く、こちらから持ちかけて相談すべきだったかなぁ」
そうすれば勝てたかもしれない、といったタラレバを考えてしまう。
このまま考えていてもドツボにハマるだけ。
さっさと寝て気持ちのリセットをするに限る。
──でも本当は勝ち進むことがないようにどこか手を抜いていた。
という事から目を背けつつ。
これで一先ずアニメ一期は終わりです。
二期を始める前に幕間、あと頑張ってかのんたちの視点でいくつか書けたらなと思っています。