一等星の煌めきを   作:不思議ちゃん

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ろく

 家でもサボらず千砂都に言われたメニューをこなしているのか、唐さんは目に見えてわかるほどに成長していた。

 

 分かっていた事だけれど、ここまで一途に好きで、だからこそ頑張れているんだなって。

 

「…………羨ましいな」

「ん? 優くん、何か言った?」

「いんや、何も」

 

 思わず漏れてしまった呟き。

 近くにいた千砂都に危うく聞かれるところであった。

 

「ちょっとコンビニ行ってくる」

「あ、うん。気をつけて」

 

 この一ヶ月、練習が無い日以外は見学に来いと言われており、なんと皆勤賞である。

 いつまでお守りをしていれば良いのか始めに決めておかなかったのが俺の失敗であり、少しでも行きたくない雰囲気を出せばクーポンの話を持ち出してくる。

 

 ここまで近くでずっと見てきて、愛着が湧かなかったわけじゃない。

 きっと千砂都としてはこれが狙いだったのかなと思わなくもないが、なんかこのままは癪だなと。

 

「おかえりー。それは?」

「スポドリ」

 

 二リットルが一本、五百ミリが一本。

 買って、ここまで持ってくるのですでに怠い。

 帰ってくる時になんでこんなことしようと思ったんだろうと少し後悔したほどだ。

 

「休憩は終わり?」

「うん、そろそろ始めようかなって思ってたけど」

「ならちょうど良かった。唐さん」

「私のことは可可でいいデスよ」

「取り敢えず、腹筋の体勢になって。かのんは足押さえて」

「ムムム、中々手強いデス」

 

 割と最初の方……というか初対面の時から何かと名前で呼ぶよう勧めてくる。

 なんとなくタイミングを計りかねてるのといった具合に、名前を呼ばない理由は大した事じゃない。

 

 今回もスルーし、いつもやっている腹筋の体勢になったところで先ほど買ってきた五百ミリのスポドリを唐さんに渡す。

 

「ゆ、ユウさん? これはいったい……」

「胸の辺りで持ちやすいように持ってもらって、そのままゆっくり上体起こしてって」

「え、あ、ハイ…………ふぐぐ、こ、こうデスか?」

「そうそう。あ、そこでキープ。身体は真っ直ぐなのと腹筋を意識して」

 

 俺の指示通りに動き、声にならない声を出していた唐さんだが、五秒ほどでダウンした。

 

「こ、これ、ものすごくキツいデス!」

「それだけ話せるならまだいけるね。もう一回」

「ファッ!?」

「今度は重りなしでいいから」

 

 嘘でしょ、みたいな目で見られているが、嘘ではない。

 それが伝わったのか、未だ信じられないといった表情をしながらもやろうとするあたり、真面目なのだろう。

 

「ふ、ふぐぐ……」

 

 先ほどよりもキツそうにしていたが、ダウンしたのはほぼ変わらない秒数であった。

 今度は先ほどと違って話す気力もないのか、荒い呼吸だけを繰り返している。

 

「んじゃ、次はかのんやろっか。唐さんがこんなだし、千砂都に足押さえてもらって」

「順番的にそうなるよね」

「はい、これ」

「……そっちじゃなくて?」

「総合的に見て、こっちのがいい負荷になると思うけど」

 

 かのんには二リットルの方を手渡す。

 冗談だよねと確認してくるが、もちろん本気である。

 

「私的にも、かのんちゃんはコッチかなと」

「ちぃちゃんまで……」

 

 実はこの方法、過去に千砂都も行っている。

 今もやっているのかは分からないが、仮に千砂都がやるとしたら二リットルを二本持ってもらうことになるだろう。

 そこまできたら重りもこんなのではなく、ちゃんとしたやつを買ってきたほうが良いのだが。

 

「んぐぐ……」

 

 俺だけならもう少し渋っていただろうが、千砂都にまで口を出されているので折れるのが早かった。

 

 そうして始めたが唐さんの記録は軽く超え、辛そうにしながらも十秒を通り過ぎ、二十秒へ達する前にダウンした。

 

「んじゃ、もう一回」

「なんでっ!?」

「さっきの唐さん見て、ワザと話す余裕が無いフリしてたでしょ?」

「そ、そんな事ないよ!」

「でもいま普通に話せているし、もう一回だよ」

「あ……」

 

 それでも十秒は超えてくる辺り、さすがと言うべきか。

 本当は少し間を置いてからもう一回ほどやらせたかったが、今日は勘弁しておいた。

 

 千砂都が組んでいる練習メニューをこれ以上邪魔するわけにもいかないし。




あと2、3話でクーカーが終わる予定です。
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